7月28日の日経新聞「溶かせ氷河期世代」「ようやく正社員…でも年金・住宅・介護の三重苦」から。
・・・就職氷河期世代はバブル崩壊後の1993〜2004年ごろに社会に出た1700万人ほどを指す。大卒男性の就職率は1990年の81%から2000年に55%まで落ち込んだ。新卒一括採用と終身雇用が当たり前の時代。スタートでつまずき、望まぬ非正規就労を強いられた人も多い。生産年齢(15〜64歳)人口の2割ほどを占め、働き盛りの終盤にある。
明るい兆しはある。総務省の労働力調査によると1978〜82年生まれの男性は40代前半になって初めて正規雇用率が9割を超えた。企業の旺盛な採用意欲が40〜50代に波及しつつある。
ようやく雇用に光明がみえても、その先には三重苦が待ち構える。
まずは低年金だ。公的年金の財政検証によると、経済成長率が低迷するシナリオでは2024年度末時点で50歳の人の5人に2人は将来年金が月10万円未満しかもらえない。
非正規雇用が長い氷河期世代は年金の2階部分、厚生年金の加入が短くなりがちだ。1階部分の基礎年金(国民年金)も年金額を抑える措置が57年度まで続く・・・
・・・衣食住の一角、住宅も難題となる。総務省の住宅・土地統計調査によると、23年の持ち家率は40代で58%、50代は66%だった。いずれも30年前から10ポイント程度低下した。終の棲家(ついのすみか)を持てぬまま、高齢期に突入する。
みずほリサーチ&テクノロジーズの藤森克彦主席研究員は「長期雇用を前提にした企業の福利厚生と相まって、政府は景気対策の側面のある持ち家政策を進めてきた」と話す。
マイカーやマイホーム、専業主婦世帯といった昭和の人生モデルは氷河期世代に当てはまりづらい。藤森氏は「90年代以降、非正規労働者や家族形態の変化によってほとんどの年齢層で持ち家率が低下した。生活基盤を整備する住まい政策が重要だ」と指摘する。
見過ごされがちなのは親の介護負担だ。日本総合研究所は氷河期世代のうち親を介護する人は33年に約200万人と23年から2.6倍に増えると試算する。下田裕介主任研究員は「貯蓄が乏しく介護離職の選択は難しい。仕事と介護の両立に大きな負担を強いられる」とみる・・・