カテゴリーアーカイブ:行政

曽我謙悟先生、地方政府

2019年8月1日   岡本全勝

読売新聞文化欄「1000字でわかる」で、7月29日から、曽我謙悟・京大教授の「地方政府」が始まりました。

・・・行政を理解するには、行政のことだけを見ていても十分ではない。政治との関係、住民との関わり合い、民間企業と行政組織の比較、行政が実施する政策が社会や経済に与える効果、これらすべてを見ていくことが、行政の理解につながる。行政学とは学際的な学問であり、そこが魅力でもある。
そうした行政学の見方からは、地方政府という捉え方がしっくりくる。都道府県や市区町村の行政機構だけではなく、知事・市区町村長や議会との関係、そして住民との関係、さらに地域社会や経済との関係を理解するには、地方自治体というよりも、より広く地方政府としてこれを見る方がよい。また、地方政府と位置づけることで、中央政府とセットとして捉えることは、近代国民国家の理解にもつながる・・・

・・・そこでは、中央政府と地方政府の違いは、対象とする社会・経済が広いか狭いかだけではない。つまり、地方政府は中央政府の単なるミニチュアではない。他の地方政府へ移動してしまう人や企業を、地方政府は相手にしてきた。中央政府がグローバル化に直面する以前から、自らの基盤となる住民や企業が移動することについて、地方政府は多くの経験を積んできた。
さらに、現在の行政活動の大半は、地方政府が支えている。日本の地方政府による支出はGDP(国内総生産)の1割強を占め、中央政府のそれの2・5倍にのぼる。地方公務員数は約270万人で、こちらは4・7倍にも及ぶ。
質的にも量的にも、地方政府は中央政府と並ぶ存在だ。地方政府を抜きに、現在の政治・行政は語れないのだ・・・

やればできる。女性の就業

2019年7月31日   岡本全勝

7月31日の日経新聞に「女性就業 残る待遇差 初の3000万人、パート多く 正規雇用や昇進に壁」が載っていました。そこに、いわゆるM字カーブのグラフがついていました。
これは、縦軸に女性の労働力率を、横軸に年齢階級を取ります。すると、15歳から立ち上がったカーブが、30代になるとへこみ、40代で再び上がり、60代から下がります。アルファベットの「M」の形になるのです。子育て期にいったん離職し、子育てが一段落した40代で働き始めるからです。

過去はこのMの形が明瞭だったのですが、近年へこみが小さくなり、台形に近づきつつあります。1979年、1999年、2019年の3年を比較してあります。この間の変化がよく分かります。文章より、グラフの方が一目でわかります。
寿退社や、子供ができたら退職するという「常識」が変わってきたのです。また、子育て中の母親も働きやすいように、保育施設も増やしてきました。

さて、記事が指摘しているように、課題は残っています。
1 女性の職場は、非正規が多いのです。55%で、男性に比べ2倍以上です。全体では30%台です。
2 正社員でも、まだ男性と同じような仕事、昇進ではありません。女性の管理職比率は13%です。欧米では3割から4割だそうです。

広がるゲーム障害、日本で500万人

2019年7月28日   岡本全勝

7月24日の日経新聞夕刊「ゲーム障害 向き合い方は? 国内500万人 ネット依存の恐れ 無理にやめさせない/孤立させないケアを」から。
・・・オンラインゲームなどのやり過ぎで日常生活が難しくなる「ゲーム障害」を世界保健機関(WHO)が疾病と認めた。患者数は明確ではないが、「ネット依存」の疑いがある人は国内に500万人ほどおり、増加の一途をたどっている。ゲーム障害にどう向き合えばいいのだろうか・・・

