カテゴリーアーカイブ:行政

執筆者たちが語る『現代官僚制の解剖』

2022年10月13日   岡本全勝

先に紹介した『現代官僚制の解剖』について、執筆者が座談会で語っておられます。
鹿毛利枝子・北村亘・青木栄一・砂原庸介「『現代官僚制の解剖』刊行に寄せて――官僚について何がわかり何がわからなかったのか」(有斐閣「書斎の窓」9月号、4ページから28ページ)。

執筆者たちが何を意図したか、何に苦労したか、何ができなかったか、今後の課題は何かを語っておられます。また、鹿毛利枝子・東大教授が執筆者でない立場で、意見を述べておられます。
調査に協力した立場として、不十分だった点については忸怩たる思いがあります。今後、内閣人事局が参画するなりして、改善して欲しいです。

25ページにわたる長文です。ご関心ある方は、お読みください。インターネットで読むことができるのは、便利です。

チャイルドペナルティー

2022年10月8日   岡本全勝

9月19日の日経新聞「出産・子育て不利にしない チャイルドペナルティーどう防ぐ」から。

チャイルドペナルティー問題は米プリンストン大学のヘンリック・クレベン教授らが19年に提起した。学歴等の性差が解消された先進国でも、なぜ格差が残っているのか。各国の統計データを分析し、出産するとあたかも罰せられるかのように収入が下落する状況が元凶だと突きとめた。

日本の状況は財務省財務総合政策研究所の古村典洋さんが厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」を基に試算した。出産1年前の収入を基準とし、出産1年後は67.8%も減る。出産退職して収入がゼロになる人も含むので減少幅は大きめに出る。
ただ日本は他国に比べ落ち込みが大きく、その後の回復も緩やかだ。「日本では長時間労働ができないと評価されにくい。子育てに時間を割かざるを得ない女性は昇進・昇給で不利になる」と古村さんは指摘する。

ポピュリズムは進化する

2022年10月7日   岡本全勝

9月24日の日経新聞、小竹洋之コメンテーターの「ポピュリズムは進化する 政権奪取へ異端の印象薄めに」から。

米ギャラップによると、世界の人々が訴える怒りや悲しみなどの強さを示す指数(0~100)は、2021年に過去最高の33を記録した。グローバル化やデジタル化の痛みを感じる庶民が、新型コロナウイルス禍やインフレにも苦しみ、扇動的な政党になびきやすくなっているのは事実だ。
ならば左派ではなく右派のポピュリズムが、欧米で目立つのはなぜか。水島氏は「コロナ禍とウクライナ戦争は、人々の命や安全、暮らしを守る国民国家の重要性を再認識させた。その流れにのった現象だろう」と話す。
同志社大の吉田徹教授にも尋ねた。「右派は現状の維持、左派は未来に向けた変革に軸足を置く。将来不安がはびこる先進国では『何かを得る』という左派の主張より『何も失わない。喪失したものを取り戻す』という右派の主張が訴求力を持つのかもしれない」

見逃せないのはポピュリズムの進化だ。「スウェーデン第一」を標榜するオーケソン氏は、治安の強化や移民の制限を唱える一方で、ネオナチの流れをくむSDの主張やイメージを和らげる努力を重ねてきた。スウェーデンの欧州連合(EU)離脱をもはや求めず、北大西洋条約機構(NATO)への加盟にも理解を示す。
FDI(イタリアの同胞)のメローニ氏も戦略は同じである。移民制限の立場や伝統的な家族観を維持しつつ、ファシズムに近いという印象を薄めることに腐心し、EUとの協調やロシアへの厳しい制裁を貫いたドラギ首相の路線踏襲も掲げる。
EUの世論調査によると、EUを信頼する域内の人々は22年夏に49%を占め、リーマン・ショック前の08年春に次ぐ高水準にある。様々な危機を経て風向きを変えた世論に合わせ、ポピュリストも政権入りをにらんで現実的な対応を探り始めたのではないか。

長屋聡執筆「第二次臨調以降の行政改革施策」

2022年10月5日   岡本全勝

季刊『行政管理研究』9月号に、長屋聡・前総務省総務審議官が「第二次臨調以降の行政改革施策を振り返って(その1)」を書いています。長屋君は行政管理庁に就職して以来、行政改革や行政管理に携わってきました。

第二次臨調以降の40年間の行革の全体像が分析されています。中曽根行革、橋本行革などの歴史を振り返るとともに、なぜそれが求められたか、どのようにして進んだか、なぜ成果を上げたかが分析されています。また審議会方式で改革を進める手法についても評価が書かれています。良くできています。詳細な年表もついています。

私にとっては同時代史ですが、若い人にとっては知らないことが多いでしょう。1980年からの20年間は、日本にとって行革の時代でした。戦後の経済発展を成し遂げ、曲がり角にあった政治と行政を変革する必要があったのです。それを担ったのが、行政改革でした。その手法、すなわち国会や政党、内閣ではなく、内閣が委嘱した審議会が方向性を出すというところに、日本政治の特徴も現れていました。そして、紆余曲折はありましたが、かなりの部分が提言の方向で実現しました。私はそのうち、中央省庁改革に参画し、地方分権改革にも少々関わりました。

私の連載「公共を創る」では、政府の大きさを議論していて、次に行政改革を論じる予定です。私もいくつか書いたものがあるのですが、この40年間の全体像を振り返った論文が見当たらないので、困っていたところです。長屋論文を参考にさせてもらいます。次の号も、期待しています。「その2

ところで、季刊『行政管理研究』は日本の行政を論じる数少ない媒体です。地方行政には、いくつもの学会や雑誌があります。また、各省・各局も専門誌を持っています。ところが、国家行政を論じる場はないのです。例えば人事管理についても、そのような場はありません。購読者が少なく、市場がなり立たないこともあるのでしょう。で、私の「公共を創る」も、専門誌「地方行政」に連載しています。

原子力規制委員会の10年

2022年10月5日   岡本全勝

9月20日の朝日新聞「信頼への道、原子力規制委10年」、田中俊一・初代規制委員長の発言から。

――規制委は当初の狙い通りの姿になりましたか。
「発足は原発事故の翌年で、当時は原子力に対する社会の信頼がゼロでした。どう安全規制の信頼を取り戻すか。そこで打ち出したのが透明性です。審査会合をオープンにして中身をさらけ出した。今では信頼はある程度、得られたんじゃないでしょうか。でも、推進側が全然ダメですね」

――どこがダメですか。
「原子力の利用について国民は納得していませんよね。日本でどうして原子力エネルギーが要るのか、国民に考えてもらう必要があるわけですよ。特に、温暖化とかロシアの(ウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機の)問題がある今は、議論する絶好のチャンス。それなのに、政治家も行政も、きちんと議論をやろうという人がいません」
「電力不足だから審査を迅速化しろと言うけど、規制委が許可した原発17基のうち7基は再稼働していません。まず、それを動かせば間に合うはず。規制委が許可したって原発は動かないんです。社会が受け入れられるような議論を政治がやっていないからです」

――厳しい審査をしても、新規制基準で必要な安全対策がそろえば、最後は認めざるをえないようにも見えます。
「規制委は原子炉を止めるところじゃないんです。止めるなら規制なんか要らない。原発を利用する上で大きな事故を起こさないようにするのが規制委です」