カテゴリーアーカイブ:行政

7か国財務相会合、対面会議で困難案件に合意

2021年6月12日   岡本全勝

6月9日の読売新聞に「課税合意「サプライズ」法人税最低15% G7財務相、対面で結束」が載っていました。
・・・ロンドンで開催された先進7か国(G7)財務相会合は5日、世界共通の法人税の最低税率や米IT大手などを対象とする「デジタル課税」の導入に向けて具体的な水準で一致した。対面形式の復活やG7の結束を示したい思惑が重なり、「サプライズ」の合意を生んだ。
「歴史的なことでしょうな。つくづくそう思います」。麻生財務相は8日の記者会見で満足そうに振り返った。
G7会合前、米国が法人税の最低税率を「15%以上」と明記することを強く求めたのに対して、議長国の英国は慎重な姿勢を示していた。日本政府内では当初、共同声明に具体的な数字を盛り込むのは難しいとの見方が大勢だった・・・

・・・雰囲気を一変させたのは、約2年ぶりとなる「対面」の会議形式だった。オンライン会合は事務方が仕切った段取りに沿って行われるケースが多く、政治家同士の微妙な駆け引きには向かない。7か国の財務相は今回、顔と顔をつきあわせて個別会談や非公式の意見交換を重ね、急速に相互理解を深める。麻生財務相はG7が結束を示すことの重要性を説いて回った。
「デジタル課税の具体策を明記できれば、英国は『最低税率15%以上』を受け入れるかもしれない」。会議前にあった漠然とした期待が、時間を経るにつれ確かなものに変わっていく。
会合の終盤。英国のスナク財務相が「利害対立はあるが、我々に大事なのはメッセージを出すことだ」と呼びかけると、室内に大きな拍手がわいた・・・

・・・世界では法人税の引き下げ競争が40年近く続き、米調査機関タックス・ファンデーションによると、1980年に40・11%だった世界の平均税率は2020年に23・85%に下がった。税制は工場やオフィスなど物理的拠点を根拠に課税しており、国境を越えてネットビジネスを手がける巨大IT企業に適切に課税できていない。国際的な最低税率の設定とデジタル課税のルール作りは、こうした問題を是正する狙いがある。
ただ、国際的な合意への道のりは険しい。法人税率を低く抑えるなど税制優遇で海外企業を誘致してきた国々が反発している。財務省内では「G7の合意は一里塚」との声がある・・・

「国会」がない国際社会では、合意を得るのが難しいです。この動きが進むことを期待します。日本のマスメディアは、このような国際行政についての報道が少ないですが、もっと伝えてほしいです。
リーマン・ショック後の麻生内閣の国際貢献(IMFへの1千億ドルの拠出)について、官邸の記者会見ではまったく反応がありませんでした。記者クラブにいる政治部記者が、ことの重要性を理解してくれませんでした。担当した浅川・総理秘書官(現アジア銀行総裁)と、がっかりしたことを思い出します。

病児保育

2021年6月11日   岡本全勝

6月4日の読売新聞夕刊に「病児保育ピンチ」という記事が載っていました。
・・・働きに出ている保護者らのために、病気になった子供を一時的に預かる「病児保育」の施設が、苦境に立たされている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って利用者が激減する中、運営の「頼みの綱」となる国や自治体からの補助金も今後、大きく減るとみられるためだ。閉鎖の危機に直面している施設もある・・・

・・東急田園都市線の終点・中央林間駅に近い同施設は、都心に通勤する共働き家庭の利用も多い。開所した2018年度の利用者は108人だったが、19年度には4倍の453人に増えた。20年度には800人程度の利用を見込んでいたが、新型コロナの感染拡大が重なり、1年間でわずか40人と、前年度比で9割減となった。
施設を運営するには、看護師や保育士らの人件費だけでも年間約2600万円かかるというが、コロナ禍による利用者の激減で利用料収入が大きく減った。
さらに、国や自治体からの補助金は利用実績に基づいて算定される。20年度は、利用者が減っても例年並みの補助金が支給される国の「コロナ特例」の措置が実施され、約1000万円の補助金がもらえたが、今年度は適用されず、経営への不安は拭えない・・・

両親が働きに出て、あるいは母子家庭などで母親が働きに出ると、保育園や学童保育は必須です。さらにここで取り上げられている病気の子どもは、より支援が必要です。
医療の提供だけでは不十分で、この子供らの世話が行政の責務でなく、民間に委ねられていることもおかしな話です。

