カテゴリーアーカイブ:行政

学童保育の重要性

2023年2月10日   岡本全勝

1月30日の読売新聞が、「学童保育の課題 学童 減らない待機児童 1万5000人 居場所作り不可欠」を書いていました。

・・・共働き家庭などの小学生が、放課後の時間を過ごす学童保育(放課後児童クラブ)。新型コロナウイルス下で減った待機児童の数が、経済社会活動が元に戻りつつある中で、再び増加している。自治体は待機児童解消に向けた取り組みを進めている。

「保育園落ちた」という匿名のブログが話題になってから7年。近年は、公立の学童保育の申し込み結果が出る2月頃になると、SNSに「#学童落ちた」の言葉が並ぶ。
フルタイムで勤務する女性の増加などから学童へのニーズが高まっている一方で、待機児童数は高止まりしている。保護者の勤務状況や子どもの学年などの状況から預かりの可否が決められることも多く、枠が足りずに利用できない人もいる・・・

・・・待機児童の解消には、受け皿拡大とともに専門性のある職員の確保も不可欠だ。しかし待遇の低さなどで離職が後を絶たないのが現状だ。
学童の職員には、保育士や社会福祉士の資格があるなどの条件を満たし、都道府県の研修を受けた「放課後児童支援員」がいるが、基準を満たした職員を確保するのは難しく、学生アルバイトなど非常勤も多い。
全国学童保育連絡協議会が2014年に実施した、学童の正規・非正規の職員を対象とした実態調査によると、週5日以上勤務する職員の46.2%が年収150万円未満だった。半数は勤続年数が1〜3年で、安定した生活を見込めずに離職するケースも多いと指摘されている・・・

新型コロナの感染が広がった頃、保育園、幼稚園、小学校とともに、学童保育が閉鎖され、共働きや一人親が働きに行けなくなるという事態が生じました。学童も子育て中の親にとっては必須の施設です。ところが、保育園や学校に比べ、学童保育は法律や制度の整備が不十分です。
児童福祉法で、市町村の実施責任を定めているのみで、詳細は設備運営基準(や運営指針)が国による参酌基準として定められ、具体的には市町村条例等に委ねられているようです。保育園や幼稚園並みの位置づけが必要でしょう。

現代の国土計画

2023年2月8日   岡本全勝

1月30日の日経新聞夕刊に、斉藤徹弥・編集委員が「令和の国土計画、今夏に策定 実効ある土地の管理体制を」を書いておられました。

・・・令和に入って初となる、国土計画の策定に向けた議論が佳境を迎えています。人口減少で必要とされない土地は増えており、それをどう管理するかは難しい課題です。かつて不要論もささやかれた国土計画が実効ある形に「復活」できるか。今夏のとりまとめ内容が注目されます。
日本で人が住んでいる土地は国土面積の半分ほどです。人口減少が進む2050年にはその2割が無人になり、3割は人口が半減すると推計されています。
日本は土地の所有権が強く、その権利には放置する自由もあるとされました。しかし、放置されて荒れた土地が周辺に悪影響をもたらすことも増えています。
こうした土地をきちんと管理するため、国は制度を見直し、適正な管理は所有者の責務としました。それでも管理が不十分な土地には、地域や自治体による改善を後押しする制度が相次いで動き出しています・・・

・・・国土計画は1962年の第1次全国総合開発計画からおおむね10年ごとにつくり、今回が8度目です。
当初は「均衡ある発展」を掲げ、地方にインフラを整備し企業誘致を進めました。21世紀に入ると都市の人口比率の高まりなどから都市再生が重視され「均衡ある発展」は合意を得にくくなります。国土計画は曖昧になり、不要論もささやかれました。
しかし近年、国土計画は世界的に見直されつつあります。望ましい将来像を定め、長期計画に基づいて取り組む国土計画の手法が、持続可能な開発目標(SDGs)や脱炭素などに広がっているためです・・・
電子版では、さらに詳しくドイツの例なども説明されています。

昭和の後半、経済成長期には、国土計画は大きな意義を持っていました。産業が集積した太平洋ベルト地帯と取り残されたそのほかの地域との格差が広がったのです。そこで「均衡ある国土の発展」が掲げられ、国土庁という役所も作られました。「開発計画」で、インフラ整備と産業誘致が中心でした。その手法が行き詰まり、国土計画の意義は低下したようです。他方で、東京一極集中は止まらず、地方創生などが大きな政策課題になっています。
新しい計画は土地の管理に重点を置くようですが、そのようなハードとともに、人の暮らしというソフト面を入れた計画や指針を作ることはできないでしょうか。

