カテゴリー別アーカイブ: 政と官

行政-政と官

千代田区議会議員から職員への不法な要求

7月5日の読売新聞東京版に、「事前情報要求など4% 区議から 千代田区職員アンケート」が載っていました。千代田区、千代田区議会のホームページには、まだ載っていないようですが。
ひどい内容です。「議会で大声で罵倒する」などは、動画中継や議事録で残らないのでしょうか。

・・・千代田区発注の工事を巡る官製談合事件について、区が職員を対象に、原因究明と再発防止に向けて行ったアンケート調査結果の概要が4日、区議会で公表された。区関係者によると、過去5年以内に、区議や元区議から、事前公表しない予定価格などの情報提供を求められた課長級以上の管理職は4.1%いたことがわかった・・・
・・・区関係者によると、「過去5年以内に議員や元議員から、担当する業務の秘密情報の提供を求められた(契約に関する情報を除く)」と答えた管理職は10.8%に上った。「法令への抵触が懸念される要求を受けた」とした管理職も4.1%いた。
自分やほかの職員が、議員や元議員から「いやがらせやハラスメントをうけた」と感じたのは全体で7.8%、管理職だと21.6%に上った。ハラスメントの具体的な内容としては、「依頼を断ると、人事への影響をほのめかす」「議会で大声で罵倒する」「職員の氏名をSNSで発信」などの記述があったという・・・

首相指示の失敗事例?その2

首相指示の失敗事例?その1」の続きです。首相の指示がうまくいかなかった例として、新型コロナ感染初期の対応を挙げましょう。
感染拡大を防ぐために、2020年2月に、安倍首相が学校の休校を打ち出しました。この判断は正しかったと思われますが、その唐突さが問題を生じました。首相が記者会見をしたのが木曜日の夕方で、休校は翌月曜日からでした。

この記者会見の途中から、私の携帯電話に女性記者二人から電話が入りました。彼女たちは、子どもが保育園と小学校低学年です。「木曜日の夜に言われて、月曜日から保育園や学校が休みになると、私はどうしたらよいのですか」との抗議です。
保育園や学校、さらには学童保育が休みになると、この子どもたちの面倒を見る必要があります。この女性記者だけでなく、働いているお父さんとお母さんが、同じ状況になります。どちらかが、仕事を休んで面倒を見ることになります。月曜日の仕事の予定が入っていたでしょう。
せめて1週間時間をおいてもらえれば、対応策を講じることもできたでしょう。

官邸幹部は、そこまで気が回らなかったのでしょう。文科省と厚労省は事前に官邸が相談がなかったと発言しているようです。この記者会見は、総理の指導力を示す意図があったのでしょうが、休校・休園した後の対応を忘れていたようです。
文科省と厚労省が検討を命じられたなら、この点について指摘したでしょう。そして、休校・休園するにしても、準備期間をおいたと思います。

首相指示の失敗事例?その1

6月から、定額減税が始まりました。この政策については、問題が多いと指摘されています。いろんな人の話を聞くと、次のように整理できそうです。
一人4万円(所得税で3万円、住民税で1万円)減税になるのはうれしいでしょうが、巨額の借金を増やしていることを考えれば喜んでいてはいけないのでしょう。減税総額を上回る景気回復が起きればよいですが、そうでなければ将来の国民からは苦情が出るでしょう。

それはさておき、問題になっているのはその手法です。国民にわかりにくいこと、手法が複雑で担当者(事業所の給与支払者、市町村役場の担当者)からは恨みの声が聞こえます。
まず、4万円程度の一度きりの減税を喜ぶのは、低所得者です。しかし、4万円以上納めていない人にとっては、このような減税は効果がありません。低所得者対策なら、給付金が効率的です。
では、今回はどうするか。減税できない人、減税しきれない人には、別途給付金を配るのです。それなら初めから全員に給付金にすればよいのに。

減税の恩恵を受ける人も、実は実感がわきにくいのです。給与明細書に減税を明記するように政府は指示しているようですが、多くの人は源泉徴収は会社に任せてあって、毎月の給与明細書は見ていますが、よくわからないままに手取額を確認しています。これは源泉徴収制度の欠点です。自ら申告するなら、どれだけの税金を払うのか切実になるのですが。給付金なら、口座に4万円振り込まれる、あるいは現金でもらうと、実感がわきますよね。

