カテゴリーアーカイブ:社会の見方

街頭犯罪は20年で8割減

2024年10月2日   岡本全勝

9月13日の日経新聞「交番「24時間体制」転換 街守り150年、人員配置見直し」から。

・・・警察庁は原則24時間体制だった交番・駐在所の運用を見直す方針を決めた。交番は3交代制、駐在所は住み込みが中心だったが夜間は無人となる日勤制を認める。犯罪の舞台が街頭からインターネットへと移行するなか、効率的な人材配置が必要と判断した。治安を守る要として長年機能してきた地域警察活動の転換点になる。
警察庁は交番や駐在所について定める「地域警察運営規則」を13日に改正する。各交番・駐在所の具体的な見直し策は都道府県警が検討する。
改正規則は交番・駐在所について、必要がある場合にはいずれも日勤制の地域警察官により運用できるとした。地域の状況や人出に応じて、ワゴン車による移動式交番や警察官が一定期間常駐する臨時交番を開設できるとする規定も盛り込んだ。
交番は1874年に警察官が交代で立つ「交番所」が東京にできたのが始まりで、1880年代に24時間体制になったとされる。パトロールや落とし物の受理といった業務に加え、事件が起きれば現場に急行し初動捜査も担う。2024年4月時点で全国に交番は6215カ所、駐在所は5923カ所ある・・・

・・・見直しの背景には犯罪情勢の変化がある。23年の刑法犯認知件数は約70万件で、戦後最多だった02年(約285万件)と比べ7割超減った。なかでも地域警察官が警戒するひったくりや車上狙いといった街頭犯罪は02年から8割減の約24万件に抑え込んだ。
一方、近年は特殊詐欺やSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺、サイバー犯罪といったインターネットや電話を通じた犯罪が増えている。各警察では摘発に向けこうした犯罪に対応する部門の陣容を強化している・・・

アジアでの人材争奪戦

2024年10月1日   岡本全勝

9月12日の日経新聞「サムスン、「ベトナムのMIT」から年400人 厚待遇で」から。

・・・東南アジア諸国連合(ASEAN)で人材争奪戦が激しさを増す。高い成長率に加え、米中対立を背景に供給網の再構築先として東南アジアにグローバル企業が注目。事業拡大を目指して厚待遇で攻勢をかけている。リクルーティングやリテンション(つなぎ留め)の最前線を追った。

ベトナムの首都ハノイ市北西部に、大規模なマンション開発が進むエリアがある。韓国資本が流れ込み、建設現場を囲うフェンスには同国企業の名前が目立つ。
サムスン電子は2022年、この一角に研究開発(R&D)センターを開いた。世界12カ国の拠点と連携し、人工知能(AI)やロボティクスの研究者ら約2500人が働く。目立つのは、デニムやTシャツ姿の若者たち。全国から集った俊英たちの会話には、ベトナム各地の方言が飛び交っていた。
「服装は自由で、いつ働いて、いつ休んでもいい。だから入社したんだ」。トゥンさん(仮名)は同国最高峰のハノイ国家大学で情報工学を学び、R&Dセンターに入った。月収1400万ドン(約8万円)は高給ではないが、手厚いもてなしで研究に集中させてくれる職場が気に入っている。
「グローバル企業だけに、世界の先端技術に触れる機会が多い。専門分野の実務経験を積めて、キャリアパスも明確だ」。理系大学の最難関で「ベトナムのMIT(マサチューセッツ工科大学)」と言えるハノイ工科大学機械工学部のブー・トアン・タン教授はサムスンをこう評価する。
サムスンは同大から年300〜400人の卒業生を採用するという。青田買いにも熱心だ。ある大学では修士課程を対象に半導体の専門知識や韓国語を教え、卒業後はサムスンの即戦力に組み込む優遇策も始めた・・・

