カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

人事異動と面談

10月6日の日経新聞夕刊Bizワザは「人事面談 意思を明確に」が載っていました。
・・・「異動はまず面談から始まる」。企業人事に詳しい神戸松蔭女子学院大学の楠木新教授はこう話す。多くの企業では仕事の目標を設定する面談の際に、キャリアの希望や可能な勤務地を尋ねる。そこで「遠慮して明確な希望を伝えない人が多いが、どこでどんな仕事をしたいのか、きちんと話すべきだ」と強調する・・・

・・・実際に異動の打診を受けたときはどのように受け止めればいいか。人材紹介を手掛けるクライス・アンド・カンパニー(東京・港)の丸山貴宏社長は「異動は社内転職として前向きに捉えるべきだ」と話す。特に若手は「身分を保障されて新しい仕事や能力を身につけられる。こんなにありがたい機会はない」と指摘する。
打診された異動が希望通りではない場合も少なくないだろう。怒りや不安が募るだろうが、楠木教授は「退社などすぐに極端なことを考えるべきではない」と話す。自分の適性を他人の方が分かっていることも多いためだ。
まず、上司に異動の理由や自分に期待していることなど、聞きたいことは全て確認しよう。それでも納得できない場合は「異動先の仕事は嫌だ」など否定的な言葉は使わずに「今の職場でこう活躍したい」などと伝える。もちろん家庭の事情など、どうしても受け入れられなければはっきり話そう・・・

どうしても意に沿わない異動ならば、転職も選択肢の一つだ。クライス・アンド・カンパニーの丸山社長は転職の前提として「現在とは違うやりたい仕事があること。もしくは、異動前の職務を今後も続けたいという強い思いがあること」を挙げる。企業が中途人材を評価するのは能力と仕事への思いだ。
まずは世の中で自分の能力や思いがどう評価されるか。他社の知り合いや人材会社に話を聞くなど、情報を集めるのが先決だ・・・

 産業医の奥田弘美さんは、次のようにおっしゃっています。
・・・仕事がどうしても面白くなければ、お金を稼ぐためと割り切るといい。自営業の人以外は組織の中で働く。若い人を中心に仕事を生きがいや自己実現の手段と考える人は多い。ただ、常に思い通りの仕事を任せてもらえることは絶対にない・・・

勤め人には、とても役に立つ教えです。原文をお読み下さい。
人事担当者の悩みの一つは、社員の自己評価と周囲の評価がズレることです。本人は自分のことを1.5倍に評価し、他人を3割減(0.7倍)に評価すると言われています。拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』第10講。

転職の手続き

9月29日の日経新聞夕刊Bizワザに「いざ転職、退職のマナーは 予定逆算、書類の確認を」が載っていました。

会社による解雇、本人の希望による転職が増え、終身雇用慣行が崩れています。さて、転職するとなったら、現在の勤務先にどのように伝え、どんな手続きが必要となるのか。そんなこと、誰も教えてもらっていませんよね。勤務先にも、聞きにくいでしょう。

記事には、勤務先・上司に退職・転職をどのように伝えるかという礼儀作法と、必要な書類も書かれています。離職票、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、年金手帳などです。
日経新聞は、役に立つことを教えてくれますね。

会社組織の中で成長する

9月17日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、山田邦雄・ロート製薬会長の「責任と自覚 学び続ける」から。

・・・成長を妨げる一番の障害は、その人自身の心理的な壁だと思っています・・・自分自身に蓋をして無理だ、自分にはできない、という思考になってしまう人が多いのです。
最近の日本の若い世代を見ていると、世界で活躍している人がぞろぞろいます。ただ、日本人は集団になると途端にダメになるような気が個人的にはしますね。大きな組織に入ると、部品になってしまうのです・・・

