カテゴリー別アーカイブ: 政と官

行政-政と官

コロナ対策マスク調達、文書なし

8月23日の朝日新聞が「アベノマスク「文書見たことない」 省庁職員証言「意思決定は口頭」「余裕なし」」を伝えていました。

・・・新型コロナウイルス対策で政府が配った布マスク(通称・アベノマスク)をめぐり、神戸学院大の上脇博之教授が業者との契約過程を示す文書の開示を国に求めた訴訟で、調達に当たった省庁職員ら3人の証人尋問が22日、大阪地裁であった。職員らは「関連文書は見たことがない」と口をそろえた。

マスクは2020年4月に安倍晋三首相(当時)が各戸配布を表明したもので、国は400億円超をかけて約3億枚を調達した。だが約8300万枚が残り、国会などで無駄が指摘された。
出廷したのは「合同マスクチーム」のメンバーら。統括した厚生労働省の職員は「いかに早くマスクを確保できるかが課題で、チーム内の意思決定は口頭だった」と証言。「この職について30年で最も過酷で多忙を極めていた。過労死ラインを超える勤務が慢性的に発生する極めて異例な状況だった」とも述べた。

上脇教授側から「公文書管理法の趣旨に沿って契約過程を文書で残すべきだったのでは」と問われると、「結果責任を果たすためにもプロセスに時間を割く余裕はなかった」と強調した・・・

官僚長時間労働の原因、国会審議の答弁書作成

7月24日の朝日新聞に、「やめられないのか、答弁書 官僚激務「ブラック霞が関」」が載っていました。
・・・長時間労働が常態化し、「ブラック霞が関」と呼ばれる官僚の働き方。最大の原因は、国会審議の答弁書の作成とされる。しかし、そもそも政治家が質問を政府側に事前通告し、官僚が作った答弁書を閣僚が読み上げるという国会審議のあり方に問題はないのか・・・

・・・国会審議では長らく官僚が事前に議員から質問内容を聞き取る質問取りをし、通告内容を元に答弁書を用意することが常態化。内閣人事局が官僚の働き方を調査したところ、今年の通常国会中(2月5日~3月31日)、官僚が答弁を作り終えた時刻の平均は、委員会当日の午前0時48分。与野党は、官僚の負担軽減のため通告は「委員会2日前の正午まで」と申し合わせているが、ほぼ守られていない。委員会の2日前までに質問が通告されたのは1260件(50・4%)で、前日午後6時以降の通告は173件(6・9%)あった。
長時間労働が問題になる官僚の働き方は「ブラック霞が関」と呼ばれ、官僚離れが進む。官僚による答弁書作成はその最大の原因とされる。

しかし、参議院規則第103条は「会議においては、文書を朗読することができない。但(ただ)し、引証又(また)は報告のためにする簡単な文書は、この限りでない」と規定。原則的に文書の「朗読」は禁じられており、衆議院規則でも似たようなルールがある。にもかかわらず官僚任せの答弁はいつから始まったのか。
終戦直後、衆参本会議では議員同士が自由に意見を述べる「自由討議」が設けられた。田中角栄氏が「明朗なる政治、すなわちガラス箱の中での民主政治の発達助長に資すること大なり」と演説した。だが1955年の国会法改正で規定が削除。自民党一党優位による「55年体制」以降、官僚作成の答弁を読み上げる形式が定着していく。

原因の一つが自民党の「事前審査制」の導入だ。法案は自民党内で議論、了承を得たうえで、国会に提出されるようになった。学習院大学の野中尚人教授(比較政治)は「与党が国会論戦を回避するための仕組みで審議が形骸化した。国会は野党の抵抗の中で、与党が事前に党内で決めたものをただ追認する場となった」。
ただ、過去には官僚答弁からの脱却をめざす動きもあった。98年には、小沢一郎氏率いる自由党(当時)が、自民党と連立政権を組む条件として、閣僚に指示された官僚が答弁を担う政府委員制度の廃止を主張し、その後に実現。党首討論も導入された。
2009年に誕生した民主党政権も「政治主導」を掲げて答弁のあり方を見直そうとし、質問取りは政治家である政務官が担うとした。だが政権発足から1カ月ほどで平野博文官房長官(当時)が官僚に質問取りを要請したことが発覚。民主党政権は短命に終わって次の政権交代可能な政治状況が作られなかったこともあり、再び官僚任せの答弁は定着した。

一方、欧州諸国の議会は日本と異なる。日本と同じ議院内閣制の英国(下院)では、首相との討論では質問の事前通告はなく、閣僚への質問では通告不要の補充質問が認められている。フランスでも首相や閣僚に対する口頭質問では事前通告しない・・・

