カテゴリーアーカイブ:仕事の仕方

社会的能力のピークは55〜60歳

2026年9月17日   岡本全勝

9月5日の日経新聞に「社会的能力のピークは55〜60歳 経験豊富、起業や転職増加」が載っていました。
・・・見識の深さや理性的な判断力など、人の社会的な能力は何歳で最も高まるのか。最新の海外研究は55〜60歳ごろに最も高くなる可能性を示した。働き手は強みを生かしているのか・・・
記事では、新しく事業を始める人の割合が50代が27%、60代が21%になったことを書いています。その人たちの発言として、これまでの勤務経験が役に立っていること、30代でやっていたらうまくできなかったかもしれないことが紹介されています。もっとも、50代になると職場での将来が見えてきて、起業しようと考える人もいるのでしょう。

西オーストラリア大学などの研究結果が、表になって載っています。それによると、各年代で最大化する能力は、次の通り。
若年期(20~30代) 記憶力、処理速度、視覚情報処理、外向性
中年期(40~50代) 誠実性、協調性、感情理解
高齢期(60代以降) 語彙力、一般的知識、情緒安定性、金融リテラシー

ノーベル賞級の発見は、多くの科学者は若いときに成し遂げますよね。これは社会的能力とは別でしょう。
私が総理秘書官や復興庁で仕事ができたのも、それまでの経験と人脈があったからです。この二つは、経験を積まなければ身につきません。人工知能が代行できるでしょうか。仕事で身につく能力、つけなければならない能力が議論されていますが、「社会的能力」という見方はよい視角です。
ただし私が議論したいのは単なる(世間を生きていく)社会的能力でなく、組織における「部下としての能力」と「管理職としての能力」「幹部としての能力」です。「国家公務員に必要な57の技能」「官民転職増加、技能の見える化へ

記事にあるように、若いときに記憶力や処理速度が早いことは納得します。高齢期に語彙力が大きくなるのは、蓄積があるからでしょうが、忘れることも多いですよね。なかなか単語が出てこないのです。なにより歳を取ると、体力が落ち、気力も減ります。新しいことへの挑戦や、付き合いなども面倒になります。個人差はあるでしょうが。

「停止は退歩を意味する」

2026年9月10日   岡本全勝

「停止は退歩を意味する」。野村證券の創業者、野村徳七さんの言葉だそうです。野村證券のサイト「創業の精神十カ条」の第5番目。
「常に一歩前進することを心がけよ。停止は退歩を意味する」

個人にとっても、企業にとっても、役所にとっても、当てはまる言葉です。
特に競争の激しい産業界では、停止していると他社が進み、相対的に退歩になります。そして衰退します。日本経済の長期停滞の原因の一つです。企業が「リストラ」などに力を入れ、他方で新しい事業への挑戦を怠りました。縮小思考、失敗を恐れる保身哲学は、新しいことへの挑戦をためらわせ、現状維持に傾きます。
役所も行政改革の言葉の下で、新しい課題に取り組むことが遅れました。

集中することと、眺めること

2026年9月1日   岡本全勝

原稿を書いていて、時々立ち止まって、眺めてみます。集中してせっせと文章を続けているのですが、これでよいのか、全体の流れからこれは必要だろうか、この先はどのように展開していけばよいだろうかと考えるのです。

仕事にしろ勉強しろ、集中することは良いことです。そうしないと、よい成果は得られないでしょう。ところが、集中していると、ほかのことが目に入りません。深掘りと周囲確認、蟻の目と鷹の目の違いです。「行政の中を考える、社会の中の行政を考える
この方向で進んで良いのか、ほかのやり方今やっていることが本当に価値あることか、もっとほかに重要なことがあるのではないか。学生や従業員の場合は、与えられた課題を処理すればよいので、集中するだけですみます。しかし、管理職や幹部になると、鷹の目が必要です。従業員が頑張っていても、方向を間違っていては、成果は上がりません。

政治家や官僚も、自分の関心あることに集中していると、ほかの世界を忘れてしまいます。世界の中で、自分がやっていることを位置づけることが必要です。そして、一つのことに没頭していると満足感があるのです。しかし、それはよいことではありません。
睡眠時間を削って頑張っている政治家が話題になっていますが、一時的には良いとしても、それが続くと褒められたことではありません。他人に任せることができることは任せて、本人しかできないことに力と時間を割くべきです。そして、余裕を持って眺めないと、周囲は見えません。上に立てば立つほど、余裕を持って、全体を眺めなければならないのです。
「深掘りと周囲確認」については何度も書いていますが、再度、書いておきます。

