カテゴリーアーカイブ:行政

官僚意識調査その3

2019年9月3日   岡本全勝

官僚意識調査」の続きです。
かつての村松岐夫先生の調査について、紹介します。若い人はご存じないでしょうから(以下の文章は、北村亘先生の協力を頂きました)。

調査に基づく成果物を挙げましょう。
1 村松岐夫『戦後日本の官僚制』(1981年、東洋経済新報社) サントリー学芸賞受賞(京極純一先生の選評)
2 同『日本の行政(中公新書)』(1994年、中央公論新社)
3 同『政官スクラム型リーダーシップの崩壊』(2010年、東洋経済新報社)
4 村松岐夫・久米郁男(編)『日本政治 変動の30年』(2006年、東洋経済新報社)

1は、学界でもマスメディアでも「官僚優位論」が自明とされた時代に、旧8省庁の課長以上の官僚アンケート調査で与党の影響力の強さを指摘しました。さらに、官僚の役割が、理想主義的に自らが国益を追求する国士型(古典的官僚像)から、与党の意向を受け入れる調整型(政治的官僚像)に変化していることを計量的に示しました。
この主張は、1970年代後半から1980年代の学界では大論争になり、当初は異端扱いされたそうです。しかし、2が出たときにはもはや政治学や行政学の教科書でも定着した考えとなり、さらにどのような場合に官僚はどのような行動を採るのかという段階の研究に進んでいきました。

この調査を再開する意義を、理解してもらえたと思います。
政治家も官僚もそしてマスコミも、「過去の通説」に縛られます。しかし現実の世界では、新しい状況が生まれています。村松先生の調査は、大きな意義があったのですが、現在となっては古くなりました。
そして、日本の政官関係が、政治主導の時代に変化しています。その際に、官僚たちはどのように考え行動しているか。それを明らかにすることは、重要なのです。続く

官僚意識調査その2

2019年9月2日   岡本全勝

官僚意識調査」の続きです。この調査の意義を、2回に分けて、簡単に説明します。

内閣人事局ができて、国家公務員行政が大きく前進しました。業務に必要な組織を作り、それを担う職員を管理することは、どの組織にとっても不可欠なことです。そしてその際に、職員の状況を把握し、人事制度や運用をすることは、当然のことです。
(官民を問わず、組織運営に必要な要素は、「企画」「組織・人事」「予算」です。これまでは国家公務員の人事制度を、主に人事院が担っていました。しかし、人事院は「第三者機関」です。職員管理は、組織の管理者か行う必要があります。)

米国や英国では、政府自らが全職員に対して調査を行ってます。
いずれも、数十万単位のサンプルです。行政官僚制を機能させるためには、どのような職場環境やインセンティヴを用意すべきかを定期的に調査しています。質問文および省庁間比較、世代間比較などの分析結果は、ネット上で公開されています。
私は、日本でも将来は、政府(内閣人事局)がこうした調査を行うべきだと考えています。

アメリカ連邦政府:連邦職員調査(Federal Employee Viewpoint Survey、毎年)
https://www.opm.gov/fevs/
英国政府:公務員調査(Civil Service People Survey、毎年)
https://www.gov.uk/government/publications/civil-service-people-survey-2018-results

続く

官僚意識調査

2019年9月1日   岡本全勝

大阪大学の北村亘先生たちが、かつて村松岐夫・京都大学教授がやっておられた「官僚意識調査」を久しぶりに復活させます。2001年を最後に行われていなかったのですが、今回、実施することになりました。概要は、中央調査社のホームページご覧ください。(https://www.crs.or.jp/oshirase/about_1080.htm)
対象は、次の6省の本省在職者(課長補佐以上)です。
総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省

(調査対象となる方へのお願い)
かつては、調査員が対象者に面談していたのですが、インターネットでできるようになりました。オンラインで回答します。
質問は合計23問、4つの選択肢から選ぶ方法で、所要時間は30分程度です。もちろん、回答者を特定することができない措置も講じられています。守秘義務に係るような問はありません。安心して参加してください。