中国の「地方分権的全体主義」

2023年2月7日   岡本全勝

1月27日の日経新聞オピニオン欄、呉軍華・日本総合研究所上席理事の「限界を迎えた中国の「地方分権的全体主義」」が、切れ味鋭かったです。

・・・米スタンフォード大学の許成鋼客員研究員は、この制度を「地方分権的全体主義」と定義する。中国共産党は50年代初期、政治と経済を含むあらゆる分野の支配権を中央に集中させる全体主義のシステムをソ連(当時)から移植した。だが、50年代半ば以降、中国は「郡県制」という伝統的な統治手法を加え、前述のシステムに改めた。
イデオロギーや個人崇拝で最高指導者の絶対的権威を確立する一方、行政と経済政策の立案・運営の権限のほとんどを、最高指導者が人事権を持つ地方の指導者に与える。この結果、最高指導者の権力をけん制する力を最も持ちうる中央官庁は無力化し、中国共産党はソ連よりも強固な一極集中の統治体制をつくり上げるに至った。
この制度で、地方の指導者は最高指導者の意向をくみ取った大胆な実験を競い、地方間で激しい競争が繰り広げられた。しかし、広大な国土と世界最大の人口を持つ国情のためか、地方と最高指導者の間での正しくタイムリーな情報伝達は難しく、権力のチェック機能はほとんど働かなかったようだ。結果的に「鶴の一声」は往々にして極端な結末を招いてしまった・・(1958年に始まった大躍進、1966~76年の文化大革命、最近のゼロコロナ)

・・・もっとも、この制度が生むのはネガティブな結果だけではない。「改革開放」以降の中国経済が、社会主義の仲間であった国々を凌駕する成長パフォーマンスを実現したのは、この制度によるところが大きいというべきであろう。経済成長を巡る地方間の激しい競争が、民間セクターの成長を可能にし、政治改革を伴わなくても中国は高い成長を実現した。
改めて強調するまでもないが、こうした競争は環境破壊や所得格差の拡大、不動産バブルといった問題ももたらした。明らかに、この制度のポジティブな効用はすでに限界を迎えたわけだ。
ゼロコロナ政策からの転換を機に、中国経済への期待が高まっている。しかし、目下の中国経済の減速の背景に、「地方分権的全体主義」に起因する構造的問題が大きく横たわっていることを忘れてはならない。筆者は、このような構造問題を抜本的に解決して初めて、中国経済に明るい未来が訪れると考える。

10代に教える社会保障の利用法

2023年2月6日   岡本全勝

1月27日の朝日新聞生活面に「困った時の社会保障、10代目線で紹介 社会福祉士・横山北斗さんが本出版」が載っていました。

・・・人生のピンチに使える公的な支援制度は、実はたくさんある。でも、その存在を知らなければ、利用できない。10代の若者に社会保障をもっと知ってもらいたい。そんな願いを込めた本が出版された・・・

・・・「ケガで仕事を休まなくてはならず、医療費と生活費に困った20代のユウジ」
「高校生で妊娠し、生活に困ったマミ」
「母は昼夜のダブルワーク、祖母と弟の世話をしなければならない中学生のサクラ」
中心になるのは、様々な事情で苦境に陥った人のストーリーだ。それぞれが、医療支援や子育て支援などの社会保障制度につながり、暮らしを安定させていく。その過程が、若い世代が感情移入できるような登場人物の目線で描かれる。各自のストーリーに関わる社会保障の制度や相談窓口の情報が、末尾に一覧で示されている。

「社会保障というと高齢者の医療・介護・年金というイメージで、10代には遠いものと思いがち。でも、どんな年代も利用する可能性があります。社会保障を知ることは自分だけでなく、身近な誰かを支えることにもつながる。中学生や高校生が社会保障を学ぶ機会が必要です」・・・

このホームページや拙著『新地方自治入門』で、スウェーデンの社会の教科書を紹介しました。失敗を犯した子供が立ち直る過程を教えること、社会保障などを教えていることです。これまでの日本の教育は、勉強して立派な大人になることを教えましたが、失敗した場合や社会保障を受ける方法などについては触れてこなかったのです。「坂の上の雲」を目指すことを教え、「坂の下の影」は教えなかったのです。「失敗した場合を教える教育、スウェーデンの中学教科書

新型コロナ、8か月間で通知1500件

2023年2月5日   岡本全勝

新型コロナウイルス感染症が拡大した当初に、各府省から自治体あてに膨大な数の通知や連絡が出されました。私も2020年の春に、ある市長から、両手を30センチくらい広げて「こんなにたくさん来ても、読まないわ」と苦情を言われたことがありました。

専門誌『地方行政』の1月23日号に、高坂晶子・日本総合研究所主任研究員が、神戸市が8か月間に受け取った国からのコロナ関連の通知が、約1500件だったと書いています。