カテゴリーアーカイブ:仕事の仕方

職場の一員、3種類の歯車

2026年10月19日   岡本全勝

組織の中の一員を、歯車に例えることがあります。
映画「モダン・タイムス」の中で、機械工のチャップリンが巨大な歯車に巻き込まれる場面は有名です。もっともこれは、歯車に巻き込まれるので、機械工が歯車になっているのではありません。時計をはじめ身の回りの機会が電子化されると、歯車を見る機会が少なくなりました。

組織の一員になると、自分が大きな機械の中にある、たくさんの歯車の一つだと思うことがあるでしょう。自分の考えで動くことができず、上司の指示や規則、前例に従って動かなければならないのです。私も若いときに、そう感じました。しかし考えると、歯車にも3種類あると思いました。
一つは、隣の歯車から伝えられた回転を次に伝える歯車で、一連の動きの途中にあります。
二つ目は、ほかの歯車を動かす動力となる歯車です。動きの出発点になります。
三つ目は、動きの最後にある歯車で、その動きが成果として現れます。

三つ目の歯車は、やりがいがありますよね。役に立っていることが見えます。二つ目の歯車も、やりがいがあるでしょう。責任も大きいです。
では、一つ目の歯車はどうでしょうか。錆びついて動きが悪い歯車も、円滑に動く歯車もいます。まずは円滑に動く歯車を目指しましょう。
次に、前の歯車から伝えられた回転をそのまま次の歯車に伝えていては、やりがいがないでしょう。しかし、伝えられた回転を隣の歯車に伝える際に全体の動きを見て、2倍の速さに変えたり、半分の速さに変えたりして機械全体が円滑に動くように操作することは可能です。そう考えると、「言われたとおり」「前例通り」のつまらない歯車でなく、全体の効果を見た歯車を目指すことで、やりがいが出てきます。

歯車は取り替えがききます。その際に、代替品がたくさんあるのではない歯車になりたいものです。

アメリカ企業の人材開発

2026年10月17日   岡本全勝

「ピンクのシャツを着たら「目立ってはいけない」」の続きになります。日経新聞夕刊「人間発見」、高橋秀仁・レゾナック・ホールディングス社長の10月7日「GEに転職し人事学ぶ」から。
東京三菱銀行から、日本ゼネラル・エレクトリック(GE)に転職します。

・・・GEで学びたかったのは、グローバル企業の経営のリアルです。いずれ日本企業のかじ取りをしたいと思っていましたが、そのためには経営の勉強をする必要があります。
GEで一番感銘を受けたのは、HR(日本語でいう人事部)の仕事ぶりですね。日本の人事部は社員の管理が仕事ですが、GEのHRは社員と対話を重ね、価値観や理念を共有することに多くの時間を費やしていました。
当時のGEには「GEバリュー」という考え方が組織の隅々まで浸透しており、その徹底ぶりは一種の宗教法人のような印象も受けました。

人材開発に熱心なのは、各事業のトップも同じです。傘下の拠点を精力的に訪問し、優れた人材がいれば、即座に引き上げます。社員を管理対象とみるか、価値を一緒に生み出す仲間とみるか、同じHRでも日米で大きな違いがあると実感しました・・・

生成AI使用の注意

2026年10月14日   岡本全勝

先日、講演で使う資料(PDF)を改訂しようとしたらうまくできないので、若手の知人に協力をお願いしました。彼が、「この資料はネットで公開していますか」と聞きます。「いいや」と答えたら、数分で完成させてくれました。

「どのような方法でやってくれたの」と聞いたら、「生成AIに指示をして、やらせました」とのこと。個人でChatGPTを使っているそうです。便利になったものです。
「その際に、変更するページだけを切り出して、生成AIに作業をさせました。全部の資料を預けると、それを学習して取り込みますから」とのことでした。それで「ネットに載せていますか」と確認したのですね。

生成的人工知能(生成AI)は便利ですが、注意しないといけないのです。「人工知能があなたのすべてを見ている」

手足の代わりか頭の代行か

2026年10月9日   岡本全勝

「未来予測の限界」の続きになります。人工知能が暴走すると、人類の危機になる可能性があります。そのような犯罪的な問題ではなく、普通に検索機能や文章作成機能を使っている場合の問題も見えてきました。

