カテゴリーアーカイブ:行政

霞が関の民間出身者

2019年4月17日   岡本全勝

NHKウエッブニュース「霞が関のリアル」に「民間人がたくさんいる」という趣旨の記事があります。内閣人事局の調べでは、昨年は5,890人だそうです。12年前に比べて、2.5倍になっています。

民間出身者には、いくつかの型があります。
民間出身と言っても、
・企業に籍を残して来てもらう場合
・民間人を採用する場合
があります。

期間については、
・途中採用で終身雇用
・任期付き採用

業務については、
・専門業務(金融や法務の知識、インターネットのセキュリティ対策)。新人を育てるより、その能力を持っている人を雇う方が合理的です。
・期限が限られている組織や業務(復興庁、オリンピック準備)。業務が終わったら、やめてもらわないと行けません。

このような理由から、今後も民間出身者は増えるでしょう。自前で養成するより、ずっと合理的です。また、霞が関が閉じた世界にならないために、官僚たちが世間知らずにならないためにも、良いことだと思います。

ところが、次のような指摘もあります。企業から出向した佐藤さん(仮名)の場合です。
・・・「あまりに過酷で、体調を崩す人もいました。出向者の間では、『出向期間、残り○日間』とパソコンで残り日数を数えるなんてこともしていました。出向期間中、給与は国から支払われましたが、私の場合は月10万円ぐらい下がっていました。当時は独身だったのでまだよかったですが、家族がいたらどうするんだろうと思いましたね」
佐藤さんが2年余りの出向を終えて本社に戻ると、会社は元の給与との「差額」を補填(ほてん)しました。その額は500万円以上だったそうです・・・

そうなのです。金融庁や経産省などに、弁護士さんがたくさん、任期付きで採用されています。給料が激減するのだそうです。でも、「勉強になる」「箔がつく」「その後の仕事に役に立つ」などの理由で、3年程度を辛抱しているとのことです。
公務員の給料水準は民間企業に準拠しています。しかし、それは、全体での比較のようです。高度専門業務をしている企業の社員と、同等の仕事の公務員とは、同水準になっていないのです。公務員の給料が「平等」になっているからだと思います。
企業の社員と公務員との給与格差は、上に行くほどひどくなります。官民交流を進めていますが、管理職や50歳くらいだと、優秀な民間人は公務員になろうと思わないでしょう。よほど、犠牲的精神がない限り。
参考「次官・局長の報酬と社長・専務の報酬

地方自治の議論

2019年4月16日   岡本全勝

先日紹介した地方自治に関する記事を書いている「自治体のツボ」。その後も、熱心に記事を載せておられます。例えば「無投票で市長になった27人」。

この4月は統一地方選挙です。この時期から外れた自治体もあるのですが、まだまだ統一選は、多くの自治体の首長と議員の選挙の時期です。マスコミも指摘しているように、投票率の低下、候補者の減少が続いています。

見方によっては、地方政治と地方行政が平穏無事だとも言えます。
地方行政については、公共サービスは世界最高水準になりました。地域間のサービス格差も大きくならないように、交付税によって支えられています。もちろん、少子高齢化、過疎化、地域の活力低下、さらには借金漬けなどの問題もあるのですが。しばらくそれを忘れると、平和な時代が続いています。
地方政治については、中央政界でも、党派によるイデオロギー対立もなくなりました。地方政治でも、主張の激突もありません。
争点がないのです。誠に、穏やかな時代です。

他方で、首長や議員が魅力ある仕事と、思われていないのかもしれません。
平穏無事で争点がないとしても、政治家が一定の尊敬を受ける仕事なら、それを目指す人が出てもおかしくありません。それもないとすると・・・。

