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転職平均2回、米国は11回

2024年10月8日   岡本全勝

9月14日の日経新聞「終身雇用ニッポンも変わる? 転職平均2回、米国は11回」から。詳しくは記事を読んでください。多い方が良いとも思えませんが、嫌な職場に縛り付けられているのも良くないでしょう。

・・・米国の転職回数は平均11.7回。4年ごとのオリンピックと似たペースだ。一方で終身雇用、年功序列が根強く残る日本は平均約2回。流動性の低さは低賃金の一因とも言われる。日本の雇用は変わるのか・・・

・・・23年8月に米労働省労働統計局が公表した調査では、1957年から64年までに生まれた人は18歳から56歳までに平均12.7の仕事に就いていた。最初の仕事を引いた「11.7回」が転職回数となる。
日本に同種の政府統計はないが、転職支援のゴールドキャリア(東京・港)が今年1月、男女687人に実施した調査では、平均転職回数は男性が1.97回、女性が2.49回、全体で2.23回だった。
米国は勤続年数も短い。労働政策研究・研修機構の「データブック国際労働比較2024」によると、米国は平均で4.1年。日本の12.3年、英国の9.5年、ドイツの9.7年と比べ突出している。

米国人はなぜ転職を繰り返すのか。ゆうさんは「日本における就職は『就社』に近いが、米国では文字通り『職』に就く感覚」と解説する。
日本企業は新卒者を一括採用し、後から仕事を割り当てる「メンバーシップ型雇用」が一般的だ。様々な部署や職種を経験して会社の内情を把握しながら出世していく。勤続年数が長いほど支給額が増える退職金制度も特徴だ。

一方で、米国の労働者は「マーケティング」「商品開発」など一つの職種でキャリアを築いていく。多くの企業が「ジョブ型雇用」を採用し、職務内容や条件を明確に定義した上で雇用契約を結ぶ。部署異動や転勤は求められない。
「いつ空くか分からない一つ上のポストを待つより、専門性を武器に転職市場で待遇が良い職場を探す方が早い。転職は昇進や昇給とほぼ同義語」とゆうさん。「とても断れない魅力的なオファーを受けた」は退職の挨拶の決まり文句だという。

労働者と企業を仲介するプロ「リクルーター」の存在も大きい。独立系のほか、大手では社内にもいて、業種や地域ごとに優秀な人材とポストの空き状況に目を光らせる。労働者はリクルーターに売り込みつつ、常に緩やかな転職活動を続けているという・・・

西川貴清著『現場から社会を動かす政策入門』

2024年10月7日   岡本全勝

西川貴清著『現場から社会を動かす政策入門――どのように政策はつくられるのか、どうすれば変わるのか』(2024年、英治出版)を紹介します。
「おわりに」に、本書の意図が書かれているので、引用します。確かに、政策立案について書かれた概説書は見当たりません。その作業と知識が、公務員に独占されてきたからでしょうか。公務員としての経験があり、現在も政策提言に携わっている筆者ならではの著作です。お勧めです。

・・・この本は現場の実感を政策に反映させて、より良い社会をつくろうとしている様々な民間団体の人たちや、政策をより良い方向に導こうとしているメディア関係者、普段の仕事からは見えない政策の動きを知りたいと考える新人公務員たちをメインの読者として書きました。

官僚として働いていた私は、政策立案の知見があまりにも政府外の人に知られていないことに課題意識を感じていました。役所側は政策づくりのプロセスを隠してもいないのですが、政策とは縁の遠い仕事をしている人たちが理解するにはあまりにも専門的過ぎるのです。政策の仕事への理解が乏しいことが、官僚や政治家へのネガティブな理解にもつながっているようにも感じました。
政策に関わりの薄い人でも政策づくりを理解できる本がないかと探してみましたが、学術的に分析されたものが多く「じゃあ実際にどうすればいいのか」という問いに答えるものはありませんでした・・・

・・・政策に関わり始めた人、政策に関心のある人向けに、たとえ話や架空の例も含めて、できるだけ分かりやすく書きました。「厳密には違う、不正確な内容がある」という専門家の方のご指摘は甘んじてお受けしますが、対象読者やこの本の目的も踏まえて、ご容赦いただけると幸いです。
民間団体も、メディアも、官僚も、政治家も、それぞれが勝手に動くのでは、力を発揮できません。お互いを理解しあい、力を合わせることでより良い未来をより早く手繰り寄せることができる、と信じています・・・

男女平等、いまだ残る「戦前」

2024年10月7日   岡本全勝

9月18日の朝日新聞夕刊「男女平等、いまだ残る「戦前」 元最高裁判事・櫻井龍子さんが見た「虎に翼」」から。

「こんなに熱心にドラマを見るのは初めて。朝、起きるのが楽しみで」。9月末に完結する、NHKの連続テレビ小説「虎に翼」。弁護士や裁判官として活躍した三淵嘉子さんをモデルにした猪爪寅子の人生を描いています。最高裁判事もつとめた櫻井龍子さん(77)は「寅子ちゃんに感情移入できる、そこに日本の問題がある」と言います。話を聞きました。

――九州大法学部を卒業、1970年に旧労働省に。女性ゆえの「壁」を感じたことはありましたか。
大学3年生の時でしょうか。女性には多くの道がないと知りました。司法試験か公務員試験か、の2択でしたね。求人は山ほどあっても、学生課は「男性用です。女性求人はありません」って。
そういう時代だったんです。85年以前、日本はまだ「戦前」でしたから。

――戦前、ですか。
日本国憲法の理念としての男女平等はありました。でも実態は「戦前」。
85年は、女性差別撤廃条約を日本が批准した年で、男女雇用機会均等法が成立しました。以降、少しずつ変わってきたと思います。