人工知能に頼ることで、人の能力が向上しないのです。簡単に言うと、小学校で算数の計算問題を教える際に、電卓を渡すようなものです。大きな桁の足し算、かけ算や割り算を覚えることなく電卓に頼ると、早く正しい回答を得ますが、子供の計算能力は身につきません。
文章作成を人工知能に頼ることも、同じでしょう。学生が論文を書く際や従業員が仕事について企画書を書く際、人工知能に頼っていては、能力が向上しません。すると、人工知能が書いた文章を評価することもできなくなるでしょう。人工知能と「壁打ち」(意見交換してよいものに作り上げる)するにも、打ち返せないのです。

「機械ができることは機械に任せるべきだ」という説があります。半面は正しいのですが、それでは人は育ちません。手を動かすことと頭を動かすことは、別問題です。便利な機械は活用すべきです。しかし頭を機械に代行させては、その時はよい成果が早く手に入っても、中長期的には人と組織の自滅を招くでしょう。人は育たず、組織は弱くなります。

企業でも、外注してよいことと、内製すべきことがあります。
コメントライナーへの寄稿「役所にも人工知能がやってくる」(2023年10月12日)に次のようなことを書きました。
・・・役所の業務全体の問題として考えてみると、行政改革や人員削減によって、機械化や外注が進みました。調査や企画を調査会社に委託 丸投げ することも多くなり、工事の発注も施工だけでなく設計 段階 から企業に委託することが広がっています。
その結果、職員が考える機会が減り、設計できる職員が減って、成果物企画書や設計図と工事を評価する能力も低下していると聞きます。ある知事が現状に危機感を持ち、催し物を委託せず職員だけにやらせました。前例と経験がなく、職員はとても苦労したそうです。
文章作成も同じです。着想と「文章の肝」において、職員の独創性 が試されます。しかし機械に頼っていると、その能力は向上しません。企画や施工を委託していると、考える能力だけでなく、納入された成果物を評価する能力もつきません。そのような職員は、もう使われないのでは。仕事を手抜きの場と考えるか、能力を磨く場と考えるか 。職員が生き残れるかどうかは、この差でしょう・・・

社会的能力のピークは55〜60歳

2026年9月17日   岡本全勝

9月5日の日経新聞に「社会的能力のピークは55〜60歳 経験豊富、起業や転職増加」が載っていました。
・・・見識の深さや理性的な判断力など、人の社会的な能力は何歳で最も高まるのか。最新の海外研究は55〜60歳ごろに最も高くなる可能性を示した。働き手は強みを生かしているのか・・・
記事では、新しく事業を始める人の割合が50代が27%、60代が21%になったことを書いています。その人たちの発言として、これまでの勤務経験が役に立っていること、30代でやっていたらうまくできなかったかもしれないことが紹介されています。もっとも、50代になると職場での将来が見えてきて、起業しようと考える人もいるのでしょう。

西オーストラリア大学などの研究結果が、表になって載っています。それによると、各年代で最大化する能力は、次の通り。
若年期(20~30代) 記憶力、処理速度、視覚情報処理、外向性
中年期(40~50代) 誠実性、協調性、感情理解
高齢期(60代以降) 語彙力、一般的知識、情緒安定性、金融リテラシー

ノーベル賞級の発見は、多くの科学者は若いときに成し遂げますよね。これは社会的能力とは別でしょう。
私が総理秘書官や復興庁で仕事ができたのも、それまでの経験と人脈があったからです。この二つは、経験を積まなければ身につきません。人工知能が代行できるでしょうか。仕事で身につく能力、つけなければならない能力が議論されていますが、「社会的能力」という見方はよい視角です。
ただし私が議論したいのは単なる(世間を生きていく)社会的能力でなく、組織における「部下としての能力」と「管理職としての能力」「幹部としての能力」です。「国家公務員に必要な57の技能」「官民転職増加、技能の見える化へ」

記事にあるように、若いときに記憶力や処理速度が早いことは納得します。高齢期に語彙力が大きくなるのは、蓄積があるからでしょうが、忘れることも多いですよね。なかなか単語が出てこないのです。なにより歳を取ると、体力が落ち、気力も減ります。新しいことへの挑戦や、付き合いなども面倒になります。個人差はあるでしょうが。