カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ウケるマンガの男女の違い

2022年6月7日   岡本全勝

5月の日経新聞「私の履歴書」は漫画家の里中満智子さん、18日は「青年誌に挑戦」でした。
・・・少年誌と少女誌には、大きく違うところがあった。
少女誌は、読者の年代別にたくさんの種類があるのに対し、男性は、小学生も30代も、同じ雑誌を楽しむ。
私がよく仕事をした講談社の漫画誌を例にすると「なかよし」は小学生向けだから友情や親子関係、「少女フレンド」では中学生向けに初恋、高校生以上が読む「mimi」では恋の葛藤、など雑誌ごとに漫画を描き分けていた(「少女フレンド」「mimi」は1990年代に休刊)。しかし「少年マガジン」は、ほとんど全世代の男性が手にとっていた時期があった。

少年誌の編集者に、男性の世代別の好みの違いを尋ねたことがある。すると「違いはありません。男子にウケるシーンは全世代で同じです」との答え。「どんなシーン?」「闘って勝つ場面です」
笑ってしまった。常々、男女は平等であるべきだと願っている私だが、この2つの精神構造には、無視できない違いもあるのかもしれない。簡単にいえば、男はいつまでもロマンチスト。女はリアリストで、目の前の現実に関心がある・・・

電子化の進め方、いまだにフロッピーディスクが使われていた。

2022年6月5日   岡本全勝

行政、企業、社会の電子化が叫ばれています。デジタル庁もできました。
ところで、4月に起きた山口県阿武町の臨時特別給付金10万円の振込先間違い(合計4630万円)事件では、まずは町役場から、フロッピーディスクで振込先と金額が銀行に伝えられたと報道されています。それとは別に、紙で間違った振込先と金額が伝えられたとのことです。これについても、大きな問題ですが。

ここで取り上げるのは、フロッピーディスクで送金依頼をしていることです。町役場にも銀行にも、フロッピーディスクを読み取るパソコンなり機械があることです。電気店に行っても、そんなパソコンを売っていないでしょう。若い人は、フロッピーディスクを見たことがないと思います。個人が使っているならともかく、役場や銀行が使っていることは、驚きです。
さらに官庁では、安全のためにパソコンにUSBメモリなどを接続することを制限しています(記憶媒体接続の危険)。そのようなサイバーセキュリティは、どうなっているのでしょうか。
フロッピーディスクで依頼した後に紙で間違った依頼をしたこととともに、これらの事実を究明して、再発防止策をとってほしいです。

デジタル化の旗を振るのも良いですが、このような自治体や銀行をなくさないと、社会の電子化は進まないでしょう。参考、朝日新聞アエラ2022年5月19日「4630万円誤送金で脚光浴びた「フロッピーディスク」 絶滅どころか公的機関でいまだ“現役”の事情

定住外国人への日本語教育

2022年6月3日   岡本全勝

5月17日の日経新聞教育面に、内海由美子・山形大教授が「地方の日本語教育充実へ 東北3大学連携し教師養成」を書いておられます。

・・・山形県は「外国人散在地域」である。1980年代後半以降、主な外国人は結婚で移住してきたアジア女性だった。同国人コミュニティーもなく、ひとりで日本人の家庭に入り地域社会の一員となっていった。その過程で重要な役割を果たしたのがボランティアの日本語教室だ。日常生活の日本語が学べ、地域の情報が得られ、同じ立場の外国人同士で気兼ねなく話せる居場所であった。
近年、そうした地域事情は大きく変わり、外国人労働者が増えている・・・一方、ボランティアは高齢化が進み、有志に依存する学習支援は限界を迎えている・・・

・・・2019年に施行された日本語教育推進法には日本語教育の機会の最大限の確保と、水準の維持向上に向けた国・自治体・事業主の責務が明記されている。しかし、山形県には日本語学校がなく、日本語教師もその養成をする専門家も少ない・・・

文化庁によると、日本語教室が未開設の市区町村は1133、居住する外国人は50万人を超えるのだそうです(2020年11月)。

日本産業の没落、ものづくりを過信

2022年6月1日   岡本全勝

5月17日の朝日新聞オピニオン欄、諸富徹・京都大学大学院経済学研究科教授へのインタビュー「資本主義、日本の落日」から。

日本は主要国で真っ先に経済成長が滞っただけでなく、脱炭素など環境対策でも出遅れが目立つようになった。環境と経済の関わりについて研究を重ねてきた経済学者の諸富徹さんは、そこに日本の資本主義の「老衰」をみる。産業の新陳代謝を促し、経済を持続可能にする道を、どう見いだせばいいのか。

――日本は「資本主義の転換」に取り残されつつある、と指摘しています。
「世界の産業は、デジタル化やサービス化が進んでいます。経済の価値の中心は、モノから情報・サービスへと大きくシフトし、資本主義は『非物質化』という進化を遂げているのです。それなのに、日本はいまだにものづくり信仰が根強く、産業構造の根本的な転換ができていません」
「二酸化炭素(CO2)を1単位排出するごとに、経済成長の指標となる国内総生産(GDP)をどれだけ生み出したのかを示す『炭素生産性』をみると、日本は先進国で最低水準です。成長率が低いうえ、その割にCO2排出を減らせていないことを示しています。エネルギーを多く使いながら付加価値が低い、20世紀型の製造業に依存しているせいです」