――旧労働省でも?
先輩の女性から、男女平等という言葉は、長らく省内の会議では使えなかったと聞きました。男性職員に「男女平等なんて、日本にはない」と鼻で笑われたこともあったようです。

――驚きです。何が転機だったのでしょうか。
国連の国際女性年宣言(75年)に続く「国際女性の10年」が大きいですね。
日本も多くの国際会議に参加しました。女性で初めて国家公務員上級職となった森山真弓さんらが省内で報告するのですが、男女平等という言葉なしには説明できない。決議などに出てくるのですから。それで使われるようになったと聞きました。「外圧」みたいなものです。

無関心と消極性

2024年10月6日   岡本全勝

私は、現在の日本社会の大きな問題は、無関心と消極性ではないかと考えています。
連載「公共を創る」(第30回)では、私たちが社会で暮らしていく際に必要な、「装置や環境」「財産」を、社会的共通資本として整理しました。自然資本(自然環境)、施設資本(いわゆる社会資本、インフラ)、制度資本(各種サービス)、関係資本(ソーシャル・キャピタル)、文化資本(気風や助け合い精神、民主主義を支える精神など)です。そのうちの関係資本と文化資本が弱くなっているのです。

まず、他者への無関心についてです。
イギリス旅行中に、地下鉄に乗ったときのことです。座席は埋まっていたのですが、私たち夫婦が乗り込むと、勤め人と思われる若い男性と若い女性が、すぐに立ち上がって席を譲ってくれました。「そんな年寄りではないんだけどな」と思いつつ、「ありがとう」と言って座りました。
帰ってきて、羽田空港第3ターミナル駅から京浜急行に乗りました。前駅の羽田空港第1第2ターミナル駅から乗ってきた客で混んでいました。旅行鞄を引きながら私たちが乗り込むと、大きな旅行鞄を前にして座っていたアジアからきたと思われる若い観光客2人が、すぐに席を譲ってくれました。これまた「ありがとう」と言って、座りました。
品川駅で、山手線に乗り換えました。誰も、席を譲ってくれませんでした。

先日、小学校5年生の孫娘が、足にケガをしました。松葉杖をついて、母親と一緒に登下校しています。ある朝、通勤時に一緒になったのですが、丸ノ内線では誰も孫に席を譲ってくれません。
座っている人たちは、居眠りをしているか、スマホを操作しているか、ゲームをしています。まったく周囲に、関心がありません。目を上げた際に、松葉杖の子どもがいることを見ている人もいるのでしょうが、無関心です。日本人は親切だとか、おもてなしと言いますが、とてもそうとは思えません。

安心安全な日本社会をつくったのは、他者への思いやりであり、共助の精神です。この関係資本が弱くなると、安心安全な社会は壊れます。続く

共働き世帯が専業主婦の3倍に

2024年10月6日   岡本全勝

9月18日の日経新聞に「共働き世帯1200万超、専業主婦の3倍に 制度追いつかず」が載っていました。この30年間に、暮らしの形は大きく変わっています。それが、連載「公共を創る」の主題でもあります。

夫婦共働きが2023年に1200万世帯を超え、専業主婦世帯のおよそ3倍となった。保育所の増設や育児休業の拡充など環境整備が進み、仕事と家庭を両立しやすくなってきたことが背景にある。ただ、社会保障や税の制度には専業主婦を前提にしたものがなお多く、時代に合わせた改革が急務となる。
男女雇用機会均等法が成立した1985年時点で専業主婦は936万世帯で、共働きの718万世帯を上回っていた。90年代に逆転し、2023年までに専業主婦世帯は6割減り、共働きは7割増えた。

23年の15〜64歳の女性の就業率は73.3%に達し、この10年で10.9ポイント伸びた。男性の就業率は84.3%で伸びは3.5ポイントにとどまる。
働く女性が増えた背景には、男女雇用機会均等法が施行され、男女ともに長く仕事を続けるという価値観が一般的に広がったことが挙げられる。同時に保育所の整備やテレワークの普及といった仕事と家庭を両立しやすい環境づくりも進展した。「人手不足のなかで、企業が女性の採用・つなぎとめを進めている」(ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員)といった側面もある。

働きの女性の働き方では、週34時間以下の短時間労働が5割超を占める。25歳以上の妻で見ると、どの年代でも短時間が多い。年収は100万円台が最多で、100万円未満がその次に多い。
短時間労働が多い理由の一つに、「昭和型」の社会保障や税の仕組みがいまだに残っていることがある。
例えば、配偶者年金があげられる。会社員らの配偶者は年収106万円未満といった要件を満たせば、年金の保険料を納めなくても老後に基礎年金を受け取れる。第3号被保険者制度と呼ばれる。
第3号被保険者の保険料はフルタイムの共働き夫婦や独身者を含めた厚生年金の加入者全体で負担している。専業主婦(主夫)を優遇する仕組みとも言え、「働き控え」を招くと指摘されている。

会社員の健康保険に関しても、保険料を納める会社員が養っている配偶者らを扶養家族として保障している。専業主婦(主夫)を扶養している場合は1人分の保険料で2人とも健康保険を使えるようになっている。
配偶者の収入制限がある配偶者手当を支給する事業所は減少傾向にある。23年は事業所の49.1%で、18年と比べて6.1ポイント下がった。
税制にも配偶者控除があり、給与収入が一定額以下であれば、税の軽減を受けられる。「働き過ぎない方が得だ」といった考えが残る要因とも言える。共働きが主流となり、各業界で人手不足が深刻さを増すなか、制度の見直しは欠かせない。
夫婦が働きながら育児に取り組むためには、企業の長時間労働の是正や学童保育の受け皿の拡大なども急がれる。官民をあげた取り組みが不可欠となる。