カテゴリーアーカイブ:社会の見方

知的共同体の衰退

2013年4月4日   岡本全勝

4月1日の読売新聞文化欄、三谷太一郎先生への『学問は現実にいかに関わるか』(2013年、東京大学出版会)についてのインタビューから。
・・日本には、江戸末期に「社中」と呼ばれる知的共同体が全国各地にありました。一つひとつは小さく、そのリーダーもそれほどの知的巨人ではないけれども、そこで人々は学び、盛んに議論した。それがまた「処士横議」という、幕府や藩を超えた横のコミュニケーションを生み、日本近代の前提となりました・・
大正から戦後の一時期までは、『中央公論』などの総合雑誌が日本の知的共同体を作っていました。その中には学者も政治家も文学者もいて、政治学者でいえば吉野作造、南原繁、丸山真男など、アマをリードするプロの知識人もそこから生まれました。昨今の総合雑誌の衰退は、こうした知的共同体の弱体化を意味し、大きな損失です・・
さらに今考えるべきは、国境を超えた知的共同体を作っていくことでしょう・・

アジア主義から見た現在の中国

2013年3月31日   岡本全勝

朝日新聞3月29日オピニオン欄、中島岳志北海道大学准教授の発言「アジア主義から見た中国」から。
「アジア主義は、戦前日本の侵略思想だったのではありませんか」という問に対して。
・・利益や打算に基づく「政略」としてのアジア主義はそうです。大東亜共栄圏を目指す帝国主義の道具として利用されました。しかし当初、頭山満や宮崎滔天は西洋列強の侵略に、アジア諸国と手を携えて抵抗しようと訴えた。彼らの「心情」としてのアジア主義は、出発点から侵略を意図していたわけではありません・・
この観点で世界に目を転じたとき、頭山には欧米の帝国主義と国内の封建体制という二重の圧政に苦しむアジア人民の姿が見えました。古い王朝を倒し、近代化によって万民が救われる新しい政治体制をつくるのがアジアの王道である、と考えた。各国で闘っているナショナリストたちと盟友として組み、二重の圧政を打倒しようと踏み出していく。これがアジア主義の源流です・・
「そういうアジア主義者なら、今の中国をどう見るでしょう」という問に対しては。
・・一部特権層の圧政と格差社会に多くの人民があえいでいる、と見て取るでしょう。彼らを救おうと海を渡って、民主化運動を担う学生や活動家を支援して一緒に闘ったかもしれません。まさに宮崎が上海に渡り、私財をなげうって、日本に亡命して後に辛亥革命を成し遂げる孫文を支援したように・・
しかし、中国のナショナリズムは反日と重なっています。それでは支援も連帯も、難しいのでは」
・・二十一カ条の要求、満州事変、日中戦争という歴史をへたために、民主化を要求するナショナリズムが対外的には反日デモにもなる。そこがとても難しいところです。これは日本が自らまいたタネでもあります。かつて中国の主権を踏みにじった当事者なのですから、歴史をしっかり見つめ直すべきです・・
「歴史を持ち出されると、ものが言えなくなりませんか」
・・そんなことはありません。中国にも、かつてあなたたちが抵抗した日本帝国主義と同じ覇権主義の道を進んで一体どこに行くつもりですか、と問わなければなりません・・
詳しくは、原文をお読みください。

