カテゴリーアーカイブ:社会の見方

非国家組織、2億人支配

2024年6月7日   岡本全勝

5月31日の日経新聞1面連載「Polar Shift サウスの論理(5)」は「非国家組織 世界揺るがす 2億人支配、旧秩序に牙」でした。

・・・「無政府状態に陥り、ハマスが再び台頭する可能性がある」。ブリンケン米国務長官は5月12日、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスを攻撃するイスラエルに懸念を示した。
イスラエルはハマス壊滅を誓うが、戦闘終結後に誰がガザを統治するのか明確にしていない。後ろ盾の米国は、戦後構想なきガザでハマスが支配者に居座り続けるシナリオを恐れる。
ガザ住民も国際的に認められたパレスチナ自治政府ではなく、ハマスに頼る人が多い・・・

赤十字国際委員会の推定では、国家ではない武装組織の支配下で暮らす人々は2023年夏時点で世界に1億9500万人だそうです。450以上あるこうした武装組織のうち、41%が徴税し、25%が司法・紛争解決の仕組みを持ち、16%が医療を提供しているそうです。
日本の室町時代、幕府が任命した守護の統制が及ばず、力のあるものが地域を支配したようなものでしょうか。

ものを売る主体性を消したコンビニ

2024年6月6日   岡本全勝

5月30日の朝日新聞、松原隆一郎先生の「主体性消したコンビニ、重なる日本」から。

・・・1974年に東京・豊洲でセブン―イレブンの1号店が開店してから半世紀。コンビニエンスストアは増え続け、近年は頭打ちとはいうものの、業界全体で5・6万店弱に達している。セブン―イレブンはアメリカが本社だったが日本側が経営方針を換骨奪胎、のちに本社を買収している。日本色の強い経営体だ。帰宅前に一度は寄る、地方都市で見当たらないと不安になるなど、日本人の日常意識に食い込んでいる。

流通はそれぞれの時代に価値を提案してきた。「よい品をどんどん安く」(ダイエー、中内功)や「量から質へ」「無印良品」(西武百貨店、堤清二)、「小売業は平和産業である」(イオン、岡田卓也)といった具合に。
ではコンビニは何を残したのか。誤解されている面があると感じる。コンビニの最大の特徴は、モットーを掲げた流通の雄たちとは異なり、理想や思想を持たない点にある。
コンビニが実現し、いまなお持続しているのは徹底した顧客データの収集と分析だ。武器となったのが1982年に導入されたPOSシステムだった・・・
データの収集と分析を徹底し、結果は過去のものとして短時間で破棄される。コンビニが表現しているのはみずから提案する価値ではなく、顧客の「いま、ここ」の平均的な欲求なのだ。個人の生き方や自由な暮らしを支える装置ではあるが、それは鏡のように私たちの相貌を映し出す。個や自由は私たちが求めるから提供されるにすぎない・・・

ものを作り売る側の主体性を滅却した点で、コンビニは日本文化の到達点である。戦後日本の教育では主体性や個性が重視された。破産も恐れず技術革新に突き進むビル・ゲイツやイーロン・マスクのような個性が生まれないことは日本経済の宿痾であるかのように言われた。その一方で獲得したのは、主体性を消去する文化だった。コンビニは日本そのものの似姿である・・・

職種が分からない採用

2024年6月5日   岡本全勝

5月25日の朝日新聞に「ミスマッチ解消、「配属ガチャ」減少 総合商社、採用時の確約広がる」が載っていました。

・・・幅広い事業を手がける総合商社では、入社後に配属された分野で長く勤め、その道のプロになることが求められてきた。会社員人生を左右する最初の配属は、会社が適性をみて決めてきたが、近年は事前に配属先を確約して採用する動きも広がっている。運しだいの配属を「配属ガチャ」と不安視する若者が増えたことなどが背景にある。

住友商事は来春入社の新卒採用から、配属先を採用時に確約する「WILL選考」を導入した。採用予定約100人のうち3割程度を対象とする予定で、約30部署から選べる。残りの約7割は、配属先を決めない通常の選考とする。
同社の広報担当者は「配属の希望をかなえてほしい、という学生の声を反映した。最近の学生はキャリア観をしっかり持っており、配属のミスマッチで辞めていく人も増えている」と話す。
各社の取り組みの背景には若者の意識の変化がある。リクルートが今春卒業の学生を対象にした調査(約1300人が回答)で「最初の配属先が希望と異なる場合、希望の仕事に就くまで転職せずに働き続けられる期間」を聞いたところ、「3年以内」との回答が30・8%にのぼり、「1年以内」も4・8%、「5年以内」が16・4%だった。

一方、伊藤忠商事は98年度から事前に配属部門を決める「先決め採用」をしてきたが、応募者が減少傾向だったため、20年度入社から通常選考だけに戻した。学生からは「商社の仕事は多岐にわたるため、希望部門を絞りきれない」「配属は会社が自分の適性を見て決めてほしい」といった声もあったという・・・