・・・東南アジアでは管理職に就くと給料が跳ね上がる傾向がある。人事コンサルティング大手のマーサージャパン(東京・港)によれば、部長職の年収(23年10月時点)は日本の場合が約1920万円。各国で定義は異なるが、ベトナム(約2450万円)などに比べても見劣りする。
「海外では管理職を任せられる優秀な人材の流動性が大きい」と同社の伊藤実和子プリンシパルは語る。優れた社員が集まらなければ日系企業の競争力や現地での存在感が低下しかねない・・・

各国の部長職の年収が、図で示されています。アメリカが30万ドル超、シンガポールが29万ドル程度、中国が22万ドル程度、タイ・ベトナムが17万ドル程度。日本は14万ドル程度です。

明文化されていない規則に縛られる

2024年9月30日   岡本全勝

9月11日の朝日新聞オピニオン欄「「ルール守れ」に縛られ」から。
・・・法律や規則、明文化されていないマナーまで、社会には様々なルールが存在する。大事だと分かっていても、「ルールを守れ」の声に息苦しさを覚えることも。その背景を考えてみる・・・

住吉雅美・青山学院大学教授の「攻撃、嫉妬と不公平感から」
・・・ルールとは本来、集団生活の中で秩序を守るためのものであるべきで、個人を殺すものであってはなりません。ですが、日本社会では人を攻撃する道具のように使われることがあり、個人がルールにがんじがらめにされてしまっています。

慣習、モラル、エチケットなど、ルールにはさまざまなものがあります。最も権威があるルールとして思い浮かべるのは法律でしょう。国家権力によって強制され、改廃したり違反などをめぐる争いを解決したりする権限が誰にあるのか、明確に定められている。ただ、法律も長い時間をかけて培われた社会の慣習やモラルが下地になっており、数あるルールの中の一つにすぎないとも言えます。

日本の特徴は「法律未満」のルールの拘束力が非常に強いことです。明文化されていないものも多く、そもそも誰が何のためにそのルールを作ったのか分からなかったり、強制力が一律ではなかったりするため、ルールの解釈や違反をめぐる争いが起きたり、恣意的に適用されたりするややこしさがあります。
例えば、コロナ禍で政府はマスク着用を義務付けてはいなかったのに、着けていない人を責める「マスク警察」が現れました。公共施設などでは、やらないで欲しいことを伝えるために「お控えください」といったあいまいな表現がよく使われます。それでもほとんどの人が従っている。不倫した有名人が、再起不能になるほどバッシングされるのは当たり前の光景になりました。要請やモラルが社会の同調圧力によって強い縛りとして広まり、時に法律以上に厳しいまなざしが向けられています。

厳しさの背景には、嫉妬と不公平感があると私は考えています。「自分は守っているのに」「自分は我慢しているのに」という思いが、逸脱者への攻撃という形で強い制裁になっている。SNSでは、実は少数の執拗なネットユーザーに起因するという説があるものの、「自分こそが正しい」とばかりに「ルールを守れ」という側の声があふれ、異論を差し挟めない状況に陥っています・・・

高齢者食堂が映す男性の孤立

2024年9月26日   岡本全勝

9月5日の日経新聞夕刊に「高齢者食堂が映す男性の孤立 地域での交流にハードル」が載っていました。

・・・地域のシニアが集まって食事をともにする「高齢者食堂」が増えてきた。子どもに無料か低額の食事を提供して育ちを見守る「子ども食堂」のように、シニアの新たな居場所として注目が集まる。一緒に調理したり、誰かに作ってもらって食べたりと形態は様々だ。一方で男性の参加が少ない食堂があり、男性が地域でネットワークを築く難しさの一端も透けて見える。

「きょうはホタテやカキがあるんですよ」「ご飯のお代わりはいい?」
東京都文京区の住宅街の一角。NPO法人居場所コム(東京・文京)が運営する一軒家「こまじいのうち」で食事会が開かれていた。
月1回、地域のシニアが集まって昼食をとる。食卓にはスタッフが作ったサラダや鶏もも肉の梅酒煮などがずらりと並ぶ。参加費は無料で、この日は10人集まった。「出会いの場になるね」。一人暮らしの80代の男性はここでの会話に刺激を受けているという。
都は地域で高齢者らの交流を増やそうと2023年度、文京区など5自治体13食堂で高齢者食堂の補助を始めた。24年度は5自治体18食堂で支援する。認知度は少しずつ高まっているが、課題のひとつは男性参加者が少ない食堂が目立つことだ・・・

