カテゴリーアーカイブ:経済

人口は減っているが就業者は増えている2

2025年6月1日   岡本全勝

人口は減っているが就業者は増えている」の続きです。記事では、労働者不足も取り上げられています。そのような報道もたくさんあります。自治体でも、職員不足に悩んでいます。
機械化やITの活用で労働者は減ると思うのですが、なぜ、労働者不足になるのでしょうか。この点についても、識者に聞いてみました。原因は、「職種のミスマッチ」のようです。

人手不足は、典型的には「介護や看護や保育」「建設や運輸や警備」など、「エッセンシャルワーカー」と言われる方々が圧倒的に足りていません。他にも、IT人材など求められる「人財」が足りていないということもあるのですが。
建設「就業」者は、令和4年平均479万人ですが、ピーク時の平成9年から30%減少しています。高齢化にもかかわらず、介護職員は、令和5年度に、調査開始以来初めて減少に転じました。
建設業も無人化施工を進めたり、介護分野も効率化に努めたりしているのですが、この分野は、労働集約型の産業であり、人手不足の解消にはなっていないのです。

製造や建設などの現場が人手不足に苦しむ一方で、事務職は求職者が求人を大きく上回っています。
ここ30年で高卒就職者は7割減ったのに対し、大卒就職者が4割近く増えたことも原因のようです。大卒は先輩たちのように事務職を目指し、高卒が就いたような作業現場を選ばないのです。しかし、求人側はそんなに事務職場が増えるわけではありません。

人口は減っているが就業者は増えている

2025年5月31日   岡本全勝

3月31日の朝日新聞に「働き手、増える高齢者・女性」が載っていました。
・・・15歳以上の働く意思のある人の数を示す「労働力人口」が増え続けています。2024年の平均は6957万人で、7千万人に迫る勢いです。その内容を分析すると、高齢者と女性の働き手が増えていることが浮かび上がってきます・・・

4月14日の日経新聞夕刊に、「人材危機、なぜ起きた」という記事が載っていました。労働者不足についての解説です。
そこには、生産年齢人口は減っているが、就業者数は増えている(労働力調査)とあります。へえ。他方で、働き方改革が進んだとあります(古くてすみません。途中まで調べて放置してあったのです)。

日本の生産年齢人口は減っているのに、就業者数は増えている。これは、高齢者と女性の労働参加によります。ところが、労働力は不足している。なぜか。識者に聞いてみました。
就業者数が増えているのに、労働者の総労働時間数は減っているのです。「就業者数×1人当たり労働時間」という概念は「労働投入量」です。
内閣府の「日本経済レポート(2023年度)」第1節 コロナ禍を経た労働供給の動向2-1-1図(2)によると、1990年を頂点に労働投入量は減ってきています。長時間労働が減った、非正規労働者(短時間労働)が増えたということでしょう。

NTT、世界一の時価総額が6割に

2025年5月31日   岡本全勝

5月9日の日経新聞に「NTT「失われた30年」、元世界一の時価総額4割減」が載っていました。
・・・NTTは、NTTデータグループ(データG)を完全子会社化して海外市場を開拓する。背景にあるのは米IT(情報技術)大手や中国企業にイノベーションで大幅に出遅れた危機感だ。かつて世界トップだった時価総額は4割減り、30年で輝きを失った日本の歩みと重なる。再編で競争力を上げ、挽回を目指す・・・

電電公社が民営化されNTTになったのは1985年です。1989年5月末時点で時価総額は22.4兆円と世界第一位でした。1999年にNTTドコモが始めた携帯電話のインターネット接続サービス「iモード」は革新的でした。しかし海外展開には失敗。通信規格が日本独自だったのでいわゆる「ガラパゴス化」し、アップル社がiPoneを出し、スマートフォンの世界になりました。過去10年でアメリカのテック大手が台頭し、韓国、中国も技術力を高めました。

・・・この間、ドコモを含めたNTTグループは革新技術やサービスを打ち出せなかった。日本市場が一定の規模を持っていたほか、年功序列が根付く日本企業の仕組みがイノベーションを妨げたとの見方がある。時価総額は2025年4月末時点で13兆円と、199位にまで沈んだ・・・

日本を待つ「転落の50年」2

2025年5月10日   岡本全勝

日本を待つ「転落の50年」の続きです。このままでは日本の経済力はさらに低下する予測のあとに、小竹洋之コメンテーターは次のように主張します。

・・・不確実性の高い長期予測に固執するつもりはない。そこに映る課題を直視し、早く手を打てと言いたいだけである。思い知らされるのは、GDP関連の順位の低下が50年以降に加速する姿だ。世界有数の経済大国からの転落が鮮明になり、日本全体に敗北感や諦めムードが広がれば、抜本的な改革への意欲はうせてしまう。

