カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ゴルバチョフ氏の理想と限界

2022年9月22日   岡本全勝

9月7日の朝日新聞夕刊、塩川伸明・東京大学名誉教授の「ゴルバチョフ氏、言葉の力を信じ」から。

ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領が世を去った。退陣から30年を経た今では現実政治的には「過去の人」だが、「現在に近い時代の歴史」という観点からは依然として最大級の重要人物である。
歴史上の重要人物の常として、彼の評価には極度に高いものから低いものまで、大きな幅がある。ソ連の民主化と世界の平和に尽力した偉人、何の展望もなしに思いつき的な「改革」を進めて国の混乱を拡大した大馬鹿者、決断力を欠き、右往左往しているうちに政敵に排除されてしまった弱い政治家、その他その他である。

彼がソ連共産党書記長に選出された1985年3月の時点では、その後の大変動を予期していた人は皆無だった。彼自身、当初想定していたのは、体制の抜本的な変革ではなく、限定的な体制内改革だった。そのようにして出発した「ペレストロイカ」は、言論自由化の影響もあって、時間とともにエスカレートし、ある時期以降は事実上全面的な体制転換を視野に入れるようになった。彼の一つの特徴は、言論自由化に伴う改革構想のエスカレートを抑止しようとせず、むしろ自らそれに適応しようと努めた点にあった。
彼がそういう態度をとった一つの要因として、彼が言葉の力を信じるタイプの人間だったということが挙げられる。そのことは内外知識人たちの間に大きな反響を呼び、理想主義的な観点からの期待感を広めた。結果的には、「言葉ばかりが多すぎて、実力の伴わない弱い政治家」という評判をとるに至ったにしても、とにかくそれが彼のスタイルだった。

彼も権謀術数と完全に無縁だったわけではないが、他の政治家たちとの相対比較でいえばマキャベリズムに欠けるところがあり、それがエリツィンに敗北する要因となった。政権末期のゴルバチョフが構想していたのは、もはや集権的でも共産主義でもない、分権的で社会民主主義的なソ連の後継同盟だったが、その構想はソ連解体で潰えた。

みっともない

2022年9月18日   岡本全勝

いつものスマホ批判です。

歩きスマホで前の人とぶつかりそうになる人。周りの人に気づかないひと。これらは、他者に迷惑をかける「悪い人」です。「気配り破壊器
駅や電車の中で、ゲームに熱中して指を高速で動かしている人。漫画や映画にのめり込んでいる人。これらは、通行の邪魔にならなければ、周囲に迷惑をかけていませんが、その行動が「恥ずかしい人」です。
それらは各人の趣味ですが、人前で熱中することは、恥ずかしいことです。電車が到着した際に周囲に気を配らず、他人を押しのけて空いた座席に突進する(そして直ちにスマホを操作する)ことも、みっともないことです。

「してはいけないこと」の次に「気配りが足らない」があり、その次に「みっともない」があります。人前での行動の評価であり、作法です。
「迷惑をかけていないから良いでしょ」と答えるかもしれませんが、その行動は周囲から低く評価されます。あなたが結婚相手を選ぶとき、職員採用をするときに、順位は落ちるでしょう。

「みっともない」「はしたない」という言葉は、死語になったのでしょうか。皆さん、自分を美しく見せようと、化粧をしたり服装に気を遣います。なのに、そのような恥ずかしい行動には、気がつかないのでしょうか。礼儀作法を教える方法や機会はないものでしょうか。「公衆の場でのスマホ操作、両耳イヤホン」「君は間違っていない、しかし

転職しない日本の労働者

2022年9月17日   岡本全勝

9月7日の日経新聞「労働移動先進国の半分 生産性向上を妨げ」から。

厚生労働省は6日、転職や再就職などをテーマとした2022年の労働経済の分析(労働経済白書)を公表した。日本の労働移動の活発さは経済協力開発機構(OECD)平均の半分にとどまっていると分析した。生産性向上や賃金上昇に向け、働く会社や仕事内容を柔軟に変えることができる環境が大事だと訴えた。

国際的にみても、日本の労働移動は鈍い。新たに失業した人と再就職した人の合計が生産年齢人口に占める割合は日本が01年から19年の平均で0.7%と、OECD平均1.5%の半分程度だ。「失業プールへの流入出率」と呼ばれるこの指標は、労働移動の活発さを推し量る目安のひとつで、日本は低い水準が続いている。
日本は失業者が少ないため、同指標は低めに出やすい。雇用が安定しているというメリットがあるが、デメリットもある。白書は、この労働移動の活発さと技術進歩などを示す全要素生産性(TFP)の伸びを各国比較したところ「弱い正の相関がある」と分析した。労働移動が活発だと「企業から企業への技術移転や会社組織の活性化につながり、生産性向上にも資する可能性がある」と指摘した。

