カテゴリーアーカイブ:社会の見方

中年期の心の危機

2024年9月23日   岡本全勝

9月2日の朝日新聞には「中年期の心の危機、僕は48歳で 医師・鎌田實さんに聞く」も載っていました。

「微うつ」歴50年という人気絵本作家・ヨシタケシンスケさんのインタビューを先月、2回にわたって掲載しました。中年期に陥る心理的危機「ミッドライフ・クライシス」。自ら経験し、著書もある医師の鎌田實さん(76)にその症状や対処法について聞きました。

――ミッドライフ・クライシスとは?
発達心理学者エリク・エリクソンの提唱した「ライフサイクル・モデル」では、乳児期から65歳以上の老年期までを8段階に分けて40歳から65歳を成年後期としました。
人生の上り坂から下り坂に入るこの時期に、心や体の変化が表れ、葛藤や不安、焦り、うつなどの心の不調を抱えやすくなります。40代~60代で8割が経験するとも言われて、「第二の思春期」と言われることも。
僕自身は48歳で症状が出て、完全に抜け出すのに4年かかりました。

――何か特別な原因があるのですか?
苦境にある人ばかりではなく、大きな問題がない人にも起こりえます。僕に症状が出たときは、勤務していた公立病院づくりに成功し、人生絶頂の時期でした。
背景にあるのは、キャリア。高い山へと進んでいたのですが、どうもこのくらいの高さかと、見えてきて揺らいでくる。
健康も影響します。体力の衰え、食欲の低下、睡眠の質……。男女ともに更年期を迎えることも要因になる。テストステロンという男性ホルモンは女性も男性の10分の1程度分泌されており、壁があっても壁を壊すチャレンジングホルモンなのです。これが男女ともに低下しやすくなり、元気を失ってしまう。
家庭環境もあります。子どもの受験や巣立ち、介護、夫婦関係の悪化なども要因になります。

振り返ると、ミッドライフ・クライシスは「人生の成長痛」だと思います。
――成長痛ですか。対処法は?
脱皮の苦しみ。言い換えるなら、人生の二毛作ですよ。ひとつは、筋トレ、運動が有効です。男女ともに、重度のうつ以外は運動が処方箋(せん)になります。自分でやれるスクワットやランジ(下半身の筋トレ)をいくつか覚えて実践する。
次世代に目を向けることも重要です。ミッドライフ・クライシスに苦しんだ結果、被災地の子どもたちを救うとか、難民キャンプに病院をつくることなどに目を向けるようになった。
転職しなくたって、生き方を変えるチャンスはある。先が見えた時に、「自分は課長どまりかな」と思ったら、自分のために部長だけを目指していたことから脱皮する。近視眼的な「自分、自分」から脱皮する。すると、自分のやるべきことが見えてくる。
「仕事人間」を見直すことも大切です。仕事への向き合い方を変えてみる。家や職場だけでなく、第三の場所をつくる。

男性の更年期障害

2024年9月22日   岡本全勝

9月2日の朝日新聞に「ひそむ男性の更年期障害 無気力・沈む気分、男性ホルモン原因」が載っていました。

・・・男性の更年期障害を理解し、支援する動きが、企業や自治体でじわりと広がっている。女性に比べて発症年齢にばらつきがあり、加齢やうつ病とも見分けがつきにくい。仕事への影響も無視できないため、正しく知って対処することが、職場にとっても働き手にとってもプラスになりそうだ・・・

・・・「意欲がわかない。なんでこんなに気持ちが落ちこむんだろう」
ホンダでITエンジニアとして働く安藤健一さん(48)が違和感に気づいたのは、コロナ禍が続く2022年のなかごろだった。
もともとエネルギッシュに働くのが好きで、業務効率化のアイデアなどを積極的に提案していた。しかし、新しいことを考えるのがおっくうになり、提案の数は目に見えて減っていった。「アイデアを考える意欲そのものがなくなっていた。過去に経験したことがないような違和感でした」
上司にも「なぜか気分が晴れない」と告げ、業務面で配慮をしてもらった。しかし不調の原因はわからず、症状も改善しないまま数カ月が経過。解決の糸口になったのは、会社から届いた一通のメールだった。

メールは、男性更年期障害への理解を社内で広めようとする、健康推進室などの取り組みの一環だった。そこに書かれた心の症状に、自分も当てはまっていた。
「更年期障害は女性がなるものと思っていたけど、自分の不調の原因はこれかもしれない」。ウェブや雑誌で調べ、泌尿器科を受診した。男性ホルモンであるテストステロンの値を血液検査で測ると、「数値が低い状態」と告げられた。気分の落ち込みは、テストステロンの低下による男性更年期障害と診断された。
男性更年期障害は、職場の環境変化が発症の要因になりうる。安藤さんの場合、コロナ禍のリモートワークで運動や外出が減ってしまったことが原因とみられた。
医師の診断で、ウォーキングと漢方の服用で療養をすることに。朝方30分のウォーキングを週2、3回。半月ほどで手応えがあり、心のモヤモヤが晴れていった。2カ月ほどで元気になり、仕事でも新規の提案を出せるようになった。
「僕らの世代は『男は弱音を吐いちゃいけない』という価値観がまだ残っている。症状があっても言い出せない人はけっこういるんじゃないかと思います」と安藤さん・・・