『文部科学省の解剖』

2019年4月15日   岡本全勝

青木栄一編著『文部科学省の解剖』(2019年、東信堂)を紹介します。
現在日本の代表的行政学者たちによる、文科省の組織を取り上げた論文集です。

宣伝には、
「文部科学省の組織構造の全貌を捉えた官僚制研究
幹部職員に対する初となるサーベイ、文科省と官邸・他省庁・地方自治体関係、庁舎内の部署配置・執務室内の座席配置分析といった行政学的分析を通じて、文部省/科技庁の統合後の変容も含めた、中央省庁の一翼としての文科省の組織構造を明らかにする」と書かれています。
教育行政研究では、これまで、文科省が取り上げられてこなかったようです。

日本の教育行政を分析するには、このような組織の分析のほかに、機能の分析も欲しいですね。
・文科省が教育現場にどの程度影響を与えているか
・特に教育現場を「支配」している、現場が文科省に「依存」していると呼ばれる関係の実態
・文科省が教育現場の課題をどれだけ吸い上げているか
・文科省の役割の諸外国との比較
・なぜ、学校教育だけでは不十分で、多くの生徒が学習塾に通うのか
なども次の研究に期待しましょう。

古い社会的リスクと新しい社会的リスク

2019年4月9日   岡本全勝

4月4日の日経新聞経済教室、田中拓道・一橋大学教授の「全世代型社会保障の論点(上) 財源負担への納得感醸成を」から。

・・・まず先進国が共通して直面している課題を、「古い社会的リスク」と「新しい社会的リスク」という言葉で確認しておこう。
かつて社会保障とは、男性稼ぎ主の所得喪失を主たるリスクととらえ、医療保険・年金などを通じて人々の生活を保障するものだった。これらは主に高齢期を対象としていた。
ところがグローバル化と産業構造の変化によって、新しいリスクが生まれてくる。先進国の産業が製造業から情報・サービス業へ移行すると、一時的な失業や不安定な就労が増えていく。事務職やサービス業などで女性の就労が拡大すると、仕事と家庭の両立に苦しむ女性も増えていく。現役世代向けの就労支援、子育て支援がなければ、社会の格差は拡大する。

グローバル化が進む中で政府支出を増やすことは難しい。高齢化の進む国では、古いリスクと新しいリスクへの支出を巡って競合が起きやすくなる。
先進諸国では(1)医療・年金など高齢者向け支出の伸びを抑制しつつ(2)労働力の移動を促進し(3)子育てや教育への支援を拡充するという改革の組み合わせが試みられてきた。
ただし、どの国でも改革がうまく進んだわけではない。特に重要なのは、市場の役割を重視してきた米国や英国で社会の分断が広がり、低所得層を中心に保護主義や排外主義への支持が強まったことだ。各国はグローバル化に適応しつつも国内の格差を抑制し、社会の安定を保つという難しいかじ取りを迫られている・・・

東大生の官僚離れ

2019年4月8日   岡本全勝

NHKウエッブニュースに「なぜ?東大生の“官僚離れ”」が載っていました。原文を読んでいただくとして、数カ所引用します。

・・・かつて東京大学から霞が関といえば、典型的なエリートコースでした。しかし、今の東大生には自分たちが進む道として魅力的に思えないようです・・・
・・・これは人事院が公表した去年のキャリア官僚試験の合格者を出身大学別にまとめた表です。
東京大学は329人で最も多く、2位の京都大学とはダブルスコアです。でも合格者に占める東大生の比率を計算すると、16.8%。この10年間のピークだった平成22年度の、およそ半分に減っていました・・・

・・・なぜ東大生は官僚を目指さなくなったのか。その理由を、毎年の卒業生の進路を調べている「東京大学新聞」の編集部に聞きました。
就職記事を担当している衛藤健さん(教養学部4年)が、理由を整理してくれました。
1官僚の長時間労働に対する忌避感が強まっている。
2景気が回復し、就職先として民間企業の魅力が増した。
3待遇は大企業に比べて低いのに国民の評価は低く、報われない。
4衰退に向かう日本という「沈む船」には乗りたくない。・・・