6月4日には「こっちの企業「ガチャ」ないぞ 志向に合わせ、配属先や勤務地「確約」」が載っていました。
・・・来春卒業する大学生や大学院生を対象とした企業の採用選考が進んでいる。6月から政府主導の「就活ルール」上で採用選考が解禁されたが、企業の採用意欲は高く、学生優位の「売り手市場」が続く。学生を引きつけようと、入社直後の職種や勤務地を「確約」する企業が相次いでいる。
1日から採用面接を始めた東京海上日動火災保険は、2025年卒業の学生向けにコース別採用を導入した。入社後に経営企画や商品開発などに進むコースや、企業営業などに進むコースなど、配属先によって四つに分けて募集した。
採用担当者は「今の学生は、自身でキャリア形成をしていきたい思いが強くなっていると感じる。コース別採用で、それぞれの仕事についてもあらかじめ深く理解してもらい、学生の志向や適性に合った採用を実現していきたい」という。
パナソニックホールディングス(HD)は25年入社の新卒採用で、約150の選考コースを用意した。関心のある事業会社や職種を選んでもらい、入社後の配属先を「確約」する・・・

新聞の役割

2024年6月3日   岡本全勝

5月1日の朝日新聞に、朝日新聞の1面広告が載っていました(ウェッブでは見当たりません)。朝日新聞デジタルの宣伝です。情報量が紙面の5倍だというのが、売りのようです。
しかしこの宣伝では、読者を増やすことは難しいでしょう。もちろんこの宣伝は紙面に載っているので、新聞を読んでいない人には効果がありません。すでに新聞を購読している人向けの宣伝であり、デジタル紙面へ誘導する宣伝なのでしょう。

新聞社が力を入れなければならないことは、新聞を読んでいない人、特に若者を勧誘することでしょう。若い人は、新聞を読んでいません。ニュースは、インターネットで無料のものを見ています。そしてそれで満足しています。この人たちに、デジタル紙面は情報量が多いことを訴えても、金を出して買おうとは思わないでしょう。

私は、インターネットのニュースと、新聞紙面とは異なる報道媒体、目的が異なる情報機関だと考えています。出来事としてニュースを見るなら、インターネットが早くて便利です。NHKのウェッブサイトを見れば十分です。
新聞紙面の機能は、ニュースを伝えることではありません。世の中にある膨大なニュースから重要なものを選択して、並べてくれるのです。新聞の機能は、編集長が選択し、限られた紙面の中に並べてくれることにあります。新聞紙面を読むことは、編集長を雇っていることなのです。新聞は情報量が限られていることが「売り」なのです。インターネットで記事を追いかけると、無限に広がり、時間はかかるし、終わりがありません。
そして世間では、どのような話題が中心になっているのか。それは、紙面での記事の扱い、場所と分量が示してくれるのです。

このことは、かつて日経新聞夕刊1面のコラム(2018年4月12日)にも「新聞の読み方」として書きました。
・・・あるテーマを早く深く知るなら、インターネットの方が効率的だ。しかし、好きな分野だけを深掘りするのではなく、社会の動きを知ることが重要だ。何が大きく扱われているかを知ること。膨大な数のニュースから編集者が切り取って並べてくれている。それを活用しよう・・・

その機能から、もう一つの効果があります。関心のない記事も目に入るということです。インターネットでニュースを見ていると、自分の関心のあることと興味を引くことだけを見るようになります。しかし、紙面では関心のない記事が大きく扱われています。それが社会では、重要事項なのです。その記事を読む必要はありません。そんなことがあることさえ知っていおればよいのです。社会で活躍するには、現在の社会での問題は何か、一通りの知識は必要です。それには、インターネットでなく紙面を見ることが効率的です。

新聞社も若者の新聞離れを嘆く前に、どのように宣伝したら、学生や若い社会人に買ってもらえるかを考えるべきです。まず、学生と新社会人向けに、新聞の読み方、利用の仕方を説明した小冊子を作り、ウェッブ上で公開してください。どこかに載っていたら、教えてください。

「子持ち様」子育て世帯の肩身が狭くなる

2024年6月3日   岡本全勝

5月26日の読売新聞「加速化する少子化」、駒崎弘樹・NPO法人フローレンス会長の「子育て支援は自分への投資」から。こんなことが、起きているのですね。

・・・最近、SNSを中心に「子持ち様」という言葉が広がっています。子どもを育てる親が、職場などから配慮を受けることをやゆするものです。「子持ち様の子がまた熱を出したとか言って休んだ。そのカバーで仕事が増えた」などといった使われ方をしています。
共働きが当たり前の世の中になり、少子化対策が叫ばれる中、20~30歳代の未婚の男女からそうした声が上がることに衝撃を受けています。不満をぶつける相手は、仕事のカバー態勢を整えていない会社側であるはずです。「被害者が被害者をたたく」ような悲劇的な構図だといえます。

1980年代は全世帯の半数近くに子どもがいましたが、今は2割弱と少数派になっています。こうした言葉により、子育て世帯の肩身が狭くなり、子どもをさらに産もうという気持ちが薄れてしまうのではないでしょうか。その結果、少子化が加速するのではないかと危惧しています・・・