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社会

甘口化する日本酒

7月7日の朝日新聞に「甘口化する日本酒、味や香りの秘密は」が載っていました。

・・・かつては「淡麗辛口」のイメージが強かった日本酒も今は一転。フルーティーで甘口なものが増え、海外への輸出も伸びているそうです。どうやってそんな日本酒がつくられているのでしょうか・・・

・・・「それが近年は、甘口化が徐々に進んでいます」
酒類総合研究所の阿久津武広・業務統括部門副部門長は話す。
鑑評会出品酒の成分調査も担う研究所の調べでは、日本酒の甘さ辛さの指標となる「日本酒度」は、1998酒造年度の出品酒は平均4.6だったが、2008年に3.5、18年には0.9、最新データとなる22年は-0.2まで下がった。
日本酒度は、お酒の比重の逆数から水の比重の1を引いた数値で、糖分などが多ければマイナスになって甘口に、少なければ辛口になる。出品酒の平均は、四半世紀で辛口から甘口になった形だ。
阿久津さんによると、甘口化が進んだ要因は、06年に日本醸造協会が開発したある酵母がきっかけだった。
「きょうかい酵母1801号」
その酵母は、アルコール発酵の過程で、リンゴのようなフルーティーな香りを放つという。デビューするや、瞬く間に全国の酒蔵や日本酒好きから人気を博した・・・

・・・酒類総合研究所によると、近年は、発酵を途中で止める手法が主流。発酵させすぎると、酵母が自らつくったアルコールでダメージを受けて味が落ちることが分かってきたためだ。この結果、グルコース(糖)が残りがちになり、これも甘口化の一因になっている。
阿久津さんは「酵母1801をはじめとするフルーティーな香りを生み出す酵母は、少し苦みをつくることもあって、あえてグルコースを多めに残している場合もある」と話す。
日本酒製造大手「大関」の広報担当者は「市場のニーズが多様化するなかで、香りが華やかな吟醸酒が好まれるようになった。かつて一般的だった淡麗辛口よりも、香りと味わいのバランスがいい、やや甘口で濃醇な吟醸酒が増えている」とする・・・

・・・日本酒造組合中央会によると、2024年の輸出総額は434億円で、14年の115億円から10年で4倍になった。主な輸出先は中国や米国、韓国で、80の国と地域にのぼる。
にもかかわらず、国内での製造量は減少の一途だ。
国税庁によると、日本酒を含めた清酒の製造量は1973年度の142万キロリットルをピークに、00年度には72万キロリットル、23年度には32万キロリットルになった・・・

多い日本の使い捨てプラスチック

6月26日の朝日新聞夕刊、アレックス・ゴドイ、チリ・デサロージョ大学サステイナビリティー研究センター所長の「お弁当にもトレカにも、日本の使い捨てプラ」から。

・・・南米チリの環境専門家で、プラスチック汚染や気候変動などの会議に出席してきたアレックス・ゴドイさんが今年2月、家族で日本を初めて訪れ、休暇を満喫しました。ただ、驚いたのは、日常生活であまりにも多くの使い捨てプラスチックが使われていること・・・

・・・チリや欧米と比べて、日々の生活の至る所で使い捨てプラスチックが使われていることに大きなショックを受けました。
旅行中、電車内で食べるためにマグロ丼のお弁当を駅のそばで買いました。本物の木箱のように見えるすばらしい容器に入っていましたが、幾層にもわたる使い捨てプラスチックを組み合わせた容器でした。保冷剤に、おしぼり、割り箸の袋、小分けのしょうゆなど、他にも使い捨てプラスチックが多く使われていました。

それだけではありません。
スーパーマーケットでは、バナナやリンゴなどの果物が、個別にプラスチックトレーに載せられた上でさらにラップでくるんで包装され、コンビニではクッキー1枚、おにぎり1個の単位で個別にプラスチック包装されて販売されています。特に、しょうゆやマヨネーズ、サラダドレッシングなどがとっても小さなプラスチックの袋に入れられていて、毎食ごとに多用されています。
アニメグッズのお店に行くと、キーホルダーやトレカのような小さなモノまでプラスチックで幾重にも包装され、それらは、小袋にいれられ、店名やブランドが書いてあるショッピングバッグに入れられて手渡されます。
見せ方と衛生管理という意味でとても感心しつつも、使い捨てプラスチックの使用量があまりにも多すぎると思いました。日本のすばらしい企画力を、よりサステイナブルな代替策に振り向けてはどうでしょうか・・・

・・・日本は特異な立場にあります。
1人あたり年間30キロ以上を使い、国内で年間900万トン以上を生産する、世界有数のプラスチック消費国です。
この数値は、単に工業力を反映した結果ではありません。すでに述べたように、日本の「包装文化」に深く根付いた消費行動を反映しています。日本において、包装は単なる付属物ではなく、製品体験の不可欠な一部であり、洗練された美的感覚から厳格な衛生基準に至るまで、効率・尊重・視覚的調和という文化的価値を体現しています。この文化は、コンビニエンスストアの普及、丁寧に包まれた贈答品、個包装製品の構造的な好みによってさらに強化されている。私はそう、滞在中に確信しました・・・

