カテゴリーアーカイブ:寄稿や記事

コメントライナー寄稿第24回

2025年8月19日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第24回「英語が国語になる日」が8月18日に配信されました。

解説には「日本語には、ひらがなとカタカナと漢字3種類の文字があります」と書かれていますが、アルファベットも使っていますよね。
外国語を翻訳せずカタカナ語で取り入れることも多いですが、最近では日本語にある単語も、カタカナ語に置き換えることが進んでいます。「行事」をイベント、「手助け」をサポートなどです。ところがさらに進んで、アルファベットのまま入れるようになっています。例えばSNS、LEDとか。

1500年ほど前に漢字と音読みを取り入れ、その後の日本語ができあがりました。それを考えると、現在は英語を取り入れているということです。いずれ、イベント、サポートは、event、supportと書かれるようになるのでしょう。そして、英語が国語となり、現在話している日本語は古語になるのではないでしょうか。
理由の1つ目は、英語が必須になりつつあることです。タクシー運転手や和風旅館の従業員も、英語を話しています。
2つ目は、言葉が変わる体験です。40年前に私が鹿児島で勤務したときは、言葉が通じなくて苦労しました。ところが最近は、沖縄の人も鹿児島の人も、ほとんど東京共通語を話しています。急速に変わったのです。
これを考えれば、3世代もあれば、日本語は英語に取って代わられるのではないでしょうか。文法や発音が異なりますが、英語教育と生活での必要性は、それを乗り越えるでしょう。

言葉だけでなく、広く考えると、文明の乗り換えと見ることができます。
1500年前の漢字の導入は、言葉だけでなく、中国思想の輸入でした。古事記の世界から、論語や仏典や史記の思想に乗り換えたのです。そして、江戸末期の開国以来、今度は西欧思想を輸入することに転換しました。法学、科学、医学などなど。この150年あまりを文明の乗り換えとみれば、翻訳とカタカナ語は転換期の手法だったのです。その完成が、日本語から英語への切り替えでしょう。

文明の乗り換えは、明治以来150年をかけてやってきましたから、多くの日本人にとって違和感ないでしょう。憲法をはじめとするこの国のかたちを、西洋風に変えたのですから。しかし、国語の転換は、私にとって悲しいことです。紫式部や夏目漱石はこの事態を見たら、何と言うでしょうか。国語学者に、意見を聞いてみたいです。

コメントライナー寄稿第23回

2025年6月24日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第23回「日本の政治はなぜつまらないのか」が6月19日に配信され、24日にはiJAMPにも転載されました。

毎日、報道機関が政治情勢を伝えます。でも、内容は面白くないと思いませんか。政治家や報道機関は熱意を持って語りますが、多くの国民は関心を持たずにやり過ごしているようです。はっきり言って、日本の政治と政治報道はつまらないのです。

政治とは、意見の異なる人たちが対決と協議をして、結論を導く過程です。ところが日本では、自民党と官僚が「密室」で政策を決めてしまい、その過程が国民に見えません。国会では、質問は事前に通告され、官僚が用意した資料をもとに閣僚は回答します。しばしば「激しい論戦が…」と報じられますが、ほとんどの場合、結果は見えています。
民主主義は、国民という観客の興味を引きつけ支持を得ることが必要で、そのためには演技も必要になります。ところが、そのような場面が少ないのです。

政治家が、夢のような演説や公約をすることもありますが、たいてい実現手法も財源も示されず、願望の総花的な一覧表に近いものです。国民は、その非現実性を見抜いています。「改革」を主張しても、具体的に何を切り落とすのかを示しません。しかし、痛みのない改革はあり得ません。国民は訊きたいのです。「どこを切るのですか」「減税の財源はどこにあるのですか」「赤字国債で将来の国民にツケを回すのですか」と。報道機関も、質問してください。

読売新聞「あすへの考」に載りました

2025年6月8日   岡本全勝

今朝6月8日の読売新聞「あすへの考」に、私の発言「人口減令和の処方箋 地方創生本気で大胆に…」が載りました。吉田清久・編集委員の取材を受け、思っていることを話し、質問に答えました。話がいろいろなことに飛んでしまいました。記事を読んで、このように構成するのかと、発言した本人が感心しています。

この問題は即効薬はなく、長期的に取り組む必要があります。そして、モノを作るのではなく、国民の意識を変える必要があります。それは行政の不得意な分野で、行政だけではできず、企業や非営利団体などの力も必要です。私の経験を元に、復興庁でうまくいったことを説明しました。
中見出しに「創生本部を常設の「庁」に。中長期の具体的目標設定も必要」とあります。

・・・石破政権は最重要政策に「東京一極集中是正」と「地方活性化」を掲げた。「令和の日本列島改造」と銘打ち、地方活性化への取り組みに総力を挙げる。政府が地方創生を最初に看板に掲げ、司令塔に地方創生相を新設したのは2014年のことだ(第2次安倍政権)。初代の地方創生相は石破首相だった。しかし、目立つ成果は出ておらず、人口減少や地方の地盤沈下に歯止めがかからない。再生策に決め手はないのか。地方復興に長年取り組み、霞が関で「ミスター復興」と呼ばれた岡本全勝・元復興庁次官に「地方再生・令和の処方箋」を聞いた。(編集委員 吉田清久)・・・

・・・地方の地盤沈下の原因は〈1〉過疎化と東京一極集中〈2〉少子化と人口減少―が挙げられます。
「過疎化と東京一極集中」で留意すべきは、その背景にある心理的な側面です。
誰しも「大人になったら親元を離れ、きらびやかな東京に出てみたい」と思う。かくいう私も奈良県明日香村で生まれましたが、高校卒業後は村を離れたままです。
地方には働く場所が少ない。仕事がなかったら、地元を離れた人は戻らない。この事実は私が復興に関わった東日本大震災でも痛感したことです。
とくに若い女性が地域に根付かないと指摘されています。高学歴化が進み、女性も高校を卒業して東京の大学に多く進学するようになりました。地域に戻らないのは、若い女性が希望するような職場がないからです・・・

