カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

非正規公務員

9月20日の日経新聞女性欄は「非正規公務員 遠い処遇改善」でした。
・・・新型コロナウイルスが全国で猛威を振るう中、行政サービスにあたる地方公務員。窓口など最前線で対応する職員の多くは非正規で、4分の3を女性が占める。2020年4月に非正規公務員の処遇改善を目的に「会計年度任用職員」制度が導入された。約1年半がたった今、彼女らの労働環境は変わっているのだろうか・・・

地方公務員法などの改正を受け、2020年4月から自治体の臨時・非常勤職員の多くは会計年度任用職員に移行しました。ところが、処遇は大きくは変わらず、同じような仕事をしているのに、正規職員と賃金など処遇の差は大きいようです。同一労働同一賃金は、まだ途上のようです。
年収200万円未満の人も多いようです。その仕事を片手間にやっているなら理解もできますが、それで生計を立てているなら問題でしょう。

多くの自治体で、歳出削減のために、業務を外注したり、非正規職員に置き換えました。歳出削減自体は良いことですが、同じ仕事をしていながら処遇が悪いままにしておくことは、許されることではないでしょう。これは、自治体だけでなく、国の組織も同様です。
格差是正を掲げながら、非正規職員を増やしている、その処遇を改善しないことは、矛盾しています。

予算を増やして、正規職員と同等の処遇にするのか。正規職員の給料を下げて、非正規職員と同等にするのか。
ところで、記事にでも取り上げられているように、労働組合は何をしているのでしょうか。「正規職員保護組合だ」と批評した人がいました。

高校の生徒排除の構造を変える

9月7日の日経新聞教育面、磯村元信・東京都立八王子拓真高校長の「中退・不登校防ぐ高校づくり 生徒「排除」の構造変える」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・東京都立八王子拓真高校は昼夜間3部制の定時制高校で、不登校経験などのある生徒向けの入学枠「チャレンジ枠」のある都内唯一の高校だ。前身は都立第二商業高校。「織物のまち八王子」を支える職業高校だった。
現在は進学者が5割、就職者が3割の進路多様校だが、八王子市内の高卒就職者の6割は今も本校出身者が占める。
近年は不登校や転退学(中退)の急増が大きな課題となっていた。生徒数1千人弱の本校で、2018年度に不登校生は198人、中退者は104人に達していた。
背景には多様な課題を抱える生徒たちの増加がある。具体的には発達障害、貧困、虐待、ルーツが外国にあることで日本語が不自由など。学力のハンディも当然大きい。彼らはそれぞれの困難に応じた「合理的配慮」を必要としている。
しかし、高校の指導は一律性が強い。特に単位・進級・卒業の認定や生活指導には校内規定が一律に適用される。高校は義務教育ではなく、生徒は一定の学力を備えていて当然という適格者主義、規定の柔軟な運用は不公平だという公平主義。そんな昔ながらの組織文化が根っこにある・・・

・・・中学生のほぼ全員が高校に進学し、生徒が多様化した今日、こうした文化は授業が分からない生徒、規則が合わない生徒らを排除する仕組みになってしまう。私はこれを「合理的排除」と呼ぶ。
このままでは不登校や中退に歯止めがかからない。排除する高校から配慮する高校に変わる必要がある。私はそう考え、校長に着任した19年度から改革に取り組んだ。
柱の一つは特別支援教育の考え方を導入したことだ。生徒への合理的配慮を校内規則に明示し、一律の運用を改め、個別対応を基本にした。
特に単位を取得させることを重視し、年5回の補習期間(個別指導期間)を設定。欠席の多い生徒には年度末を待たずに補習を行うようにした。
心身の病気やいじめ、希死念慮などで登校が難しい場合は欠席回数が規定を超えても、オンラインで課題を提出するなどすれば柔軟に単位を認める。保健室登校の生徒らのための学習スペースも校内に設置した。
20年度から校内で「居場所カフェ」も始めた。若者支援の専門家である都派遣のユースソーシャルワーカーが運営する。生徒が教員でも保護者でもない「第三の大人」と話せる居場所は相談の糸口ともなり、自傷など生命に関わる事故防止の観点からも極めて重要だ・・・

