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経済

経済対策6割が否定的

5月23日の日経新聞に、「消費税減税は「不適切」85%、インフレ止められず 経済学者調査」が載っていました。
・・・日本経済新聞社と日本経済研究センターは経済学者を対象とした「エコノミクスパネル」の第5回調査で、一時的な消費税減税の是非について聞いた。財政状況が悪化することなどを理由に減税が「適切でない」と答えた割合は85%となった。一時的な減税が恒久化する懸念や、物価高対策としての有効性を疑問視する意見も目立った・・・

・・・夏の参院選を見据え、与野党が経済対策を競っている。物価高や米国の高関税を受け、野党は期限つきの消費税減税を訴えている。与党も減税や給付を盛り込んだ経済対策を検討している。
一時的な消費税減税に踏み切るのは適切なのか。5月16〜20日に経済学者47人に尋ねたところ、「全くそう思わない」(28%)「そう思わない」(57%)の割合が計85%だった。
経済学者の多くは短期的な景気の底上げより長期的な財政規律を重視する立場だ。プリンストン大の清滝信宏教授(マクロ経済学)は「消費税を減税すると、元の水準に戻すのが難しくなり財政再建が遠のく」と述べた・・・

・・・調査では、そもそも現在の日本経済が巨額の減税や給付を必要としているかも聞いた。「減税や財政出動などの経済対策を行うのは適切か」との問いには、「そう思わない」(55%)「全くそう思わない」(6%)との回答が計61%に達した。
2025年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)は1年ぶりのマイナス成長となった。物価上昇率は日銀が目標とする2%を上回る状況が続き、物価高対策として与野党は減税や給付の必要性を訴えている。
多くの経済学者が経済対策に否定的なのはなぜか。まず目立ったのは、減税や財政出動がむしろインフレを助長してしまうとの意見だ。明治学院大の岡崎哲二教授(日本経済史)は「財政出動はインフレを加速させる懸念がある」と答え、東京大の岩本康志教授(公共経済学)も「さらに需要を追加する政策は物価の問題をより悪化させる」との見方を示した・・・」
・・・広範囲に巨額の経済対策を実施する効果を疑問視する学者も多かった。政策研究大学院大の北尾早霧教授(マクロ経済学)は「支援を必要としない高所得層を含めた全国民に減税する必要はない」と断言。慶応大の井深陽子教授(医療経済学)は「減税や給付が時限的なら、将来への備えとして貯蓄に回る可能性が高い」として、消費喚起の効果に疑念を呈した・・・

私は、日本に必要なのは景気対策ではなく、産業政策だと思うのですが。

人手不足で、好循環になるか

5月22日の朝日新聞に「人手不足で「好循環」? 物価上昇へ日銀強気、生活には「不便増す」」が載っていました。

・・・人手不足の度合いが強まっている。企業は働き手を確保するために賃上げし、原資として商品やサービス価格の引き上げに動いている。日本銀行は、この流れが進めば賃金と物価がともに上がる「好循環」につながるとみるが、現場からは悲鳴も上がる。人手不足は何をもたらすのか・・・
・・・物価高と人手不足が進む中、賃上げの流れが続いている。労働組合の中央組織・連合によると、春闘の平均賃上げ率は2年連続で5%を超えた。課題である地方や中小企業への波及についても、日銀は4月時点で「幅広い業種・規模で、人材確保の観点から高水準の賃上げが期待できる情勢にある」とした。

上げの広がりが商品・サービスへの価格転嫁(値上げ)につながり、それがまた次の賃上げに――。物価上昇率2%を目指す日銀は、こんな「好循環」を思い描く・・・
・・・日銀が「強気」に出る一因が人手不足だ。人口が減り続ける日本で、構造的な人手不足が一変するとは考えにくい。それが賃上げと物価上昇を下支えするとの見方だ。今月1日に公表したリポートでは、トランプ関税でいったん景気は減速するとした。その上で「人手不足感が強まるもとで名目賃金は再度伸び率を高め、個人消費は緩やかに増加していく」と見通した。

一方で、人手不足は様々な現場に重くのしかかる。
大阪市の三和建設は昨年末、首都圏で物流倉庫を建てる注文を断った。現場監督や設計士らが足りないからだ。森本尚孝(ひさのり)社長は「供給が限られる中で、(単価の高い)勝ち筋の受注を選んでいる」と話す。
ホテル業界では、訪日外国人客が増える一方で、人手不足で客室を全て稼働できない例も出ている。東京や大阪などのホテルに投資する不動産ファンドの幹部は「コロナ禍以降、稼働率を1割落とし、客室の単価を上げることが当たり前になった」と語る・・・
・・・ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は、人手不足でホテルやタクシーの供給が減って予約が取りにくくなるなど、「生活の不便さが増している」と指摘する。賃金が物価を上回るには、「企業が生産性を向上させ、高い賃上げを実現することが重要だ」と話す。