日本は勤続年数が10年以上の雇用者が45.9%と30%前後の米英などに比べ多く、同じ会社で長く働く。白書によると、特に役職のある男性が転職などに慎重だった。係長級の男性は37.7%が転職を希望するが、実際に転職活動をしている人は13.1%。2年以内に転職した人が11.3%にとどまった。課長級も、希望者35.0%に対し活動者が12.2%、2年内の転職者が13.3%だ。
終身雇用を前提とした人事制度では、中途採用者の社内でのキャリアパスが明確でないケースも多い。転職に踏み切っても新しい職場で能力が生かせなかったり、賃金が減ったりするリスクもある。
労働移動を促す手段の一つが学び直しだが、取り組みは広がっていない。職業能力を自発的に開発する自己啓発をしている人は男性正社員で20年度に43.7%と12年度の50.7%から減少した。女性正社員も41.1%から36.7%に減った。取り組めない理由は男女とも「仕事が忙しい」が多く、また「家事・育児が忙しい」と回答する女性も目立った。「費用がかかりすぎる」といった理由を挙げる人も男女ともにみられた。白書は「企業が費用面の支援や就業時間の配慮をしている場合、自己啓発をしている社員の割合が高い」として企業による支援の重要性を指摘した。

デジタルスクリーン症候群

2022年9月15日   岡本全勝

9月6日の読売新聞、米国の精神科医ビクトリア・ダンクリー氏への取材「パソコン、スマホ 見過ぎ弊害 デジタルスクリーン症候群 変調や集中力低下」から。

パソコンやスマホを見る時間(スクリーンタイム)が長過ぎると心身に様々な変調が現れる。これを「デジタルスクリーン症候群」と名付けた米国の精神科医、ビクトリア・ダンクリー氏(52)に、学校のICT化や教科書のデジタル化の影響を聞いた。

——子供がパソコンやスマホといったデジタルスクリーンを見過ぎるとどうなるのか。
「神経が過度に刺激され、常に興奮し疲れた状態になり、いらいらしたり、注意力散漫になったりする。受動的なテレビ視聴よりもゲームなど双方向の時により顕著だ。脳科学的には、言語や感情をつかさどる前頭葉への血流が減り、生理学的にはストレスホルモンが増えるためと考えられる」
「解決方法はスクリーン断ちで画面からの刺激を除去することに尽きる」

「米国では、ICT化が進んだ学校でも小学校高学年になるまでデジタル端末を持たせない学校もある。IT企業などが集まるシリコンバレーでは、住民がICTの弊害をよく知っており、多くの親が我が子をICT化の進んだハイテクな学校ではなく『ローテク』な学校に通わせている」

——教科書のデジタル化はどうみるか。
「米国ではうまくいかず紙の教科書に戻した学校が多い。通信環境のトラブルや機器の故障への対応などで費用が高くなっている。内容も更新されず、多くが古いままで、必要な訂正も行われていない」
「紙の方がスクリーンより速く読め、理解が深まり定着も良いなど、紙の良さを示す研究はたくさんある。仮に学習効果が同じでも、スクリーンを見過ぎると子供に睡眠不足や過覚醒など様々な問題を引き起こす」

——子供たちは早いうちからICTに慣れるべきでは。
「パソコンは使いやすいように設計されており、障害のある子供も読み書きよりもはるかに簡単に習得できる。高校や大学に進学してから学べば十分に間に合う」
「親はスクリーンが脳に与える影響について正しい知識を持つと同時に、小さい頃からICTに触れなくても、我が子が人生で取り残されることはないと信じることだ」

「東京暮らしは身分が上」意識2

2022年9月14日   岡本全勝

「東京暮らしは身分が上」意識」の続きです。
富山県庁に勤務していたときのことです。ある職員が「岡本部長は、東京住まいで良いですね」と言いました(その時は単身赴任中)。私が「どこがや?」と聞くと、「銀座とか、六本木とか、ディズニーランドとか」と言います。
私は「私が東京に住んでいるときに、銀座や六本木にしょっちゅいくと思うか?ディズニーランドだって、かつて子どもを連れて行ったけど、その後は行ったことがない。それより、あんたは毎年子どもとディズニーランドに行ってるじゃないか」と反論しました。

職員は苦笑しながら、「ええ、本当はそうなんですよ。東京は住むところじゃないです。富山の方が暮らしやすいし。ディズニーランドは、年に一度、泊まりがけで行けば良いですから」とのことでした。

若い女性たちが一度は東京に出てみたいと思うことは、理解できます。でも、その後の暮らしを考えたら、上に書いたような発想になってくれれば良いのですが。