カテゴリーアーカイブ:経済

企業のお国柄、市場中心型と組織関係重視型と

2019年12月20日   岡本全勝

12月17日の日経新聞経済教室、「脱・株主至上主義の行方(中) 」広田真一・早稲田大学教授の「資本主義・企業の多様性重視」でした。
そこに、次のような記述があります。

・・・社会経済学者のピーター・ホール氏、デビッド・ソスキス氏らは、世界の資本主義は「自由な市場経済(LME=Liberal Market Economies)」と「調整された市場経済(CME=Coordinated Market Economies)」の2種類に分かれると主張する。この見方は「資本主義の多様性」と呼ばれる。

LMEの国とは、経済・ビジネス活動が市場での取引を中心に行われる国だ。金融取引の面では発達した株式市場があり、労使関係は契約ベースの労働市場で特徴づけられる。政府の経済への介入は少なく、資本の配分による経済的な効率性が重視される。一般に個人主義的な文化を持つ。代表的なのは米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどだ。
企業には「株主の利益」を最大化することが期待され、株主の権利を保護する法制度が整備されている。企業のパフォーマンスも短期的利益や株式価値で測られる傾向が強い。その企業観は標準的な経済学やコーポレートファイナンスの教科書に出てくる企業像(利潤最大化、株主価値最大化の企業)にぴったり合う。

一方、CMEの国とは、組織・ネットワークを生かした形で経済・ビジネス活動が行われる国だ。金融では銀行が中心となり、労働に関しては共同体的労使関係が特徴だ。政府の経済への介入の程度が高く、社会での平等性が重視され、共同体主義的な文化を持つ。代表的なのはドイツ、フランス、オランダ、オーストリア、スイス、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、日本などだ・・・

電子立国からの転落

2019年11月30日   岡本全勝

11月29日の各紙が、パナソニックが半導体事業から撤退することを伝えていました。台湾のメーカーに売却するそうです。
半導体はかつて、電子機器類の基本的部品として「産業の米」と呼ばれていました。1980年代には、日本が世界の生産量の半分を占め、「電子立国」と高く評価されました。しかしその後、アジア各国の追い上げに、急速に地位を落としました。

朝日新聞の記事に着いているグラフが分かりやすいです。ところが、このグラフでは、アメリカはシェアを減らしていないのです。
世界一と呼ばれた日本の電子産業は、何を誤ったのでしょうか。

ある人に聞いたら、次のような理由でした。
1980年代まで、日本がシェアを増やし、その分アメリカが減らします。まだアジア各国は、出てきていません。その当時の主たる製品は、メモリ半導体でした。この分野では、1990年以降、アジアが日本のシェアを奪います。
他方で、新しくシステムLSIが出てきます。これはメモリが単に情報を備蓄するだけの容器に対して、情報を加工、処理する機能を持った「頭脳」です。アメリカは、このより高度な分野で生き残ります。日本は旧来型製品で後発国にシェアを奪われ、新製品に進出できなかったのです。
これはまた、時代が、モノづくりから新しいことを考えることへ変わっているのに、その流れに乗ることができなかった一つの例とも言えます。

給料、悪平等からの脱却

2019年11月8日   岡本全勝

11月5日の日経新聞「迫真 IT人材争奪戦 年収3000万円の衝撃」から。

・・・メーカーから小売りまで様々な企業によるIT人材の奪い合いが、終身雇用や報酬制度まで変えつつある。
「会社は本気で変わろうとしている」。そんな思いを胸に川上雄也(33)は英NTTの関連会社でクラウド開発に打ち込む。NTTコミュニケーションズの技術者だったが、管理職になり現場を離れる将来に幻滅し、3月に退職しようとした。
しかし最先端の現場にいながら厚待遇も権限も得られる人事制度ができると慰留された。今は給与も3割増しの1千万円超だ。高度技術者だと認められれば、年収は最高で3千万円になる。
新卒を大量採用して手厚く育てるNTTグループは、IT人材の供給源だ。NTT社長の澤田純(64)は「研究開発人材は35歳までに3割がGAFAなどに引き抜かれる」と打ち明ける。経済産業省によると米国ではIT人材の平均年収のピークは30代で1200万円超だが、日本では30代は520万円程度だ。