なお、NHKの世論調査(6月)では「今月=6月から、1人あたり年間で、所得税が3万円、住民税が1万円減税されることへの評価」は、
「大いに評価する」7%、「ある程度評価する」33%、合計40%。
「あまり評価しない」34%、「まったく評価しない」18%、合計52%です。
この項続く

日本での政策の作られ方

2月10日の朝日新聞に、元アマゾンでロビイストをしておられた渡辺弘美さんの話「ロビイスト、企業が政策を動かす」が載っていました。

・・・ 企業の立場から政策を動かす「ロビイスト」への注目が高まっている。巨大IT企業が国家をしのぐ影響力を持ちはじめるなか、政策をゆがめる恐れはないのか。政府と企業の関係はどうあるべきなのか。霞が関から米アマゾンに移り、ロビイストの草分け的存在として長年、日本政府と向き合ってきた渡辺弘美氏に聞いた・・・

―ロビイングとは何でしょうか。
「私は政府の認識や理解、行動を正しい方向、多くの人がそうだと思う方向に補正する作業がロビイングだと考えています。これを利益誘導と混同しているロビイストが多い。私はアマゾンという企業と、社会の利益が一致するときにだけ動いてきました。会社から『何とか政府を説得しろ』と言われて、『できません』と断ったケースもいくつもあります」

―日本でのロビー活動は欧米と違いますか。
「欧米と日本では政策のつくられ方が違うため、ロビー活動の方法は異なります。米国などでは議員が多くのスタッフを抱え、影響力のある法律をつくるケースが少なくない。日本は、ほぼ霞が関の中央省庁が法律の原案や細かいルールを作ります。我々ロビイストも、霞が関の方との関係づくりや情報交換が重要になります」

―ロビイングは必要なのでしょうか。
「政府が100%スマートなら、ロビイングは必要ないと思います。しかし現実はそうなっていません。役所の職員は与党や官邸から飛んでくるボールを拾うだけで精いっぱいです。一部の学者がいくつもの審議会や有識者会議を兼務し、法に基づき企業がつくった報告書を読んでいるのか怪しいときがあるし、発言にバイアス(偏り)がかかっているように見えるときもある。政策の透明性が高まり開かれたものになるのなら、ロビイストの活動を規制してもよいと思います」

―企業が影響力を強めすぎると、民主主義をゆがめることになりませんか。
「それはその通りだと思います。でも、ぜんぶ官僚と政治家に任せればよいのでしょうか。私はそうは思いません。企業以外の人たちの声も、もっと政治に届けることが答えになると思います。欧米ではNGO(非政府組織)や消費者団体が熱心にロビー活動をしています」

かつての政と官

日経新聞「私の履歴書」1月は、元財務次官の武藤敏郎さんでした。

15日の「政官関係」に、次のような話が載っています。
・・・細川護熙非自民連立政権の1994年度予算編成の話を続ける。社会保障担当の主計局次長として、野党自民党きっての厚生族議員である橋本龍太郎政調会長に状況を報告しなくてはと考えた。自民党本部を訪ねると、閑散として人の出入りがほとんどない。
橋本さんは「我々は野党だから、次長さんのような偉い人がわざわざ来なくていいよ」と皮肉交じりの口調で話された。真顔に戻ると「僕は自民党と大蔵省は夫婦みたいな関係だと思っていたよ。だけど、いざ下野すると、役人どもは冷たいね」とつぶやかれた。
私は「官僚は時の政権に仕える立場なので・・・」と口ごもった。橋本さんは「それはきれい事だな」と納得されなかった。自民党が大蔵省に向ける視線は厳しかった・・・

20日の「主計局長」には、次のような話が載っています。
・・・私は2001年に情報公開法の施行を控え、予算編成の透明性の向上が重要な課題になると考えた。族議員や各省と密室で調整を重ねるばかりでは、財政再建にも限界がある。国民の理解を深めるオープンな情報発信の努力も必要だと思った・・・