――かつて日本は、環境技術を誇っていたのでは。
「1970年代の石油危機を受けて省エネを推し進め、環境先進国と呼ばれた時代がありました。日本の資本主義に活力と若々しさが残っていたころです。過程で産業競争力もつき、90年代までは、その遺産でやっていけました」
「しかし、2000年代に入っていくと様相が一変します。欧州は再生可能エネルギーに真剣になったのに、日本は不安定でコスト高だと軽視し続けました。いずれは新しい産業になり、コストも下がるとの主張にも、政財界の『真ん中』の人たちは聞く耳を持ちませんでした」

――コロナ下での経済政策は、むしろ既存の産業や雇用を守ることが重視されました。
「個々の労働者を政府が直接守る仕組みが貧弱なので、企業に補助金や助成金を出して、これまで通り雇い続けてもらうしかなかったのです。これなら失業率は低く抑えられますが、CO2を多く出したり生産性が低いままだったりする企業も温存されます。働き手も、新たなスキルを身につけるでもなく、飼い殺しになっている。コロナの2年間は、ほぼ既存の構造をピン留めしただけでした」

――一方、デジタル化に関しては、コロナ危機が日本に変化を迫った面もありました。
「日本がずっとデジタル化の入り口でとどまっていたのは、プライバシー問題などをめぐる慎重論が勝っていたからです。米国や中国は、まずはデジタル技術を社会経済に組み込み、その上で弊害に対処するアプローチで先行しました。日本もデジタル化を一気に進めざるをえなくなったのは、パンデミックがもたらした前向きな変化の一つではあります」

――ではどうすれば。
「定常状態を脱するには、伸びる産業や企業に働き手が移っていかなければなりません。同一労働同一賃金の促進が一案です。正規・非正規雇用の格差を縮めるだけでなく、生産性の低い企業が人件費カットで生き延びるのを防ぎ、産業の高付加価値化を促せるからです。環境税や炭素税の導入も、最初に例に挙げた『炭素生産性』の低い企業に退出を迫る、似た効果が期待できます」
「その際、職を失った人も生活を心配せずに新たなスキルを身につけられる安全網を整えるのが、極めて大事です。そうして継続的な賃金上昇を促していくのです」

生命知能と人工知能

2022年5月31日   岡本全勝

高橋宏知著「生命知能と人工知能 AI時代の脳の使い方・育て方」(2022年、講談社)が分かりやすく、勉強になりました。お勧めです。

人の脳と人工知能とを比較して、脳の機能に迫ります。二つは、何が違うか。
人工知能はある目的のための「自動化」の技術であり、あらかじめ決められた規則に従って物事を進めます。その際には、なるべく無駄を省くように設計されています。それに対し生命知能は、その生命体が生きていくための「自律化」のためにあります。こちらは自分で目的を決め、規則も自分で決めます。人工知能は、これまでにないことを見いだしませんが、生命知能は、これまでにないことを考えます。

どうして、このような差がでるか。人工知能は、その目的のために人間が設計します。生命知能・脳は、細胞から始まり、動物の進化の過程で発展してきました。種がダーウィンの法則で進化してきたのと同じく、細胞が変異を続け、適者が生き残ってきました。「変異」によって「多様性」が生まれ、その中から「選択」されて、私たちの脳ができました。
これは、すばらしいことです。変異が生まれないと多様性は生まれず、進化は起こりません。細胞は脳や司令塔を持っていないので、「この方向に進化するのだ」という意図も持っていません。その中で生物の進化が起こるのは、この仕組みによってです。この比喩は、社会にも当てはめることができます。

その脳が、意識を作ります。目や耳、皮膚から刺激を受けて反応することは、機械の類推で理解できます。情報処理です。
他方で、目を閉じてもいろんなことを考える、寝ていていても夢を見る、さらにこれまでにないことを思いつくことができることは、そのような類推では理解できません。脳細胞が、どのようにして記憶するのか、そしてそれを呼び出すのかも、不思議です。
何もしていなくても、脳は動いています。自発活動をしています。常時、20ワット程度のエネルギーを消費しています(体全体では約100ワットです)。
私たちの意識に登らない「作業」を、脳は常に行っているようです。経験した音や画像、文章などを記憶し、良く似たものと関連づける作業をしているのでしょう。

外部刺激を受けてそれを知覚するのに、20ミリ秒かかります。ところが、脳への電気刺激で意識的な知覚を作るのには500ミリ秒もかかります。それを脳は統合しています。私たちの見ている現在は、かなり過去の物です。
そして、指を動かそうとする場合に、まず脳が動き出し、300ミリ秒たって動かそうと思う瞬間が訪れ、その200ミリ秒後に指が動きます。私たちが思うから動くのではなく、その前に脳が指示を出しているのです。これは理解しがたいことです。じゃあ、何が脳を動かすのか。私の印象では、私たちが意識しないところで脳がぐるぐるといろんなことを考えていて、何かのきっかけ、それは見ていることであったり、他の考え事であったりして、それがきっかけになって、あることが動き出すのでしょう。そこから意識に登るので、その前の脳の活動は分からないのです。
まだまだ勉強になることとが書かれていますが、それは本をお読みください。

著者は、将来に人工知能が発達して人間の行動の代替をするようになったらどうなるかも、言及しています。機械に置き換えることができる作業は、置き換わるでしょう。すると、人間らしさは、機械ができないことをすることです。
既にわかっていることを記憶し、問に答えることは、人工知能の得意とすることです。そのような大学入試問題なら、人工知能も正解できます。
分かていないことを考えることが、人間の仕事です。分からないことをパソコンやスマホで調べることは、検索であって、脳を使った学習ではありません。仮説を立てて検証することが、人工知能は不得手です。そこから、どのような学習が良いかが、導かれます。