カテゴリーアーカイブ:コメントライナー

コメントライナー寄稿第27回

2026年3月10日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第27回「東日本大震災から15年-未来への課題」が3月9日に配信され、3月10日のiJAMPにも転載されました。

2011年3月11日に東日本大震災が発生してから、早いもので15年が経ちます。1000年に一度の大津波と、経験したことのない原発事故が併せて起こりました。私は発災1週間後から被災者の生活支援に当たり、引き続き復興庁統括官や事務次官、福島復興再生総局事務局長として、10年近くにわたって復興に従事しました。

津波被災地では、約10年で復旧工事を終えました。400近くもの市街地や集落を、移転したり土地をかさ上げして造り変えたりする大工事でした。より大きな課題は、公共インフラを復旧しても、町のにぎわいが戻らないことです。商店が再開されないと住民は暮らしていけず、働く場所がない町には人は戻ってきません。そこで、国が事業再開を支援することにしました。災害復旧の哲学を、「国土の復旧」から「暮らしの再建」に変えました。
東日本大震災での教訓は、その後の災害に生かされています。しかし、予想されている南海トラフ地震では、東日本大震災をはるかに超える被害が想定されています。一つの課題は、復興にかかる財源です。

原発事故からの復興は、まだ道半ばです。放射線量が高く、避難指示を解除できないところもあります。廃炉作業の見通しは立たず、災害はまだ終わっていないのです。今後の道のりの長さを考えれば、「東電福島第1原発事故復興基本法」を作ることを提案しました。

コメントライナー寄稿第26回

2026年1月13日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第26回「省庁再編から25年 これまでとこれから」が1月5日に配信され、1月13日のiJAMPにも転載されました。
2001年1月6日に新府省が発足してから、ちょうど25年が経ちます。私は、省庁再編を実施するために内閣に置かれた中央省庁等改革推進本部で参事官を務め、組織の減量を担当しました。あれから四半世紀が経ちました

省庁の再編は、23あった府省庁を13にほぼ半減するものでした。大胆な改革でしたが、再編後は大きな変化なく現在に至っています。府省については、防衛庁が防衛省に昇格し、大臣が置かれるものとして復興庁とデジタル庁が設置されました。府省に置かれる庁や局・統括官などについては、多くの再編が行われています。課題の変化と新しい事務を飲み込みつつ、総数は大きく増やさず柔軟に対応しているようです。

内閣機能の強化の面では、予想を超えて内閣官房が膨張しました。国家安全保障局、内閣人事局などが新設され、首相や官房長官が主宰する本部や会議は88にもなっています。職員定数も大きく増えました。首相指示の政策の企画と、各省にまたがる案件の調整が増えているからでしょう。性格上、内閣官房をどのように組織し運用するかは、官邸主導の在り方と連動した課題でしょう。

もう一度、省庁再編を行おうという議論は少ないようです。省庁の再編は、各府省の機能をどのように括るかの議論です。それだけならばあまり意義はありません。議論するなら、どのような哲学で行うかが論点です。
私は、「生活者省」を設置すべきだと考えています。明治以来、政府は産業振興と公共サービス提供を任務として、省庁の多くが生産者と提供者側に立っていました。しかしその使命を終え、政府の役割は国民生活の安全と安心に重点が移っています。消費者庁、こども家庭庁、内閣府男女共同参画局、内閣府政策統括官(共生・共助担当)、厚生労働省社会・援護局など、これらの部局を集めて一つの省にするのです。そして、政府の使命を明らかにするのです。

コメントライナー寄稿第25回

2025年11月4日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第25回「官製雇用格差を止めよ」が10月27日に配信され、11月4日のiJAMPにも転載されました。

職員の3人に2人が非常勤という役場を想像できますか。
政令指定都市を除くその他の市区町村(1721団体)では常勤92万人に対し非常勤47万人で、合計に占める非常勤の割合は34%です。実に3人に1人が非常勤です(2024年4月現在。会計年度任用職員で任用期間が6か月以上かつ1週間の勤務時間が常勤職員の半分以上の職員に限る)。
最も比率が大きい町では68%(常勤126人、非常勤262人)ですから、3人に2人です。60%を超える町村は8団体、50%以上は117団体、33%以上だと1000団体を超えます。
政府は国地方を通じて行政改革を進め、職員数を削減し、給与を据え置きました。その結果です。

民間企業は30年以上の間、リストラという名の従業員削減を行い、ベースアップを止め、業務を外部化して非正規労働者に切り替えました。各企業の業績は回復したでしょうが、日本全体としては勤労者所得が増えないのですから消費は増えません。「結婚できない、子どもを持てない」という若者の悲鳴は、社会全体の不安につながっています。日本の長期停滞の原因にもなったのです。
景気を回復させるには個人に回るお金を増やし、社会の不安を減らすには雇用格差を減らす必要があります。

現場では仕事がきつく、悲鳴が上がっています。対応策として、まずは会計年度任用職員のうち、能力があり希望する者を常勤職員に切り替えて、安定して働けるようにすべきです。しかし、財源手当や制度見直しは各自治体では限界があり、政府が取り組むべきです。

コメントライナー寄稿第24回

2025年8月19日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第24回「英語が国語になる日」が8月18日に配信されました。

解説には「日本語には、ひらがなとカタカナと漢字3種類の文字があります」と書かれていますが、アルファベットも使っていますよね。
外国語を翻訳せずカタカナ語で取り入れることも多いですが、最近では日本語にある単語も、カタカナ語に置き換えることが進んでいます。「行事」をイベント、「手助け」をサポートなどです。ところがさらに進んで、アルファベットのまま入れるようになっています。例えばSNS、LEDとか。

1500年ほど前に漢字と音読みを取り入れ、その後の日本語ができあがりました。それを考えると、現在は英語を取り入れているということです。いずれ、イベント、サポートは、event、supportと書かれるようになるのでしょう。そして、英語が国語となり、現在話している日本語は古語になるのではないでしょうか。
理由の1つ目は、英語が必須になりつつあることです。タクシー運転手や和風旅館の従業員も、英語を話しています。
2つ目は、言葉が変わる体験です。40年前に私が鹿児島で勤務したときは、言葉が通じなくて苦労しました。ところが最近は、沖縄の人も鹿児島の人も、ほとんど東京共通語を話しています。急速に変わったのです。
これを考えれば、3世代もあれば、日本語は英語に取って代わられるのではないでしょうか。文法や発音が異なりますが、英語教育と生活での必要性は、それを乗り越えるでしょう。

言葉だけでなく、広く考えると、文明の乗り換えと見ることができます。
1500年前の漢字の導入は、言葉だけでなく、中国思想の輸入でした。古事記の世界から、論語や仏典や史記の思想に乗り換えたのです。そして、江戸末期の開国以来、今度は西欧思想を輸入することに転換しました。法学、科学、医学などなど。この150年あまりを文明の乗り換えとみれば、翻訳とカタカナ語は転換期の手法だったのです。その完成が、日本語から英語への切り替えでしょう。

文明の乗り換えは、明治以来150年をかけてやってきましたから、多くの日本人にとって違和感ないでしょう。憲法をはじめとするこの国のかたちを、西洋風に変えたのですから。しかし、国語の転換は、私にとって悲しいことです。紫式部や夏目漱石はこの事態を見たら、何と言うでしょうか。国語学者に、意見を聞いてみたいです。