カテゴリーアーカイブ:社会の見方

大阪の日本画展

2023年6月2日   岡本全勝

東京ステーションギャラリーの「大阪の日本画」が、よかったです。
江戸時代から戦前まで、大阪は経済力のある商人の町でした。文化を支える力があったのです。
文楽は有名ですが、日本画も商人たちが支えました。残念ながらそれらを見せる施設や機会がなく、知られていません。

マイナンバーの構造

2023年6月2日   岡本全勝

5月25日の日経新聞に、大林尚・編集委員が、「マイナ失策に15年前のトラウマ 個人情報、分散管理あだに」を書いておられました。

・・・健康保険証の機能を載せたマイナンバーカード(マイナ保険証)に他人の情報がひもづけられている事例があると、加藤勝信厚生労働相が記者会見で明らかにしたのは今月12日だ。厚労相は「いま一斉にチェックし、こうしたことが起こらぬよう入力時に十分に配慮してもらうことを徹底させる」と対応策を述べた。
他人の情報が誤入力されたケースは2021年10月~22年11月に7300件あまり。健康や医療に関する情報は個人情報のなかでも極めてセンシティブだ。誰もが赤の他人になど絶対にみられたくあるまい・・・

・・・実は、ミスが表面化することは政府自身が予見していた。マイナカードの発行やマイナンバーシステムを運用する地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が2月に自治体向け文書で警告した。
マイナンバーシステムの情報連携で他人の情報を連携(ひもづけ)するケースが頻発しており「追記処理」と呼ぶ訂正作業を急ぐように、との指示だ。

ミスは情報提供ネットワークシステムがマイナンバーや個人を特定する基本4情報(氏名、住所、性別、生年月日)を介さずに「みえない番号」を使ってやりとりしているという事情に起因する。ひもづけをする担当者は個人を特定する情報に接しないので、照会した本人の情報かを確認するすべがないのだ。
なぜこんなやり方か。万一、情報が漏れてもプライバシーを守れるというのが表向きの政府の立場だ。だが真の理由は、総務省が違憲訴訟を避けたいがために個人を特定できる情報をシステムに流さない方針を徹底させていることにある。

歴史をひもとこう。住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)はプライバシー権を侵害し違憲だとして、住民が同省などに個人情報の削除を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁は2008年「住民サービスの向上や事務効率化という正当な目的で使われ、情報漏洩などシステムの欠陥もない」として住基ネット合憲の判断を示した。その際の条件が「行政事務で扱う個人情報を一元管理できる主体が存在しないこと」だった。
欧州各国の番号制度は一元管理が主流だが日本はこの判例がトラウマになり、総務省は一元管理の回避を最優先してきた。個人情報は保有機関ごとに分散管理し、それぞれに「みえない番号」をつけるやり方だ。
以来15年。この間にデジタル技術は長足の進歩を遂げ、プライバシーの「守り方」もデジタル時代に即したやり方が適用されつつある。人手による情報のひもづけを変えないかぎり、いくら確認を徹底してもミスは完璧には防げまい。一元管理への移行を検討するタイミングではないか。
むろん堅固なセキュリティー対策が必要なのは言うまでもない。デジタル・警察両庁はマイナカードに運転免許証の機能を載せる計画のピッチを速めようとしている。万人がマイナカードを安心して使うのに足りない視点は何か。政府を挙げて再考するときだ・・・

外国人目線で外国に売る

2023年5月31日   岡本全勝

5月18日の朝日新聞経済欄「選んだスタートアップ:3 海外へ和菓子、感性を目利き」から。

・・・ 淡いピンク色の小包には、桜の花びらが大きく描かれている。開けると、老舗メーカーのかりんとうやどら焼きがぎっしり。アメや抹茶のティーバッグも添えられている。
日本の伝統的な和菓子などを海外に届ける定期便「SAKURACO(サクラコ)」の春シーズン商品。仕掛けたのはスタートアップ(新興企業)「ICHIGO(イチゴ)」(東京都)だ。
社長の近本あゆみさんは、外国人観光客が銀座で日本の菓子を「爆買い」する姿にヒントを得て、2015年に起業した。前職のリクルートでECサイトを立ち上げた経験を生かせると考えた。
海外のトレンドや国内の新商品に敏感に反応する、買い手を飽きさせないよう状況に応じて工夫を凝らす……小回りが利くスタートアップならではの強みを発揮した。
菓子のセットを毎日数千個、180カ国・地域に向けて発送している。コロナ禍での巣ごもり需要も追い風に、創業から6年で年商40億円に達した。