ある日銀関係者は、人手不足を契機にした賃金上昇について、経済を成長軌道に乗せる「起点になる」と位置づける。
日銀の内田真一副総裁は3月の講演で「現状程度の(低い)成長率で激しい人手不足が起こり、物価や賃金が上がってきているということは、わが国の経済の実力がそれよりも低いことを意味する」と分析。成長率を高めるために企業が事業規模の集約などを進め、経済の実力そのものを高める必要があるとの考えを示した・・・

子が親を超えられない世界

5月8日の日経新聞オピニオン欄に、小竹洋之・コメンテーターの「子が親を超えられない世界」が載っていました。

・・・米国では富裕層と貧困層の格差が広がっているだけでなく、親から子にも継承されやすくなっているのだ。
その窮状を映すグラフがある。「グレート・ギャツビー・カーブ」。所得格差の大きさ(ジニ係数)を横軸、親の所得が子の所得に与える影響の大きさ(世代間所得弾性値)を縦軸にとり、主要国の位置を定めると、右肩上がりの傾向を示す分布図ができる。
右上に行くほど不平等が大きく、それが次世代にも連鎖しがちなことを示す。米ニューヨーク市立大学のマイルズ・コラック教授の研究を踏まえ、アラン・クルーガー元米大統領経済諮問委員長が命名した。格差の足かせをギャツビーの物語に重ねた格好だ・・・

・・・米国だけの悩みではない。英キングス・カレッジ・ロンドンのヨナタン・バーマン助教授が2022年の論文で、子が親の所得を超える確率を推計したところ、主要10カ国全てで低下していた。米国やオーストラリアは所得格差の拡大、その他の国々の多くは経済成長の鈍化が主因だとみる。
とりわけ低下幅が大きいのは日本、米国、フランスである。3カ国の1940年代生まれの世代は最高で9割を超えていたのに、80年代生まれの世代は6割を切る。もはや子の2人に1人しか、親の所得を超えられない計算だ。
格差の拡大や固定化は、容易に止まらない。国際非政府組織(NGO)のオックスファムによると、10億ドル(約1450億円)以上の資産を保有する世界のビリオネアは、24年時点で2800人弱。資産総額は15兆ドルにのぼる。
そんな富豪たちの資産も、いまや6割が相続、コネ、独占、汚職から生まれる時代だという。スイスの金融大手UBSグループは、70歳以上のビリオネアが家族などに譲渡する資産を、今後15年間で6兆3千億ドルと見積もる・・・

人口は減っているが就業者は増えている2

人口は減っているが就業者は増えている」の続きです。記事では、労働者不足も取り上げられています。そのような報道もたくさんあります。自治体でも、職員不足に悩んでいます。
機械化やITの活用で労働者は減ると思うのですが、なぜ、労働者不足になるのでしょうか。この点についても、識者に聞いてみました。原因は、「職種のミスマッチ」のようです。

人手不足は、典型的には「介護や看護や保育」「建設や運輸や警備」など、「エッセンシャルワーカー」と言われる方々が圧倒的に足りていません。他にも、IT人材など求められる「人財」が足りていないということもあるのですが。
建設「就業」者は、令和4年平均479万人ですが、ピーク時の平成9年から30%減少しています。高齢化にもかかわらず、介護職員は、令和5年度に、調査開始以来初めて減少に転じました。
建設業も無人化施工を進めたり、介護分野も効率化に努めたりしているのですが、この分野は、労働集約型の産業であり、人手不足の解消にはなっていないのです。

製造や建設などの現場が人手不足に苦しむ一方で、事務職は求職者が求人を大きく上回っています。
ここ30年で高卒就職者は7割減ったのに対し、大卒就職者が4割近く増えたことも原因のようです。大卒は先輩たちのように事務職を目指し、高卒が就いたような作業現場を選ばないのです。しかし、求人側はそんなに事務職場が増えるわけではありません。

人口は減っているが就業者は増えている

3月31日の朝日新聞に「働き手、増える高齢者・女性」が載っていました。
・・・15歳以上の働く意思のある人の数を示す「労働力人口」が増え続けています。2024年の平均は6957万人で、7千万人に迫る勢いです。その内容を分析すると、高齢者と女性の働き手が増えていることが浮かび上がってきます・・・

4月14日の日経新聞夕刊に、「人材危機、なぜ起きた」という記事が載っていました。労働者不足についての解説です。
そこには、生産年齢人口は減っているが、就業者数は増えている(労働力調査)とあります。へえ。他方で、働き方改革が進んだとあります(古くてすみません。途中まで調べて放置してあったのです)。

日本の生産年齢人口は減っているのに、就業者数は増えている。これは、高齢者と女性の労働参加によります。ところが、労働力は不足している。なぜか。識者に聞いてみました。
就業者数が増えているのに、労働者の総労働時間数は減っているのです。「就業者数×1人当たり労働時間」という概念は「労働投入量」です。
内閣府の「日本経済レポート(2023年度)」第1節 コロナ禍を経た労働供給の動向2-1-1図(2)によると、1990年を頂点に労働投入量は減ってきています。長時間労働が減った、非正規労働者(短時間労働)が増えたということでしょう。