カテゴリーアーカイブ:社会の見方

構造的権力

2008年4月17日   岡本全勝
谷口智彦『通貨燃ゆ』(日本経済新聞社、2005年)p54以下に、スーザン・ストレンジ(イギリスの経済学者)の考えである「構造的権力と関係的権力」が、引用されています。
・・関係的権力とは、甲が乙をして、無理やり甲の意図通りのことをせしめる力を言う。それに対して構造的権力とは、物事がどんなふうに起きていくべきか、決める力を言う。国家が国家と、人間集団や企業集団と、どんな関係を結ぶかその枠組みを形づくる力を言う
それが露骨な権力の行使であることを意識しないまま、させないまま、ある種の行為へと人を導いていく枠組みというものが世の中にはある。そういう枠組みの中にいったん入れてしまえば、後は当人たちが自発的に求められる行動を取ってくれるから、あえて力を行使する必要すらない。そんな枠組みをつくり、維持する力こそは、構造的権力である。
具体的には、英語メディアが世界を覆う状況、ドルが基軸通貨であることなどです。

宗教と国家

2008年4月8日   岡本全勝
8日の朝日新聞夕刊が「統一協会、2.3億円で示談。献金女性『国の責任も問う』→増額」を伝えていました。記事によると、宗教団体に献金をした女性が、団体を相手取って損害賠償を求めました。団体側の示談の当初提示額に対し、原告である女性は納得せず、誠意ある対応を取らない場合は、文科省にも責任があり、文科省を被告として責任を追及するとしたそうです。それを受けて、宗教法人側が、増額に応じたとのことです。
この訴訟は、国家と宗教との問題を浮き彫りにする事件です。近代立憲国家は、個人の内面には国家はかかわらないとして、線を引きました。まさにそれが、近代国家の主発点だったのです。フランス革命では、キリスト教と国家が分けられました。日本では1945年に、国家神道と国家が分離されました。イタリアでは、ムッソリーニの時代に、バチカンとイタリア国家との間に、分離協定が結ばれました。
しかし、完全に分離はできず、時々、宗教が政治の世界に顔を出します。政治家が靖国神社にお参りする場合、地方団体が神社にお供えをする場合などです。また、今回のように、文科省の責任を問うとされる場合です。宗教法人を認可する権限は、国と県にあります。しかし、一定の条件があれば認可するというのが法律の規定で、裁量の余地はありません。何が問題になるか。それは、宗教法人だと、税金がかからないのです。ここに、政治と宗教が接点を持ちます。
個人の内面は外からうかがい知ることはできませんから、国家が口出しをしない限り、問題にはなりません。しかし、宗教には、外面的な儀式がつきものです。宗教ではなく、宗教団体や宗教法人が問題になります。
違った局面では、アメリカの大統領は、聖書に手を載せて、就任宣誓をします。イスラム教徒や仏教徒が大統領になったら、どうするのでしょうかね。
9日の日経新聞夕刊に、猪木武徳先生の「海外の日本研究が退潮傾向。薄れる存在感、無知招く」が載っています。1970年代から90年代にかけて、外国人研究者による日本人論がよくありました。しかも、日本人の自尊心をくすぐるような内容です。最近は、見かけなくなりました。また、海外の日本研究機関が、縮小されているとのことです。日本に代わって、イスラム、中国、インドへの関心が高まっています。日本の経済的存在感と、比例しているようです。しかし、世界で日本のことを知ってもらうことは、重要なことです。詳しくは原文をお読みください。

教育方法の輸出

2008年4月5日   岡本全勝
4日の朝日新聞が、世界の国々で日本の学校教育が高く評価され、採り入れている国がたくさんあることを伝えていました。教師同士の授業研究、教員指導方法、理数科科目の教育方法などです。小学校の算数の教科書が英訳され、1万冊が輸出されているとのことです。
モノだけでなく、このようなソフトもどんどん輸出したいですね。

サービス業の生産性はなぜ伸びないか

2008年4月4日   岡本全勝
これに関連して、朝日新聞が3日から、「成長戦略の足元」を連載しています。3日は「生産性、伸びぬサービス業」で、散髪屋さんが出ています。散髪屋さんは、生産性の上がらない代表例として、良く取り上げられます。でも、10分1000円の散髪屋さんが、はやっています。逆に、カリスマ美容師がいるのですから、理容もカリスマ理容師が、良いサービスと高い料金を取ればいいと思います。一律料金でカルテルを結ぶから、生産性が上がらないのです。
4日は、「商店街、進まぬ代謝」です。高松市の成功した商店街と、寂れた商店街を取り上げています。ここは、諮問会議が出張した場所です。成功した秘訣は、所有と利用の分離です。地権者は共同出資した会社に、土地を定期借地で貸します。そして、別の使いたい人が、商店を使うのです。寂れている商店街は、土地建物を持った商店主が、はやらない店を続けます。記事は、中小企業の延命策が起業家の参入を阻み、結果として商店街を衰退させていることを指摘しています。これは、農業も同じです。
わかりやすく、読み応えある連載です。

成長力強化への早期実施策

2008年4月4日   岡本全勝
4月4日に、経済対策閣僚会議が「成長力強化への早期実施策」を決定しました。これは、新年度に実施される、経済対策関係の事業の一覧になっています。おおむね4月から6月に、実行される施策です。予算などで決まっているものからの抜粋ですから、ここで初めて出てくる事業はありません。
しかし、新年度に政府が取り組む政策(経済関係)の一覧って、これまでなかったのですよね。それで言うと、新年度になって政府が取り組む重点事業一覧も、公表されていません。新聞が「4月から暮らしはこう変わる」なんていうのを、一覧にすることはありますが。このような政策一覧を公表することは、意義があると思います。
とりまとめは、経済財政担当大臣(私の属している組織)です。国会議員に説明に行くと、「予算が増えるのはどれか」という質問があります。しかし今回の施策は、総理が「財政出動を伴わないこと」と、指示しておられます。1990年代までのように、公共事業の追加・減税といった、財政出動ではないのです。かつては、「真水がいくらの規模か」というのが、紙面を賑わせました。今は、「お金を追加すればすむ」という経済構造では、なくなったのです。