カテゴリー別アーカイブ: 自然科学

如月の望月に桜は咲いたか

4月7日の朝日新聞「月刊データジャーナリズム」「京の花見1200年、地球が分かる」が載っていました。
・・・古文書や日記には「桜が満開」「花見をした」といった記録が残り、京都の桜は満開日が1200年余にわたって断続的に確認できる世界で最も長い花のデータとされます・・・
・・・大阪公立大の青野靖之准教授(農業気象学)は、京都でヤマザクラがいつ満開になったのかのデータを1990年ごろから集めている。史書や日記から日付がわかる記録を探し、812年から今年まで1200年余りのうち、837年分の満開日を特定した・・・
・・・青野さんがまとめたデータを分析すると、満開日は4月中旬が多く、最も遅かったのは1323年の5月4日だった。それが、1820年代ごろからどんどん早くなり、近年は毎年のように記録を更新。これまでに最も早かったのは2023年3月25日で、次が21年3月26日だった・・・

ついている図表を見ると、江戸時代までは、平均では元日から100日以降に咲いています。もちろん、早い年も遅い年もありますが。
西行法師が、「願わくは花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」と読んだ如月の望月は、旧暦の2月15日の満月、新暦だと3月半ばから下旬ですよね。これだと、如月の望月のころは、桜は咲いてないのでは。
「弥生の望月のころ」では、駄目だったのかなあ。

「近代発明家列伝」

橋本毅彦著『近代発明家列伝ー世界をつないだ九つの技術』(2013年、岩波新書)を読みました。なぜこの本を読もうと思ったのか、思い出せないのですが(反省)。

なぜこの9人が選ばれたのかは、次のように説明されています。
最初の3人は、時間、動力、空間に関わる技術で、地球規模での一体化をつくる先駆けでした。
ハリソン──世界時刻の計測
ワット──産業革命の原動力
ブルネル──大英帝国の技術ビジョン

次の3人は、音声や通信技術に革命をもたらしました。
エジソン──発明と経営の間で
ベル──電信から電話へ
デフォレスト──無線通信とラジオ放送

最後の3人(4人)は、現代人の活動範囲を飛躍的に拡大させる交通技術をもたらしました。
ベンツ──ガソリンエンジン搭載の自動車
ライト兄弟──空間意識を変えた飛行機
フォン・ブラウン──宇宙ロケットとミサイル

皆さん、どれだけ知っていましたか?
もう一つ、この本が訴えているのは、技術が革新的なだけでは普及せず、それを社会の需要に適合させること、「売れる」ようにすることが必要です。この部分は、発明家ではなく、起業家の役割になります。本人が行う場合もあります。「人に知られることなく研究していた」では、社会に認められず、普及もしません。時には、発明家の意図とは違う目的で使われる場合もあります。
科学の社会史

強い心臓

ここで言いたい「強い心臓」は、強心臓などとは違います。
人間や動物の心臓は、素晴らしいですね。一生の間、一度も休むことなく鼓動を続けるのです。止まると、死にます。それどころか、しばらく休憩しただけで、死んだり、脳死になります。

インターネットで調べると、哺乳類の心臓は一生の間に15億回打つ、動物はその大きさにかかわらず23億回と書かれています。「視野の時間的広さ・ゾウの時間 ネズミの時間2

人間の心臓は、1分間に60~80回収縮し、約5リットルの血液量が全身に送り出されているとのこと。5リットルとは、1リットルのペットボトル5本分です。すごい量です。
拍動の回数は1日約10万回、一生の間には40億回以上も打ち続けるという記述もあります。1日10万回、一生に40億回と聞くと、自分の心臓を褒めてやりたいです。
その心臓に感謝して、休ませてあげたいですが、それをすると死んでしまうし。逆に、ハラハラドキドキして心臓に負担をかけています。良くないですね。

鎌田浩毅著『大人のための地学の教室』

鎌田浩毅・京大名誉教授が『「地震」と「火山」の国に暮らすあなたに贈る 大人のための地学の教室』(2025年2月、ダイヤモンド社)を出版されました。

宣伝文には、次のように書かれています。
「東日本大震災によって日本列島は地震や火山噴火が頻発する「大地変動の時代」に入った。その中で、地震や津波、噴火で死なずに生き延びるためには「地学」の知識が必要になる。本書は、京都大学名誉教授の著者が授業スタイルの語り口で、地学のエッセンスと生き延びるための知識を明快に伝える」

いつもながら、わかりやすいです。400ページを超える本ですが、1800円(税抜き)です。今時、この値段でこれだけの内容の本は、めったにないでしょう。

後書きに、産業技術総合研究所の地質図が紹介されています。その一部(大分・熊本県境の宮原地域)は、鎌田先生が若き日に実査をして作られたとのこと。縮尺5万分の1の地質図を1枚作るのに、15年間没頭されたのです。

消費電力の半分はモーター

12月15日の日経新聞「エネルギーの新秩序・国富を考える」は「1%改善モーターに脚光」でした。

国際エネルギー機関(IEA)によると、21年の世界の消費電力量は24兆700億キロワット時で、この半分はモーターが消費する電力だそうです。
モーターの性能を1%上げれば(消費電力を1%減らせば)、1200億キロワット時の省エネになり、それは原発13.5基分になるのだそうです。

モーターは、電車、エレベーター、冷暖房機など様々な場面で使われていることは知っていましたが、電力消費の半分とは、知りませんでした。