カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

働きがい、仕事への意欲

3月24日の日本経済新聞が「次は「働きがい改革」満足度など測り改善、生産性向上」を伝えていました。
・・・働きがいを意味する「エンゲージメント」を重視する日本企業が増えている。組織の「健康診断」を実施して職場風土を改善し、生産性アップや離職防止につなげる狙いだ。単なる働き方改革だけでは、労働意欲を高めにくい。経団連が旗を振り、三井住友銀行が全行で意識調査を始める。働きがい改革は、日本企業が競争力を取り戻す妙薬になるか・・・

企業が、社員のエンゲージメントやモチベーションを高めることに取り組んでいます。エンゲージメントとは、社員が企業に愛着を持ち、意欲を持って積極的に仕事をすることです。

この記事でも書かれていますが、日本人のこの意欲の低さは、各種の調査で明らかにされています。
拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』でも紹介しました。p118。仕事ができない職員は、能力が欠けているのではなく、意欲が欠けているのです。
この項続く

会議が多いのではない、報告会が多い

3月26日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、沢田道隆・花王社長の発言「本気問う会議、組織に活気」から。

・・・会議が多いという話が働き方改革で言われますが、本当の会議は少ないと思います。誰かがプレゼンをして誰も意見を言わなければ報告会です。報告会なら文書でもテレビ会議でもできます。集まるのならみんなで意見を出し、結論を出す。結論がまとまらなくても、議事録に残して次回のベースにする。さまざまな意見をぶつけ合うことが、組織の活性化につながります・・・

同感です。
えらいさんの集まる「会議」ほど、報告会になる傾向があります。しかも、上司の発言をつくるために、部下に不要な仕事が増えます。それが昂じて、部下は上司を気にするようになり、課題に向き合う時間が減ります。
儀式としての会議(報告会)の必要性を、私も否定はしません。しかし、それと機能する会議体とは別であり、儀式は仕事の邪魔をします。上司はそれを認識してください。
部下に仕事を任せて欲しい」というのは、この意味です。

長時間労働是正の条件、その3

3月20日の日経新聞経済教室「長時間労働是正の条件」、中原淳・立教大学教授の「業務・時間・意思疎通を透明に」から。

・・・残業発生のメカニズムは「集中・感染・麻痺・遺伝」という4つのキーワードにより説明できる。
1つ目の「集中」とは、一部の特定の優秀な人材に業務量が集中しがちなことだ。スキルが高い社員に残業が集中している。「優秀な部下に優先して仕事を割り振る」と答える管理職は6割を超える。短期的な成果を追求するには、優秀なメンバーに仕事を割り振る方が効率的というわけだ。

2つ目の「感染」とは、職場でまだ働いている人がいると帰りにくいという雰囲気だ。先に帰ってはならないという同調圧力が最も残業に影響している。こうした同調圧力は若い人ほど感じやすく、20代は50代の2倍近くも帰りにくさを感じている(図参照)。また上司の残業時間が長くなるほど、上司のマネジメントの質が低いほど、部下の帰りにくさは増していく。

3つ目の「麻痺」とは、心理的状況と身体的状況がちぐはぐになり、客観視できなくなる状況だ。月60時間未満までは残業時間が増えるほど主観的幸福感が低下していくが、60時間を超えると幸福感の増加に転じることが明らかになった。残業への没入感、他者から頼られているという実感がそれに関係する。

4点目の「遺伝」とは、上司の過去の残業経験が部下の残業時間に強く影響するということだ。新卒入社時に残業が当たり前という文化に染まっていた人は、上司の立場になっても部下に残業をさせやすい。こうした傾向は転職後の会社でも消えずに残る。つまり残業習慣は上司と部下という世代だけではなく、組織さえまたいで受け継がれる。

