カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

職場での苦手な相手

7月21日の日経新聞Bizワザは、「苦手な相手 反面教師に」でした。
・・・新型コロナウイルスの感染拡大による在宅勤務が緩和され、従来通り出社する会社員は増えている。苦手な先輩や上司がいれば、憂鬱になる人も少なくないはずだ。円滑なコミュニケーションは対面での仕事に欠かせない。苦手な相手と上手に付き合うにはどうすればよいだろうか・・

・・・パーソル総合研究所がアジア・オセアニアの14の国と地域で働く男女1千人ずつを対象にした調査で、職場の人間関係の満足度は日本が各国の平均を大きく下回り、最も低かった。
また日本は転職理由で人間関係が2位になるなど、対象地域で最も高かった。どの国でも職場で上司や先輩との相性など人間関係のストレスはあるが、同社の小林祐児上席主任研究員は「日本企業は従業員の一体感を重視する傾向が強い。人材の流動性が低く、関係がこじれても同じ場所で働くことが多いためだ」と分析する・・・

・・・異動や転職は対人関係のストレス解消につながる。ただ、大きな決断で本人の負担も大きい。まず職場内での解決を図ってみよう。
小林氏は「相手を観察対象として見てはどうだろうか」と指摘する。相手の問題点をみつけ、反面教師にするのだ。ストレスに役に立つ面があると考える人はそうでない人と比べ、同じ環境下でも精神的に安定し、仕事の成果が高まるという。
1級キャリアコンサルティング技能士の木村典子氏は「相手に自分を理解してもらおうとせず、相手の価値観を理解しようとすることが重要だ」という・・・

明るい公務員講座』では、私のつらかった経験を元に、苦手な上司との付き合い方をお教えしました。「嫌な上司は反面教師」(37ページ)。一人で悩まないでくださいよ。

中国古典に共通する仕事の仕方

肝冷斎が、中国古典の中に、仕事のコツを見つけました。「呻吟語」より「三種方便」
私の「明るい公務員講座」と共通するようです。少々強引とも思えますが。

我嘗自喜行三種方便。甚於彼我有益。
不面謁人。省其疲於応接。
不軽寄書。省其困於裁答。
不乞求人看顧。省其難於区処。

・・・明・呂坤「呻吟語」応務篇より。一瞬、①要らん会議はするな、②無関係な人にまでメールで同送するな、③とりあえず「はい」と言っておけ、という岡本全勝さんの教えを思い出しました。ちょっとづつ違いますが、実は一緒ことを言っているのかも。でもよく考えたら、同じような組織人の行動を真摯に考えたら、同じような結論になるのは当たり前ですね・・・

組織構成員の分類その3。階級の区別

組織構成員の分類その2。能力差」の続きです。その1で、次のように説明しました。
B 上下の分担は、部長、課長、補佐、係員、平社員・職員です。また軍隊では、将官、士官、下士官、兵の区分です。「階級」(rank)です。一般的には、管理職、中間管理職、平職員の3段階に区分します。

諸外国の職場や、戦前の軍隊など、この階級差ははっきりしていて、給与や処遇だけでなく、食堂や便所まで違う場合もあります。
この区分をあまり際立たせない、なるべく平等にするのが、日本型職場でした。会社の中に「身分」や「階級」をつくらない。これが戦後日本の民主主義や平等意識の反映であったと、小熊英二著『日本社会のしくみ』(2019年、講談社現代新書)は指摘しています。

