カテゴリーアーカイブ:著作と講演

連載「公共を創る」第159回

2023年8月17日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第159回「官僚の失敗─官僚機構の機能不全」が、発行されました。

前回まで、官僚を巡る問題の概要や背景を説明してきました。次に、「官僚の失敗」といわれるものを分析します。官僚批判にはいろいろなものがありますが、大きく分けると3つに分類できます。
決裁文書改ざんなどは、仕事ぶりが適正かどうかという問題です。セクハラなどは、人としての立ち居振る舞いの問題です。そして3つめが、官僚機構の機能不全です。

官僚組織の失敗例として、原発事故、公害、薬害事件、不良債権処理、年金記録問題、統計偽装を取り上げました。
若い人は、話に聞いたことはあっても、詳しくは知らないでしょうね。その時々は大きな話題になっても、それらをきちんと記録し分析した本がないのです。しかし、失敗に学ぶことは重要です。関係者は話したくないでしょうから、誰がどのようにして分析し、記録として残すかです。

コメントライナー寄稿第13回

2023年8月16日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第13回「マイナカード問題と組織管理」が8月10日に配信され、15日のiJAMPにも転載されました。また時事総研のHPにも掲載されて、これは無料で読むことができます。

マイナンバーカード交付を巡る混乱が問題になっています。政府は行政の電子化を進めるために交付を急ぎましたが、他人の情報を登録するなどの多くの間違いが発生しています。この問題を、東日本大震災での被災者支援や、新型コロナウイルス対策と比べてみました。これらは、政策の実施過程として見ると、新しい課題への取り組みであること、政府を挙げて対応するため本部組織が作られたこと、広範な国民を対象とすることなどが共通しています。

問題の原因を、3つ上げました。
1つめは、本部組織での現場感覚の欠如です。新型コロナウイルス対策では、当初自治体に膨大な指示が出て混乱が生じましたが、自治体を知る総務省幹部が地方との連携を担うことになって円滑に進みました。
2つめは、本部組織の社風の問題です。各省庁や民間から集められた混成部隊の職員をどのようにして能力を発揮させるかです。
3つめは、幹部職員の人選です。組織の全体を把握し、首相官邸や大臣と意思疎通する人が必要です。

連載「公共を創る」第158回

2023年8月3日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第158回「官僚の役割─行政改革の影響」が、発行されました。
前回から、「官僚の役割の再定義」に入っています。社会の変化と行政の役割の変化に従って、官僚の役割も変えなければなりません。それに遅れていることが、官僚への評価の低下や若手職員の不満を生み、さらには社会の停滞を招いています。

最初に、1980年代から行われた行政改革の影響を述べます。これらの行革は、財政再建や小さな政府を目指しただけでなく、行政の役割を見直すことまで広がりました。そしていくつかの分野を除いて、官僚たちは抵抗することなく、むしろ積極的に参画しました。

しかし、いくつかの点で、問題も生じています。例えば文書の扱いです。かつては、決裁を経た文書を「公文書」と扱っていましたが、その後、職務上作成した文書は「行政文書」として扱われることになりました。今年春の国会審議で、行政文書の正確性が争われることが起きました。行政文書はかつての公文書と異なり、正確さは担保できません。それを問われても、困るのです。
また、予算と人員の削減は、官僚たちの新しい政策に取り組む意欲を削ぐことになりました。

そして一番の問題は、政治主導への適応です。政治主導は望ましいことなのですが、あまりに多くのことを首相と官邸が抱え込み、各大臣や各省官僚との役割分担ができていないように見えます。
さらに、政治主導と言われながら、法案や予算案の了解を取るために官僚が国会議員に説明に行き、国会審議の際には遅くまで待機をさせられます。野党の公開勉強会で、厳しい追及に会うこともあります。政策を考え実行するという本来の業務に、十分な労力を割けないのです。

連載「公共を創る」第157回

2023年7月27日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第157回「官僚の役割ー現状分析」が、発行されました。

政府の役割が福祉提供国家から安心保障国家へ転換することに関連して、「保障行政の法理論」を紹介しました。これは、1990年代半ば以降に、ドイツ公法学が発展させた理論です。日本では、板垣勝彦・横浜国立大学教授が研究しておられます。『保障行政の法理論』(2013年、弘文堂)。

政府機能の民営化は、行政法学に大きな問題を突きつけました。行政の活動を対象とし、その民主的統制や効率的運営を問うてきた行政法学の対象範囲が縮小するだけでなく、権力的行為も民間委託が進むことで、その存在理由を問われるようなったのです。それは、従来の公私の区分論も不安定にしました。
ところが民営化が進み、これまで行政が提供して生きたサービスを企業が提供するようになったことが、行政法学の視野を広げました。すなわち、行政機構内部にとどまっていた学問的考察が、サービスの利用者である国民をも含んだ形へと広がったのです。

今回の後半から、「官僚の役割の再定義」に入ります。行政の役割の変化に伴い、官僚の役割も見直さなければなりません。それは、この30年で進んだ官僚の地位の低下、近年の若手職員の不満と不安などにも応えることになります。

市町村アカデミー講義「目標設定と職場のマネジメント」

2023年7月26日   岡本全勝

今日は、市町村アカデミーで「目標設定と職場のマネジメント」の講義をしました。「管理職を目指すステップアップ講座」の一コマです。

このホームページや連載「公共を創る」でもしばしば指摘しているように、日本の労働者の生産性は先進国では最下位です。世界最高水準の経済力を持った日本が、なぜそんなに悪いのか。
それは、各人や各組織に対し、達成するべき目標が明確に示されていないからです。日本の職場の特徴であった「みんなで一緒に頑張ろう」「先輩を見て、去年を見て仕事をする」では、ダメなのです。

日本の組織の強みは、中間管理職です。欧米型と言われるトップダウン、かつての日本型と言われたボトムアップではなく、中間管理職(ミドル)が組織を支えています。その人たちに、力を発揮してもらうにはどのようにしたら良いか。生産性を上げるためにも、職員たちにやりがいを持ってもらうためにも、それが重要です。