事前登録期間を9月21日までに、回答期間を9月20日から10月19日に設定してあります。
・課長級以上には、郵送で連絡が行きます。
・課長補佐級には、SNSやメールで案内が回ります。
事前登録が必要です。事前登録のウェブサイト(https://r10.to/survey2
その他問い合わせ先 info_crs@crs.or.jp

昔と今の公務員像の違いや、世代間の認識の差など、皆さんが普段感じているであろう様々な変化を、こうした調査が可視化してくれるでしょう。そして、問題の分析や課題解決に向けた一助になるものと期待しています。この調査の意義などは、次回書きます

各省の業務量と職員数比較

2019年8月27日   岡本全勝

自民党行革本部が、6月27日に「霞が関の政策立案部署等の業務量調査結果と今後の対応」をまとめました。知人に教えてもらいました。内容は原文を読んでいただくとして、興味深い資料が付いています。

まずは、いくつかの指標による、各省の業務量比較です。
「主な省庁の内部部局定員(1,000人)当たり業務量比較1/2」国会答弁回数など(p5)
「主な省庁の内部部局定員(1,000人)当たり業務量比較2/2」政省令の量(p7)

次に、各省の定員です。「各行政機関の定員」(p10)
本省の定員が興味深いです。
内閣府1,487人、警察庁2,472人、金融庁1,123人、総務省2,514人、法務省896人、外務省2,682人、財務省1,788人、文科省1,549人、厚労省3,664人、農水省3,776人、経産省2,451人、国交省4,686人、環境省898人、防衛省1,389人。

各省、各局、各課の職員数を客観的に決める、数式や指標はありません。
それなりの理由と経緯があって、このような数字になったのでしょうが。やや意外な数字があります。

病院での悩みを聞く宗教者

2019年8月17日   岡本全勝

8月15日の日経新聞夕刊、「患者の苦悩、向き合うケア 「生きる意味は」「死ぬのが怖い」 医療・福祉の現場、宗教者ら常駐」から。

・・・欧米の病院や福祉施設では宗教者らが常駐し、患者や家族に寄り添って心の問題をケアする。病院に宗教者が入るのを忌避する傾向があった日本でも多死社会を迎え、こうした「スピリチュアルケア」が広がってきた。スピリチュアルケア師や臨床宗教師の育成が進み患者や家族を支えている・・・

・・・人は重病など危機に直面すると「生きる意味はどこにあるのか」「なぜこんな目にあうのか」というスピリチュアルペインに見舞われる。大嶋健三郎院長は「患者の悩みに医療者だけでは立ち向かえない。死生観や宗教観がしっかりした人材が必要」と話す。
病院には僧侶3人が常駐し、患者の散歩や食事に付き合いながら話をする。通常は僧衣を着用せず、僧侶から宗教の話をすることはない。その一人、花岡尚樹・ビハーラ室長は「患者のそばにいて会話や傾聴を通して支えるのがケア。その中で『死ぬのが怖い』などの言葉が出たときに宗教者として受け止める」と話す。毎夕、院内のホールで僧侶が念仏を唱え法話をする。患者も家族も自由参加で、布教はしない・・・

科学や医学の発達で、病気や死について、科学的知識が増えました。しかし、病気や死の仕組みを理解できても、「なぜ私がそうなるのか」とか「死んだらどうなるのか」など心の悩みは減りません。それは本人だけでなく、家族や親しい人にとっても同じです。
かつては、人生の苦しみを引き受けたのは、宗教でした。科学の発達で、宗教を信仰する人は減りましたが、科学とは別の次元で、科学を超えた人の悩みを引き受ける役割はあると思います。
東日本大震災で犠牲者を仮埋葬する際に、読経を求められたこと、そしてそれが遺族にとって大きな意味をもつことは、拙著『復興が日本を変える』などにも書きました。