自殺意識の高まり

9月1日の読売新聞に、日本財団の自殺調査結果が載っていました。「10代後半5%が自殺未遂」。日本財団「第4回 自殺意識全国調査報告書」。
詳しくは報告書を見ていただくとして、主な点は次の通り。

4人に1人が「本気で自殺したいと考えたことがある」
自殺未遂経験者は6%。
自殺念慮、自殺未遂ともに15~20代のリスクが高い。
「在職(休職中)」「無職(求職中)」、持病で「心の病気」を持つ層、疎外感や孤立感を感じている層、家族等に助けや助言を求める相手がいない層、周囲で自殺で亡くなった方がいる層などが1年以内の自殺念慮や自殺未遂の割合が高い。
自殺念慮や自殺未遂経験者の7割が自殺を考えた時に誰にも相談していない。
自殺念慮や自殺未遂経験がある層はない層に比べて、普段から家族に助言を求める割合が低い。

連載「公共を創る」で取り上げている孤独・孤立の問題が、はっきりわかります。

障害者支援の少ない日本

8月25日の日本経済新聞朝刊1面に「パラと歩む共生社会」が載っていました。
そこに、国内総生産(GDP)に占める障害者らに対する公的支出の割合が出ています。日本は1.1%と、OECD平均の2%の半分です。西欧各国はほぼ3%です。
企業などに一定割合の障害者雇用を求める法定雇用率は、ドイツは5%、フランスは6%であるのに対し、日本は2.3%です。

公的教育支出や若者への支出が、先進各国の中でも、日本は低いことが指摘されています。

児童相談所、自治体業務の現場

朝日新聞夕刊「現場へ」は、8月23日から「変革期の東京・児童相談所」を連載しています。
23日は「あの虐待死、もし関わるなら」です。
・・・「もういいだろ。子どもは寝ている。帰れ!」。6月中旬、東京都千代田区のJR秋葉原駅近くにあるビルの一室で、男性の野太い声が響いた。
「お子様の様子だけでも確認させてください」。児童福祉司の2人が穏やかな口調で食い下がる。虐待を隠そうとする父親はいらだち、何度も声を荒らげた。
これは東京23区の職員を対象とした児童虐待への対応の研修風景だ。両親役と児童福祉司役には、家族の事情やこれまでの経緯が記されたシナリオが渡される。演じている様子はほかの研修生がタブレット端末で撮影した。役を演じることで、それぞれの当事者目線を学ぶことが目的だという・・・

・・・シナリオは、2018年3月に東京都目黒区で起きた船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)の虐待死事件を担当した都の児童相談所(児相)から招かれた職員が用意した。職員は「内容は目黒の事件を意識した。実際の現場では難しい判断が迫られる。どう対応するかを考えてほしい」と語った。またこの日の午後には、千葉県野田市で19年1月に起きた栗原心愛(みあ)さん(同10歳)の虐待死事件を踏まえて、家族との面接の演習も行われた。
研修を企画したのは、23区の共同事務を扱う特別区人事・厚生事務組合「特別区職員研修所」だ。「23区に対するアンケートでも、より実践的で、即戦力を育てる内容が求められている」と担当の桜井安名教務課長(47)は話す・・・

・・・喫緊の課題が人手不足と人材育成だ。研修を取材した6月中旬は、都内に新型コロナウイルスの「緊急事態宣言」が発令されていたが、オンラインではなく、研修生たちはマスクの上にフェースシールドをつけて実地研修に臨んだ。「会話や表情など微妙なニュアンスはオンラインで伝えるのは難しい。実際に自分で感じないと理解できない部分も多い」と、桜井課長は説明する。
研修生は若手職員が大半を占めているが、ベテラン職員も交じっていた。都内では、ほかの自治体で児相の職員として経験していた人の採用も進み始めている。東京の児相にくわしい職員は「児相新設の水面下で、ヘッドハンティングもあると聞く」と打ち明ける・・・