個人の尊重、個人データの保護と利活用

2021年6月10日   岡本全勝

6月2日の朝日新聞オピニオン欄「DX(デジタル化による改革)なんのため?」、曽我部真裕・京都大学教授の発言「利活用で個人の尊重を」から。

・・・民間ではDXが進み、行動履歴までもがデジタル技術で個人データとして記録され、やり取りされています。
なぜ行政のDXだけがこんなに遅れたのか。理由は、個人データの「利活用」よりも「保護」に長らく重きが置かれてきた歴史にあります。
プライバシーという権利は日本国憲法には明記されていませんが、13条が定める「個人の尊重」から導き出されて保護されてきました。データの「利活用」は、情報の漏洩や乱用などは13条で保障されるプライバシー権の侵害になります。さらに、個人のデータがプロファイリングなどのデジタル技術で分析され、意思や選択を操作されることは、「個人の尊重」を脅かすとみなされてきたのです。

しかし、コロナ禍は、行政が個人データを適切に扱えないことが、別な意味で「個人の尊重」という価値を損ねていることをあぶり出しました。この苦い経験を踏まえてこれからの行政は「個人の尊重」を保障するために、データの積極的な利活用に踏み切るべきではないでしょうか。
その際、自分のデータがどこでどのように使われているかを知ることができる透明性の高い仕組みにすることが不可欠です。また、霞が関のシステム改革や民間人材の登用も必要になるでしょう・・・

子ども政策、貧困以外の困難

2021年6月9日   岡本全勝

子ども政策、予算の効果」の続きです。中室牧子・慶応義塾大学教授の「縦割りの排除、自治体でも」には、次のような指摘もあります。

・・・子供政策での行政の縦割りの弊害とはどのようなものか。筆者らの研究グループは認定NPO法人カタリバとともに、コロナ禍の下での経済困窮世帯の子供たちを調査した。経済困窮以外の課題を同時に抱える世帯は、実に全体の40.2%にものぼる。経済困窮に加え、19%が発達障害、7%が身体障害があり、13%が不登校になっている。
このデータを基に、経済困窮のみの世帯の子供と、それ以外の課題も抱える子供の学力や非認知能力を比較した(図参照)。経済困窮以外にも重層的に課題を抱える子供は、問題行動が顕著で、不安感が強く、学力や非認知能力など人的資本の形成でも著しく不利な状況に置かれている。

しかし行政の視点でみると、発達障害や身体障害は健康・保健関連部署、不登校は教育委員会、経済困窮は福祉関連部署の担当だ。行政の縦割りにより、保健・教育・福祉の所管横断的な情報共有が妨げられ、重層的な課題を抱える子供に対する支援が十分になされているとはいえない。
保健・福祉・教育の所管横断的な情報共有は、虐待や自殺など、放置すれば生命の危機に及ぶ異変を速やかに察知するうえでも重要だ。虐待や自殺などのリスクにさらされている子供に対しては、問題が生じた後で「介入」するよりも「予防」する効果の方が大きいことを示す研究は多い・・・
詳しくは原文をお読みください。

子ども政策、予算の効果

2021年6月8日   岡本全勝

6月1日の日経新聞経済教室「子ども庁、何を優先すべきか」、中室牧子・慶応義塾大学教授の「縦割りの排除、自治体でも」から。

・・・社会保険、教育、職業訓練、現金給付など公共政策は多岐にわたる。だが過去50年の米国の133の公共政策を評価した最新の論文によれば、最も費用対効果が高いのは子供の教育と健康への投資だという。子供の教育や健康に投資した政策の多くは、子供が大人になった後の税収の増加や社会保障費の削減により、初期の支出を回収できていることも示されている。
とりわけ幼少期の教育投資の収益率が高いことを示す研究は多いが、あまり知られていない。英国での研究によると、子供をもつ親は、子供の学齢が高いほど教育の費用対効果は高く、幼少期の投資とその後の投資は補完関係ではなく代替関係だと認識している。
そして驚くべきことに、親だけでなく幼稚園教諭・保育士・小学校教員ですら、幼少期よりももっと学齢の高い教育段階の方が重要だと考えている・・・幼少期の教育投資の効果が特に大きいのは、貧困世帯の子供たちだ。このためノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン米シカゴ大教授は、貧困の世代間連鎖を食い止めるには、所得の再分配よりも、不利な状況にある子供の幼少期の生活を改善する「事前分配」の方が経済効率がよいと主張する・・・
この項続く