カテゴリーアーカイブ:経済

企業の無形資産

2020年5月24日   岡本全勝

5月16日の日経新聞オピニオン欄、中山淳史さんの「見えない資産に注目を」から。

・・・米大手IT(情報技術)企業のGAFAにマイクロソフトを加えた「GAFAM」。5社の株式時価総額の合計はコロナ禍を機に東証1部上場企業(2170社)のそれを一気に上回った。
時価総額が5社で最も大きいマイクロソフト(世界では2位)のバランスシート(貸借対照表)を見ると、土地や工場、店舗といった有形資産が約3.9兆円と、日本企業で最も時価総額の大きいトヨタ自動車(世界では40位)の4割ほどにとどまる。
だが、トヨタの7.7倍にも時価総額を拡大できたのはデータやソフトウエア、アルゴリズム、研究開発といった無形資産(約8千億円)やのれん(約4.5兆円)を活用し、企業価値を高めることに成功しているからにほかならない・・・

・・・一方、ヘッジファンド、ハヤテインベストメント(東京・中央)の杉原行洋社長は無形資産と呼びうる対象の範囲に注目する。「従業員のITリテラシーにとどまらず、テレワークを柔軟に受け入れられるかどうか、社会と上手に接点が持てるかどうかなど、企業の組織文化や受容性にまで広がるべきだ」と言う。
問題は、現在の会計制度で文化や体質といった要素をどのようにどこまで認識できるかだろう。同様の問題を抱えているのが実は、国家や地域の経済規模を測る「国内総生産(GDP)」という指標でもある。
GDPでは捕捉し切れなくなったとされるものの一つが世界的に膨張する無形資産の経済規模だ。米研究機関によれば、その6割以上が正確に把握できていない可能性があり、企業の生産性を測る指標とともに時代に合ったものに見直す必要が出てきている。
もう一つ変化を迫られるとすれば、経営者のマインドかもしれない。形のないもの、見えないものにどこまで、どう投資するか。戸惑いは大きいはずだ・・・

ピンチをチャンスに、アイリスオーヤマ

2020年5月11日   岡本全勝

NHKウエッブニュースが、「“コロナ後”の消費者ニーズは アイリスオーヤマ 大山晃弘社長」を載せています。
・・・新型コロナウイルスで大きな危機に直面する日本経済。しかしその危機をチャンスととらえ、新たなビジネスを模索する動きもある。生活用品メーカー「アイリスオーヤマ」。大山晃弘社長は深刻な品不足が続くマスクの国内生産をいち早く決めたほか、“アフターコロナ”を見据えた商品開発を次々と進めようとしている。未曾有のコロナ危機をどう捉え、その先にどんな世界を見据えるのか、奇抜な発想で成長を続ける会社のトップに話を聞く・・・

大山社長
「いまコロナの影響で、売り上げは非常に伸びています。特にマスクを中心とした衛生用品が伸びています。また巣ごもり消費によって、保存のきく食料品、テレワークに使う液晶モニターやシュレッダー、それにパソコン用デスクといったものが非常に伸びています」

新型コロナウイルスの感染拡大で大きく注目されたニュースがある。品不足が続くマスクを国内の工場で生産するという発表だ。
もともと中国の自社工場で生産していたが、6月から宮城県の工場でも生産を始め、7月には月1億5000万枚を供給する。価格が高騰する不織布などの原材料から国内で一貫生産する計画だ。
思い切った決断の背景には、9年前の東日本大震災の経験がある。
大山社長
「東日本大震災のときに企業として大きなダメージを受けました。地域社会も影響を受け、消費構造が大きく変わりました。そのときにわれわれは一気にLEDや食品事業に進出し、個人消費の変動を捉える経営に踏み切りました。その経験が今回生きたと思っています。中国・武漢でコロナウイルスが流行したときに、いち早く中国でマスクの増産を決定し、春節という中国のお休みを全部つぶして一気にマスクの増産を図りました」
大山社長は、中国の工場から寄せられる情報をもとに、国内でもマスクの需要が高まると予測し、増産に必要な行動を直ちに起こした。未曾有の危機では経営判断のスピードが何よりも重要になると強調する。

