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山本庸幸・元内閣法制局長官回想録

2024年3月20日   岡本全勝

山本庸幸著『元内閣法制局長官・元最高裁判所判事回想録』( 2024年、弘文堂)を、著者からいただきました。400ページもの大部ですが、読みやすいです。

1973年に通産省に入省、その後、内閣法制局長官、最高裁判所判事も務められました。安倍内閣での法制局長官交代劇も、書かれています。
仕事だけでなく、子どもの頃の話や、家族など私生活についても書かれています。官僚の回想録はしばしば仕事での武勇伝になりがちですが、この回想録は仕事で考えたことだけでなく、子育てなども書かれていて、後輩に参考になります。お勧めです。

人的投資抑制がデフレを助長

2024年3月20日   岡本全勝

2月29日の日経新聞「物価を考える、好循環の胎動」は、柳良平・元エーザイCFO「人的投資抑制、デフレを助長」でした。

――日本企業は人件費をどう捉えてきたか。
「これまで企業価値の物差しは有形資産で、道具として財務会計を使ってきた。人件費は費用で利益にマイナスに働くものという考え方が当たり前だった」
「かつて企業価値の大半を占めていた有形資産なら財務会計で説明できたが、近年は人材価値や知的財産など無形資産が過半以上を占めるようになった。従来の方法では企業価値の半分も測定できなくなった」

――人的資本の効果を測る「柳モデル」を作った。
「製薬会社エーザイの最高財務責任者(CFO)時代に『人件費を使いすぎ』と投資家から批判があった。人件費は企業の将来価値を高めるものだと、証明したかった。人件費を投資した5年後に企業価値を計る指標のPBR(株価純資産倍率)が約13%増える正の相関があった」
「人件費は費用ではなく将来の企業価値を生む投資であると、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する長期投資家を中心に考え方が変わってきた」

――人的投資の認識の高まりはどう影響するか。
「企業はバブル崩壊後に賃金を費用とみて抑制することでしのいできた。その結果として、デフレや企業価値の長期低迷につながった。企業経営者は今後は確信をもって人材投資を積極的にできるようになる」

――今後の課題は何か。
「人的資本の開示が前期の有価証券報告書から義務付けられた。他社と同じ『横並び主義』、当局の要求に最低限応える『形式主義』に陥るリスクはある。なぜ企業価値に資するのか、説明責任が今まで以上に問われていく」

内閣支持の理由

2024年3月19日   岡本全勝

報道機関が、毎月、内閣支持率などの世論調査をします。例えばNHK。その際に継続的に調べられるのが、内閣支持率と各党の支持率です。

支持率の上下は気になるのですが、それとともに気になるのが、支持する理由と支持しない理由です。
NHKの3月の調査結果では、岸田内閣を「支持する」と答えた人は25%、「支持しない」と答えた人は57%です。そして支持する理由は、「他の内閣より良さそうだから」が47%、「支持する政党の内閣だから」が25%、「人柄が信頼できるから」が13%です。「実行力があるから」は6%、「政策に期待が持てるから」は5%しかありません。

政党や内閣は、政策を競い国民の支持を獲得するものと、政治学では習いましたが。この数字は、政策が置き去りになっているようです。

「優秀だけど、短期集中突破で持続性がない」

2024年3月19日   岡本全勝

2月29日の朝日新聞「けいざい+」「TSMC誘致の真相:下 前例のない補助額、財務省が条件」は、一企業に多額の補助金を出す事案の解説ですが、記事に次のような話が出てきます。

・・・財務省主計局は、近年の経産省の手法を苦々しく思っていた。「彼らは国土交通省や農林水産省と違って、私たちとまじめに予算の議論をしないんです。官邸など上にあげて、『もう決まったから予算を出せ』とおろしてくる。まるでATMの扱いですよ」。財務省を疎んじ経産省を重用した第2次安倍政権以降、そうした傾向が強まった。

経産相を務めた萩生田光一は「着任当初は素人だったが、のめりこむように半導体を勉強した」と振り返る。TSMCの予算確保に財務省ににらみをきかせる半面、経産省の体質にも問題があると気づいた。この30年余、経産省の半導体政策は前のめりになったかと思えば後ずさりし、振幅が著しい。萩生田は国会で「世界の潮流を見極めきれず、適切な政策を講じられなかった」と同省の失敗をわびた。
「経産官僚は優秀だけど、短期集中突破で持続性がないんです」。まるで高校の文化祭の実行委員のようだと感じた。「短時間でワーッとやるけど文化祭が終わったら、あとは関係ナシなんです」。経産官僚は「弾を込める」「仕掛ける」という言葉をよく使う。前任者の仕事を引き継ぐよりも、新しい政策を打ち出したがる。

萩生田は「異動後も自分が手がけた仕事がどうなったか定年までウォッチしてほしい」と苦言を呈する。TSMC誘致は珍しく4代の局長、3代の課長がバトンを受け継ぎ、彼らの言葉を使うと「仕留めた」案件だった・・・

私が若いとき、ある人が、通産省(当時)の官僚たちの仕事ぶりを「は虫類行政」と呼んでいました。「卵(新規施策)を産むが、育てない」という意味です。
新しい施策を考える気風は、評価されるべきです。しかし、1~2年で異動することが多いと、その施策を実施するのは後任者になります。そして、新規施策を考えることが評価の基準になると、前任者の施策を実施するより、自分で新しい施策を考えることになります。

稲継裕昭先生「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」

2024年3月18日   岡本全勝

稲継裕昭・早稲田大学政治経済学術院教授が、2月26日に日本記者クラブで「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」を話されました。ユーチューブで見ることができます。関係者は必見です。

公務員志望者の減少、若手退職者の増加、心の病の職員の増加・・・。自治体現場の変化を、数値と経験とで説明してくださいます。

この20年間の変化が急速なようです。若者が自治体を選ばなくなっています。若者の意識の変化と労働市場の拡大が、変化をもたらしています。国家公務員法と地方公務員法の縛り、給与体系、年功序列の昇進慣行が、時代に合わなくなっています。

私は、労働慣行が日本の「この国のかたち」をつくっている、労働慣行に「この国のかたち」が集約されていると説明しています。日本社会の変化が、ここに押し寄せています。