カテゴリーアーカイブ:社会の見方

1900年、産業のロンドンではなく自由なパリに人が来る

2019年12月26日   岡本全勝

12月22日の読売新聞、フランスのアニメ映画監督、ミッシェル・オスロ氏のインタビュー「アニメという仕事。人間の悪と戦う 機知と寛容」から。

・・・無論、それだけでは作品は成り立ちません。万博が開かれた1900年のパリを舞台に選びました。
フランスは1789年の革命以来、幾度か戦争を行い、輝いた瞬間もあったが、自滅に向かいます。決定的だったのは1871年の普仏戦争の大敗です。
ところが再興を果たす。世界の才能が大英帝国のロンドンではなく、パリに集う。なぜでしょう。精神の自由が求心力になったのではないかと私は推察します。報道の自由も重要でした。

パリは女性が社会の幾重もの束縛を解き、活躍した都でもあった。国際女優サラ・ベルナール、ノーベル物理学賞と化学賞を受けるポーランド出身の科学者マリー・キュリー、革命家ルイーズ・ミシェル――・・・

病院という「社会企業」

2019年12月25日   岡本全勝

12月21日の日経新聞オピニオン欄、梶原誠コメンテーターの「日本こそソーシャル株式市場を 課題大国インドは先行」に、興味深い話が載っていました。

・・・インドの株式市場で、ある銘柄が脚光を浴びている。ナラヤナ・ヘルス病院グループだ。10月以降、株価指数SENSEXの上昇率が1割に満たないのを尻目に同社株は4割近く上昇した。「投資マネーは同社の安全性に賭けた」とは地元紙の解説だ。
同社はインドを代表する「ソーシャルビジネス」、つまり社会貢献を通じて成長する企業だ。マザーテレサの主治医でもあった創業者のデビ・シェティ氏の執務室には、「世界で最も深刻な問題は、最大のビジネスチャンスだ」と書いたプレートが飾ってある。

業務の効率化による格安治療で鳴らし、心臓移植の費用は米国の数%にすぎない。2016年の株式公開で得た資金で増床を重ね、貧困に苦しむ人々に治療の道を開いた。この3年で売上高は78%増、利益は3倍に膨らんだ。
インドは金融機関の経営悪化で貸し渋りが横行、景気が急降下中だ。それでも患者は治療に訪れる。マネーは景気に連動する株から景気悪化に強い「ディフェンシブ株」に乗り換える過程で、同社の社会的な価値に目をつけた・・・

日本では、原則として株式会社は、病院を経営できません。しかし、インドでは、株式公開で集めた資金で、貧しい人の治療を広げているのだそうです。こうしてみると、「株式会社だからよくない」とは少々短絡的ですね。

中古品売買、新たな展開

2019年12月24日   岡本全勝

12月16日の日経新聞が、「リユース市場 意識変化が生む2兆円市場」を特集していました(ウエッブサイトでは、見つけることができませんでした)。

中古品売買で大所は、自動車と不動産です。他にも、これまで私たちになじみがあったのは、古本屋さんでしょうか。古道具屋や質屋もあります。自治体による不要品のリサイクルの場もあります。また、バザーやフリーマーケットも盛んです。
ここで紹介されているのは、これら既存の売買や交換でなく、新しい業態として発展している分野です。

一つは、ブランド品や女性の中古衣料です。商店街でも、たくさん見かけるようになりました。古本も、ブックオフのような形態が多くなりました。そして、ゲームやコミックなども扱っています。
古くさいという印象が亡くなり、店に入りやすくなりました。また、中古品を買うだけでなく、売ることにも抵抗がなくなりました。
以上は、対面販売です。

近年拡大しているのが、ネット販売です。業者がいったん買い取り、消費者に売るという形態もありますが、消費者同士が直接売買する形ができました。フリーマーケットをインターネット上でできる「フリマアプリ」です。
経産省の推計では、フリマアプリの市場規模は2018年で約6千億円、2年で倍になっています。ネットオークション全体では、1兆円を超えるそうです。フリマアプリ大手のメルカリでは、月間利用者数は1350万人で、増え続けているようです。不要品を売ることに、手段や心の抵抗がなくなったのでしょう。

