カテゴリー別アーカイブ: 主な著作

執筆。平成27年の回顧、その2

さて今年は、少し執筆が進みました。
『地方財務』2015年4月号に、「復興の現状と課題―未曾有の事態へどのように対応してきたのか」を書きました。これは、4年経った時点での復興の現状と課題だけでなく、これまでにない課題にどのように対応したか、そしてどのように組織を作ったかを書きました。私と職員たちの、この4年間の努力=技と作品=苦労の記録です。
続いて、もうじき発災5年になるので、これまでの記録を残しておこうと、原稿を書いています。役所的な記録でなく、読み物にしました。私がしたことや見たこととともに、企業やNPOの貢献も書こうと、民間人2人と共著です。
これまで何度も、書きかけては挫折したのです。すぐに時間が経って状況が変わり、書いた原稿が使い物にならなくなりました。しかし、5年ということは、もう限界でしょう。今回は、編集長に締めきりを決めてもらい、また2人を引きずり込むことで、退路を断ちました。3月には、出版される予定です。乞うご期待。今日も、その校正をしています。
もう一つは、連載「明るい公務員講座」です。「明るい係長講座」(1996年)を、いつかは本にしようと考えていたのですが。これも、なかなかきっしょが立たず(「きっしょをたてる」は関西弁だそうです)。今回、連載の形で、自分を追い込みました。
こちらの方は、まだ連載7回です。原稿は第10回まで渡してあるのですが、編集長に今後の予定を聞いたら、30回までの発行日程が送られてきました。え~、そんなに続きまへんわ。
というので、この9月からは、単行本と連載の原稿執筆とで、「二正面作戦」を余儀なくされていたのです。しかし、私の経験を後輩に伝え、世間に理解してもらうことも義務だと心得て、休日に頑張っています。好きな美術館巡りや散歩も辛抱して。

省庁改革の現場から

2001年、出版社ぎょうせい刊

平成13年1月に省庁改革が実行され、省庁の数は半分に削減されました。新しく内閣府も作られました。経済財政諮問会議が作られたのも、この改革です。私は、この改革を準備するために内閣に設置された「改革本部」に2年半勤務しました。その体験と現場から見た改革をまとめたのが、この本です。
明治時代に内閣制度ができて以来、初めての本格的省庁改革でした。また、単に数を減らすだけでなく、政治主導、政策評価、独立行政法人など、行政システムの改革でもありました。戦後いくつかの行政改革がありましたが、もっとも成功した例でしょう。
本書では、今回の改革の概要と、またなぜ改革が成功したかを解説してあります。あわせて、改革後の国家行政機構の概要も説明してあります。

平成14年2月10日の読売新聞読書欄にも、取り上げられました。国の行政機構の入門書にもなっています。これから国家公務員になろうと思っておられる人は、一度お読み下さい。類書がないので、役に立つと思います。

「省庁改革の現場から」

「省庁改革の現場から-なぜ改革は進んだか」
目次
第一章 中央省庁等改革推進本部
1 平成10年の夏
2 事務局の仕事
第二章 何が変わるか、変わったか
1 省庁の再編
 (初めての大幅削減、省庁間の政策調整)
2 政治主導の強化
 (内閣機能の強化、内閣官房の強化、内閣府、副大臣・大臣政務官)
3 スリム化
 (国の行政組織の概要、組織整理、公務員の定数削減、機能の減量)
4 独立行政法人制度の創設
5 評価と公開
 (政策評価、情報公開)
第三章 どうして改革は進んだか
1 経過
 (行政改革会議、基本法)
2 今なぜ省庁改革か
 (戦後50年の成果と負の遺産、これまでの行政改革)
3 なぜ改革は進んだか
4 地方自治体に活かせること
 (スリム化からシステム改革へ)
第四章 残されたこと
1 批判と課題
2 「この国のかたち」と次なる改革
 (改革の構図)
最終章 平成13年1月6日

「新地方自治入門-行政の現在と未来」

2003年10月発行

 