・・・日本のシニア男性は友人の少なさで際立つ。内閣府が米国など4カ国で60歳以上の男女に聞いた調査では、「同性、異性の友人がいずれもいない」という回答が日本の男性は約4割と突出して高い。
孤独・孤立の事情に詳しい早稲田大学の石田光規教授は「今のシニア男性は猛烈に働き、地域との関わりを持たなかった人が多い。頼る人が配偶者のみとなりがちだ」と話す。
性別に対する規範的な考え方も影を落とす。小池准教授は「男性は周囲に助けてもらいながら生きるより、1人で自立して強く生きていくのが『男らしい』とされてきたことが大きい」とする・・・

奄美大島でマングースを駆除

2024年9月25日   岡本全勝

奄美大島で、マングースが駆除されました。
9月4日の朝日新聞「外来マングース、奄美大島で根絶 ハブ対策不発、捕獲30年
・・・鹿児島県奄美大島で駆除を進めてきた特定外来生物マングースについて、環境省は3日、「根絶宣言」を発表した。ハブ対策などの目的で持ち込まれて約半世紀。いったん定着したマングースがこれほど大きな島で根絶されたことはなく、「世界的に前例のない、生物多様性保全上の重要な成果」としている。
南アジアなどが原産のマングースはハワイなどにも持ち込まれたが、定着後に完全排除できたのは面積約1平方キロ以下の島だけ。奄美大島は712平方キロもある。奄美大島は21年、世界自然遺産に登録。その審査でも事業が評価されていた・・・

・・・マングースは1910年にまず、沖縄島に導入された。環境省によると79年ごろ、その子孫が奄美大島に放たれた。島民を悩ませた毒蛇ハブと、農作物を荒らす外来ネズミの対策が狙いだった。
だが、昼行性のマングースは、夜行性のハブではなく、アマミノクロウサギやケナガネズミなど島在来の希少種を襲った。自然保護関係者の危機感に押され、90年代前半に駆除が始まった。
2000年度からは環境庁(当時)と鹿児島県が取り組みを本格化。05年に外来生物法が施行され、マングースが「特定外来生物」に指定されると、同じ年度に「駆除のプロ」として専従12人の「奄美マングースバスターズ」が発足した。
「誰も経験がなく、手探りの連続だった」と発足時の隊員、山下亮さん(52)。おびき寄せるエサは何がよいか。魚肉ソーセージ、唐揚げ、ツナ缶、チーズなどを試し、たどり着いた一つが、豚の脂身の塩漬け。島の保存食を参考に森でも長持ちするようにした。
捕獲用には、塩化ビニール製パイプを使った小型の筒ワナを改良。中のエサをマングースが食べようとすると、首のあたりでひもが締まる。駆除が進んだ07年には、「切り札」として先進地ニュージーランドから探索犬を導入した。
張りめぐらせたワナは島全域に約3万個。マングースの推定生息数は、ピークの00年の1万匹から20年には10匹以下に。姿を見るのが難しいほど減っていた希少種も戻ってきた。環境省は、18年4月の最後の捕獲から6年がかりで慎重に確認し「根絶宣言」に踏み切った・・・

ハブ対策に導入したマングースですが、ハブを襲わず、黒ウサギなどを襲ったのです。人間の浅知恵でした。かつて、ハブとマングースを戦わせる見世物がありました。マングースは輸入品なので、負けないように、ハブを弱らせていたと聞いたことがあります。

沖縄県で、ウリミバエの根絶に成功したことがあります。農薬散布でなく、不妊の虫を大量に放って、子孫を残さないようにするのです。中公新書で読んで、感激したことを覚えています。今は絶版になっているようです。伊藤嘉昭著『虫を放して虫を滅ぼす―沖縄・ウリミバエ根絶作戦私記』(1980年)