多くの企業では既に残業そのものをやめさせたり、残業時間に制限をかけたりしている。こうした時間制限型の施策は、個々人の残業習慣、つまり残業麻痺や残業代依存には対症療法的な効果を期待できる。
だがこの方法の効果は限定的で、否定的な影響も及ぼす。残業施策を打ち出すと社員の37.1%が効果に疑問を持ち、23.2%が施策に従わない方法を考え、「経営や人事は現場を分かっていない」との不信感を持つようになる。また時間制限型だけの施策ではストレス・健康不安が高まり、働きがいや組織への愛着が減少し、離職意向も高まる・・・

かつての私の経験にも、思い当たることがあります(反省)。対策も書かれています。原文をお読みください。

長時間労働是正の条件、その2

長時間労働是正の条件」、黒田祥子・早稲田大学教授の「在宅勤務、生活との境界課題」の続きです。

・・・第1にテレワークが普及すれば、誰が何をどれぐらい手掛けたかという仕事の「見える化」が進む。これまでは出勤していれば会社の「メンバー」としてみなされてきた評価体系も、より成果に見合ったものへと転換せざるを得なくなる。企業には、部下への適切かつ効率的な仕事配分と、生産性に見合う公正な評価制度を確立することが求められる。こうした体制が整わない限り、上司と部下の信頼が確立していない職場ほど、非効率なアピール合戦が生じる可能性もある・・・

・・・第2に筆者らの19年の研究によれば、労働者の自己啓発にかける時間は趨勢的に減少しており、特に00年代半ば以降、「職場での時間外」に自己啓発をする人が大幅に減っている・・・テレワークの普及により職場以外で仕事をする時間が増えれば、上司や先輩から直接指導を受ける機会も減る。企業は新たな職場内訓練(OJT)の方法を模索する一方、労働者は時代に即したスキルを自己責任で蓄積することが必要だ・・・

・・・第3に「いつでもどこでも」仕事ができる状況が広がれば、仕事と生活の境界が曖昧になることにも留意すべきだ。これは日本に限った現象ではなく、在宅勤務が普及している多くの先進諸国が抱える課題だ。欧州連合(EU)加盟国の労働問題を調査するEurofoundによれば、在宅勤務の普及率が高い国ほど「余暇時間にも仕事の対応をすることがよくある」という労働者の割合も高くなる。在宅勤務割合が約25%と高いデンマークでは、仕事と生活の境界が曖昧と答えた人が約3割にのぼる・・・

・・・より長期の視点に立てば企業による時間管理は一層難しくなるだろう。現状、テレワークの時間管理はパソコンのログや実際の操作時間などで把握せざるを得ない。しかし今後は、連続的にパソコンに打ち込むような作業は機械に任せ、人間は人間にしかできない仕事に特化することが求められるようになる。一つの企業に定時に出社し、まとまった連続時間で働くことを前提とした現在の労働時間規制は、時代に合わせて見直していく必要がある・・・

長時間労働是正の条件

3月19日の日経新聞経済教室「長時間労働是正の条件」、黒田祥子・早稲田大学教授の「在宅勤務、生活との境界課題」から。

・・・図はフルタイム男性雇用者の長時間労働者の割合を示したものだ。左側の超長時間労働者(週60時間以上)の割合は急速に低下してきている・・・だが右側の週49~59時間働く労働者の割合はあまり変化していない。週49時間以上全体で考えれば、依然どの企業規模でも男性の3人に1人は週に少なくとも10時間以上の残業をしている。労働時間が上限規制のシーリング(天井)に張り付いているとも解釈でき、長時間労働是正はいまだ道半ばといわざるを得ない・・・

・・・筆者が山本勲・慶大教授と経済産業研究所のプロジェクトで実施した調査によれば、震災が起きた11年夏の節電対策として約6割の企業が残業抑制や業務効率化を進めたと回答し、翌年以降も取り組みを継続する予定と答えていた。当時も人々の働き方を変えるきっかけになることが期待されたが、労働時間減少は一時的で、12年には震災以前の状態に戻った。未曽有の大災害でさえも日本の働き方を変えるのは難しかった・・・
この項続く