投稿者アーカイブ:岡本全勝

二種類の「がんばる」

2022年8月21日   岡本全勝

8月10日の朝日新聞文化欄「荒井裕樹の生きていく言葉」「「がんばる」には二つある」から。

その時々の社会状況に応じて、どんなふうに使われるかを観察し続けている言葉がある。「がんばる(がんばれ)」だ。
二〇一一年の東日本大震災の時、被災者の心中を慮ってか、多くの人がこの言葉を自粛したように記憶している。対して、コロナ禍ではむしろ積極的に使われてきた節がある。がんばる医療従事者、がんばる飲食業界、がんばる観光業者、といった具合に。

私見では「がんばる」には「はつらつ系」と「忍耐系」がある。前者は、当人が好きなことや望ましいことに打ち込む様子を肯定的に捉える際に使われる。後者は、当人が不幸な出来事に巻き込まれた際、くじけそうな気持ちを鼓舞するために使われる。
もちろん、両者の区別は曖昧で、普段は意識されることもない。だが、私はこの違いに自覚的でいたい。でないと、本当に必要な区別が付かなくなってしまうように思うのだ。

死別の悲しみにどう向き合うか

2022年8月20日   岡本全勝

8月4日の朝日新聞生活面連載「喪の旅」、坂口幸弘・悲嘆と死別の研究センター長へのインタビュー「消えない悲しみと向き合いながら」から。

――どうしたら心残りや罪悪感を少なくできますか。
多くの遺族は故人が亡くなる前のことを何度も思い返します。その時、自分の言動や判断を否定的に評価すると、しなかったことやしてしまったことへの罪の意識になる。一方で、これはよかったと肯定的に思えることがあると気持ちが少し楽になります。

つらい闘病生活だったけど最期は苦しまなかった。スタッフがよくしてくれた。家に連れて帰ることができた。好きな物を食べさせられた。自分たちでできる限りお世話した……。そういう肯定的評価ができると、心の救いになります。つまり、亡くなるまでの過程が重要であり、その意味で、グリーフケアは亡くなる前から始まっているとも言えます。病死の場合に限った話ではなく、つらい体験の中での何かしらの「せめてもの救い」が重要だと思います。

死別後に「もっとお世話できたはずだ」と思う人も多い。それを周りが「よくがんばったね」とねぎらうことで、過去への肯定的評価を促すことが大切なんです。

連載「公共を創る」第126回

2022年8月19日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第126回「政治・社会参加を促す具体策」が、発行されました。社会参加の意識を議論しています。政策として本格的には取り組まれていないのですが、今回は、いくつか特徴的な動きを紹介します。

学校の部活動を教員に指導させるのではなく、民間に委ねようとする動きがあります。ドイツでは、学校の部活動がなく、地域のスポーツクラブが引き受けています。
裁判員制度は、国民に政治参加を促す方法の一つです。日本では選挙の投票に行くか行かないかは、本人に委ねられていますが、義務にしている国もあります。政治教育の一環とも考えられています。

日本では勤め人は、所得税の計算と納税を会社がやってくれます。計算書はもらいますが、関心は少ないでしょう。税金の天引きは多くの国がやっているのですが、年末調整は本人が税務署に申告する国が多いようです。そこで、自分の納税額とその計算に関心を持つのです。

働かないおじさん?

2022年8月19日   岡本全勝

8月4日の朝日新聞オピニオン欄「50代、働いてない?」。
出世競争から降りた50代の勤め人が、とかく生きにくい世になった。「働かないおじさん」「会社の妖精さん」なんて言葉もある。ずっと懸命に働いてきたのに、どうしてこうなるの?

河合薫・健康社会学者の発言から。
「働かないおじさん」などと言われて50代で落とし穴にはまってしまう人がいるのは、日本社会のかたちが、いまだに昭和の高度成長期のままで動いているからです。
年齢人口構造では日本はすでにピラミッド型ではなく、働く人の6割が40代以上になっています。しかし、この世代の入社時と会社の仕組みはほとんど変わっていません。新卒一括採用、年功序列が続き、年々減らされる管理職の席をめぐって、同期で椅子取りゲームをさせられてきた。
高度成長期、定年は55歳でしたが、その頃の男性の平均寿命は60代でした。定年後は悠々自適の余生というイメージをいまだ引きずりながら、若い人たちにのけ者にされているのが今の50代です。

実は、50代でやる気を失っている人は周りが思うほど多くはありません。この世代を含め、900人以上にインタビューをしてきましたが、まだやるべきことがあると言う人がほとんど。競争心も衰えていない。労働政策研究・研修機構の調査では、50代後半の2割が昇進欲求を持っているという結果が出ています。
それなのに、会社からはセカンドキャリアを見つけろとプレッシャーをかけられる。でも、ずっと会社の肩書で生きてきたので、今更どうしたらいいのか分からない。プランBが無い状態です。リストラ候補にならないためには、群集の中で息を潜めているのが最善策になってしまう。目立たず、害にもならないようにしようという心理が働いてしまうのです。「会社にしがみついている」などと言われていても、当事者には葛藤がある状況でしょう。

とても大きな量を表す言葉

2022年8月18日   岡本全勝

8月5日の朝日新聞科学面に「10の30乗、ルーキー「クエタ」」という記事が載っていました。

・・・スマートフォンのデータ通信量の話題で、よく耳にする「ギガ」。数の桁を表す約束事「SI(国際単位系)接頭語」の一つだ。今年11月、ギガよりはるかに大きい「クエタ」など四つが、新たに加わる見込みとなった。「新規加入」は31年ぶり。「ルーキー」に期待される役割は?

「SI接頭語」は、十進数の桁数(主に3桁ごと)に名前を定めたものだ。「メートル」や「ヘルツ」といった単位の前に使うことで、とても大きな量やごく小さな量を簡潔に表すことができる。
例えば、「1000000000ヘルツ」と書かれていても、一瞬では読みにくい。でも、接頭語を使えば、10の9乗は「ギガ」なので、「1ギガヘルツ」とすっきり表せる。
いま接頭語で表せる最も大きな桁は10の24乗の「ヨタ」、小さな桁は10のマイナス24乗の「ヨクト」だ。そこに10の30乗を表す「クエタ」と27乗を表す「ロナ」、10のマイナス27乗を表す「ロント」とマイナス30乗を表す「クエクト」が加わる見込みとなった。

計60桁を接頭語がカバーするようになる意義を、長さの単位「メートル」で考えてみよう。地球から観測できる宇宙の果てまでの距離(約138億光年)は、10の26乗メートルのスケールで、「約0・1ロナメートル」と言いかえられる。
「プランク長(ちょう)」と呼ばれる現代の物理学で扱える最小の長さは、10のマイナス35乗メートルのスケールで「約0・00001クエクトメートル」と言える。つまり、人類が現時点で認識しうる世界の全スケールを接頭語でスカッと簡潔に表せるようになるのだ・・・
記事には、表がついています。
キロ=10の3乗、メガ=10の6乗、ギガ=10の9乗、テラ=10の12乗、
ペタ=10の15乗、エクサ10の18乗、ゼタ=10の21乗、ヨタ=10の24乗、
ロナ=10の27乗、クエタ=10の30乗
この逆に小さな数字についても、センチ、ミリ、マイクロ、ナノ、ピコ・・・と続きます。

8月14日の日経新聞も取り上げていました。「10の30乗、新呼称は「クエタ」