・・・ビジネスパーソンの多くは会社の仕組みの中に埋もれてしまっています。大きな組織になるほど、それぞれの役割は小さくなるのは当然のことです。会社の部品になって生きるということは、本当につまらないだろうし、不幸ではないかと感じています。
日本では年功序列の風習が色濃く残り、ずっと駒としての生活を続け、少しずつのし上がってやっと上に立つ、という仕組みです。この仕組みはあまり面白くないし、いい学校を出た優秀な人を会社の部品にしてしまいます。
自由にやらせないどころか、囲い込んで枠にはめて、会社がして欲しいことだけやってくれ、という仕組みです。これでは世の中はうまく回りません。それによって、日本企業の多くが、自己革新力を失ってしまったように感じます・・・

同感です。特に前段について、できると私が評価している人が「私には無理です」と言うと、がっかりします。
出る杭は打たれる、なるべく目立たないという習慣が、身についているのでしょうか。多くの人は、それでよいです。しかし、組織を背負って立つ人には、もっと積極的であって欲しいです。謙遜は、仕事の世界において、もはや美徳ではありません。
世の中には、「みんなと一緒という人」がたくさんいて、「私は違うことをするという人」が少数でもいてくれると、進みます。
後段については、連載「公共を創る」で主張している、日本型雇用慣行の弊害、管理職が仕事をしていない、ということに通じます。企業だけでなく、行政もです。

ビデオ会議は対面に代わるか

9月16日の日経新聞経済教室は、鶴光太郎・慶大教授の「ビデオ会議、対面に代わるか」でした。
コロナウイルスの感染拡大で、ビデオ会議の利用が急速に進みました。では、ビデオ会議は、対面接触に取って代わることができるのか。

・・・対面接触の経済学ともいうべき分野の第一人者としては、経済地理学者であり、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のマイケル・ストーパー教授が挙げられる。2004年の共著論文では、経済における対面接触の4つの特徴について述べている。

第1は情報伝達技術の側面である。対面接触であれば、対話は高頻度かつ瞬時のフィードバックが可能だ。これは電子メールと対比すれば明らかである。また、文字や数式などにより成文化された情報のみならず、不確実な環境下で、複雑で言葉にできない、また、やりとりする人々の間でのみ理解できるような文化・文脈依存型の情報、つまり、暗黙知ともいえる情報も伝達することが可能となる。これは会話のみならず、表情、ボディーランゲージ、握手などの肉体的接触による多面的な情報伝達が可能になるためだ。

第2はモラルハザード(倫理の欠如)などの機会主義的な行動を抑制し、信頼関係を築くという側面である。面と向かって嘘は言いづらいし、対面接触によって相手を注意深く観察し、動機、意図、本音をより正確に察することができ、共通の理解や親近感が生まれる。また、対面接触は、関係構築に時間、お金、努力などの目に見え、関係解消で戻ることのないコストがかかるため、関係を継続させるコミットメント(約束)と解釈できる。

第3はスクリーニング(ふるい分け)とソーシャリゼーション(社会の規範や価値観を学び、社会における自らの位置を確立すること)の側面である。対面接触はコストが高いだけに、そうした接触が必要なグループのメンバーを選ぶには、試験や資格要件だけではなく、仲間内でのみ共有できるようなローカルで文脈依存的な暗黙知が欠かせない。また、こうしたグループのメンバーとして認められるためには、お互いを良く知り、広く共通した背景を持つためのソーシャリゼーションが必要となる。家族、学校、企業にかかわらず、こうしたソーシャリゼーションは対面接触によってこそ可能となる。

第4は対面接触の際のパフォーマンスで得られる快感の側面である。例えば、プレゼンテーションで自分がその場にいる誰よりも優れていることを示したいという競争心・ライバル意識を生む効果だ。