アイリスオーヤマは中国に9つの自社工場を持ち、家電製品や家具など幅広い商品を生産している。人件費が安いだけでなく、部品の供給などが受けやすいからだ。
しかし大山社長は、その中国にも変化が現れ始めていると指摘。世界のもの作りは徐々に国内回帰が進むとみている。
大山社長
「中国の意味合いは変わってくると思います。もちろん、中国が世界の工場であることは変わらないと思いますが、今回のマスクのように自動化しやすく、生産性が高い商品については、それぞれの国に生産拠点が戻っていくのではないでしょうか。中国は毎年のように人件費などのコストが上がっています。今回のような政策の大きな変更があれば、輸出の規制が大きく変わってしまうリスクもあります。生産設備の効率が非常に上がっているので、中国で製造する意味が薄くなっています。日本やアメリカ、ヨーロッパなどの一大消費地に向けて工場が一部戻っていくと思います」

振り返る「失われた20年」

2020年4月18日   岡本全勝

朝日新聞「変転経済」取材班編「失われた〈20年〉」(2009年、岩波書店)を読みました。
小峰隆夫著『平成の経済』に続いてです。改めて「失われた20年」を勉強しようと有識者に聞いたら、この本を推薦してくれました。この本も、優れものです。

経済復活のために取られた、いくつかの政策や企業の判断が取り上げられ、その経緯と日本社会に及ぼした影響が具体的に描かれています。
朝日新聞の記事を、加筆編集したものです。そのような本は、しばしば記事を集めただけで、筋が通っていないことが多いのですが。この本は、かなり編集しているようです。わかりやすいです。

2009年と10年前のものですが、失われた20年の雰囲気がよく伝わってきます。当時を知っている人は、思い出すために。当時を知らない人は、勉強のために。お勧めします。

小峰隆夫著『平成の経済』

2020年4月14日   岡本全勝

小峰隆夫著『平成の経済』(2019年、東洋経済新報社)を読みました。連載「公共を創る」の執筆に当たって、平成時代の経済をもう一度確認するためにです。読まなければと思いつつ、先延ばししていました。専門家に「どの本がよいですか」と聞いたら、何人かの人が、この本を推薦してくれました。

確かに、よくできています。平成30年間の経済の動きを、いくつかの時期に区切って、その特徴を切り出します。そしてなにより、当時の関係者(政治、行政、産業界、エコノミスト、マスコミ)の意識、取られた政策、その評価が書かれています。これは、官庁エコノミストであった小峰先生でなければ、書くことができなかったでしょう。

平成時代の経済は、バブルで幕を開け、その崩壊、不良債権処理、長引くデフレ、金融危機(金融機関の倒産)、回復、そして世界金融危機(リーマンショック)と、大きな波に翻弄された時代でした。政府も、手をこまねいていたわけではありません。次々と大型の経済対策や、不良債権処理対策、金融危機対策を打ちました。そこには、新しい政治過程も生まれました(与野党協議、財金分離、経済財政諮問会議などなど)。
政策の評価は、なぜそのようなものが採用されたか、なぜその時期になったか、なぜある政策は実行できず、効果が疑問視された政策が実行されたのか。極めて、客観的な評価になっています。

終章は「平成経済から何を学ぶか」と題して、平成の経済政策の失敗から学ぶべき教訓が整理されています。
1 認知が遅れること(バブル、デフレの例)
2 経済学的にあいまいな政策を避けること
3 経済政策を遂行するには、政策立案の分析力とともに実行していく政治力が必要なこと
他に7つの項目が挙げられています。
また、第15章では「これからの経済的課題」として、これまで十分取り組まれなかった課題なども議論されています。

昭和30年(1955年)生まれの私にとって、平成時代は34歳から64歳で、官僚として活動した時代に当たります。ついこの間のことと思えます。しかし、若い人たちにとっては、子供のころのことが多いでしょう。平成元年に20歳だった人は、現在51歳ですから。体験していないこと、学校で教えてもらっていないことが多いと思います。この本は、お勧めです。

近年の経済危機の歴史

2020年3月28日   岡本全勝

3月24日の日経新聞経済教室は、伊藤隆敏・コロンビア大学教授の「コロナ対応で再度強化必要 異次元緩和、8年目へ」でした。
詳しくは原文を読んでいただくとして、そこに、「経済ショック時の株式相場下落率と回復期間」の表がついています。分かりやすいです。
発生年、アメリカでの下落率とその期間、回復に要した期間が載っています。そこを抜粋します。

ブラックマンデー(1987年)、33.5%、3か月。1年11か月
ITバブル崩壊(2000~2002年)、49.1%、2年6か月。7年2か月
世界金融危機(2007~2009年)、56.8%、1年5か月。5年6か月
コロナ・ショック(2020年)、31.9%、1か月。?