トランプ関税への対応も、転落の50年を回避する成長戦略に沿うものであってほしい。環太平洋経済連携協定(TPP)を含む自由貿易圏の拡大・深化、グローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の発展を見据えた供給網の再編や販路の開拓、AIや脱炭素などへの投資を通じた既存産業の強化と新規産業の育成……。官民がともに知恵を絞り、これらの具体化を急ぐべきだ。

「経済の再建にさほど大きな変化を必要としていないにもかかわらず、指導者らがそれすら起こせないところに悲劇がある」。日本経済の専門家で、近著の邦訳「『失われた30年』に誰がした」を3月に出版した米ジャーナリストのリチャード・カッツ氏は、何よりも政治の不作為を嘆いていた。
その汚名を返上する覚悟はあるのか。トランプ関税を口実に、与野党で人気取りの現金給付や減税を求める声ばかりが先走るのは、無責任のそしりを免れない。
欧州などでは超大国・米国の変質を前提に、経済や安全保障の国家戦略を練り直す動きも見られる。日本の最大の国難は、かくも貧しき政治ではないのか・・・

日本を待つ「転落の50年」

2025年5月8日   岡本全勝

4月19日の日経新聞に、小竹洋之コメンテーターの「日本を待つ「転落の50年」」が載っていました。
・・・トランプ米大統領が連射する高関税砲は、貿易立国・日本の存立基盤を揺るがしかねない。石破茂首相が「国難」と呼ぶのも、決して大げさではあるまい・・・だが政府・与党の安易な対応は目に余る。自動車をはじめとする基幹産業が高関税にさらされ、成長の源泉が侵食されそうな時に、今夏の参院選をにらんだバラマキに精を出す始末である。
それで当座をしのげても、国民の食いぶちを安定的に稼ぎ出せるわけではない。経済対策の的を真の弱者に絞り、むしろ成長戦略に多くの国費を投じるべきだ・・・

・・・振り返れば、日本の経済はまさに国難続きだった。深刻なデフレや少子高齢化などが重なって、バブル崩壊後の「失われた30年」と評される今の苦境がある。
豊かさの指標といわれる人口1人当たりの国内総生産(GDP)で見ると、1990年代以降の日本は、過去300年余りで3度目の深刻な凋落を経験した――。経済産業研究所の深尾京司理事長(一橋大学特命教授)は、自著「世界経済史から見た日本の成長と停滞――1868-2018」にこう記す。
覇権国とのギャップが著しく拡大するのは江戸時代の末期、第2次大戦の前後に続く現象だ。「過去2回は鎖国や戦争の影響で技術の格差が広がった。今回は資本蓄積の遅れや労働の質の低下も目立つ」と深尾氏は話していた。
その日本で賃金と物価の上昇に好循環の兆しが現れ、長期停滞の出口を探り始めたタイミングでの高関税である。経済と市場の安定に万全を期すのは当然だが、痛み止めに終始していては、いつまでもトンネルを抜けられない。

そして今度は「転落の50年」の扉が開く。日本経済研究センターが3月にまとめた長期経済予測を見てほしい。トランプ関税の影響などを織り込まない標準シナリオで、実質GDPの世界ランキング(83カ国・地域)を試算すると、日本は24年の4位から、75年には11位に後退するという。
1人当たりの実質GDPでは29位から45位に順位を下げ、中位グループに埋没する結果となる。「人工知能(AI)の普及や移民の拡大、雇用制度の見直しなどに取り組み、とりわけ労働力人口1人当たりの生産性を引き上げる努力が欠かせない」と岩田一政理事長(元日銀副総裁)は訴える。

米タフツ大学のマイケル・ベックリー准教授は18年の論文で、経済・軍事両面の国力を測る簡便な指標として「GDPと1人当たりGDPとの積」に注目した。人口大国の実力を過大評価しがちなGDPよりも、一国が抱える正味の資源をいかに効率的に対外活用できるかを的確に示すという。
静岡県立大学の西恭之特任准教授も、これを支持する。日経センターの長期予測を基に、実質GDPと1人当たり実質GDPとの積を試算すると、日本は24年の5位から、50年には8位、75年には14位に後退するそうだ。
いずれも首位は米国で、中国、ドイツ、英国が続く。2位以下を大きく引き離す米国を100とした場合、日本は6.2から3.6、2.6に低下する。「労働力人口の比率を維持し、1人当たり・1時間当たりのGDPを極力増やしたい」と西氏は語る・・・
この項続く