「データが3千万円まで引き上げるらしいぞ」。18年末、NTTデータの新たな人事制度を報じるニュースが流れると、ソニー本社は揺れた。最も大きな危機感を抱いたのは人事部門だった。
新卒に月40万円を払うという中国・華為技術(ファーウェイ)の発表があったばかり。シニアゼネラルマネジャーの宇野木志郎(47)は「まさに『NTTデータショック』。電機各社の賃金に対するモードが変わった」と振り返る。
宇野木は横並びだった初任給を見直し、すぐさま能力主義に変えた。19年度から優れた人工知能(AI)技術を持つ新卒社員には年130万円上乗せし、同期の平均の2割増の730万円となる。「言い方は悪いが、これまでが悪平等だった」と宇野木は吐露する・・・

・・・ただ、急速な変更は社内でのあつれきも生む。
19年3月までの1年間で、NECグループから約3000人が早期退職などに応じて去った。ある50代男性社員は「大量リストラをして若手には優遇か」と憤る・・・

新卒一括採用、年功序列、終身雇用という「日本型雇用慣行」は、崩れつつあります。世界で戦うためには、必要なことです。
もちろん、仕事の成果以上に給料をもらっていた人には、つらい時代になります。しかし、そのような不合理はもはや維持できません。成果を上げているのに、若いが故に給料が低い人から見ると、「ようやく是正されるか」と喜ばしいことでしょう。

クレジットカードが使えない

2019年11月7日   岡本全勝

サイゼリヤ」ってご存じですか。イタリア料理のファミリーレストランです。全国に千店以上があるようです。

先日、利用しました。お手軽で、高校生も使っているようでした。
問題は、食事を終えて支払いをするときです。なんと、クレジットカードも電子マネーも使えません。
いまどき、全国展開しているこれだけのレストランで、現金が必要とは。驚きました。

最近は、スイカがあれば、ほとんどの支払いができます。よかった、その日は現金を持っていて。若い人には、笑われますかね。
現金を持っていなかったら、どうするのでしょう。皿洗いをして、労働で返すのかな。

消費増税は経済成長停滞とは別

2019年10月23日   岡本全勝

10月20日の読売新聞1面[地球を読む]、吉川洋・立正大学長の「消費税上げ 経済停滞の犯人にあらず」から。

・・・消費税と景気の関係については、問題をきちんと整理する必要がある。
まず、税率が上がる前に買っておこうという「駆け込み需要」と、その後の落ち込みである「反動減」がある。今回は駆け込み需要が比較的小さかったといわれるが、9月末に駅で定期券を買う人の行列ができているのを見た人もいるだろう。しかし、消費のタイミングを増税前に移動させるだけだから、1年を通してみれば総額は変わらず、大きな問題ではない。

消費税率引き上げの影響は、駆け込み需要と反動減にとどまらない。これはまさに増税である以上、家計が自由に使える所得は増税分だけ減少し、結果として消費が減る。
ただし、これは消費の「水準」を落とすだけで、消費の「成長」とは関係ない。もし増税後、落ちた消費が長らく回復しないようなことがあるとしたら、それは消費税に原因があるのではなく、他に理由があると考えなければならない。
消費税(付加価値税)によって景気が長期間低迷し、成長が阻害されるというなら、税率がおおむね20%ほどである欧州連合(EU)諸国の経済は、はるか昔に壊滅しているはずである。しかし、EU諸国は、多くの悩みを抱えながらも、世界を代表する「先進国」であり続けている。

1997年4月、橋本内閣により消費税率は3%から5%に引き上げられた。その後、日本経済は99年にかけて深刻な不況に陥った。主因は大型の金融機関が次々に破綻した金融危機だったが、今でもその時の記憶が一部の人々の間では「消費税のトラウマ」として残っている。2014年4月に安倍政権の下で税率が5%から8%に上がった後も、消費が長く低迷したことから、またもや消費税が犯人とされ、それが今回の過剰ともいえる「対策」を生み出した。だが、消費の伸び悩みは、主に賃金が十分に上がらないことや社会保障の将来不安によって生み出されたものだ。

実際、長期的にみると、消費税率が上がっても実質ベースの消費が増えたことが分かる。税率が3%だった96年度の258兆円から、8%だった昨年度は300兆円と、16%増加した。この間に国内総生産(GDP)は2割近く増えている。長期的に国全体の消費を増大させるのは、経済成長なのである・・・