ストーパー教授らは、対面接触が分業にまつわるコーディネーション(調整)やインセンティブ(誘因)の問題を解決し、ソーシャリゼーションが組織のメンバーをスクリーニングすること、また、競争心をあおるような動機を与えるといった上記の特徴を一体的に捉えて、こうした環境を「バズ」(人々の会話のざわめき、ワイガヤ)と名付けた。そしてこれが都市、産業、イノベーション(革新)の集積の根幹的な要因であることを強調した・・・
・・・情報伝達手段の違いによる影響という観点では、実験経済学が専門の独デュイスブルク・エッセン大学のジャネット・ブロジック教授らの一連の研究が参考になる。教授らは4人で10回繰り返されるゲームの実験を行い、協調が達成されるかをみた。対面接触で行った場合に比べ、顔が見えない電話会議では協調達成は低かったが、ビデオ会議の場合は対面接触と遜色がないことを明らかにしている。対面接触と電子メールとの対比では、明らかに前者の方が協調達成されやすいことが既存研究でも明らかとなっているので、顔が見え、リアルタイムでやりとりのできるビデオ会議は、その他の情報伝達手段と比較しても、本質的に異なる可能性が示唆される・・・

・・・対面接触の役割で代替が最も難しいと考えられるのは、ソーシャリゼーションである。新たな組織のメンバーとなり、そこでの価値観や流儀を学びながら仲間になっていくプロセスを、ビデオ会議で実現するためのハードルは相当高そうだ。これは、今年の社会人1年生や大学1年生が、まさにいま直面している困難である。それをどう乗り越えていくか、我々のアイデアと技術を活用する知恵が問われている・・・

在宅勤務で問われる管理職の指導力

9月15日の日経新聞「テレワークできてますか(3)」は「受け身の上司はいらない 「在宅」で問われる指導力 進む管理職改革、降格も」でした。
・・・できる上司とできない上司――。テレワークの広がりは、管理職の優劣も浮き彫りにした。リモートでも仕事を適切に割り振った管理職がいる一方、目の前に部下のいない状況に戸惑い業務が滞った人もいた。新型コロナウイルス後をにらんだ管理職改革が広がっている・・・

・・・「自己の役割ランクに応じた具体的な『役割』と『業務内容』を明記し、提出願います」。中堅機械メーカーの中西金属工業(大阪市)は7月中旬、全管理職約150人に通達した。管理職の役割を改めて自己分析してもらう狙いだ・・・まずは日報提出と部署内での共有を義務付けた。
日報を基に上司が部下に適切な助言をできれば。そんな思惑だった。ところがむしろ管理職の課題が明らかになった。例えばある管理職は「午前メール処理、午後資料作成」と書いた。実際に何をしているのか分からない。中西竜雄社長は「2割は部下への指示・助言も不十分で役割を果たしていなかった」と漏らす。
出勤していれば部下の様子は目に入る。誰かしらが相談や報告にやってくるし会議も多い。主体的に動かなくても一日が終わる。受け身の姿勢が染みついた管理職は、テレワーク環境で機能停止していた・・・

・・・内閣府の調査では、テレワークで生産性が落ちたとの回答が約半数を占めた。一因は上司と部下のコミュニケーション不全だ。
アデコが管理職と一般社員を対象に7月実施した調査によると、テレワークで部下とのコミュニケーションが減ったとの回答が約4割に上った。具体的な課題(複数回答)は「チーム間でのコミュニケーション不足」33%、「部下とのコミュニケーション不足」31%、「部下の仕事ぶりが分からない」22%など。部下側も「上司とのコミュニケーション不足」31%、「さぼっていると思われないか」28%など、上司と部下双方の不満がうかがえる・・・

・・・これまでのやり方を見直すのは楽ではない。中西金属工業も、すべての管理職が自分の役割を見いだせてはいない。会社は各自がまとめた「役割」「業務内容」などを基に全管理職と面談中だ。ベテラン社員が指導役になり、業務を「将来につながる仕事」「現状の業務に不可欠な仕事」「なくせる仕事」に分類し、将来につながる仕事の比率を高めるよう促していく・・・

日報と役割シートについて、よい記入例と悪い記入例も、載っています。これは、わかりやすいです。参考にして下さい。