5月30日の産経新聞は「義務教育費国庫負担、三位一体改革に赤信号」を解説していました。「最大の焦点である義務教育費国庫負担金制度をめぐって、存続を求める文部科学省と自民党文教関係議員の巻き返しが功を奏しつつあるからだ。また生活保護費と児童扶養手当の見直し問題でも厚生労働省が押し気味で、いずれも地方側は後退を余儀なくされている。」
毎日新聞は、「知事たちの闘い-地方分権は進んだか」第13回「義務教育論争、国庫負担はなぜ必要?」を載せていました。2004年7月15日の知事会議での義務教育国庫負担金をめぐるやりとりです。(5月30日)
1日の日本経済新聞は、「補助金削減、自治体、足並みに乱れ」「義務教育費巡り溝」を書いていました。その中に「地方案実現率わずか5割」として、各省別の金額が出ていました。拙稿「続・進む三位一体改革」では資料16として、各省ごとに、地方案と、各省回答と、政府与党合意の金額を3つ並べておきました。こちらの表の方が、おもしろいですよ。ちなみに、地方案は3.2兆円、実現したのは1.1兆円ですが、各省回答はたったの810億円でした。これが、日本の官僚の実態です。
骨太の方針で、3兆円の税源移譲を閣議決定したのですから、各省は補助金の一般財源化を拒否するなら、代案を出すべきでしょう。去年の秋には、官房長官が繰り返し、各省大臣に指示を出しました。
また、公共事業補助金の一般財源化について、財務省は反対だと記事は伝えていますが、それなら別の補助金の一般財源化を提案しないと、責任は果たせませんよね。
サボタージュする官僚に対し、内閣がどのような政治主導を発揮するのか、見守りたいと思います。
ところで、中教審を始め、義務教育費国庫負担金の一般財源化に反対する人が、その一番の根拠に「交付税は借入金が多く、今後交付税が減らされ、義務教育費が十分確保されないおそれがある」ことを挙げられます。
でも、これって、一方的な指摘ですよね。国と地方の財政を比べれば、国の方がはるかに悪いのです。借金はフローでもストックでも、国の方が多いです。「プライマリーバランスは地方の方が良い」という、攻撃すらあるのですから。
「今後、交付税が減らされるおそれがある」と主張するなら、「交付税より財政状況の悪い国家財政が削減され、義務教育国庫負担金も交付税以上に減らされるおそれがある」と、主張すべきでしょう。
「国庫負担金だから削減はないだろう」という考えは甘いです。現在でも、不交付団体に対する義務教育費国庫負担金はカットされています。また、これまで国は、財政難を理由に補助率カットを行ってきました。
もっとも、この理由での反対には、反論が簡単です。「じゃあ、財源さえ確保されれば、一般財源化で問題ないんですね」と。この反対は、分権論や制度論には何にも応えていない、いわば逃げですから。(6月1日)
4日の朝日新聞社説は「三位一体改革、決着への論議が始まった」でした。「ことし、まず決着を迫られるのは、この6千億円の中身だ。地方は公共事業への補助金の廃止を求めるだろう。福祉など使い道が限られている負担金に比べ、廃止されれば地方の裁量枠が広がるからだ。義務教育の国庫負担も、廃止か存続かを決めなければならない。」
「三位一体改革の二つの潮流のうち、まず分権を進めて効率化を図り、その結果として財政再建を実現させていくのが筋である。昨年までの論議が混乱した一因は、この道筋が共通認識になっていなかったからだ。今年はまず国と地方で、改革の順序を確認すべきだ。」
「昨年、最終局面で沈黙した小泉首相と、新しい知事会長の麻生渡福岡県知事の責任は重い。」
よく整理してある主張だと思います。このような、マスコミの監視と後押しがなければ、分権は進みません。ありがとうございます。どんどん、注文を付けてください。(6月4日)
6日の毎日新聞は、連載「知事たちの闘いー地方分権は進んだか」14回を載せていました。
月刊「自治研究」(第一法規)6月号に、岡崎浩巳総務省官房審議官(自治税務局担当)が、「平成17年度の三位一体の改革と税源移譲」を書いておられます。この間の税源移譲に関する議論とあわせ、現在、所得譲与税などで暫定的とされている「移譲」を、実際に地方税とする場合の課題などについても整理されています。(6月6日)