カテゴリー別アーカイブ: 地方行政

地方行財政-地方行政

被災地での地域おこし協力隊活動

朝日新聞夕刊連載「現場へ」12月16日の週は「地域おこし協力隊」で、さまざまな分野で活躍する人と活動を紹介していました。19日は「復興担い手に、制度を活用」でした。

・・・能登半島地震の被災地・石川県珠洲市にある「あみだ湯」を切り盛りする新谷健太(33)は、同市の地域おこし協力隊員第1期生。20年に終了後、子どもらの居場所づくりなどをしているが、銭湯を継いでくれと頼まれ、準備中の今年元日に地震に襲われた。水道は断水したが、風呂は地下水を使っていたので、機械類を直して19日に再開。被災家屋の廃材で湯をわかした。補修や清掃などの人手を補う力になったのは、協力隊経験者たちだ。全国のネットワークがボランティアの受付サイトを作り派遣管理をしている。市内在住の元隊員があみだ湯に集まり、被災者支援活動の拠点となっている。「被災家屋の片付けなど、行政の手が届かないニーズもある。地区に20~30代は数えるほどしかいない。私たちに頼らざるを得ない状況だ」

10月、被災者のニーズと支援を結びつける中間組織として一般社団法人・能登官民連携復興センターができた。代表の藤沢烈(49)は、東日本大震災の被災地・岩手県釜石市で若者中心の復興支援組織「釜援隊」を立ち上げた経験がある。
まず地域づくりや生業の復興に向けて動き始めた団体をサポートする人材として地域おこし協力隊員を起用すべく人選を進めている。
「住む所がないなど課題はあるが、若者を呼び込むしくみは、現状では地域おこし協力隊しかない」・・・

藤沢烈さんには、東日本大震災で大変お世話になりました。私が非営利団体を認識するきっかけを作ってくれた人です。共著『東日本大震災 復興が日本を変える-行政・企業・NPOの未来のかたち』(2016年、ぎょうせい)も出しました。

地方自治法改正、国の指示権

月刊『地方自治』2024年11月号に、牧原出・東大教授が「改正地方自治法における国の一般的な指示権はどう作動するか?」を書いておられます。
この春に成立した地方自治法改正に関するものです。「地方自治法の一部を改正する法律の概要
個別法の規定では想定されていない事態のため個別法の指示が行使できず、国民の生命等の保護のために特に必要な場合(事態が全国規模、局所的でも被害が甚大である場合等、事態の規模・態様等を勘案して判断)、国は地方公共団体に対し、指示ができることになりました。新型コロナウイルス感染拡大での混乱などを踏まえた改正です。

地方制度調査会での議論を経て法律となったものですが、地方分権に反するのではないかとの疑問も出されていました。どのような場合なら認められるか。それが難しいのです。事前に予測できることなら、個別の法律に規定しておくことができます。まさに想定外の事態の際に発動されるので、事前想定が難しいのです。この論考は、それを説明しています。

他方で、批判的な議論もあります。
坪井ゆづる編『「転回」する地方自治-2024年地方自治法改正(下)【警鐘の記録】』(2024年、公人の友社。自治総研ブックレット)

地方創生10年の評価

地方創生が始まって10年になります。6月に、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局と内閣府地方創生推進事務局が、「地方創生10年の取組と今後の推進方向」をまとめています。
そこでは、「地域によっては人口増加等をしているところもあり、この中には地方創生の取組の成果と言えるものが一定数あると評価できる。
しかしながら、国全体で見たときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要」と要約しています。

一方、11月12日付けの日経新聞が「地方創生空転10年、深まる国依存 分配ありき、成長と逆行 かすむ分権」が、数値を示して簡潔に評価をしています。
・・・安倍政権が地方創生を掲げて10年。人口減や少子化はむしろ加速し、成長は鈍った。この間、政府が配るお金に自治体が群がる構図が定着した。コロナ危機も経て進んだのは地方の自立ではなく国への依存だった。中央省庁の権限や財源を移譲する分権の理念はかすみ、伸び悩む税収を自治体間で奪い合う不毛な光景ばかりが広がる・・・
そこに、目指した将来像と現実との比較が図で載っています。
合計特殊出生率は、10年前(2014年)では1.42で、めざしたのは1.8でした。2023年では1.2です。
東京圏の転出入は、2014年では10.9万人の転入超過で、均衡を目指しましたが、2023年では11.5万人の転入超過です。
実質成長率は、2013年までの10年間平均は0.7%で、1.5~2%を目指しましたが、2023年までの10年間平均は0.5%でした。

