官僚意識調査「現代官僚制の解剖」

北村亘編『現代官僚制の解剖 意識調査から見た省庁再編20年後の行政』(2022年、有斐閣)が出版されました。宣伝文には、次のように書かれています。
「政治主導の強化の中で、現代日本の官僚たちは、日常業務や組織運営、そして政治や政策課題に対してどのような認識を抱いているのか。約20年ぶりに実施された包括的な官僚意識調査から多面的に分析する。」
このホームページでも紹介した、北村亘先生を代表とする2019年に実施された官僚意識調査に基づく官僚分析です。調査については、先生の論文「2019年官僚意識調査基礎集計」(「阪大法学」2020年3月)をご覧ください。

かつては「日本の官僚は優秀」との評価があり、官僚たちも自信を持って仕事をしていました。しかし1990年代以降、政治主導が進み、政治家との関係が変わりました。省庁再編も行われました。それからもう20年も経ちます。他方で官僚の評価が下がって志望者が減るなど、官僚の生態も大きく変わりました。
官僚を取り巻く環境の変化(社会の課題、政治家との関係など)とともに、官僚たちがどのように考えているかは、官僚制を機能させるために重要です。

調査自体も貴重なのですが、この本は調査結果を集計するのではなく、次のような切り口で、現在の官僚たちの考え方を分析します。政治家との関係、官邸主導、政策実施手法、国地方関係、新しい技術、組織内リーダーシップ、やる気、仕事と生活の両立などです。目次を見てください。何が官僚制の機能不全を生んでいるのか、また再生を阻んでいるのか。大きな足がかりとなります。
この調査と本の価値は大きいです。官僚だけでなく、政府の幹部、政治家、マスメディア(政治部)にも読んでほしい論文集です。
このような調査を雇い主である内閣が行わず、研究者に委ねていることが問題です。次回は、内閣人事局と一緒に実施してほしいです。(これは、「誰が官僚制を再生させるか、その所在が不明だ」という問題につながります。この点については、別途書きましょう。)「官僚意識調査」「北村亘先生「2019年官僚意識調査基礎集計」

本の「はじめに」で、私のことも紹介していただきました。
「テレビコマーシャルよろしく『24時間働けますか』と言いながら『5時から男』として夕方に宴席に行っていた不思議」という私の発言が、「働き方を具体的に考える際には実は大きなヒントを与えていただいた」とです。苦笑。
小西砂千夫著『地方財政学』でも、私との対談がきっかけだったと、書いてもらいました。そのような「触媒」になったとするなら、うれしいです。