カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

報道機関に少ない女性

7月2日の朝日新聞文化欄に、「メディア、まだまだ少ない女性 編集トップ、海外22%・日本0%」という記事が載っていました。表もついています

・・・日本民間放送労働組合連合会(民放労連)が5月に発表した調査では、全国の民放127社の役員1797人のうち、女性は40人(2・2%)。91社は全員男性だった。民放労連の50代男性は「視聴者の半分は女性なのにバランスを欠いている」と語る。
朝日新聞が在京民放キー局5局とNHKに取材したところ、4月時点の各局の全社員・職員のうち女性は21~27%。だが6月末時点の役員(NHKは理事以上)で、女性が1割を超えたのは2社だった。

全国紙5社は全社員のうち女性は18~27%なのに対し、役員は3社がゼロだった。
役員に占める女性の割合は放送局では5・7%、全国紙5社では4・9%。上場企業の平均6・2%(東洋経済新報社・役員四季報データベース、2020年7月時点)を下回る。

また、テレビでは制作局長や報道局長、新聞では全社的な編集局長やゼネラルエディターといった、番組や報道、編集全体を統括する全社的な責任者は、テレビ・新聞とも全員男性だった。英国の研究機関、ロイター・インスティチュートが今年3月に発表した報告でも、日本を含む主要12カ国・地域のメディア(ラジオやオンラインも含む)240媒体の編集トップ180人の女性率は22%だった一方、日本は0%。海外と比べても日本の少なさが目立つ・・・

心のサポーター養成事業

6月17日の朝日新聞オピニオン欄「社会季評」、東畑開人・准教授の「心のケア、主役は素人 ささやかな毛を生やそう」から。

・・・ささやかな政策を取り上げたい。巨大な国家からすると砂粒のような政策だ。だけど、そこには私たちの社会のあらゆるところで生じている苦悩が表れている。
「心のサポーター養成事業」のことだ。今年度の予算規模は3千万円弱。厚生労働省の発表によれば、安心して暮らせる地域作りのために「メンタルヘルスやうつ病や不安など精神疾患への正しい知識と理解を持ち、メンタルへルスの問題を抱える家族や同僚等に対する、傾聴を中心とした支援者」を、10年で100万人養成するとのことだが、実際の中身は地域住民に2時間程度のメンタルヘルスの研修を受講してもらうくらいのことだから、正直素人に毛を生やす程度の話だ。だけど、侮っちゃいけない。このささやかな毛がきわめて貴重なのだ。
メンタルヘルスケアというと専門家が特別なことをするイメージがあるかもしれない。だけど、本当の主役は素人だ。実際、私たちが心を病んだとき、最初に対応してくれ、そして最後まで付き合ってくれるのは、専門家ではなく、家族や友人、同僚などの素人たちではないか。

たとえば、最近離婚した同僚の様子がおかしいとき。あなたは彼の受けたダメージを思い、心配になる。だから、気を使い、仕事を分担し、気晴らしに誘う。そうこうしているうちに、彼は少しずつ回復し、気づけば以前のように働けるようになっている。多くの心の危機が、専門家の力なんか借りずに、なんとかやり過ごされていくものなのだ。

ここで働いているのは、古くは哲学者のカントが「世間知」と呼んだものの力だ。つまり、世の中とはどのような場所で、人生にはいかなる酸いと甘いがあるのかについての、ローカルに共有された知のことである。この世間知が、離婚の傷つきや回復のプロセスを想像することを可能にし、必要とされているケアを準備し、コミュニティーに彼の居場所を確保してくれる。素人たちは世間知に基づいて、互いを援助しあう。

と書くと、楽観的過ぎるかもしれない。世間知にはコミュニティーから人を排除する力もあるからだ。例えば、先の離婚の彼が、しばらくたっても回復しなかったらどうか。仕事が滞り、不機嫌が続く。いつもイライラしていて、周りに当たることもある。すると、世間知は彼を持て余し始める。彼は理解できない存在になり、厄介者扱いされるようになる。孤立していく。
そういうとき、専門知が解毒剤になる。「うつ病じゃないか?」。誰かが言いだす。それが視界を少し変える。仕事の滞りやイライラがうつの症状に見えてくる。すると、周囲は彼に医療機関の受診を勧めたり、特別扱いしたりできるようになる。
この素人判断こそが、心のサポーターに生えたささやかな毛だ。うまく専門家につながれば、そこで適切な理解を得ることができるし、すると彼の不機嫌さが悲鳴であったことがわかる。「厄介者」はケアすべき人に変わる。

