10月27日の朝日新聞「フリーランス→会社員、逆流する人々 AI時代生き残るため・キャリアや成長求め…」から。
・・・働き方の多様化などを背景に増えてきたフリーランスですが、企業に雇用されて正社員に戻る人が目立つようになってきています。その理由は何なのか。正社員を選んだフリーランス経験者らに取材しました。
AI(人工知能)人材を派遣する「AIタレントフォース」(東京都渋谷区)で最高AI責任者を務める村田大(まさる)さん(47)は今年6月、8年半のフリーランス生活を経て正社員になった。きっかけは、ChatGPT(チャットGPT)などAIの急速な進歩だった。
「フリーはプログラミングができれば第一線で働けた。AI開発では企業が持つデータにアクセスできないと、ただのお手伝いになってしまう」
AIは蓄積したデータをもとに結論を導き出す。ところが、企業が持つデータは機密性が高かったり個人情報が含まれたりするので、情報セキュリティーの体制が重視される。そのため、フリーが直接契約することが難しくなったという。
ITの世界の変化は早く、ある技術を身につけても安心はできない。「自分の領域を固定化する人は取り残される。AIで生き残るには社員になるか、チームで仕事をするフリーになるかでしょう」
フリーから会社員に戻る理由は様々だが、フリーになって感じるキャリアの「停滞感」も主な動機の一つだ。
昨年10月、フリーエンジニアから人材サービスの「エン・ジャパン」(東京都新宿区、今年10月1日に「エン」に社名変更)のプロダクト開発室で開発チームのリーダーに転身した大江貴己(たかき)さん(36)は、2020年にIT企業を辞めた。「やりたい仕事を選んで会社員時代より高い報酬で働けた」と話す。
一方、仕事をするうちに、組織を作り、大きくするマネジメントにも関心がでてきた。しかし、「フリーは与えられた仕事の範囲でしか動けない。マネジメントの道には限界を感じるようになった」と話す・・・
・・・フリーランスとして働く人はコロナ禍で急増した。仲介サイト大手の「ランサーズ」(東京都渋谷区)の推計によると、社員として働きながら、副業などで働く人も含んだ人数では、2021年には約1600万人にのぼった。
同社では、約500万人がコロナ禍の影響で増えたと推定している。急増した理由として、テレワークが一気に普及して副業がしやすくなった一方で、失業者が増えたことも影響したとみる。
その後、テレワークから出社に戻るなどの反動で、当時に比べれば人数は減った。しかし、コロナ禍前に比べると増えており、昨年では約1300万人。フリー人口はこの10年で約4割増えたという。同社では社員化を希望するフリーを企業につなぐサービスを提供している。
フリーを含めた人材仲介の「Hajimari(ハジマリ)」(東京都渋谷区)でも、23年度にフリーから正社員への転職もサービスに加えた。昨年度は22人を紹介した・・・