東京大学での講義(2002年度)を加筆し、専門誌『地方行政』(時事通信社)に「地方自治50年の成果と課題」という表題で連載しました(2002年7月~03年4月)。それを、単行本にまとめ「新地方自治入門-行政の現在と未来」として、2003年10月に時事通信社から出版しました。

これまでの地方自治の教科書は、地方自治法の解説です。本書は、制度の解説だけでなく、それが果たした機能や、果たしていない問題点を中心に解説しました。これまでにない本だと自負しています。地方公務員や議員さん、一般の方にも読んでもらえるよう、記述にも工夫を凝らしました。
私は、戦後の日本の地方自治体は、ナショナル・ミニマムと社会資本整備という課題を、実に良く達成したと考えています。日本の経済成長の成果の上に、行政機構や地方財政制度がうまく機能したからです。「明確な目標」「潤沢な財源」「効率的な行政機構」が、成功を支えた要件でした。しかし、豊かになったのに、日本人は幸せを感じません。住民も、地方自治体に対し、満足を感じません。自治体がこのままの路線を続けても、住民は評価してくれないでしょう。これまでの課題がほぼ達成された今、地方行政は次なる目標を探しあぐねています。また、現在の地域の課題に必ずしも的確に答えていないと思います。
地方行政そして日本の政治は、目標を転換するべき時がきています。それはまた、日本経済・日本社会・日本人の思考の転換でもあります。成功の3条件はそれぞれ「目標の喪失」「財政の制約」「行政の機能不全」という足かせになりました。これまでの行政は、「モノとサービス」の充実でした。それは、お金があれば「買え」ました。それに対し、これからの地方自治に求められているのは、「関係と参加」です。これまでの成果を振り返り、「豊かな社会の政治と行政」に求められていることは何かを考えることで、日本社会を分析しています。

先日予告していたように、第4刷りができました。一昨年の10月に出版してから、2年間で4刷りです。嬉しいですねえ、多くの人に読んでいただけるのは。いくつかの大学や大学院の授業で、テキストや参考書に使っていただいているようです。
本人は、「これからの地方行政の標準的教科書」と思っています。だって、これまでの教科書は、地方自治法の解説であったり、地方財政制度の解説であって、地方行政の全体像を書いた本ってないですよね。また、その機能や効果、そして問題点も書いていません。それに比べ、拙著は入門と銘打って、コンパクトな本ですが、かなり広く高度なことが書いてあるんですよ。「類書がない」というのが、自慢です。目指せ、売り上げ部数『バカの壁』(こればっかり言ってますね。笑い)。(2005年6月30日)

(拙著が、大学入試に使われました)
今日、ある予備校から、書類が届きました。何だろうと思ってみると、私の著書の転載使用許可を求める依頼でした。なんと、拙著『新地方自治入門』の文章が、大学入試に使われたとのこと。その予備校では、2014年度大学入試小論文問題集を発行するので、問題を転載するのだそうです。
私の文章を使ってくださったのは、金沢大学人間社会学部です。拙著の第11章「住民の意識」から6ページ分を引いて、3つの問を作ってあります。それぞれ、200字~300字で答を書く、小論文試験です。
この本の第3部では、これからの地方行政を考える際に、取り組むべき課題(対象)、誰が解決するのか(主体)、どのように解決するのか(手法)という「機能としての地方行政の課題」とともに、地方公共団体に何を期待するのか、そして住民の意識を変える必要があるという「思想としての地方行政の問題」があることを述べました。その最後の部分です。
この本は、東大の大学院での授業を本にしたものですが、大学生だけでなく自治体の職員や議員さんに読んでもらうように平易に書きました。また、この第3部は、狭い意味の行政学でなく、日本社会の問題として広い視野で書いたので、高校生にも理解してもらえるのでしょう。もちろん、高校生が読むような本ではないので、受験生は初見だったでしょう。取り上げてくださった先生に、感謝します。
それにしても、うれしいですね。とともに、出版から、もう11年も経っています。版元でも、在庫はなくなりました。古本では、出ているようです。こんなに評価してもらえるのなら、早く改訂しなければなりません。でも、他に書かなければならないテーマがあって、そちらも放置したままですし・・。(2014年6月9日)