これが心のサポーターの背景にある「メンタルヘルス・ファーストエイド」の思想だ。心のサポーターとは、専門知を浅く学ぶことで、とりあえずの応急処置や専門家につなぐことを身につけた素人なのである。専門知が世間知の限界を補う・・・

同居孤独死

「同居孤独死」という言葉を、知っていますか。6月13日の日経新聞が、「同居孤独死 3年間で550人」を伝えていました。
・・・家族などの同居者がいるのに死亡後すぐに発見されない「同居孤独死」が、2017~19年に東京23区と大阪市、神戸市で550人を超えたことが分かった。同居者が認知症や寝たきりのため、死亡を周囲に伝えられない例があるほか、介護していた人に先立たれ衰弱死したケースもあった。全国的な調査はなく、実態はさらに深刻な可能性がある・・・

連載「公共を創る」で孤立問題を書いていて、孤独死と、引きこもりの子どもが親が死んでも関係者にそれを伝えないことも、取り上げたのですが。ここで報告されているのは、同居者が認知症であったり、寝たきりや障害を抱えていること、家庭内別居です。このような事態も増えているのですね。近所やその他のつながりがないことが、このような事態を招きます。

病児保育

6月4日の読売新聞夕刊に「病児保育ピンチ」という記事が載っていました。
・・・働きに出ている保護者らのために、病気になった子供を一時的に預かる「病児保育」の施設が、苦境に立たされている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って利用者が激減する中、運営の「頼みの綱」となる国や自治体からの補助金も今後、大きく減るとみられるためだ。閉鎖の危機に直面している施設もある・・・

・・東急田園都市線の終点・中央林間駅に近い同施設は、都心に通勤する共働き家庭の利用も多い。開所した2018年度の利用者は108人だったが、19年度には4倍の453人に増えた。20年度には800人程度の利用を見込んでいたが、新型コロナの感染拡大が重なり、1年間でわずか40人と、前年度比で9割減となった。
施設を運営するには、看護師や保育士らの人件費だけでも年間約2600万円かかるというが、コロナ禍による利用者の激減で利用料収入が大きく減った。
さらに、国や自治体からの補助金は利用実績に基づいて算定される。20年度は、利用者が減っても例年並みの補助金が支給される国の「コロナ特例」の措置が実施され、約1000万円の補助金がもらえたが、今年度は適用されず、経営への不安は拭えない・・・

両親が働きに出て、あるいは母子家庭などで母親が働きに出ると、保育園や学童保育は必須です。さらにここで取り上げられている病気の子どもは、より支援が必要です。
医療の提供だけでは不十分で、この子供らの世話が行政の責務でなく、民間に委ねられていることもおかしな話です。

子ども政策、貧困以外の困難

子ども政策、予算の効果」の続きです。中室牧子・慶応義塾大学教授の「縦割りの排除、自治体でも」には、次のような指摘もあります。

・・・子供政策での行政の縦割りの弊害とはどのようなものか。筆者らの研究グループは認定NPO法人カタリバとともに、コロナ禍の下での経済困窮世帯の子供たちを調査した。経済困窮以外の課題を同時に抱える世帯は、実に全体の40.2%にものぼる。経済困窮に加え、19%が発達障害、7%が身体障害があり、13%が不登校になっている。
このデータを基に、経済困窮のみの世帯の子供と、それ以外の課題も抱える子供の学力や非認知能力を比較した(図参照)。経済困窮以外にも重層的に課題を抱える子供は、問題行動が顕著で、不安感が強く、学力や非認知能力など人的資本の形成でも著しく不利な状況に置かれている。

しかし行政の視点でみると、発達障害や身体障害は健康・保健関連部署、不登校は教育委員会、経済困窮は福祉関連部署の担当だ。行政の縦割りにより、保健・教育・福祉の所管横断的な情報共有が妨げられ、重層的な課題を抱える子供に対する支援が十分になされているとはいえない。
保健・福祉・教育の所管横断的な情報共有は、虐待や自殺など、放置すれば生命の危機に及ぶ異変を速やかに察知するうえでも重要だ。虐待や自殺などのリスクにさらされている子供に対しては、問題が生じた後で「介入」するよりも「予防」する効果の方が大きいことを示す研究は多い・・・
詳しくは原文をお読みください。