廃棄物を減らす、リサイクルにとっては良いことですが、偽物を防ぐなどの課題があります。

冷戦後30年、ポピュリズムの台頭

2019年12月23日   岡本全勝

12月16日の朝日新聞オピニオン欄、国末憲人・ヨーロッパ総局長の「冷戦後30年、世界はいま 強権政治がモデル化、民主主義脅かす」から。

・・・1989年、ベルリンの壁崩壊と冷戦終結に、私たちは自由と平和、民主主義が息づいた世界の将来像を思い描いた。2019年、目前には荒涼たる風景が広がっているかのようだ。
欧米の多くの国で、ポピュリズムが大手を振る。その手法を取り入れた指導者が、米国で野放図に振る舞い、英国では欧州連合(EU)離脱の旗を振る。民主化したはずの旧社会主義圏で権威的ポピュリスト政治家が政権を握り、社会への締め付けを強める・・・

・・・ポピュリズム台頭を招いた背景には、米ソ、東西、左右といった冷戦時代の対立軸の薄れがある。代わって上下の格差が浮き彫りになり、グローバル化の進展がこれに拍車をかけた。
もちろん、冷戦時代にも格差は存在したが、政党や労組、商工団体、農協といった中間団体が上下を結びつけていた。こうした組織が力を失い、指針を失って途方に暮れる人々に甘言で近づいたのが、ポピュリスト政治家だ。
ただ、当時のポピュリズムは、不平や不満を吸収するばかりで、具体的な理念や政策に乏しかった。政権担当能力は低く、「放っておけば消える」(欧州大学院大学のハンスペーテル・クリージ教授)というのが、政治学の専門家の一般的な認識だった。

しかし、2010年代に入り、ポピュリズムはアイデンティティーを理念の中心に据え、次第に政治イデオロギーへと変貌。国家や民族の結束を呼びかけることで支持を結集する排他的、強権的な政治モデルを確立した。「白人米国人」「イングランド人」といったアイデンティティーを軸に支持を集めるトランプ米大統領やジョンソン英首相は、既成政党の枠組みを維持しながらこうした手法を取り入れた点で、その完成型といえる・・・
原文をお読みください。

企業のお国柄、市場中心型と組織関係重視型と

2019年12月20日   岡本全勝

12月17日の日経新聞経済教室、「脱・株主至上主義の行方(中) 」広田真一・早稲田大学教授の「資本主義・企業の多様性重視」でした。
そこに、次のような記述があります。

・・・社会経済学者のピーター・ホール氏、デビッド・ソスキス氏らは、世界の資本主義は「自由な市場経済(LME=Liberal Market Economies)」と「調整された市場経済(CME=Coordinated Market Economies)」の2種類に分かれると主張する。この見方は「資本主義の多様性」と呼ばれる。

LMEの国とは、経済・ビジネス活動が市場での取引を中心に行われる国だ。金融取引の面では発達した株式市場があり、労使関係は契約ベースの労働市場で特徴づけられる。政府の経済への介入は少なく、資本の配分による経済的な効率性が重視される。一般に個人主義的な文化を持つ。代表的なのは米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどだ。
企業には「株主の利益」を最大化することが期待され、株主の権利を保護する法制度が整備されている。企業のパフォーマンスも短期的利益や株式価値で測られる傾向が強い。その企業観は標準的な経済学やコーポレートファイナンスの教科書に出てくる企業像(利潤最大化、株主価値最大化の企業)にぴったり合う。

一方、CMEの国とは、組織・ネットワークを生かした形で経済・ビジネス活動が行われる国だ。金融では銀行が中心となり、労働に関しては共同体的労使関係が特徴だ。政府の経済への介入の程度が高く、社会での平等性が重視され、共同体主義的な文化を持つ。代表的なのはドイツ、フランス、オランダ、オーストリア、スイス、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、日本などだ・・・