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社会

不思議な看板、英語崇拝

先日、不思議な掲示板を見ました。駅に入っている商業施設の通路です。畳半分くらいの大きさです。
掲示板の上部に、「Recruit Board」と書いてあります。日本語の表題はありません。その下に、施設に入っている各店舗の「求人票」が、いくつか貼り付けてあります。その求人票は、日本語で書いてあります。

応募する人は、英語が母語の人より、日本人か非英語圏の人が多いと思います。貼ってある求人表は、日本語で書いてありますから。
この掲示板の英語の表題は、誰に向けて書いたものなのでしょうか。

人を集める街、渋谷。消費か発信か

7月22日の読売新聞「シブヤ再起動 流行の発信地、進化続く」から。

・・・渋谷は、若者の新しいファッションの発信地だった。1970~80年代、パルコはコム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトといった若手デザイナーのブランドを売り出し、「DCブランド」ブームの火付け役となった。
続いて訪れた「渋カジ」ブームは少し様相が違っていた。アパレル業界やファッション雑誌主導でなく、若者たちが自由にアレンジした服装が自然発生的に流行していった。インターネットのない時代、若者は古着屋などの街のネットワークを情報源とし、新しいトレンドを生み出した。その後、東急系のファッションビル「SHIBUYA109」を中心に生まれた「ガングロ」などのブームも、渋谷という街が作った。

インターネットを通じてどこでも服を買えるようになった現在、街がファッションの流行を生み出すことは少なくなった。パルコは、セゾングループの解体に翻弄ほんろうされ、勢いを失った。
11月のリニューアルオープンを前に建設工事が進む渋谷パルコを今、包んでいるのは、2019年の「ネオ東京」を舞台にしたSFマンガ「AKIRA(アキラ)」だ。工事用の仮囲いに緻密ちみつなイラストが描かれ、世界中から観光客が集まる撮影スポットとなっている・・・
・・・歩き回ることで新たな文化につなげる。堤清二氏が描いた理想は今、渋谷の周辺に芽吹いている・・・

・・・日本女子大の田中大介准教授(41)は、「ネットで物を買えるようになり、渋谷は『消費する街』ではなくなった」と指摘する。一方で、「『発信する街』としての魅力で人を集める場所となれる可能性がある」とみている・・・

人を集める街、活力ある街の要素がわかります。

自信が持てない教師

7月7日の朝日新聞教育面に「自信が持てない日本の教員 OECD、48カ国・地域を調査」が載っていました。
・・・経済協力開発機構(OECD)が5年に1回実施している、国際教員指導環境調査(TALIS)の結果が公表された。日本の教員が、どのような指導や自己評価をしているのか。学校を取り巻く状況は、他の国と比べてどうなのか。調査結果から浮かぶ傾向を、2回にわたって報告する・・・

・・・調査結果で際立つのは、日本の教員の自己評価の低さだ。例えば、「生徒に勉強ができると自信を持たせる」という質問に対し、「非常に良くできている」または「かなりできている」と答えた中学教員は24・1%。調査に参加した48カ国・地域の平均の86・3%の3分の1未満だった。
似たような質問で、「批判的思考を促す」は24・5%(参加国・地域平均82・2%)、「学習の価値を見いだせるように手助けする」は33・9%(同82・8%)で、いずれも参加国・地域で最低の数値だった。「デジタル技術を利用した学習支援」も35・0%(同66・7%)にとどまった・・・

世界の趨勢との違いに、驚きます。このような状況で、良い教育ができるとは思えません。日本の教員が謙虚だということもあるのでしょうが、これだけもの差がつくのですかね。
他方で、多くの小中学生が学習塾に行くことも、異様です。有名校を受験させるという目的もあるのでしょうが、学校教育では不十分なので塾に行かせている親も多いのでしょう。高校生になると、塾に行くのが当たり前のようになっています。学校教育が不十分なのでしょう。おかしな話です。