(拙著が、大学入試に使われました。2)
先日、拙著『新地方自治入門』の文章が、金沢大学の入試に使われ、ある予備校の入試小論文問題集に、それが載ることを書きました(6月9日)。
今度は、別の出版社から、同じような転載許可の求めが来ました。うれしいですねえ。
ところで、受験生にとって、私の文章は難しいのでしょうか、また入試の設問は難しいのでしょうか。(2014年8月19日)

目次

第Ⅰ部 地方行政の成果
第一章 地方自治五十年が得たもの
1 戦後日本の経済発展 2 地方行政の成果 3 成功を支えた条件 4 成功の先にあるもの

第Ⅱ部 地方行政の現在
第二章 地方行政の仕組み
1 中央政府と地方政府 2 地方公共団体の仕組みと仕事 3 仕事の仕組み
第三章 地方公共団体の問題点
1 規模の問題 2 分権の必要性 3 総合行政主体を目指して
第四章 地方財政の現状
1 暮らしと地方財政 2 市の財政 3 地方財政と国家財政の関係 4 財源保障と財源調整の仕組み
第五章 地方財政の課題
1 巨額の財政赤字 2 財政再建のために  3 国からの自立を目指して 4 住民自治を支える
第六章 地方行政がなすべきこと
1 地域社会の課題と地方行政の仕組みの課題 2 新しい地域の問題群 3 新聞記事と市の総合計画のずれ 4 豊かな社会の地方行政を考える

第Ⅲ部 地方自治の未来
第七章 地域の財産とは
1 住み良い町の条件 2 広い社会的共通資本 3 行政目標の再検討を
第八章 公の範囲
1 公共主体の分散 2 サービスの主体 3 公の機能とは
第九章 行政の手法
1 手法の分類 2 評価の必要性 3 手法が難しい政策分野
第十章 政治と行政の在り方
1 地方政治と地方行政の違い 2 政治に期待されること 3 公と政治の在り方
第十一章 住民の意識
1 意識の分権の必要性 2 私たちの思考の枠組み 3 二十世紀型思考を超えて

著作の解説1 地方行財政

「歴史遺産」古いものばかりです。
1 地方財政

①地方交付税・地方財政の解説は、「地方交付税-仕組みと機能」をご覧下さい。実務関係者・研究者からは「わかりやすい」との評価をいただいています。経済白書の参考文献にも引用されました。

②地方財政改革論が盛んです。経済財政諮問会議の提言等を踏まえ、いくつかの「改革」に着手しました。その概要と交付税の課題について、私の考え方を地方財政改革論議」として出版しました。
「この本は、第2章の地方交付税に対する一般的な非難への反論のところが最もおもしろい・・」週刊ダイヤモンド2002年7月20日号木村陽子先生の書評

③「地方税財源充実強化の選択肢」月刊『地方財政』(地方財務協会)2001年4月号は、税源移譲や留保財源率の引き上げなどを論じた論文です。その後これらの改革が動き出したことについては、感慨無量のものがあります。その後の動きを取り入れて解説したのが、上記の「地方財政改革論議」です。

④「平成15年度地方交付税法の改正と最近の議論について」月刊『地方財政』2003年4月号は、15年度の地方交付税の改正(留保財源率の引き上げ・三位一体改革の芽だし、国会での議論)と、最近の交付税をめぐる議論を解説してあります。三位一体改革と財源保障の必要性、財源不足、市町村合併と交付税について述べてあります。「地方財政改革論議」の続きです。

「近年の地方交付税の変化」月刊『地方財政』2004年1月号。最近の変化をまとめ、交付税制度50年の中に位置付けました。

進む三位一体改革-評価と課題月刊『地方財務』2004年8月号、9月号は、ズバリ三位一体改革の進捗状況を評価し、またこれからの課題を整理したものです。地方財政改革論議」の増補です。「続・進む三位一体改革」(同2005年6月号、2006年7月号)はその続きです。