それが、かつては職場の生産性を上げ、近年では生産性の低さを生んでいると、私は考えています。
多くの組織において、目標を効率的に達成するには、管理職・中間管理職・職員という階級区分が必要です。それは、軍隊でも会社でも役所でも同じです。管理職は、その組織が何をすべきかを考え、それを中間管理職に指示します。中間管理職は、管理職の指示に従い、業務を達成するために、職員に指示し職員の仕事ぶりを管理します。職員は、中間管理職に指示されたことを実行します。
日本の職場でも、管理職、中間管理職、職員(社員)の区分はあります。しかし、その区分による職務の違いが、明確でないのです。
上司も部下も、みんなが一体となって一つの仕事に取り組む。それは、組織への一体感をつくり、全員で仕事をやり遂げるという長所を持っています。職場でのカイゼン運動は、その一つの表れです。
ところが、それが管理職と社員の仕事と責任のあいまいさを生みました。なるべく、上司による命令や指示という形を取らず、部下から意見をあげていく、全員が納得して仕事を進める形がよいとされました。稟議制もその現れです。しかし、その組織の進むべき方向を決めたり、新しい仕事の目標と期限を決めたりする場合には、管理職が責任を持って、時には部下全員の同意を得ることなく、決める必要があるのです。

管理職が、管理職の仕事をすること。部下の合意取り付けに労力をつぎ込むのでなく、責任を持って指示を出すことが必要なのです。管理職が責任を果たしていないことが、日本の職場の生産性の低さの原因の一つです。
この文章は、「管理職、中間管理職、職員の区分」で書いたことの要約・再掲です。参考「フランスの経済エリート
この項続く

組織構成員の分類その2。能力差

組織構成員の分類その1。分野別、階級別、コース別」の続きです。
前回述べたのは、表に出ている「見える区分」です。これらの他に、「外から見えない区分」もあります。

D 同じ階級(例えば課長職)の中にも、できる課長・普通の課長・出来の悪い課長がいます。能力の差・業績の差です。
人事評価は、これをしています。良い表現がないので、「能力差」(ability)と呼んでおきましょう。2:6:2の法則は、これを指しています。人事担当者や管理職にとって、Aの分野別、Bの階級別、Cのコース別を前提として、Dの能力差を踏まえて誰をどこに配置するか、特に出来の良くない職員の配置が仕事です。あわせて、成績の低い職員に仕事をしてもらうことが、大きな悩みです。

本屋に並んでいる職場の解説をした書物には、AとBが書かれていてDが書かれていない、書かれていても「評価の仕組み」の解説にとどまっていることが多いです。
でも、きれい事だけでは、組織は動きません。『明るい公務員講座 管理職のオキテ』で、これについても説明しました。
また、Cについても、余り書かれていないでしょう。特に正規と非正規の差、同じような職務をしていても処遇に差があることについて書いたものは見かけませんね。

なお、このほかに、
E 非公式の役割分担があります。これは、社会学の教科書に出てきます。
この項続く

組織構成員の分類その1。分野別、階級別、コース別

職員の能力について、松竹梅の3分類「四角い座敷を丸く掃く」(2018年12月9日。古い話です)を書きました。その続きです。組織での職員の分類論です。

人が集まると、集団になります。そして、その集団を効率よく動かすために、構成員の役割分担を決めます。その役割分担には、2種類あります。分野別の分担と、上下の分担です。縦割りと横割りです。

A 分野別分担とは、企画開発、製造、営業、経理などです。役所では政策別、企業では製品別にも分かれます。これは「職の区分」(division)ですが、職員に注目すると「職種の別」になります。

B 上下の分担は、部長、課長、補佐、係員、平社員・職員です。また軍隊では、将官、士官、下士官、兵の区分です。「階級」(rank)です。一般的には、管理職、中間管理職、平職員の3段階に区分します。

C この階級を前提として、職員育成で経路(コース)を分ける場合があります。上級職・中級職・初級職の区分、総合職・一般職の区分、キャリア・ノンキャリアの区分です。この区分を、何と呼ぶのでしょうね。良い単語が見つかりません。職務給制度の欧米にはない概念のようです。ひとまず「コース別」としておきます。正規と非正規の区分も、ここに当たるでしょうか。

この記事は、途中まで書いて放置してありました。今回ある程度整理できたので、載せます。この項続く