早川書房社長の「私の履歴書」

日経新聞私の履歴書、6月は、早川浩・早川書房社長でした。早川書房は、推理小説や空想科学小説(SF)、外国書籍の翻訳で有名です。
早川書房は、意外な分野の翻訳も手がけています。私は推理小説などは読まないのですが、カズオ・イシグロやマイケル・サンデルを読みました。ほかに、スティーヴン・ホーキングなども、早川書房です。

本屋で多くの出版社の翻訳本を見る度に、どのようにして著者や出版社と接点を持ち、翻訳するのか。その方法を知りたいと、思っていました。評価の定まった本なら売れ行きも読めるでしょうが、新人を発掘するのは難しいし、売れるかどうかわかりませんよね。
早川浩社長の履歴書を読むと、良い本を探すこと、そしてその翻訳を交渉し、翻訳権を手に入れることの難しさが書かれています。ご本人の「目利き能力」のほかに、広い交友がものを言うのですね。
社長も、サンデルの「これからの正義の話をしよう」は3000部だろうと見積もったら、百万部を超えるベストセラーになったと、白状しておられます。

「私の履歴書」。これまでにないことに手を出す、リスクを承知で挑戦した方の履歴は、興味深いです。

ネクタイはなくなるか

6月15日の読売新聞に、松原知基・経済部次長の「受難のネクタイ 外す夏に思う事」が載っていました。私にとってネクタイは、気合いを入れる「小道具」です。

・・・91年には国内生産・輸入量の合計が約5645万本と過去最高を記録した。
変調を来したのはその後だ。IT企業を中心に軽装の会社員が増える。痛撃となったのがちょうど20年前、小泉純一郎内閣の旗振りで始まった「クールビズ」である。夏に社会を挙げてネクタイを外すようになった。
2024年の1世帯あたりの購入額は20年前の3割弱にまで急減した。東京ネクタイ協同組合によると、22年の国内生産・輸入量の合計も約1107万本と4分の1になった。05年に45社程度だった組合加盟社は半減したという。
この間、各社はそれまでにないカジュアルなデザインを施したり、ワンタッチの着脱式ネクタイを開発したりと工夫を凝らした。だが、冷房の温度を下げすぎないことによって電力消費を抑え、温室効果ガスの排出量を減らすという環境保護キャンペーンにあらがうことは難しかった。

きょう15日は6月第3日曜、すなわち「父の日」。かつてお父さんに贈るプレゼントの定番の一つがネクタイだった。総務省の家計調査によると、20年以上前、1年のうち1世帯あたりの購入本数が最も多いのは6月だった。
だがクールビズが始まると、新年度を控えた3月の方が多くなった。6月にネクタイを締めるお父さんが減った影響だろう。もとは妻や恋人が無事を祈る気持ちを込めた布が、父の日に贈られることが少なくなったとは、ちょっと寂しい。
和田さんはネクタイの意義をこう語る。「ネクタイは『着ける』ではなく、『締める』と言いますよね。ハチマキを締める、ふんどしを締めると言うのと同じ。気持ちを引き締めたり、気合を入れたりするものなんです」・・・

欧米、解雇の実態

6月13日の日経新聞オピニオン欄、「過酷な解雇通告 突然のメールや電話が今や6割」に、欧米の解雇の実態が書かれていました。

・・・ある朝、目が覚めて、仕事でフランスに電話をかける前にベッドに寝そべりながら前夜のメールを確認していて、自社の最高経営責任者(CEO)からメッセージが届いていることに気づいた自分を想像してみてほしい。
そのメッセージには、多くの従業員が解雇されると記されていた。次のメールはもっと衝撃的だった。自分もその一人だと書かれていたのだ。

ベッドから起き上がり、心臓の鼓動が速くなる中、パソコンに飛びつき、会社のネットワークにログインしようとする。しかし、もはや自分のパスワードでは拒否されてしまう。フランスに電話する時間になったが、相手の名前や電話番号を思い出せない。それらはすべて、アクセスできなくなったメールに書かれていた。

幸いにも懇意にしているマネジャーの電話番号が自分の携帯電話に登録してあったので、テキストメッセージを送ってみた。だが返ってきたメッセージは、彼も解雇されたというものだった。彼はオフィスに入ろうとしたところ、IDカードが反応しなかったという。
やがてベッドから起き上がり、今後歩むことになるみじめな数週間について考えざるを得なくなる。

ビベェク・グラティさんにとって、こうした出来事は想像する必要がない。なぜなら、それはまさに彼自身にほぼ実際に起きたことだからだ。彼は、米テック各社が相次いで人員削減に踏み切った2023年初めにグーグルから解雇された1万2000人の従業員の一人だった。
47歳のソフトウエアエンジニアであるグラティさんは23年3月、ハーバード・ビジネス・レビューに、メールで解雇を告げられてショックを受けた体験談を記した。
米国ではこのほど、4月の人員削減数が20万人近く急増したとの新たなデータが発表された(編集注、人員削減数は3月は約160万人だったが、4月約180万人に増えた)・・・

・・・同調査では過去2年間に解雇された米国の労働者のうち、メールや電話で解雇通告を受けた人は57%に達した。それに対し、対面で解雇を告げられたのはわずか30%だった。
残りはビデオを通じた面談や職場の噂でそれを知ったという。なお、会社のメールやスラックなどのコミュニケーションツールにログインできなくなったことで解雇されたことを知ったという不幸な体験をした人も2%いた・・・