・・・自治体も動き出している。鳥取県は23年10月から、更年期障害とみられる症状で業務が困難な職員は、年間5日までの特別休暇を取得できるようにした。休み中も給与は支給され、男女を問わない。開始から半年で、女性で16人、男性で9人の取得があったという。
23年春に行った職員向けのアンケートで更年期症状の経験の有無を訪ねたところ、1177人の回答者数のうち「有り」の割合は女性が41%、男性でも31%にのぼった。
男性更年期障害を理由とする特別休暇制度は、大阪府四條畷市、香川県東かがわ市の役所でも実施している。
厚生労働省が22年3月に実施した「更年期症状・障害に関する意識調査」によると、男性にも更年期にまつわる不調があることを「よく知っている」と答えた人の割合は、50~59歳の男性でも15・7%にとどまった。更年期症状を自覚した人のうち、医療機関を「受診していない」と回答した人の割合は86・5%と、受診に後ろ向きな傾向もうかがえた・・・

チャーチル著『第二次世界大戦2』

2024年9月19日   岡本全勝

ウィンストン・チャーチル著『第二次世界大戦2―彼らの最良のとき』(みすず書房)が出版されました。
いよいよチャーチルが首相になって、劣勢で困難なイギリスを率います。

昨年8月に『第二次世界大戦1―湧き起こる戦雲』が出版され、今年が第2巻です。それぞれに約900ページの分厚さです。チャーチルは、よくこれだけのものを、しかも晩年に書けたものですね。

最低賃金では、従業員が集まらない

2024年9月18日   岡本全勝

8月30日の朝日新聞に「最低賃金では、もはや人が来ない 観光地、活況でも人手不足 「仕事逃す」時給上げても募集」が載っていました。

・・・全都道府県の最低賃金(時給)の改定額が、激しい引き上げ競争の末に決まった。ただ、最低賃金水準ではもはや働き手が確保できず、最低賃金を大きく上回る時給での募集も目立つ。

全国有数の観光地・奈川県箱根町。今月のお盆期間中、箱根湯本駅前の商店街は国内外の観光客でにぎわっていた。「2019年以降、地震や台風の被害、新型コロナと続いた。ようやく長いトンネルを抜けつつある」。同町観光協会の佐藤守専務理事はそう評価しつつ、「コロナで離職者も多く、今は人手不足が深刻だ」と語る。
箱根町を管轄するハローワーク小田原の求人(6月分)で最も多いのはサービス業で、パートの有効求人倍率は3倍近い。募集時給の下限は平均1311円で、現状の最低賃金(1112円)より199円も高い。
神奈川県の最低賃金審議会は今回、国側の目安通り50円増の1162円に引き上げた。審議の場で、使用者側は大きな不満を述べるというよりも、「仕事が目の前にあっても見送らざるをえないことがある」と人手不足を訴えた。
採決でも、使用者側は一人も反対しなかった。10年度以来、14年ぶりの全会一致だった・・・

Q 日本の最低賃金は他の国と比べてどうなのか。
A 労働政策研究・研修機構の調査によると、先進国の中で低水準だ。1月時点では、日本はオーストラリア、ドイツ、英国、フランスの半分程度で、カナダ、米国、韓国よりも下回っている。

各国の最低賃金(2024年1月1日、円換算)が図で載っています。オーストラリアが2241円、ドイツが1943円、イギリスが1893円、韓国が1082円、アメリカ(連邦)1040円。日本は1004円です。

『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』

2024年9月17日   岡本全勝

小野寺拓也・田野大輔著『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(2023年、岩波ブックレット)を、積ん読の山に見つけて読みました。
宣伝文には、次のように書かれています。
「「ナチスは良いこともした」という言説は、国内外で定期的に議論の的になり続けている。アウトバーンを建設した、失業率を低下させた、福祉政策を行った――功績とされがちな事象をとりあげ、ナチズム研究の蓄積をもとに事実性や文脈を検証。歴史修正主義が影響力を持つなか、多角的な視点で歴史を考察することの大切さを訴える」

本書では、それらの「俗説」を取り上げ、「その政策がナチスのオリジナルな政策だったのか」「その政策がナチ体制においてどのような目的を持っていたのが」「その政策が「肯定的な」結果を生んだのか」という3つの視点から検討します。
どの政策も、ナチス独自で考えたものではなく、既にドイツや他国で試みられていたものであること。各政策が、それぞれに適切な目的を持っていたこともあるが、次第に戦争へと利用されること。フォルクスワーゲンも、国民には1台もわたらなかったように、かけ声倒れが多かったことを、説明します。

ヒットラーと側近も、国民の支持を獲得するために、様々な国民向けの政策を、大胆に実施します。もっとも、それが持続し、成果を出すところまで行っていないのです。
誤解を恐れずに言うと、その目的や結果を別にして「既にドイツや他国で試みられていたものを、ナチスが大々的に実行した」ことは、評価されてもよいと思います。それができないのが、通常の政治ですから。「だから独裁政治が良い」とは言いません。

ブックレットなので、100ページあまりで、読みやすく、お勧めします。