カテゴリーアーカイブ:社会の見方

仕組みの解説と機能の評価4

2024年8月11日   岡本全勝

仕組みの解説と機能の評価3」の続きになります。かつて、「内包と外延、ものの分析」を書いたことを思い出しました。

・・・あるものごとを解説したり分析する際に、そのものごとの内部を深く分析します。これを内包的分析と呼びましょう。もう一つは、そのものごとが社会でどのような位置を占め、どのような影響を与えたかを分析します。これを外延的分析と呼びましょう・・・

連載「公共を創る」で官僚論を書いていて、再度このことを思い出しました。
官僚や公務員を論じたり分析したりした本や論文、さらに行政を分析した本はたくさんあります。それはそれで有用なのですが、ほとんどが公務員制度、役所の中を分析しています。
私が連載で心がけているのは、社会において行政機構や官僚がどのような役割を果たしているかです。なぜ、官僚への信頼は低下したか、日本社会の課題(経済停滞と社会の不安)は解決しないのか。内包的分析ではそれはわからないのです。外延的分析が必要です。

例えば今、新聞について書くとしたら、紙面の記事、記者、取材、編集、社の経営だけを分析しても不十分でしょう。なぜ発行部数(購読者数)が減ったか、外部環境について書かないと新聞の機能を説明したことになりません。「位置づける

アルファベット日本語再考

2024年8月6日   岡本全勝

SNSって何のこと」の続きです。「アルファベット日本語、新聞表記」の再考です。

NHKのSNSの説明では、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムも「TwitterやFacebook、Instagramなど」と、アルファベット表記です。
SNSという言葉が日本語であることも考えれば、「日本語は、漢字、ひらがな、カタカナで表記する」と習いましたが、アルファベットも追加しなければなりませんね。日本語の表記は、漢字仮名交じりではなく、漢字仮名アルファベット交じりです。

国語学では、アルファベット表記をどのように扱っているのでしょうか。学校の国語の授業ではどのように、日本語の中でのアルファベットの使い方を教えているのでしょうか。ローマ字表記を教えますが、アルファベット表記はそれとは別です。
例えば縦書きの時は、どのように書くのでしょうか。そして、発音はどうするのでしょうか。ローマ字表記は、日本語の五十音に当てはめで、日本語として発音します。

しかし、Instagramは、/ɪnstəɡræm/(Oxford Learner's Dictionariesによる)と発音するのでしょうか、インスタグラム/ɪnsutaɡuramu/と発音するのでしょうか。SNSも、英語だと、/es en es/という発音ですが、NHKのアナウンサーも含めて私たちは、/esu enu esu/と発音しているようです。

国語辞典も、単語を「あいうえお」で並べるだけではすまなくなりました。これについては、別途書きましょう。「頭は類推する。カタカナ語批判。3

高級だけでないフランス料理

2024年8月3日   岡本全勝

7月31日の日経新聞夕刊文化面、橋本周子・関西学院大学准教授の「フランス料理の精神史⑤「国民国家の時代映す「ポトフ」 家庭料理が育てた愛国心」から。

・・・日本人なら、「フランス料理」と聞いてまず想像するのはホテルのレストランなどで提供される高級フレンチのコース料理だ。グーグルの画像検索で「フランス料理」と日本語で打ち込めば、期待通りのおしゃれな料理の写真が並ぶ。
ところが今度はフランス語で《cuisine française》と入れてみるとどうだろう。もちろん、日本語で打ち込んだ場合と同様の高級フレンチや、日本人も大好きなクロワッサンなども並ぶが、同時にそこにはいくつもの煮込み料理が登場する。ニンジン、ジャガイモ、牛肉・・・ポトフだ。

この検索結果の違いは、私たち日本人が高級フランス料理に、明治期以来の依然強い憧憬のような感情を抱いていることを示すとともに、当のフランス人たちは、そのような高級フレンチだけを「フランス料理」とは思っていないらしい、ということも表している・・・

料亭もレストラン

2024年8月1日   岡本全勝

7月28日の朝日新聞に「老舗料亭なだ万、アサヒが売却へ 外食事業から撤退」という記事が載っていました。そこに、次のような文章があります。
・・・なだ万は1830年の創業。レストランを国内で25店舗、海外で4店舗運営するほか、総菜や弁当などを扱う店も経営している・・・

え~、料亭が出している店を「レストラン」と呼ぶのか。料亭らしく、料理店とか料亭とかほかの表現はないのかなあ。
でも、なだ万のホームページを見たら、自らレストランと名乗っていました。店主や女将が店先で「ようこそ、うちのレストランへ」と言わはると、違和感ありますわ。

ウィキペディアによると、「飲食店の一種であるが、統計上などでは専門料理店(料亭、ラーメン店、焼肉店など)はレストランに含まれず別の区分になっている」とあります。出典を当たると、日本標準産業分類です。

と書いていたら、なだ万の新聞広告を見つけました。そこには、レストランという言葉とともに「トップシェフ」という言葉が出てきます。料理長という言葉も使われていますが。

福井仁史氏講演「渋沢栄一とその時代」

2024年7月31日   岡本全勝

元部下の一人、福井仁史・国立公文書館首席研究官が7月22日に、東京商工会議所で「渋沢栄一とその時代---公文書から垣間見る」を講演しました。インターネットで、録画を見ることができます。

公文書館や宮内庁で公表されている文書資料から読み取れる渋沢栄一の人物像と彼の活躍した時代の雰囲気について、彼一流の訥々とした語り口で説明してくれます。よくぞと思うぐらい、次々に関係資料が出てきます。

渋沢栄一について同時代資料が見られるのにあわせて、明治時代の公文書、決裁文書がどのようなものであったかを知ることができて、これは他の渋沢栄一関係の展示や講演では見られないかも知れません。
例えば、明治憲法公布の原本。天皇の御名御璽の後に、大臣が署名します。昔の人は字が上手ですが、そうでない方もおられます。暗殺された大臣の最後の署名も入っています。そして字のうまい下手がいわば永久に残って、公開され、今では公文書館のデジタルアーカイブで、インターネットを通じて全国で見ることができてしまいます。
また、閣議決定書にはサインに当たる花押を書き入れています。伊藤や山県、山本権兵衛や若槻禮次郎・・・次々と近代史の有名人が出てきて、これは、結構面白いです。

また、天皇陛下が東京におられないとき、内閣はどのようにして緊急の決裁を仰ぐのか。ちょっとした書き込みから、電子メールもファックスも無い時代の役人たちの行動が判明します。さらには、書きかけと思われる書類が決裁されて、そのまま残ってしまっているとか・・・。「へえ」と思う歴史のトリビアもあちこちにありますが、なにより生きて働いていた政治家や無名の官僚たちの姿が(失態も含めて)こうやって残っているのだ、と思うと、文書管理の大切さがよくわかります。その時その時に、「日本国が生きていた」証しなんですね。
一見の価値はあります。