26日の読売新聞社説は「補助金削減 地方の裁量増やす基本忘れずに」でした。「補助金は思い切って減らし、税源移譲により地方の裁量を増やす方向で議論を深め、最終方針をまとめるべきだ」。
また「財務省は、公共事業関連については、補助金を削減しても税源移譲できないとしている。・・だが、建設国債にしてもいずれは税金で償還されることを考えれば、ほかの補助金と区別する理由にはならない。スリム化を図りながらも、補助金削減分の一定割合は、地方に移譲するのが筋だ」とも。こういう主張がついに新聞でも出てきました。
27日の日本経済新聞社説は「補助金削減反対一点張りでは通らない」でした。
「何とも奇妙な光景である。補助負担金をもらっていた地方はもう要らないといい、配分する側の各省はぜひもらってほしいと頼み込む。時にはもらわないと大変なことになるぞと脅す。役回りが逆である」
「関係各省はこの削減案に反対の大合唱である。これらの補助負担金を廃止すれば、税源移譲しても、事業が縮小しかねないし、財政力の弱い自治体では事業の実施が困難になり、地域間格差が広がってしまうという主張はほぼ共通している」
「しかし、社会人になった息子が仕送りは要らないというのに、無理に押し付ける親と同じで、説明はつけにくい。教育をないがしろにし、老人福祉施設などの整備を怠る自治体なら、住民が放っておくはずがない。まともな行政サービスをしない首長や議会があれば、選んだ住民の責任という当たり前の自治が機能する形にするのがなぜいけないのか」
「小泉首相は地方に削減案の取りまとめを要請した以上、尊重する責任がある。各省も反対だけでは責任を果たせない。もっと地方の裁量が広がるいい対案があるなら示せばいい。関係閣僚は地方案に対して、省益の代弁に終始してきたが、間もなく内閣改造がある。省益を超えて、指導力を発揮できる閣僚をそろえなければ、改革は進まない」(9月27日)
27日夜、内閣改造後の記者会見で小泉総理は、内政問題の大半を、三位一体改革と郵政民営化に費やしました。そして、「三位一体改革は、年末にかけて大きな課題であります」と述べました。
10月4日から毎日新聞が、「三位一体改革の現場:地方はどう変わるのか」の連載を始めました。野倉記者は、次のように解説しています。
「厚生省出身の浅野史郎宮城県知事は、・・『省庁は「我々が補助金でミニマムを保障している」と考えているが、政治という場で納税者が鍛えられる過程を経なければ、日本はいい国にならない』と話した。補助金による全国一律の行政を選ぶか、格差拡大のリスクを抱えつつも住民自治のプロセスを重視するかー。問題は国の在り方そのものにかかわっている」
産経新聞では、藤原正彦お茶の水女子大教授が「義務教育は地方分権になじまず」を書いておられました。でも、このような主張をなさる方の通例として、義務教育のどの部分が地方分権になじまないのか、分別して述べておられません。今も、小中学校は市町村立で、先生は地方公務員です。これを、国立にするという主張でもないでしょうし・・。また、先生の給料=教育の水準と、話をすり替えられるのです。(10月4日)
5日の読売新聞は「どうなる懸案-小泉新体制」連載の2で、三位一体改革を取り上げていました。「根強い省庁、閣僚の抵抗」です。「先行きを懸念する麻生総務相は、首相によるトップダウンでの決着が不可避と見る。『地方への3兆円の税源移譲を決めたのも、税源移譲に見合う補助金を地方に考えさせたのも首相。最終的には首相の決断だ』」
日本経済新聞5日のコラム「春秋」は、イチローとシアトルから、アメリカの伝統を取り上げています。「政府が口出ししない結果、個人が自分自身で何でもやる習慣がつく。他からの助けを求めず、自分で考え対処する」というトクヴィルの言葉を引いています。そして、三位一体改革の必要性を述べています。
三位一体改革は分権の一部であり、日本の政治と文化を変えようとするものなのです。(10月5日)
6日の朝日新聞朝刊は、大きかったですね。1面トップで、紙面の半分を使って「地方へ補助金維持したい」「官庁圧力」でした。2面ではその解説「首相の指導力かぎ」がされていました。板垣記者ありがとうございます。署名入り記事は重みが違いますよね。
これまでの中でも、この記事は地方財政関係では「史上最高」の扱いだったと思います。大きさだけでなく、内容もインパクトがあります。西日本新聞も2面で大きく取り上げていました。
5日には、地方団体代表が官房長官に申し入れをしました。要点は「前回の関係大臣の発言に失望した。これでは、三位一体改革、地方に行政を任せるという基本方針にもとるんじゃないか。同じことを閣僚が言い続けて、それに反論すのでは意味がない」ということです。
三位一体改革をめぐる「せめぎ合い」「抵抗」については、追って解説する予定です。
一方、6日の毎日新聞朝刊は、「国債発行抑制、三位一体改革に期待」を大きく伝えていました。財務大臣が総理に、来年度の国債発行額を抑制する方針を伝えたとのことです。それ自体はいいことです。でもその要素は、景気回復による税収の増と、三位一体改革による歳出の削減だそうです。
財務省から見ると、三位一体改革は「歳出削減」なのです。もう一つ、国は、それ以外の歳出削減努力はないのでしょうか。(10月6日)
10月4日に「新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)」が、「小泉内閣改造後の政党政治のあり方に関する提言」を発表しました。文章は日本の政治の在り方に関するものですが、その中で第2番目の項目として、三位一体改革の進め方が取り上げられています。概要は次のとおりです。
「小泉内閣は三位一体改革で責任ある対応を」「三位一体改革は、小泉改造内閣の真価が問われるきわめて重要な『試金石』。各省大臣は『政権公約を小泉首相とともに共有する内閣の一員』として行動を。各省の個別的抵抗を統制するのは小泉首相の責任。各省は、仮に地方の提案に反論があるのであれば対案の提示を。」
詳しくは、本文を見てください。(10月5日)