マスコミ、現場・住民は善、行政・中央は悪の構図

2013年3月30日   岡本全勝

釜石市嶋田副市長が、『ダイヤモンド・オンライン』3月25日付けに「大震災2年目の今を見つめて」を寄稿しています。住宅再建に際して、土地の権利関係が障害になっていることを書いています。そこに、行政を批判すればよいというマスコミの姿勢と、それに乗る住民の姿が描かれています。
・・そうした支援の一方で、突然お越しになった報道の方から、「復興庁のせいで進まない事例を教えてほしい」、「県の杓子定規な対応の具体例はないか」といった取材をいただくことがあります。同様に、住民の方から、「『とにかくなんでもいいから市役所への不満はないか』と取材に来たから、あることないことしゃべってやったよ!」と教えていただくというような、笑うに笑えないエピソードもあります。
上記の用地交渉をはじめ、自分たちだけでは決められない案件も多く、また、関係者間で目的をすり合わせる過程で様々なやり取りが生じるのも事実なのですが、「奮闘する現場vs.画一的な中央」というステレオタイプの質問や報道には違和感を覚えてきました・・
あわせて、今後、用地交渉が本格化するに際し、住民の方と行政の対立を煽る報道が増えるのではないかと予想しています。用地交渉は、街の再生という全体の利益・公共と、個人の利益・私権との間でどのように折り合いをつけていくかという合意形成の連続であり、与えられた正解のない取り組みです。
おそらく、復興事業に携わるすべての行政職員が、スピードある復興を求める声と、丁寧な議論を求める声の間で悩みながら業務に従事しており、また、行政の取り組みが常に正しいわけではなく、やろうとしていること、あるいはその方法について不断の見直しが必要です。他方、報道の方々におかれても、引き続き現場に寄り添い、当事者の一人として、共に悩み、正解のない実情を丁寧に伝えていただきたいと思います・・

安定志向の若者

2013年3月28日   岡本全勝

3月27日の日経新聞に、日米中韓4か国の高校生を対象とした、将来(進路と職業)についての調査結果が載っていました。財産法人、日本青少年研究所「高校生の進路と職業意識に関する調査」。
それによると、「起業したい」は、日本では6%、中国が31%、アメリカが19%、韓国が12%です。
日本の高校生の安定志向は、次のような項目でも明らかです。日本の高校生の志望第1位は公務員(20%)、第2位が教師(18%)、第3位が建築家やデザイナー(13%)です。アメリカでは、医師(30%)、建築家やデザイナー(24%)、スポーツ選手や俳優(19%)。中国では、起業家(31%)、経営者や管理職(27%)、建築家やデザイナー(26%)。韓国では、建築家やデザイナー(30%)、教師(28%)、経営者や管理職(27%)です。
「社会的に偉くなりたい」は、日本45%、中国89%、アメリカと韓国70%です。
私も公務員ですから、日本の若者を批判できませんが。

消費の変化、モノから人間関係へ

2013年3月21日   岡本全勝

読売新聞3月21日朝刊第1面「Nippon 蘇れ、活力2」は「モノ欲しがらぬ若者」でした・
・・・例えばクルマだ。かつてマイカー購入はカローラなど大衆車に始まり、経済力がつくにつれて、高級車に買い換えていった。「いつかはクラウン」というCMは、モノから豊かさを実感できた時代の象徴でもある・・
(10年ほど前に、私が講演の際に使っていたエピソードがこれでした)。
・・総務省の全国消費実態調査では、30歳未満の単身会社社員男性の自動車普及率が、1999年の63.1%から2009年には49.6%に減った。
・・電通総研が今月5日に発表した調査によると、15~29歳の消費の特徴は「メリハリ化」と「総”交際費”化」。無料や安価なモノやサービスを楽しむ一方で、気に入ったものへは高額な出費をいとわない。仲間と交流を深め、盛り上がるためにもお金をかける・・・
(「モノから関係へ」も、私が『新地方自治入門』で指摘したことでした)。
ここでは、若者が、従来の常識にとらわれていないことがわかります。製造業や小売業の思惑通りには、行きません。それは、良いことだと思います。売り手に振り回されず、自分で考えて金を使うのですから。使いたいだけの金がないというのも、事実です。もっとも、次のような分析もあります。
記事の続き(p12)、久我尚子ニッセイ基礎研究所研究員の発言から。
・・総務省の2009年の全国消費実態調査で、30歳未満の勤労単身世帯の1か月の可処分所得を見ると、男女とも21万円余り。1999年より男性は約1万円減ったが、女性は2万円以上増えている。
非正規雇用者の所得はこれより低いが、余裕がないわけではない。未婚・晩婚化が進んで自分のために使えるお金が増えている上、家賃や食費のかからない親元で生活する人も多いからだ。お金がないのではなく、若者の価値観の変化が消費に大きく影響している。
自由に使えるお金が減ったのは、むしろ40~50代。厚生労働省の賃金構造基本統計調査から50代後半男性で大卒正規雇用者の年収を推計すると、2001年は1,040万円だが、2011年は791万円。年収も40代後半をピークに下がっていく・・