カテゴリーアーカイブ:社会の見方

中学校の部活動の地域移行

2023年1月29日   岡本全勝

1月16日の日経新聞オピニオン欄は「部活動「地域移行」の成否」でした。
・・・公立中学の休日の部活動を民間事業者などに委ねる「地域移行」。少子化や教員の働き方改革が背景にあるが、指導者や施設の確保、費用負担など課題は少なくない。国は「2025年度末」としていた達成目標は設定しない方針に転じた。部活動という日本社会の「慣習」を刷新する道はあるのか・・・

山口香・筑波大学教授の「「強制」脱して個人に委ねる」から。
・・・部活動が日本のスポーツの一つの柱を担ってきたのは間違いない。その意味では地域移行は明治以来の大改革であり、相応の覚悟が求められる。国や自治体は予算を含めた環境整備に努め、生徒・保護者側も一定の受益者負担を理解したうえで、国民全体で新しい仕組みを整えていく丁寧な合意形成が必要だ・・・

・・・学校という空間は逃げ場が少ないところだ。部活を外に出すことで、閉鎖的な環境が生み出しやすい体罰やいじめ、ハラスメントといった弊害をなくすきっかけにもなりうる。

私は筑波大で柔道部に入るまで、部活ではなく町道場で柔道をやっていた。感覚では、そろばんや書道、学習塾と並んで「習い事」に近く、自ら望んでやるものだから対価を払うのも当たり前だと思っていた。部活動はこれまで教員の無償奉仕に頼ってきた面が大きく、その根拠として教育の一環と位置づけられてきたわけだが、地域移行を機にスポーツ本来の姿も問い直すべきだろう・・・ 

官庁エコノミストの縮小

2023年1月28日   岡本全勝

1月18日の朝日新聞オピニオン欄、原真人・編集委員の「岸田政権の巨額予算 司令塔なき政策の矛盾と欺瞞」から。

・・・財政や金融政策は本来は理論やデータ分析の規律が働く分野だ。にもかかわらず、これほど矛盾や欺瞞に満ちた政策がまかり通るのはなぜか。政策決定に最低限の良識とまともな論理を回復させる必要がある。
かつてマクロ政策の総合司令塔として政府内や日銀との調整役を担ったのは経済企画庁(現内閣府)だった。官庁エコノミストと呼ばれる学者顔負けの専門家たちが集い、経済白書(現在の経済財政白書)に大きな国家構想を描いた。1947年に出た初の経済白書の筆者である都留重人、池田内閣の所得倍増計画にかかわった宮崎勇、のちに外相を務めた大来佐武郎。さらに金森久雄、香西泰、吉冨勝ら戦後を代表する著名エコノミストたちがひしめいていた。
経企庁は22年前、省庁再編で総理府などと統合し内閣府になる。男女共同参画や沖縄振興など諸部門を抱える巨大組織のなかでマクロ経済調整は一部門にすぎなくなった。次第に官庁エコノミストは重きをおかれなくなり、今や絶滅危惧種だ。
経企庁の物価局には50人規模が配置されていたが、再び物価に焦点があたる現在、内閣府の物価担当はわずか2人である。

旧経企庁OBで経済白書の執筆者だった小峰隆夫・大正大教授(75)は「官庁エコノミストの重要性は今も変わらない」と言う。「ビッグデータや行動経済学など最新の道具が増え、これを政策立案のために使いこなすスペシャリストが必要です」
とはいえ、それも結局は政権に都合のいいデータ集めに利用されるだけではないのか。小峰氏にその疑問をぶつけてみた。

――あなたがいま官庁エコノミストだったらおかしな政権方針を批判できますか?
「いや無理でしょう。私も財政はいつか破綻するのではないかと心配だし日銀の政策もどうかと思う点が多い。でも官僚は表だって時の政権の方針を批判できません」
どうやら問題の本質は官庁エコノミストの減少だけにあらず。政権が都合のいい結論を持ち出す意思決定のブラックボックス化、官僚たちが率直な意見をあげにくい風通しの悪さにこそ、理が通らぬ政策が横行する原因がある。ならば政権の良識に期待するより抜本的な制度改革が必要だろう。

小峰氏が提案するのは省庁再編に伴って廃止された「経済審議会」の復活である。学界や産業界、労組、消費者団体などから分科会も含め100人超の識者を集めた首相の諮問機関だ。首相が示す政策理念に沿って、計量モデルにも整合的で、かつ現実的な経済計画を4~5年ごとにまとめた。
「全会一致が原則だからかんかんがくがくの議論の末、結論はマイルドになった。でも、論理的に説明できない結論にはなりません」。これも一案かもしれない・・・

この記事は、朝日新聞デジタル版では「「決める岸田政権」政策迷走の裏に 官庁エコノミストの絶滅危惧状態」という題です。こちらの方が、わかりやすいですね。

教員の不足

2023年1月26日   岡本全勝

1月16日の日経新聞1面は、「教育岩盤・迫る学校崩壊(1)」「先生の質を保てない 公立2000校で欠員、1年で3割増加」でした。

・・・教員不足や不登校の急増などで「学校崩壊」の危機が迫っている。社会の変化に応じて仕組みを変える動きの鈍さが原因だ。人材育成の土台が機能不全に陥れば国力の低下を招きかねない。学校を持続可能にする条件を探った・・・