・・・ゲーム障害は日常生活に支障が出たり健康に害が及ぶ疾病だ。厚生労働省は、中高生の14%にあたる約93万人がゲームなどのネット依存の恐れがあると推計する。5年でほぼ倍増した。
東京都は小中高生や保護者などを対象に、ネットやゲームとの付き合い方を考える講座に専門家を派遣している・・・
・・・「ゲーム障害を抱える子供にとってゲームは心のつえ。無理にやめさせる必要はない」と周愛荒川メンタルクリニック(東京)の八木真佐彦・精神保健福祉士は話す。ゲーム障害の子供は家庭で問題を抱えているケースが多いという。「相談下手、孤立した頑張り屋さんの方がゲーム障害になりやすい」(八木氏)
ゲームにのめり込むのは快楽にふけっているのではなく、落ち込んだ気持ちを治そうと「自己治療」をしている場合が多いと八木氏はみる。こうした状況でゲームを取り上げても問題の解決につながらず、アルコールや薬物など別の対象に依存したり、最悪の場合、自ら命を絶ったりする危険性すらあるという。
「孤立しているゲーム障害の子供たちが安心できる環境を提供することが重要」(八木氏)。ゲームにのめり込む根本の要因を見つめ直す必要があり、それには家族のケアが重要になる。「家族へのカウンセリングを繰り返す中でお子さんに会わずして回復に至るケースもある」という・・・

世界保健機関では、病気に分類されています。
子供に、どのようにしつけたら良いか。両親も困っているでしょう。親の世代は経験していない「危険」なのです。子供への接し方も、教えてもらっていません。
新しい社会の課題です。

野党、政権交代への道筋

2019年7月26日   岡本全勝

7月26日の読売新聞解説欄「野党 体勢を立て直すには」、砂原庸介・神戸大教授の発言から。

・・・投票率が50%を切った背景に、有権者が投票先を選ぶ手がかりが乏しいことがあるのではないか。各政党のラベル(名前)は本来、投票の有力な手がかりになるはずだ。しかし、野党が非常に弱く分裂しており、野党のラベルは手がかりにならなかったのだろう。
候補者についても、その属性が決定的な手がかりにはなりにくくなっている・・・

・・・他方、障害やLGBT(性的少数者)などの属性が手がかりとして注目される候補も少なくなかった。当選した彼・彼女らが、国会に当事者としての視点を持ち込むことは極めて有意義だ。ただ、マイノリティーの当事者だけがその集団を個別的に代表できるとする発想には注意が必要かもしれない。個人の属性と政策への志向を結びつけるだけでなく、政党という集団と、それが生み出す政策への志向を通じて「多様性」を表現すべきだろう。マイノリティーの代表を選択することだけが「多様性」への配慮だとされると、有権者も戸惑うのではないか・・・

・・・野党にとって安倍首相は打ち勝つべき敵かもしれない。しかし、その反対を意識しすぎて、自らの立ち位置が不明になっていないか。政権がやることは全て悪いとすると、あなたがたが政権を取ったらどうなる、と同じ質問がくる。「モリカケ」に象徴される不透明性など政権の問題はあるが、0か1かの対比ではなく、政権党と野党とを並べて優劣を測る共通の尺度を示せていない・・・

議院内閣制の母国イギリスの混迷

2019年7月24日   岡本全勝

7月22日の日経新聞オピニオン欄、芹川 洋一・論説フェローの「政治はやはり英国に学べ 議院内閣制、反面教師」から。

・・・民主主義のお手本として、党首討論にしても大臣―副大臣―政務官にしても、日本の政治主導のモデルだった。その英国がどうしてこんなに迷走をつづけ、世界で驚き、あきれられているのか。
経済、社会、歴史ともろもろの理由があり、民主主義という制度の根っこの問題もあるのだろう。議院内閣制の運用という観点でみても、国民投票からこれまでのプロセスには多くの教訓があるのは間違いない・・・
・・・一連の流れからみえてきたことが3つあるように思う。制度の運用はいずれも「危険がいっぱい」なのである・・・
として、次の3つを挙げています。
1 は国民投票
2 総選挙
3 解散の制約

イギリスの混迷、そして日本との違いは、政治は制度以上に運用が重要だということを示しています。本文をお読みください。