カテゴリーアーカイブ:経済

「金融政策の効果は金融資産価格の上昇だけだった」

2019年4月24日   岡本全勝

4月19日の日経新聞オピニオン欄、ファイナンシャルタイムズのラナ・フォルーハーさん「金融政策の限界直視せよ」から。

・・・トランプ氏は、FRBを自分の言うことをすぐ聞く取り巻きで埋め尽くすことしか考えていないが、重要な真実に光を当ててもいる。金融政策はこの10年、実体経済よりも市場にばかりプラスに働く面が大きかったという真実だ。
以下の数字を見てほしい。米国の時間当たりの実質賃金は10年の年初以降6%しか上昇していないが、実質的な不動産価格は20%以上、株式市場の時価総額(インフレ調整済み)は倍増した。家計所得は雇用が拡大したおかげで賃金より大きく伸び、10~17年に10%増えたが、資産価格の上昇には及ばない。一方、米国の格差拡大は07~16年、過去最高を記録した。

企業債務の国内総生産(GDP)比率が過去最高水準に達していることを含め、こうした事態はFRBが様々な努力を重ねる中で、意図せずして招いた結果だ。FRBは資産価格を押し上げることはできたが、経済成長を阻む主な問題を解決することはできなかった。これらはカネの不足から生じるものではなく、金融政策では解決できない深い課題を背負った問題だからだ。労働人口の高齢化や米国内の人の移動の減少、大企業による寡占化の進展などにより、求められているスキルと求職者のスキルにミスマッチが生じている。また技術革新が次々に起きることに労働市場が対応し切れていないといった問題に根ざしている。

これらの問題は、低金利や量的緩和だけでは解決できない。官僚ではなく、選挙で選ばれた行政の責任者たちが決める財政政策が必要ということだ。だが、今のような二極化した議会を抱えていては、政府がそうした政策を実現することはできない。
この難問には米国だけでなく、欧州も直面している。欧州では、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和が経済のてこ入れにどれほど効果を上げたのか、そしてユーロ圏全体で緊縮財政を緩めた場合に得られるメリットを巡って、激しい議論が戦わされている・・・

コンビニの進化と役割

2019年4月23日   岡本全勝

コンビニの24時間営業の見直しが問題になっています。マスコミもたくさん取り上げています。4月16日の日経新聞オピニオン欄、中村直文・編集委員の「コンビニ、脱24時間の幸運 しくじり生かすとき」が、勉強になりました。

・・・「経営学の父」ともいわれたピーター・ドラッカー氏は1980年代から90年代にかけて何度かイトーヨーカ堂本社を訪れ、当時の伊藤雅俊社長らと交流を深めた。90年の「"新しい現実"の到来」と題した講演ではこんな言葉を贈った。「ヨーカ堂グループに敬服する点は、小売業の主流から落ちこぼれるはずだった個人的な商店に、商売の主流に乗る方法を提示したことです。これは偉大な社会革命といってよいでしょう」・・・

・・・規制強化を逆手にとって誕生したコンビニだが、90年代からは規制緩和が追い風になる。代表的なのが酒類やコメ販売だ。大型店やチェーンストアで売りやすくなると、多くの酒販店や米穀店がコンビニオーナーに転身。コンビニは担い手と買い手を引き寄せた。90年代末には栄養ドリンクが加わり、02年銀行法改正でセブン銀行がスタート。まさにドラッカー氏が「コンビニが商店を生まれ変わらせた」と見た世界の到来だ。
もちろん経済・社会のニーズも後押しした。今ではおなじみの電気やガス代の支払い、そして80年代に一気に広がる24時間営業だ。ニッポン株式会社は絶好調で、栄養ドリンク「リゲイン」のCM通り「24時間、戦えますか」状態。ここでコンビニは弁当、総菜など主力商品を柱とした24時間供給体制を完成させた・・・