文部科学省の2021年の調査では、公立小中高校と特別支援学校の1591校で2065人の欠員が生じていました。日経新聞の調査では22年5月で、2092校で2778人の欠員が出ています。
数の不足だけでなく、教員の質の低下も危惧されています。志願者数が減って、力不足の教員も採用されているようです。
「日本の教育は優秀」といわれていたのですが、そうではなくなっています。この課題にどのように対応するか。政府と自治体の力が問われています。

安い日本の給料、管理職の給料

2023年1月24日   岡本全勝

1月11日の日経新聞1面に「ファストリ、国内人件費15%増へ 年収最大4割上げ」が載っていました。記事に、外国比較が載っています。

・・・「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは3月から国内従業員の年収を最大4割引き上げる。パートやアルバイトの時給の引き上げも既に実施しており、国内の人件費は約15%増える見込み。ファストリは現在、欧米を中心に海外従業員のほうが年収が高い。国内で大幅に賃金を見直すことで、グローバルな水準に近づける狙いがある。国際的な人材獲得競争で劣後する日本企業の賃金制度に影響を与えそうだ。
ァストリ本社やユニクロなどで働く国内約8400人を対象に、年収を数%から約40%引き上げる。新入社員の初任給は月25万5千円から30万円に、入社1~2年目で就任することが多い新人店長は29万円から39万円になる・・・

・・・東京商工リサーチによると、上場企業3213社の21年度の平均年間給与は605万円で、そのうち900万円以上は110社にとどまる。ファストリの国内で働く従業員平均給与は959万円と国内小売業でも最高水準にある。ただ、国内の総合商社や外資系企業などに比べ見劣りは否めない。海外企業の賃金と比較しても低水準にある。
日本企業の賃金は国際的に低い。人材コンサルティングの米マーサーによると、マネジャー級の年収は22年7~9月期の平均レートの1ドル=135円で算出した場合、日本は22年12月時点で9万6374ドルで前年比10%減った。米国(21万9976ドル)に比べ約半分の水準で、中国に比べても低い・・・

1月13日の朝日新聞には「日本の社長、給料低すぎ?」が載っていました。
・・・日本の社長報酬は、米欧と比べるとかなり低い。
コンサルティングのHRガバナンス・リーダーズが、時価総額の大きい100社を対象に21年の実績を調べたところ、日本の社長の報酬(中央値)は1億8千万円だったのに対し、トップの米国は27億1千万円。日米の差は15倍と、前年の10倍から広がった。欧州は日米の中間で、ドイツで6億2千万円だった。
 差を生んでいる要因の一つが、報酬の決め方の違いだ。日本は経営実績などに応じて変動する報酬が50%にとどまり、米国(94%)やドイツ(72%)より低い・・・

工作機械大手、DMG森精機の森雅彦社長の話が載っています。
・・・上場企業は年間報酬が1億円以上の役員の氏名と金額を公表しなければならないが、このルールをなくし、「多くても少なくても明らかにした方がいい」と言う。
公表されるのをいやがり、報酬を1億円未満にとどめる社長が少なくない、とみるからだ。かつての自身もそうだった。報酬を9千万円台に抑えていた時期がある。横並びを重んじる日本社会で、目立つのは得策ではなかった。
37歳の時に父親から会社を受け継いだオーナー経営者。当時は東証1部上場で最年少の社長だった。
2016年のドイツ企業との経営統合が転機となった。報酬が高いドイツ側の幹部から「自分だけ突出した額をもらうのは格好がつかない」として、日本側の役員の報酬も引き上げるよう求められたという。
森氏は17年度に初めて報酬を公表した。1億4800万円だった。21年度は2億9800万円を手にした。報酬を上げると、有能な外国人経営者を迎え入れやすくなった。部長職など幹部の給与も上げた。
「その人の責任やがんばりを、もっと報酬に反映した方がいい。メリハリのない公平性が、この30年間の日本経済の停滞を招いたのではないか」・・・

進学できない外国人の子ども

2023年1月22日   岡本全勝

1月7日の日経新聞1面に「公立高「外国人枠」なし73% 進学せぬ子、日本人の10倍」が載っていました。
・・・高校で外国人受け入れ枠の導入が進んでいない。2023年の入試で全国の公立高の73%が特別枠を設けないことが日本経済新聞の調査で分かった。日本語が得意でない生徒にとって一般入試は容易でない。中学卒業後に10%が進学しておらず、全中学生の10倍の水準だ。新型コロナウイルス下の入国制限緩和で外国人労働者受け入れが再び拡大しており、子どもが進学しやすい環境を整える必要がある・・・

また、社会面では、「外国人枠「来日3年内」受験の壁 公立高校、緩和の動き」を解説していました。
・・・来日した子どもの進学を巡る「壁」が解消されない。2023年入試で外国出身の生徒向けに定員枠や特別選抜を設ける公立高校は27%どまり。枠などがあっても対象を「来日3年以内」に限る地域が多く、中学入学前に来日した子どもはこぼれ落ちる。高校入試レベルの日本語習得には5年ほどかかるとされる。実情を踏まえた対応が求められる・・・
・・・専門家の間では、日常会話は2年ほどで身につくのに対し、学問的な思考に必要な言語能力の習得には5~7年かかるとの見方が強い。文部科学省も学校現場向けの資料で「外国人生徒が母語話者レベルに追いつくには少なくとも5年必要」と説明。支援団体から「特別枠を来日3年内に限るのは、言語習得の実態にそぐわない」との声が上がる・・・