市債権の徴収一元化

時事通信社の行政情報サイト「iJAMP」10月10日に、橋本一磨・愛知県豊田市東京事務所長の「市債権の徴収一元化を実現」が載っていました。

・・・2013年当時、税を専門的に扱う納税課主査として、ある高齢男性の窓口対応に当たったときの出来事がきっかけだった。男性は、税や後期高齢者医療保険料、市営住宅使用料といった納付書を持って窓口に訪れ、「全部は払えないから相談したい」と話した。しかし、税の部署なので税以外のものは相談を受けることができないと伝えると、怒って帰ってしまった。
男性にとって市役所は一つなのに、税以外の相談は受けられない。役所自ら市民の信頼を失う組織体制をつくり出していることに気付いた。異なる部署でばらばらに行われている債権回収業務を、一つの窓口で行えるよう組織体制の見直しが必要だと感じたが、主査という一担当職員の力ではどうにもならないことも分かっていた。

そこで、14年に各部対抗のプレゼン大会の場を使って太田稔彦市長に直接提案したところ、市長から具体的に検討するよう指示を受けた。15年度に一元化に向けたプロジェクトチームを発足。翌年度から組織体制の見直しやシステム整備を進め、19年度までに26部署がそれぞれで取り扱っていた60種類もの未収債権を一つの窓口に集約した。併せて、17年度に納税課から債権管理課へ名称変更。19年度には、弁護士チームと連携し、官民連携による債権回収を始めた。

債権回収は、多くの課で本来業務ではないとの意識が高く、後回しにされがちだった。税と税以外を重複して滞納する「滞納のプロ」のような人もいて、対応する職員側も専門性の高さが求められる。このため、税務職員の滞納整理に関する知識と経験を、市の全体的な歳入確保のために最大限活用して効率的・効果的な債権回収に取り組んだ。併せて、システム整備に着手。関連情報を紙やエクセルで管理している課が多く、これらを整理して情報を一元的に管理するシステムを構築し、効率的な業務につなげている。
一元化した初年度から成果が数字として表れ、介護保険料や後期高齢者医療保険料の収納率は中核市の中で1位に。一元化後の6年間で、約28億円の未収債権を回収した。

一方で、滞納者の中に一定数、「無い袖は振れない」生活困窮者がおり、支援の必要性を感じていた。債権回収業務は、「取る」「押さえる」「落とす」のいずれかを判断して進めると学んできたが、「立て直す」の視点を追加。これは、債権回収の現場で発見した生活困窮者を福祉部門へつなぎ、自立に向けた支援を行うことだ。弁護士、社会福祉協議会などと合同で納付相談会を開き、弁護士相談で発見した生活困窮者をシームレスに社会福祉協議会へつないでいる。
地方自治体の基本は「住民の福祉の増進を図ること」で、歳入確保による財政健全化の視点と福祉的な側面への配慮の間に、常にジレンマを抱えている。故に、単に債権回収すればいいというものでなく、福祉的側面への配慮など債務者の個別事情を踏まえた対応が必要となる・・・

地方公務員の離職防止対策

9月7日の日経新聞に「地方公務員の離職防げ 福岡県、若手が「働きやすさ」提案」が載っていました。

・・・全国の都道府県が職員の離職抑制に力を入れている。2022年度の自己都合の退職者は全国平均で17年度より46%増えた。就職人気も低下しており、働きやすい職場づくりを進めて20〜30歳代などの定着を目指す。福岡県は若手職員による改善提案制度や長時間勤務の削減などを通じて退職者の増加を抑える。
総務省の「地方公務員の退職状況等調査」から、定年退職などを除く自己都合の退職者を抽出した。22年度実績を都道府県別データの公表が始まった17年度と比べると、全ての都道府県が増えた。県庁職員などの行政職や教育職の増加が目立つ。都道府県別では、鳥取と福岡が増加率を1割未満にとどめたのに対し、熊本は2.6倍、秋田も3.8倍となった。

福岡県は17年に県庁における働き方改革の取り組み方針を制定。21年度に始めた若手職員による提案制度には3年間で約8600件の改善案が寄せられた。代表例がデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用だ。
補助金の手書き申請のオンライン化、チャットの活用によるペーパーレス化などを実現。デジタル機器の整備といった現場ならではの提案も多い。担当者は「業務効率化に加え、自らの意見が実現することで若手のモチベーション向上にもつながる」とする。
長時間労働の是正では、執務室で退勤処理をした後もサービス残業を続けるといったことがないように、県庁玄関で出退勤を管理するシステムを導入。職員への迷惑行為「カスタマーハラスメント」の防止に向けたマニュアルや掲示用ポスターも用意する・・・

・・・福岡県は17年に県庁における働き方改革の取り組み方針を制定。21年度に始めた若手職員による提案制度には3年間で約8600件の改善案が寄せられた。代表例がデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用だ。
補助金の手書き申請のオンライン化、チャットの活用によるペーパーレス化などを実現。デジタル機器の整備といった現場ならではの提案も多い。担当者は「業務効率化に加え、自らの意見が実現することで若手のモチベーション向上にもつながる」とする。
長時間労働の是正では、執務室で退勤処理をした後もサービス残業を続けるといったことがないように、県庁玄関で出退勤を管理するシステムを導入。職員への迷惑行為「カスタマーハラスメント」の防止に向けたマニュアルや掲示用ポスターも用意する・・・