次のような指摘もあります。
・・・調査は、日本の教員が授業以外の業務で忙しい状況も明らかにした。中学教員の1週間の仕事時間は56・0時間で、平均の38・3時間を大きく上回った一方、授業時間は18・0時間で、平均の20・3時間より短かった。その分、部活などの課外指導(7・5時間)と事務業務(5・6時間)はいずれも参加国・地域で最長。知識や専門性を高めるための「職能開発」に費やした時間は0・6時間で、最も短かった・・・

かつては、世界一の水準にあるともいわれた日本の初等教育。何かおかしいですね。そして、長く指摘されていながら変わらないということも、おかしいです。
明治以来の画一的教育に成功したが故に、方向転換に失敗しているのだと思います。文部科学省の教育行政の仕組み、教育大学・教育学部の教員養成の仕組みです。

カタカナ英語の弊害「ブラック企業」

7月4日の朝日新聞オピニオン欄「私の視点」、尾鍋智子・桃山学院大学国際教養学部准教授「造語と言語感覚 「ブラック」使い方再考を」に、ハッとさせられました。

・・・最近のマスコミの言語感覚に首をかしげることが多いのは、私だけだろうか。最も不快な表現は「ブラック企業」のブラックだ。
なぜ不快なのか。「黒は悪」という短絡的稚拙さへの恥ずかしさや、「劣悪」「闇」で代替可能という思い、「ブラック企業」が和製英語の最新語としてリストに加わりそうなことへの憂鬱もある。だが、カタカナのブラックと英語のBlackが持つ意味の違いは、さらに重要な問題をはらんでいる。
Black is beautiful.「ブラックは美しい」は、1960年代に米国の公民権運動で使われた代表的標語だった。ブラックという色が悪いという偏見を、黒人自らがまず打ち砕き、人種差別と闘おうとした力強い言葉である・・・
・・・ブラック企業とは労働環境の劣悪さを指すようだが、完全な和製英語である。公民権運動を経た欧米においては、「ブラックは悪」というニュアンスでの新たな造語は許されないからだ・・・

カタカナ英語が、とんでもない間違いを生む例です。私も無意識に使っていました。反省します。この言葉を安易に使っているマスコミにも、問題がありますね。何か良い日本語を、考えなければなりません。マスコミがどのように対応するかを、期待してみていましょう。

監視社会

6月30日の朝日新聞「未来からの挑戦」は、「AIの目、忍び寄る監視社会」でした。
・・・画像処理を得意とする人工知能(AI)が登場し、街中の監視カメラで瞬時に個人を識別して追跡もできるようになる。治安向上に役立つ一方で、「監視社会」の不安が人々の身の回りに忍び寄る・・・
記事には、次のようなことが書かれています。
6万人のコンサート会場で、1人を見つけ出すこと。中国では警察が全国に張り巡らせた監視カメラが2千万台、それ以外を合わせると2億台ものカメラがある。中国の警察官がかけている特殊なめがねは、登録した人の顔が見えると、それを表示する・・・。

街中の監視カメラで、私たちの顔が撮られていることは既に「常識」です。駅や新幹線の中は、カメラがどこにあるか、よく分かります。そこで、顔が撮られているはずです。
さらに、鉄道の改札でスイカ(イコカなど交通系ICカード)を使うと、どこに移動したかも、把握されます。クレジットカードを使うと、どこで何を買ったかも、把握されます。インターネットで何を見たか、電子メールでどのようなやりとりをしたかも。
秘密も何も、あったものではありません。
把握されるのが嫌なら、クレジットカードやスイカを使わないようにしなければなりません。犯罪がらみは、現金で決済しているのでしょうね。さらに、監視カメラなどに中国製品が使われていると、データは北京に送られているという説もあります。

私は駅を通る際に、監視カメラ(たいがいエスカレーターの上にあります)に向かって、顔が映るようにしています。何か事故に巻き込まれたときに、「ここまでは歩いていた」と分かるようにです。