そうだったんですね。この仕組みがなければ、個人商店は廃業し、町から商店がなくなったかもしれません。スーパーマーケットは残ったでしょうが、大型化し、遠くになったでしょう。
いまや、コンビニがない暮らしは想像できません。

このホームページでも、コンビニが被災地での重要なインフラであること「コンビニは災害支援インフラ」や、復興なった被災地でコンビニばかりが目立つこと「個人商店の消滅、コンビニの氾濫」を取り上げました。

AIは人に取って代わるか

2019年4月11日   岡本全勝

4月7日の朝日新聞経済面「未来からの挑戦 接客ロボ「大量解雇」の誤算」から。

・・・名物の「コンシェルジュ」は、わずか半年でクビになった。
長崎県佐世保市のテーマパーク、ハウステンボスの隣にある「変なホテル」。フロントでは恐竜や女性のロボットが出迎えてくれる。2015年にオープンし、「ロボットが初めて従業員として働いたホテル」とギネス世界記録に認定された。そのロボットホテルで、「リストラ」の嵐が吹いている・・・

・・・17年のピーク時にホテル全体で27種、243体いたロボットたちは現在、16種128体と半分近くに減った。いずれはロボットの種類を1ケタにまで減らす。
「人手に頼らないホテルをめざしたのに、ロボットの面倒をみるために人手がかかってしまった」。大江岳世志・総支配人(35)は振り返る。当初の約30人から8人に減らした従業員が数時間かけて充電したり、インターネットにつないだりと、ロボットを働かせるために追われた・・・
・・・「ロボットは万能ではない。ただ仕事を一部任せれば人の負担は少し減る。どこまで任せるのか。丸3年やってみて、その切り分けが大切だと気がついた」と大江さんは話す・・・
この項続く

便益と隠れた費用

2019年4月11日   岡本全勝

4月6日の朝日新聞オピニオン欄、安田陽さんの「再生エネの出力抑制、長い目で見ると得」から。本論ではないか所を紹介します。

・・・そもそも、なぜ再エネを入れるのでしょうか。それを考えるうえで、どうしても使いたい言葉が二つあります。「便益」と「隠れた費用」です。便益は費用と対になる言葉で、国民全体、地球市民全体が享受できるメリットのことです。特定企業の利益とは違います。隠れた費用は、化石燃料による大気汚染や地球温暖化、原発の事故対策コストなど、これまで十分考慮されてこなかった費用です。

これまで安いとされてきた石炭火力発電や原発に世界的にブレーキがかかっているのは、隠れた費用が本当は大きいという認識が広がったからです。隠れた費用の少ない再エネが、多い既存電源に取って代われば、社会的便益が大きい。だから各国は導入を促す政策をとっているのですが、日本ではそうした数字に基づく議論が乏しく、好き嫌いによるいがみ合いになってしまいがちです・・・

優位に立つ地理的条件?

2019年4月8日   岡本全勝

世界史の新常識』(2019年、文春新書)が面白かったです。18人の碩学が、それぞれのテーマごとに解説した文章を集めたものです。
・古代ギリシアはペルシア帝国に操られていた
・ローマ帝国を滅ぼした「難民」と「格差」
・明を揺るがした日本の火縄銃
・産業革命がイギリス料理をまずくした
など、「へえ」と思うような内容、肩の凝らない話が並んでいます。

ところで、P131に、戦国時代に日本でなぜ鉄砲が急速に普及したかが、解説されています。
その理由の1つに、
火山国である日本では、火薬の原料になる硫黄が豊富に産出したことと、
同じく原料になる硝石は、日本では産出しないが、交易を通じて安定的に輸入できたことが、挙げられています。

???
面白いですね。豊富な原料とない原料。それがともに、普及を支えるのです。
「資源が豊かなこと」が産業発達の要素と思いますが、そうでもありません。戦後日本は、石油、鉄鉱石をはじめ資源が乏しい中で、工業発展に成功しました。そのような自然条件でなく、人間の意欲と努力が産業を興すことが、よくわかります。