カテゴリーアーカイブ:社会の見方

政治を支える制度と文化

2012年8月22日   岡本全勝

読売新聞8月19日「地球を読む」は、フランシス・フクヤマ氏の「長引く欧州危機」でした。そこで、最近よく言われる「二つの欧州」についての指摘があります。通常は、EUを拡大した際に、プロテスタントが多く、勤勉で規律ある北部諸国と、怠惰で浪費癖があるカトリック・ギリシャ正教諸国が、対比されます。
しかし、フクヤマ氏は、次のような主張をします。これら二つの欧州の違いは、「政治的恩顧主義」がはびこる欧州と、そうでない欧州との違いである。イタリア、ギリシャなどは、政党が血縁、地縁関係を利用して支持者を集め、政府の役職を支持者に分配することで、権力を争った。官僚機構が、選挙で選ばれた政治家に利用されてきた。他方、ドイツやイギリス、オランダは、そのような恩顧主義的な政党に支配されたことがない。
通貨同盟を創設したマーストリヒト条約には、それに対応する財政同盟を欠いていた。だが、それ以上に問題なのは、欧州人としての共通意識を醸成できなかったことである。EUの諸制度は、高度な専門知識を持つ官僚によって作られた。だた、汎欧州的な愛国心をどう生み出すかについては、誰も腐心しなかった・・
詳しくは、原文をお読みください。私が学生の頃、文化人類学や比較文化政治学という学問が、盛んだったことを思い出します。政治を支えるものには、制度だけでなく「文化」や「意識」「歴史と伝統」がありますね。
それでも、その差を乗り越えようと挑戦する欧州は、立派だと思います。

祝賀パレード

2012年8月20日   岡本全勝

今日20日、東京銀座で、ロンドンオリンピック日本代表メダリストのパレードが行われました。「行かなければ」と思っていたのですが、忘れていたのと、仕事が忙しくて・・。土曜か日曜にやってくれれば良いのに。たぶん、いろいろな事情があったのでしょう。
新聞によると、50万人が詰めかけたそうです。新聞記事の写真をご覧ください。球場ではなく、あの広くない道路に50万人ですよ!球場でも、せいぜい5万人ですから。暑かったでしょうね。
(これだけの人数になると、輸送、誘導のほか、トイレ、急病人の手当、迷子のお知らせなど、裏方は大変な準備が必要になります。ちなみに、首都直下型地震の際の、想定される東京駅の帰宅難民が47万人です。)
オリンピック・メダリストのパレードは、今回が初めてだそうです(これもびっくり)。このようなイベントは、もっとやっても良いですよね。野球やサッカーなど、地元球団が優勝したら、みんなでお祝いしましょう、御堂筋でも、県庁前通りでも。
「政治は劇場だ」という説もあります。狭い劇場もありますが、広い劇場は盛り上がりますよね。

民間軍事会社

2012年8月16日   岡本全勝

気になって買ってあった、菅原出著『民間軍事会社の内幕』(2010年、ちくま文庫)を読みました。イラク戦争で、アメリカが民間の警備会社を雇っていたことは有名です。軍隊並みに武装し、警備や輸送などに従事しています。その実態から、「民間軍事会社」と呼ばれています。
その中には、軍隊並みの仕事をする会社、軍隊の補給や基地の炊事洗濯を請け負う会社、人質救出の交渉をする会社、危険地帯に行く人(取材記者)を実地訓練する会社など様々です。
戦闘地域やその周辺で活動するので、とても危険です。日本人社員(兵士)が、巻き込まれて死亡したこともありました。
アメリカ軍の経費や職員削減を受けて、「事業」を外注に出すことが広がったとのことです。確かに、基地の炊事や洗濯を外注に出すことは違和感がありませんが、武装して政府要人を警護することになると、ここまで外注ができるのかと、感心します。捕虜収容所で捕虜の通訳をすることも理解できますが、尋問をすることまで請け負うとなると・・。まあ、中世ヨーロッパでは、軍隊自体が傭兵で外注していたのですから、できないことはないですが。
一方、受託する会社は、軍のOBそれも特殊部隊の経験のある元兵士を雇っています。軍人の給料は安く、軍事会社の報酬は高いです。ここに、兵士=従業員の需給が成立します。
記者が取材地で反政府勢力にとらえられた場合を想定した訓練(もちろん有料)を、受けた経験が載っています。平和な日本にいると理解しがたいですが、危険地帯に行く記者や外交官などは、必須の教科でしょう。

学者の見立てと経営者の主張と

2012年8月11日   岡本全勝

7月23日の日経新聞に「技術交流の盛んな日本を始めよう」が載っていました。そこで、田中陽・編集委員が、次のようなことを書いておられます。
・・
今から15年ほど前、ハーバード・ビジネススクールが、「味の素」の経営をケーススタディーとして取り上げたことがあります。主力の調味料に始まり甘味料、加工食品、飼料用アミノ酸、医薬品など多岐にわたる事業領域の是非について、ビジネスエリートたちが下した結論は「選択と集中。多くの事業から撤退すべき」というものでした。味の素の幹部もこの議論に参加し、多彩な事業展開の必要性を説明しましたが、彼らを納得させることはできなかったそうです・・
その後、味の素の事業領域は香粧品、電子材料なども加わり、さらに拡大しています。その大半は同社の中核であるアミノ酸やバイオ技術に裏打ちされた事業であり、それぞれが切っても切れない関係にあります。そこで培われた長年のR&D(研究・開発)の蓄積が今、さらに多様な分野でいかされようとしています。株式時価総額も15年前の6400億円が現在は7500億円まで増えました。あの時、ビジネスエリートたちの言うことに従っていたら、新しい価値を生み出すベンチャー精神の芽も摘み取られてしまっていたことでしょう・・

ソーシャル疲れ

2012年8月9日   岡本全勝

7月30日の読売新聞オピニオン欄、鈴木謙介関西学院大学准教授の発言から。
・・ツイッターやフェイスブックをはじめとするソーシャルメディアの普及とともに、「ソーシャル疲れ」と呼ばれる現象が目に付くようになってきた。ソーシャルメディアをしじゅうチェックしていないと不安になるとか、人間関係の維持が面倒になってしまうとか、そういった出来事の総称だと思えばいいだろう・・
友達といっても、職場の同僚や学生時代からの付き合いの親友、恋人や配偶者に紹介された人など、いろんな領域に広がっているものだ。それらの領域がお互いに切り離されているからこそ、相手との付き合い方をコントロールすることができるのだ。しかしソーシャルメディア上では、友人は皆同じように自分の書き込みを読む。それでも私たちは、学生時代の友人と職場の同僚では異なった顔で接しているから、ソーシャルメディア上でもその使い分けを意識しなければならない。そうしたところに「ソーシャル疲れ」の一因がある。
また、ソーシャルメディアでは、自分の友人たちがいま何をしているのか、リアルタイムで知ることもできる。そのことが、ユーザーにとってある種の孤立感を生む原因になっているのではないか。
私たちが行った若者向けの携帯電話の調査からは、携帯電話を手放せなくなってしまう原因として、幅広い交友関係を持ちながらも、自分がその人たちから仲間はずれにされているのではないかという孤立感があることがわかっている。もしも、ソーシャルメディア上で、自分の友達が別の友達と仲良く遊んでいる書き込みを見たとしたら、おそらく携帯電話以上に孤立感を覚えることになるだろう・・