次のような位置づけも主張しました。
・・・政治家は国民に対し、国家のグランドデザインを明確に示すべきだと考えています。その意味で、石破茂首相の施政方針演説(1月)に注目していました・・・
・・・国民に、安心できる将来像を示すことは政治の大きな役割です。冒頭に述べた石破首相の「楽しい日本」の提唱もこの文脈で考えるべきです・・・
・・・国の針路を示す羅針盤を失い、向かうべき方向が定まっていません。地方再生が、かけ声だけで、問題解決に至らないのもそのためではないでしょうか。
「令和版・地方再生の処方箋」を見いだす鍵はそこにあります・・・

大きな記事で、見つけた知人からたくさん反応がありました。「中央省庁改革で組織の減量を担当した役人が、新しい役所の創設を提言するのか」「紙面下の長嶋さんの写真より大きいのは問題だ」とも。すみません。
全身像の写真の背景は、市町村職員研修所の中庭です。「どこかの料亭の庭かと思いました」「ホテルの庭ですか」といったメールも来ました。

首相官邸の日程管理

2025年5月16日   岡本全勝

日経新聞ウエッブ版に、清水真人・編集委員の「首相官邸は1日にして成らず 政策の前に人事と日程管理」(2024年8月8日)に、私の発言が載っていることを教えてもらいました。これは、7月30日にPHP総研フォーラム「官邸の作り方ー総裁選を前に政治主導の未来を考えるー」に出演した際の発言です。1年近く前の話です。

・・・首相官邸は1日にして成らず。新首相が官邸を円滑に立ち上げるには3カ月の準備期間が欲しい――。政策シンクタンクPHP総研のこんな提言が永田町で関心を集めている。新首相にとって新しい目玉政策の展開も大事だが、その前に政権運営を安定させる官邸中枢の人事配置、重要日程の掌握や危機管理の備えが先決だと訴える・・・

・・・元復興次官の岡本全勝「08〜09年の麻生太郎内閣では、私を含め2人で首席首相秘書官の役割を分担した。首相の一番重要なリソースは時間だ。日程管理では首相に誰を会わせるか会わせないか、いつ何分、首相の時間を取るかが最も大事な仕事だった」

7月30日、PHP総研がこの報告書をテーマに開いたウェビナー。牧原や岡本らパネリストは日程管理の重要性で一致した。意外にも聞こえるが、報告書は新首相が早く展開したいはずの新しい政策について「政策プログラムの着手は急ぐな」と戒める・・・

日経新聞「花火頼みの政治の行方」に出ました

2025年5月11日   岡本全勝

5月11日付けの日経新聞「風見鶏」、山内菜穂子記者の「花火頼みの政治の行方」(紙面の見出し)、ウエッブ版では「政治は「花火」頼みか 子育てケアマネ論争が映す支援のあり方」に、私の発言が引用されました。文脈がわからないと、私の発言の位置づけが理解できないので、その前後を少々長めに引用します。記事は結構長いものです。ご関心ある方は、原文をお読みください。

・・・4月中旬、子育て支援団体などが国会内である会合を開いた。「子育てケアマネ」導入や保育の拡充を求める集会だ。多くの与野党の議員が駆けつけた。
子育てケアマネはフィンランドなどの事例を参考にした取り組みで、専門家が妊娠期から母親と信頼関係を築き、相談にのるという。虐待や産後うつを防ぐ役割も期待される。子育て世代に直接届く「経済的支援」ではない。
元議員が「3年以内に全家庭に実現する」などとX(旧ツイッター)に書き込むと、思わぬ反応があった。
「むしろ障害児支援や病児保育を充実して」「保護者が休める環境づくりが最優先では」――。賛成を上回る勢いの反対論が出た。
集会に参加した日本維新の会の金村龍那衆院議員は「最適な支援につなぐのが子育てケアマネだ」と導入を唱えていただけに、ネットの声に驚いたという。
子育てのニーズは多様だからこそつかみにくい。政治の訴えは誰にでもわかりやすい経済的支援に偏りがちだ・・・

・・・少子化や持続可能な社会づくりに詳しい日本総研の村上芽チーフスペシャリストは「子育てしにくいと感じる根本的な原因は一つではない」と語る。「雇用・労働環境など経済的支援では解決できない課題も含め、長期的な議論が必要だ」と強調する。
たとえば、経済的支援では改善しない男性を中心とした長時間労働の問題。育児の負担が偏り、孤独な子育てに悩む女性は多い。
休息や気分転換に子どもを一時預けたいとの要望は強い。自治体によっては保育園などで生後6カ月程度から一時保育する制度があるが、都市部では予約枠がすぐに埋まりがちだ。
枠を増やすのに壁になるのは保育士不足だ。政府は処遇改善策に取り組むが、24年の平均月給は全産業平均に比べてなお8万円ほど低い。処遇改善は必要性が高い割に、子育て世帯が実感しやすい経済的支援に比べて目立たない。

麻生太郎政権で首相秘書官を務めた岡本全勝元復興次官は給付金などの経済的支援を念頭に「選挙を意識し、分かりやすい『花火』を打ち上げ過ぎだ。その手前にある問題や中長期の課題に目を向けなければ、政治と民意の間にずれが生じる」と話す。
翻って子育てケアマネを巡る反対論。そこには新たな政策よりも、目の前の問題の解決を優先してほしいとの思いがうかがえる・・・