千代田区議会議員から職員への不法な要求

7月5日の読売新聞東京版に、「事前情報要求など4% 区議から 千代田区職員アンケート」が載っていました。千代田区、千代田区議会のホームページには、まだ載っていないようですが。
ひどい内容です。「議会で大声で罵倒する」などは、動画中継や議事録で残らないのでしょうか。

・・・千代田区発注の工事を巡る官製談合事件について、区が職員を対象に、原因究明と再発防止に向けて行ったアンケート調査結果の概要が4日、区議会で公表された。区関係者によると、過去5年以内に、区議や元区議から、事前公表しない予定価格などの情報提供を求められた課長級以上の管理職は4.1%いたことがわかった・・・
・・・区関係者によると、「過去5年以内に議員や元議員から、担当する業務の秘密情報の提供を求められた(契約に関する情報を除く)」と答えた管理職は10.8%に上った。「法令への抵触が懸念される要求を受けた」とした管理職も4.1%いた。
自分やほかの職員が、議員や元議員から「いやがらせやハラスメントをうけた」と感じたのは全体で7.8%、管理職だと21.6%に上った。ハラスメントの具体的な内容としては、「依頼を断ると、人事への影響をほのめかす」「議会で大声で罵倒する」「職員の氏名をSNSで発信」などの記述があったという・・・

首相指示の失敗事例?その2

首相指示の失敗事例?その1」の続きです。首相の指示がうまくいかなかった例として、新型コロナ感染初期の対応を挙げましょう。
感染拡大を防ぐために、2020年2月に、安倍首相が学校の休校を打ち出しました。この判断は正しかったと思われますが、その唐突さが問題を生じました。首相が記者会見をしたのが木曜日の夕方で、休校は翌月曜日からでした。

この記者会見の途中から、私の携帯電話に女性記者二人から電話が入りました。彼女たちは、子どもが保育園と小学校低学年です。「木曜日の夜に言われて、月曜日から保育園や学校が休みになると、私はどうしたらよいのですか」との抗議です。
保育園や学校、さらには学童保育が休みになると、この子どもたちの面倒を見る必要があります。この女性記者だけでなく、働いているお父さんとお母さんが、同じ状況になります。どちらかが、仕事を休んで面倒を見ることになります。月曜日の仕事の予定が入っていたでしょう。
せめて1週間時間をおいてもらえれば、対応策を講じることもできたでしょう。

官邸幹部は、そこまで気が回らなかったのでしょう。文科省と厚労省は事前に官邸が相談がなかったと発言しているようです。この記者会見は、総理の指導力を示す意図があったのでしょうが、休校・休園した後の対応を忘れていたようです。
文科省と厚労省が検討を命じられたなら、この点について指摘したでしょう。そして、休校・休園するにしても、準備期間をおいたと思います。

首相指示の失敗事例?その1

6月から、定額減税が始まりました。この政策については、問題が多いと指摘されています。いろんな人の話を聞くと、次のように整理できそうです。
一人4万円(所得税で3万円、住民税で1万円)減税になるのはうれしいでしょうが、巨額の借金を増やしていることを考えれば喜んでいてはいけないのでしょう。減税総額を上回る景気回復が起きればよいですが、そうでなければ将来の国民からは苦情が出るでしょう。

それはさておき、問題になっているのはその手法です。国民にわかりにくいこと、手法が複雑で担当者(事業所の給与支払者、市町村役場の担当者)からは恨みの声が聞こえます。
まず、4万円程度の一度きりの減税を喜ぶのは、低所得者です。しかし、4万円以上納めていない人にとっては、このような減税は効果がありません。低所得者対策なら、給付金が効率的です。
では、今回はどうするか。減税できない人、減税しきれない人には、別途給付金を配るのです。それなら初めから全員に給付金にすればよいのに。

減税の恩恵を受ける人も、実は実感がわきにくいのです。給与明細書に減税を明記するように政府は指示しているようですが、多くの人は源泉徴収は会社に任せてあって、毎月の給与明細書は見ていますが、よくわからないままに手取額を確認しています。これは源泉徴収制度の欠点です。自ら申告するなら、どれだけの税金を払うのか切実になるのですが。給付金なら、口座に4万円振り込まれる、あるいは現金でもらうと、実感がわきますよね。

なお、NHKの世論調査(6月)では「今月=6月から、1人あたり年間で、所得税が3万円、住民税が1万円減税されることへの評価」は、
「大いに評価する」7%、「ある程度評価する」33%、合計40%。
「あまり評価しない」34%、「まったく評価しない」18%、合計52%です。
この項続く