12日に、政府主催の知事会議が、官邸で開かれました。総理・閣僚が出席し、12時から17時までです。例年この時期に開かれます。かつては国への陳情が主でしたが、近年はまったく様相を異にしています。特に今年は、政府からの依頼を受けて回答した「補助金廃止案」が、政府内での抵抗により進んでいないことへの「突き上げ」でした。また、むちゃな交付税大幅削減を提唱した財務大臣へ批判でした。
総理は「最終的には私が判断しなければならない」と述べておられます(12日夕刊、13日朝刊各紙)。この問題は、最後は総理が裁断しなければならないことは、飯尾潤先生も述べておられました(12日の読売新聞)。(11月13日)
12日の読売新聞は、「三位一体改革談論」で、片山善博知事・飯尾潤教授らの意見を載せていました。もう一人の方の意見は、財務省の主張のまんま=交付税縮小で、表題とずれていました。朝日新聞は「三位一体改革誰のために・工夫凝らし独自教育」を載せていました。
日本経済新聞は、全国知事会総会を載せ、「補助負担率引き下げが強行された場合、法定受託事務の返上や国直轄事業の地元負担拒否などの対抗手段を検討することを決めた」と伝えています。義務教育負担金廃止に反対の石原都知事も「一致団結して12日の知事会議に臨むべきだ」と主張したそうです。(11月12日)
15日の日本経済新聞は「知事会、補助率ルール化要求」を解説していました。東京新聞は「地方はダメ息子ではない」逢坂ニセコ町長の反論を載せていました。(11月15日)
14日の朝日新聞社説は、「三位一体改革。小泉さん、正念場だ」を書いていました。「小泉首相は『地方からの改革案を真摯に受け止め、関係大臣は責任をもって・・』と繰り返している。だれが聞いても、地方6団体がまとめた補助金削減案を尊重する考えは明らかだ」「私たちは、首相に地方案を丸飲みする覚悟で指導力を発揮するように求めてきた」。総理の指導力が問われています。このHPで何度も書きましたが、三位一体改革は日本の政治のありようが試されているのです。
同じく朝日新聞は、「言葉の交差点」で三位一体の語源を解説してありました。(11月14日)
新聞記者との会話
記:民主党も、三位一体賛成だそうです。
全:それはいいことやね。
記:そうでもありません。野党とすれば、自民党が今回の改革に失敗してくれる方が、ありがたいのです。地方団体は反発するし、世論も反発。内閣と自民党の支持率はがた減りです。そして、「改革できない与党」とPRできるからです。
全:じゃあ、改革に失敗する方が、野党は良いんだ。
記:そりゃそうですよ。もう一つ、抵抗はしていますが、失敗すると困るのが自民党です。改革を潰したという責任をかぶせられるんですから。しかも、地方団体の首長や議員を敵に回してです。次回の選挙は大変です。
全:総理は、そのあたりはわかっておられるんじゃない。
記:ええ、抵抗勢力を敵に回すのは、お得意です。それに、ここで妥協すると、支持率だけでなく、郵政民営化までおかしくなっちゃいますから。「イラクでの国際貢献」「三位一体改革」「郵政民営化」、この3つを譲らないのが、小泉総理の「三位一体」です。野党が警戒しているのは、これで改革を成し遂げると、自民党の寿命が伸びることでしょう。
日本経済新聞は、「特別会計改革切り込み鈍く」を書いていました。経済部記者としては(匿名ですが)、よく書けていました。80年代から90年代にかけて、大蔵省が一般会計のシーリングを達成するために、財政投融資や特別会計を利用したのは有名な話です。自分たちが作った「玉手箱」を、そう簡単にはきれいにできないのでしょう。
財政審議会が、十分な切り込みができないのは当然です。審議会は、省庁の隠れ蓑ですから。原案は官僚が書くのです。「歳出削減、漂う停滞感」という見出しも、勇気あるものです。「地方財政は大幅削減せよ、自分たちは削減しない」という、財務省ですから。
最後に、さらりと刺激的なことが書いてありました。「『それじゃあ道路特定財源の一部を地方譲与税にしてはどうか』。官邸は、10月初旬、地方の補助金削減案に難色を示す国交省に、特定財源の譲与税化を打診した」。いつか、この言葉の持つ意味を解説しましょう。(11月16日)