カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ビッグマックに見る労働生産性

2025年5月4日   岡本全勝

このページでもしばしば言及する「ビッグマック指数」。
2025年1月時点では、日本のビッグマック価格は480円。アメリカのビッグマック価格は5.79ドルで、円にすると894円です(2025年1月時点の1ドル=154.35円で換算)。ユーロ圏では919円です。

日本の経済力の弱さを指摘して、「生産性を上げないといけない」と主張されます。でも、マクドナルドの店内で働いている店員に、これ以上生産性を上げろとは言えないでしょう。彼ら彼女らは、作業手順書に従って、諸外国の店員と同じように仕事をしているでしょう。
原材料費の小麦粉、肉、タマネギ、トマトの価格が、日本の方が安いとは思えません。小麦も肉も輸入しているので、原価もほぼ同じ、場合によっては日本の方が高いと推測されます。

同じような原材料を使って、同じように働いて、日本は安い。おかしいですよね。
円ドル相場に、大きな原因があるようです。1ドル100円になれば、アメリカの5.79ドルは579円です。日本の480円に、ぐっと近づきます。
この点からは、円高になることを期待しましょう。

福井ひとし氏の公文書徘徊2

2025年5月3日   岡本全勝

『アジア時報』5月号に、福井ひとし氏の「連載 一片の冰心、玉壺にありや?――公文書界隈を徘徊する」の第2回「大日本帝国最後の日―枢密院の後ろ姿」が載りました。
今回は、枢密院についてです。枢密院は、戦前に存在した役所です。新憲法の施行とともに廃止されました。建物は皇居内に残っていて、皇宮警察本部庁舎として使われています。大手門から入り、三の丸尚蔵館の南側にあるのですが、近づくことはできません。

今回の徘徊は、枢密院の文書がすべて公文書館に残されているので、それを使った枢密院の仕事ぶりです。それとともに、枢密院を廃止する手続き、さらに勤めていた職員の退職手当まで調べています。
今から80年前のことです。戦前は遠くなりにけり・・・。「第1回

タイヤもマイクロプラスチック発生源に

2025年5月1日   岡本全勝

4月25日の朝日新聞に「マイクロプラ汚染、タイヤからも 摩耗し粉じんに、海や森の生き物から検出」が載っていました。

・・・近年、プラスチックによる汚染が環境問題の一つとして指摘されている。その中でも、私たちの移動手段として欠かせない自動車が汚染源となっている。
汚染源として懸念されているのが、「タイヤ摩耗粉じん」だ。車の走行時にタイヤが路面と摩擦することで発生する、タイヤの「トレッド」という表面の素材と道路の舗装材が混ざった微小な粉じんのことをいう。
多くの粒子の大きさは約0・1ミリで、髪の毛の太さと同じくらい・・・
・・・粉じんは、大気中や土壌へ、雨に流されれば川から海へ流れ込む。国際自然保護連合(IUCN)の2017年の報告書では、海へ流出するマイクロプラスチックの約28%がタイヤ由来だと推計されている・・・

・・・国内でも生き物の体内から検出された。熊本大などの研究チームによると、沖縄本島の北部に生息する飛べない鳥、ヤンバルクイナの体内から、タイヤのゴム片が見つかった。184個のゴム片が体内にあった個体もいたという。えさとなるミミズからも検出されたことから、えさを介して摂取されたと考えられる。

「森の中に生息するヤンバルクイナの体内から検出されたことは驚くべきことだ」
熊本大の中田晴彦准教授(環境化学)は、人間から離れた場所でくらす生き物にも影響が出ている可能性を危惧する。「タイヤから毒性のある化学物質を減らすなど、環境負荷の少ない物質に代替することが必要だ」と話す。
タイヤ摩耗に一部含まれる、2・5マイクロメートル以下の粒子(PM2・5)は、人の呼吸器系に影響を与えるおそれもある・・・

北魏宮女とその時代

2025年4月30日   岡本全勝

果てしない余生 ある北魏宮女とその時代』(2024年、人文書院)を読みました。ある書評に取り上げられていて、面白そうだったので、図書館で借りました。著者は北京大学の教授で、原著は2022年刊です。

古代中国の北魏(386年~535年)時代の話です。歴史で習った雲崗や龍門といった巨大石窟、北魏様式のあの北魏です。
その後宮に仕えたある女性の人生を取り上げていますが、記述の多くは北魏の政治、皇族や高官の権力闘争を描きます。その資料は、出土したたくさんの墓誌です。近年も次々と発見されているようです。こんなことまでわかるのかと思うくらい、たくさん出土しています。史書に書かれていないこと、特に女性については、史書に出てこないのですが、墓碑にはいろんな情報が書かれています。

北魏では子が皇太子となると、その生母が死を賜る「子貴母死」の制がありました。外戚が権力を振るわないようにです。ところが、皇后がこの制度を利用して、自らの権力を高めます。皇太子の母を殺した上で、自分または息のかかった女性が皇太子を育てて、母親代わりとなるのです。そして、親族を登用します。
皇帝は自らの地位を安泰にするために、親族を殺します。また、殺されます。それが通常という、怖い世界です。

文章は読みやすいのですが、なにせたくさんの人が登場し、似たような名前なのでこんがらがります。

消費減税論の7つの問題

2025年4月30日   岡本全勝

4月25日の日経新聞大機小機は、「消費減税論への7つの問い」でした。
「物価高や米関税措置への対策として、「時限的な消費税減税」を求める声がある。時事通信社の4月世論調査では、賛成が68.4%と反対の14.0%を大きく上回った。夏の参議院選挙を前に、この議論は与野党を巻き込んで盛り上がることだろう。消費減税は現実的な選択肢となり得るのか。7つのチェックポイントを考えてみた」として、次の7つが挙げられています。

すこしでも経済の仕組みを理解している人なら、わかることです。このような議論を無視して「減税」を主張することは、国民を馬鹿にしているようにも思えます。

(1)今はインフレである。景気刺激のための減税はインフレを加速する。
「困っている人を助ける」ことが目的ならば受給対象を絞った給付金が適切なのではないか。
(2)今の日本経済は、需要が足りないというよりは供給力不足が問題。
コメが典型的で、作る人が足りなくて値段が上がっている。消費減税という政策は、人手不足という課題に対して全く無力である。
(3)いつから税率を下げるのか。
消費税率を変えるには法改正が必要であり、国会が今すぐ取り掛かったとしても年内実施は容易ではない。
(4)時限的な消費減税を実施する場合は「いつ元に戻すのか」。
(5)消費減税の際には、増税時と同じコストがかかる。
商店は値札を替えねばならず、会計ソフトなども更新することになる。納税する事業者の負担がある。
(6)消費減税によって個人消費が増えるという保証はない。
コロナ禍の際の10万円の給付金さえ、ほとんどは貯蓄に回った。
(7)確実なのは、減税によって国の財政赤字がさらに悪化すること。