カテゴリーアーカイブ:社会の見方

異分野の合作で新しい知見が生まれる

2021年11月22日   岡本全勝

11月2日の日経新聞「変わる地方国立大学」、斎藤滋・富山大学長の「革新創出へ文理融合」に次のような指摘があります。

・・・今日、トップ論文が載る研究雑誌では単一大学の単一講座(教室)からの報告は皆無となっている。複数の大学、講座、専門分野の異なる研究者の合作で新しい知見が生まれてきているのだ。
日本の大学では単一講座(教員)の指導で研究が行われてきたが、学問の進歩は複合的な解析を不可欠とし、異分野の学問領域の融合が世界的に行われている。日本の国際的な遅れは、この融合するという意識の低さが原因の一つである・・・

政権の自己評価、中国共産党

2021年11月21日   岡本全勝

中国共産党が、11月11日、第19期中央委員会第6回全体会議で、毛沢東、鄧小平の時代に続く第3の「歴史決議」を採択しました。各紙は、習近平総書記(国家主席)は両者に並ぶ権威を確立したと伝えています。

これについて、12日の朝日新聞は「歴史決議は毛沢東時代の45年、鄧小平時代の81年に続き3回目。45年は結党以来の主導権争いに決着をつけて毛の権威を決定づけ、81年は文化大革命を否定し改革開放への道を開いた」と書き、林望・中国総局長が「政権の自己肯定、にじむ不安」に次のように書いています。
・・・過去の歴史決議が共産党内の主導権争いや路線の過ちをただす自己否定の作業だったとすれば、新決議は習近平氏の権威を高めるための自己肯定の試みである・・・
・・・一方で、強さと正しさを内外に証明し続けなければ今の地位は保てないという政権の不安があることも見逃すべきではない・・・

「歴史決議」には、次のような文章もあります(日経新聞による)。
・・・全会は次のように指摘した・・・中国共産党は中華民族の千秋の偉業を志してから100年で、まさに最盛期を迎えている。過去の100年、党は人民、歴史に優れた答案を出した。今、党は国民を団結させてリードし、第2の100年の奮闘目標を実現する新たな試験に向かう道に踏み出した・・・

追加就労希望就業者

2021年11月20日   岡本全勝

11月11日の日経新聞「漂う雇用 下」は「若者苦境「もっと働きたい」」に、追加就労希望就業者という言葉が載っていました。
追加就労希望就業者とは、もっと長時間働きたいという人たちです。日本の直近の失業者は3%ですが、追加就労希望者も同程度います。
コロナ対策による緊急事態宣言で、飲食・サービス業が休業し、従業員が働くことができなかったからです。アメリカでは、追加就労希望者は広義の失業率に含まれるそうです。

記事には、職種間の求人倍率の差も出ています。一般事務職は低く、建築・土木技術者は5倍を超え、医療や福祉も高いです。資格や経験を必要とする専門職、さらに言うと体を動かす現場の仕事で、人手不足が目立ちます。
失業者がいる一方で、人手不足の業種があるのです。事務室内での事務職を憧れる人が多いのでしょうか、専門職の処遇が悪いのでしょうか、専門職を育てない教育が悪いのでしょうか。

脳が作る第3の痛み

2021年11月19日   岡本全勝

11月8日の朝日新聞に「体・神経に傷ない「第3の痛み」、解明進む」が載っていました。
・・・体の損傷などの明らかな原因がなくても痛みが長引く場合があり、脳の神経回路の変化が影響していることが最近の研究でわかってきた。国際疼痛(とうつう)学会が「第3の痛みのしくみ」として提唱。日本疼痛学会など国内8学会の連合が今秋、「痛覚変調性疼痛」と呼ぶことを決めた。名称の決定で、従来の痛みのタイプとの区別が明確になり、治療法の開発の後押しになると期待される。

痛みの発生は従来二つのタイプで説明されてきた。一つは、けがや炎症で組織が傷つき、痛みの信号が出て起きる「侵害受容性疼痛」。もう一つは手術や事故、脳卒中などで神経が損傷して起きる「神経障害性疼痛」だ。だが、どちらにも当てはまらない痛みに苦しむ人は多く、痛む部位を調べても原因は見つからず、医療の中であいまいな位置づけになってきた。
国際疼痛学会は2017年、様々な要因で脊髄から脳にかけた痛みを生み出す神経回路が変化し、痛みが生じたり、痛みに過敏になったりするというしくみを提唱した。国内でも昨秋に発足した日本痛み関連学会連合が用語委員会を立ち上げ、今秋、「痛覚変調性」と呼ぶことを決めた。
この痛みは、痛みへの恐怖、不安、怒りやストレスといった社会心理的な要因が大きく関係する。それらの影響で、神経回路が変化し、痛みを長引かせ、悪化させるとみられている・・・
・・・用語委員会委員長を務める東京慈恵会医大痛み脳科学センターの加藤総夫センター長は「ストレスや心理的影響など様々なきっかけで脳の働きが変わり、脳が痛みをつくることがある。こうした理解が広がれば、痛みに立ち向かいやすくなる」と話す・・・

心の痛みは、これらとは別なのでしょうね。

猫の寿命を延ばす

2021年11月18日   岡本全勝

宮崎徹著『猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見』(2021年、時事通信社)を紹介します。

猫の平均寿命は15歳で、多くが腎臓病で死ぬのだそうです。その原因は、血液中のタンパク質「AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)」が正常に機能しないために腎臓病になります。それは、家猫に限らず、ネコ科(ライオン、虎、チーター)の動物すべてにある遺伝だそうです。
AIMを投与すると腎臓病が良くなり、ネコの寿命が延びるのです。宮崎先生は、ほかの研究をしていて、このAIMを見つけます。ひょんなことから、ネコの腎臓病に効くことがわかり、ネコ愛好家や動物病院の方から、薬としてほしいとの要望を受けて、現在商品化の途中です。時事通信ニュースその後

AIMの働きは、本書を読んでいただくとして。素人の私が解説すると、次の通り。
マクロファージという細胞を聞いたことがあるでしょう。体の中の異物を食べて排出してくれる細胞です。AIMは老廃物にくっついて、マクロファージに食べられる働きを持っています。体の中の老廃物を排出しないと、「ゴミ」がたまります。ネコは、この働きがうまく行かず、老廃物が腎臓にたまって腎臓病になるのです。
老化は、体に老廃物がたまることによって進む面もあります。すると、この働きを人間に応用すると、老化が抑えられることになります。人間だけでなく動物一般にです。
これがうまく行くと、ノーベル賞もの、いえ、それ以上の発明になるでしょう。

わくわくする話です。しかも、門外漢が読んでもわかる本です。説明が上手なのと、仕組みが意外と簡単なのです。お勧めです。