⑦小西砂千夫関西学院大学教授との対談「地方交付税制度50年:三位一体改革とその先の分権へ」月刊『地方財務』1月号は、交付税と地方財政計画のあり方を、過去と未来にわたって、制度設計にまで踏み込んで議論したものです。大きな視野で議論しました。小西先生の問題提起が厳しく、これまでにない議論になっています。ふだん、制度を所与のものとして考えがちですが、今回の対談は、あり方にまでさかのぼって、そして先を読んでという、制度設計の議論にまで入っています。

「地方財政の将来」神野直彦編『三位一体改革と地方税財政-到達点と今後の課題』(2006年11月、学陽書房)所収は、三位一体改革の到達点を踏まえ、今後の課題と進め方を解説しました。
構成と執筆者は、次の通りです。意義と課題(神野先生)、経緯(佐藤文俊総務省自治財政局財政課長)、到達点・国庫補助負担金の改革(務台俊介前調整課長)、同・地方税の改革(株丹達也前自治税務局企画課長)、同・地方交付税の改革(黒田武一郎交付税課長)、地方財政の将来(私)です。

「三位一体改革の意義」「今後の課題と展望」『三位一体の改革と将来像』(ぎょうせい、2007年5月)所収
第1章総説の第1節「三位一体改革の意義」と第4節「今後の課題と展望」を、私が執筆しました。一部、「地方財政の将来」(神野直彦編『三位一体改革と地方税財政』学陽書房所収)と、重複している部分があります。ただし、今度の論文には、年表(目標の設定と達成度)や税目別税源配分の表なども、つけることができました。早速訂正です。p6の11行目、「その要因の2つは」とあるのは、「その要因の1つは」の間違いです。

先日、行政学の泰斗(私の行政学のお師匠様)とお話ししていたら、「必要があって、岡本君が書いた「進む三位一体改革」(月刊『地方財務』連載)を読んだけど、やたらと長かったね」とのお言葉。
「先生、すみません。あれは、関係者向けの実況中継だったんです。一冊の本にまとめるときは、そぎ落とそうと考えていたんですが、時機を失してしまいました」とお詫びしました。その代わりと言ってはなんですが、今回の論文が、要約になっています。短くすると、本当に言いたいことだけになって、わかりやすくなっています、自画自賛です、はい。(6月1日、3日)

2 地方行政
①「制度と運営と-ヨーロッパで地方自治を考える-」月刊『地方財政』2002年12月号は、2002年秋にヨーロッパ4カ国を調査した報告書です。地方自治に関して、住民の意識の違いを指摘し、これからの分権には、制度の運用と自治の意識が重要であることを述べています。

②「失われた10年と改革の10年-最近の地方行財政の成果」月刊『地方自治』2001年5月号は、1990年代の10年間が、地方行政にとっては大きな改革の10年であったことを述べたものです。

③「市町村合併をめぐる財政問題」月刊『自治研究』2003年11月号は、現在進められている合併と財政との関係、さらにこれからの小規模町村の財政の見通しを述べてあります。


(拙著、古典に?)
月刊『地方財務』7月号が、財政担当課職員にアンケート調査した「実務に役立つ120冊」を特集しています。そのうち上位10冊は、ランキング形式で掲載しています。
なんと、拙著『地方交付税―仕組みと機能』が第7位に、『新地方自治入門』が第9位に入っています。2冊とも、出版して時間が経ち、内容も古くなっているし、版元切れで古書でしか手に入りません。なのに、投票してくださった方に、感謝します。どのような理由で、この2冊が推薦されたか、コメントも載っています。
先日も書きましたが、なかなか改訂できず、申し訳ありません。
なお、第8位に入った、『地方交付税のあらまし』(各年、地方交付税制度研究会編)も、私が交付税課課長補佐の時に作ったものです。後輩達が、毎年、内容を更新しています。うれしいですね。(2013年7月4日)