カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

組織構成員の分類その2。能力差

組織構成員の分類その1。分野別、階級別、コース別」の続きです。
前回述べたのは、表に出ている「見える区分」です。これらの他に、「外から見えない区分」もあります。

D 同じ階級(例えば課長職)の中にも、できる課長・普通の課長・出来の悪い課長がいます。能力の差・業績の差です。
人事評価は、これをしています。良い表現がないので、「能力差」(ability)と呼んでおきましょう。2:6:2の法則は、これを指しています。人事担当者や管理職にとって、Aの分野別、Bの階級別、Cのコース別を前提として、Dの能力差を踏まえて誰をどこに配置するか、特に出来の良くない職員の配置が仕事です。あわせて、成績の低い職員に仕事をしてもらうことが、大きな悩みです。

本屋に並んでいる職場の解説をした書物には、AとBが書かれていてDが書かれていない、書かれていても「評価の仕組み」の解説にとどまっていることが多いです。
でも、きれい事だけでは、組織は動きません。『明るい公務員講座 管理職のオキテ』で、これについても説明しました。
また、Cについても、余り書かれていないでしょう。特に正規と非正規の差、同じような職務をしていても処遇に差があることについて書いたものは見かけませんね。

なお、このほかに、
E 非公式の役割分担があります。これは、社会学の教科書に出てきます。
この項続く

組織構成員の分類その1。分野別、階級別、コース別

職員の能力について、松竹梅の3分類「四角い座敷を丸く掃く」(2018年12月9日。古い話です)を書きました。その続きです。組織での職員の分類論です。

人が集まると、集団になります。そして、その集団を効率よく動かすために、構成員の役割分担を決めます。その役割分担には、2種類あります。分野別の分担と、上下の分担です。縦割りと横割りです。

A 分野別分担とは、企画開発、製造、営業、経理などです。役所では政策別、企業では製品別にも分かれます。これは「職の区分」(division)ですが、職員に注目すると「職種の別」になります。

B 上下の分担は、部長、課長、補佐、係員、平社員・職員です。また軍隊では、将官、士官、下士官、兵の区分です。「階級」(rank)です。一般的には、管理職、中間管理職、平職員の3段階に区分します。

C この階級を前提として、職員育成で経路(コース)を分ける場合があります。上級職・中級職・初級職の区分、総合職・一般職の区分、キャリア・ノンキャリアの区分です。この区分を、何と呼ぶのでしょうね。良い単語が見つかりません。職務給制度の欧米にはない概念のようです。ひとまず「コース別」としておきます。正規と非正規の区分も、ここに当たるでしょうか。

この記事は、途中まで書いて放置してありました。今回ある程度整理できたので、載せます。この項続く

やさしい日本語ニュース

6月29日の朝日新聞夕刊「凄腕しごとにん」は、山屋頼子さん「やさしい日本語にしたニュース、約3千本」でした。
NHKのウエッブサイトの「やさしい にほんごの ニュース」の担当者です。ニュース原稿を、1年ほど日本語を学んだ人でもわかるぐらいのやさしい日本語に書き換えます。

コツは3つあるとのこと。
1 文章を短くする。
2 伝えたいことを最初に言う。
3 書き換えたものを客観視する。
特に、英語などのシンプルな構文に書き換えられるかを考えると効果的だとおっしゃいます。
これらは、「明るい公務員講座」でお教えしたことですね。

ジョブ型には企業を超えた人材評価基準が必要

5月25日の日経新聞経済教室「日本型雇用改革の論点」は、小熊英二・慶応義塾大学教授の「企業越えた人材評価基準を」でした。

・・・新型コロナウイルスの流行で、日本の働き方が問い直されている。リモートワークが進まない、マネジメントが「あうんの呼吸」に頼りすぎていた、採用面接が多すぎるなど、この機会に露呈した問題は数多い。
こうした問題はただ一つの要因から発生している。人材に対する客観的な評価基準がないことだ。それが日本型雇用の根本問題だ。

他国では職種別の熟練度や専門能力の評価基準が、特に1970年代以降に明確化した。そこでは「経営学修士号」や「英語がCEFRでC1」や「営業職としてA社とB社で職歴10年」といった学位や資格や職歴が、その人が就ける職務とその賃金額という形で評価されるのが原則だ。
これが可能なのは、その人が就く職務(ジョブ)が明確化されており、それに対応した学位がはっきりしているからでもある。米国の教育大学院では、学務登録や教育支援、国際教育などはそれぞれ専門課程があったりする。各自がその専門教育を受けて学位をとり、同じ職種で企業を替えながら経験年数を積み、キャリアアップすることになる。

こういう働き方だと、リモートワークは容易だ。一人一人の職務が明確で、責任の所在や分担がはっきりしているからだ。大部屋での共同作業は必要ないし、あうんの呼吸に頼ったマネジメントもいらない。職務ごとに要求される学位や経験年数が明確なら、何回も面接しなくても、書類審査で絞り込みができる・・・
このように職務が明確化している働き方は、日本では「ジョブ型」と呼ばれる。しかし単に職務が明確化しているだけでは足りない。重要なのは、企業を越えて通用する客観的な評価基準が確立されていることだ。・・・

・・・さらに人材評価の基準がない社会では、教育が人的資本を向上させる機能を果たし得ない。今や世界中で大学院の進学率が上がり、大学院に入り直す人も増えたが、それは修士号や博士号がないと高給の職務に就けなくなってきたためだ。
しかし日本は大学院進学率が停滞し、他国と比べ相対的に「低学歴化」しつつある。これは長期的には日本の国力低下につながりかねない。また修士号や博士号が評価対象にならない社会に高度人材が外国からやってくるとは考えにくい・・・

テレワークが変える仕事の仕方

5月22日の朝日新聞オピニオン欄、永守重信・日本電産会長兼CEOのインタビュー「脱・指示待ち型へ 新型コロナ」から。

「私は、テレワークは日本人には向いていないと思っていました。というのも、日本人には指示待ち型が多いからです。子どもの頃から親や先生に言われたことに従うのを是とし、自ら何かを始めようとしない。会社員になってからも、大部屋に机を並べて、何かあれば、すぐ上司にうかがいを立てる。でも、テレワークなら上司の顔色を見て仕事することもなくなるので、指示待ち型から変わるかもしれない」

――しかし、自己管理が難しいというマイナス面もあります。
「自己管理ができるようになるのは日本人にとって、間違いなくプラスです。日本人は自分の意見を言おうとしないので、外国人とのディベートで負けてしまう。これからは、積極的に自分で仕事を探し(Proactive)、専門性を磨いて(professional)、生産性を高められる(Productive)の『3P』で人材を評価していきたい」

――人材評価が難しくなるのではありませんか。
「4月から『入社から何年たったら課長』というような社歴や年齢、学歴の条件をやめたら、意外とテレワークにマッチしていることがわかりました。これからは20代の課長もありです。新入社員も欧米のように給与に差をつけていく。コロナ禍は、日本のあしき横並び主義を変えるきっかけになる気がします」

いくつもの企業が、コロナ後も全面的に元の勤務状態に戻さず、テレワークも続けるようです。働き方改革につながるでしょう。