書類がどこにどれだけあるかわからない

2026年6月26日   岡本全勝

文書事務が電子化され、便利になりました。作成や加筆作業とともに、保管と取り出しです。かつて紙だった時代は、机の上や周囲に山積みになり、書棚も満杯になりました。
しかし、二つの利点がありました。一つは、どこに何があるかが見えたことです。山積みの資料の下の方は「化石」になって、存在を忘れることもありましたが。書棚の背表紙を見ると、どこに何があるかわかりました。もう一つは、分量が一目でわかったことです。分厚い資料なのか、薄い資料なのかが、即座にわかりました。
もう一つ加えるなら、書棚に入りきらなくなったり机に積めなくなったりしたら、やむを得ず不要な書類を捨てました。書類整理と破棄を強制されたのです。

文書の電子化は、このような「利点」をなくしてしまいます。するとどうなるのか。仕事の書類と、個人の書類(作成途上の文書や勉強のための資料)で異なります。
1 仕事の書類
これは、職場の共有フォルダーに置かれ、関係者が見ることができます。そして完結したら、重要度に応じて、保存ファイルに移されるのでしょう。
問題は、誰も責任を持たないまま保管された書類です。共有フォルダーでは、しばしば起きます。担当者が異動したり、古くなったまま放置される書類です。書棚にあった時代は、入りきらなくなると、古いものは捨てましたが、電子書類は場所を取らないので、いつまでも放置されます。毎年、時期を決めて大掃除をする必要があります。
2 個人の書類
これは、各自の責任です。個人フォルダーに入っているなら、移動しても持って行きます。職場によっては、容量に上限を決めてあって、たくさんの書類を保管できないようにしているところもあります。

大学の先生に聞くと、学生も困っているようです。科目ごとに、教科書や配付資料、レポート課題などが配られます。電子資料は場所を取らず、重くもないので便利ですが、どこに何があるかがわからなくなります。紙の教科書や資料を見ていた時代は、「これから、これだけ読まなければならない」とわかったのですが、それが把握できなくなったのです。
仕事を進める方法として「見える化」「可視化」が教えられます。書類の電子保存は、この逆で「見えない化」「隠す化」ですね。

私は紙の本しか読まないのですが、電子書籍だと、全体のうちのどれくらいを読んだのかわからないのが嫌です。また、書棚にあふれ、書斎の床に積み上げなくてもよくなるでしょうが、パソコンのどこに何がどれくらいあるかわからなくなり「行方不明」になったのと同じでしょうね。まあ、書棚の本を把握できていないから、実態は同じかもしれませんが・・・。

人工知能で見えてくる仕事の意義

2026年6月24日   岡本全勝

人工知能、私は使っていないのですが、使っている人の話を聞くと、便利なようです。「××のような文章を作ってくれ」と入力すると、それなりの文章を作ってくれます。不足している部分について、再度指示を出すとよくなります。数回繰り返すとよい文章になります。「壁打ちを繰り返す」と表現するそうです。
本人の頭にはぼやっとした考えしかないのですが、機械と対話することでよい文章ができます。もちろん、機械が作った文章を見て、欠けている点を見つけ、追加の指示を出すことと、最後にこれでよいと判断する能力は必要です。

過去の資料や文章を踏まえて文章を作成するのには、人工知能は向いているようです。過去の文章をたくさん読み込ませ、そこから文章を作る(抽出する)機能を発達させたのですから。

では、人工知能は社員や職員に入れ替わるのか。私は、あくまで補助道具だと考えています。その理由は次の通り。
1 先に書いたように、人工知能が作った文章や資料を見て、欠けている点を指摘し、完成かどうかを判断しなければなりません。それは、人間がするのでしょう。
2 まず、作業を機械に発注する人が必要です。それは、人がするのでしょう。完成品を検査するのは、発注者である人です。
3 採用されたばかりの社員が、文章を発注し完成品を検査することができるか。できません。私たちは、職場で経験を積んで、良い内容の良い文章をつくることを覚えます。
4 すると、駆け出しの社員がやっている仕事は、上司に指示された内容のものを作る(成果を出す)こととともに、自らの技能を磨いているのです。オンザジョブトレーニングです。一定の能力を備えた社員でないと、人工知能は使えないのです。
5 もう一つ、人工知能の弱点は、新しい政策の検討、これまでにない問題への対応でしょう。機械は、定例的なもの、前例があるものについては強いのですが、新しい発想は組み込まれていないようです。ただし、人工知能は嘘もつくので、適当な案は出すのでしょう。