成長を優れた人材が支えている。
菓子は、日本人のバイヤー7人が目利きして国内各地から集める。老舗の和菓子から大手の定番スナック菓子まで目を配り、開発秘話や店の歴史を紹介する冊子も添える。バイヤーを採用する際は、過去の経験にとらわれず、新たに海外向け商品を開拓できるかを見極める。外国人が多数のチームになじめることも大切にしている。
買い手となる外国人の目線も重要だ。商品やウェブサイトの意匠は東南アジア系の社員らが担う。当初、日本人に頼んでいたデザインは、かわいらしい「少女マンガ風」(近本さん)で、海外の客には響かなかった。そこで思い切って外国人にデザインを託した。
作品には「すごい」「おいしい」といったシンプルな言葉が、ひらがなで大胆にあしらわれていた。近本さんは「これでいいのか」と半信半疑だったが、採用すると売り上げは一気に伸びた。
いま従業員100人のうち8割は外国人で、国籍は欧米や東南アジアなど様々だ。宣伝コピーや冊子の文章は、米国や英国、カナダ出身者ら英語が母語の社員が表現を工夫する。言い回しが不自然なだけで、興ざめしてしまう客もいるためだ・・・

一身にして二生を経る

2023年5月30日   岡本全勝

「一身にして二生を経る」とは、 福沢諭吉の『文明論の概略』に出てくる言葉です。
一つの身体で二つの生涯を生きたということです。 福沢諭吉は、江戸と明治という二つの大きく異なった社会を生きました。
戦前と戦後を生きた人も、同様でしょう。天皇制・軍隊・家父長制の時代と、民主主義・戦争放棄・基本的人権の尊重の時代の二つを生きました。明治維新と敗戦は、革命的な転換でした。

さらに、私たちも二生を生きています。前二回と異なり、憲法は変わっていません。でも、昭和後期と平成・令和では社会の実態は大きく変わりました。
夫婦と子ども二人が標準家庭と言われましたが、今や最も多いのは一人暮らしです。夫は仕事に出かけ、妻は家庭を守るという役割分担も、過去のものとなりました。片働きより、共働きが多くなっています。
「日本とは日本語を話す日本人が暮らす国だ」というかつての通念は、農業、水産業、工事現場、コンビニ、飲食店などで多くの外国生まれの人が働くようになり、通用しなくなりました。

差別や人権侵害も大きく変わりました。私が就職した際の人権教育は、部落差別でした。現在では、女性(性犯罪・性暴力・DV・ハラスメント)、子ども(いじめ・体罰・児童虐待・性被害)、高齢者、障害のある人、性的マイノリティなどでも人権侵害が起きています「人権教育」。
女性に向かって「まだ結婚しないの」とか「子どもはまだですか」といった質問を、かつては平気で言っていました。
私にとって、また多くの昭和人間にとっては、これは革命的な変化です。その意識改革について行けない人もいます。その人たちが、職場でセクハラやパワハラを行います。

岸田首相は2月1日の衆議院予算委員会で、夫婦別姓や同性婚について「制度を改正するということになると、家族観や価値観、そして社会が変わってしまう課題なので、社会全体の雰囲気のありようにしっかり思いをめぐらせたうえで判断することが大事だ」と述べました。しかし、既に社会は大きく変わっています。

社会人への金融経済教育

2023年5月28日   岡本全勝

5月11日の日経新聞オピニオン欄、白根寿晴・日本FP協会理事長の「社会人に必須の金融経済教育」から。

・・・資産所得倍増計画達成の成否は、将来のために資産形成を迫られている社会人の金融経済教育と、その結果として得られるファイナンシャル・ウェルネス(生活の経済的な側面を効率的に管理できる能力やその状態のこと)の実現に深く結びついている。

学校教育段階では、すでに中学校と高校で金融経済教育が始まり、時間とともに実績の積み上げが期待される。しかし、社会人の中でも国内企業数の90%以上、被雇用者数の約70%を占める中小企業の被雇用者と個人事業主は大手企業との賃金格差が大きく、これまで資産形成に取り組む余裕がない人が多かった。
資産形成に必要な知識の習得や専門家との相談の機会にも恵まれていなかった。社会人になっても毎月の給与明細書や年末の源泉徴収票の内容を理解していない人も相当数いる。内容を知ることで所得税や住民税、健康保険、年金保険制度などの理解に結びつくが、住民、顧客の相談窓口を担う公務員や金融機関職員の中にも内容をよく理解していない人が少なからずいるようだ。

生活困窮者の自立支援に取り組むように、まず自治体が将来の「生活困窮者予備軍」の発生を防ぐことが重要だ。住民がファイナンシャル・ウェルビーイング(経済的幸福感)を享受するために、社会人向けに金融経済教育の場を提供する必要がある・・・