烏賀陽弘道著「Jポップとは何か」(岩波新書、2005)が、面白かったです。Jポップ(演歌でもアイドルでもない、若者ポピュラーソングとも言うのでしょうか)は、私にはフルートの演奏対象にもならず、そもそも理解し難く、縁がないのですが、日本社会を勉強するために読みました。
宇多田ヒカル以外の歌手の英語歌詞は、英語としては成立せず、ネイティブが聴いて鑑賞には堪えないこと。宇多田ヒカルを含めて、海外ではまったく売れていないこと。日本人が日本人だけで、インターナショナルなような気になっていること。
ポピュラー音楽の輸出がほぼゼロ(売れているのはアニメソング)に対し、日本市場では輸入が圧倒的に多いこと。そして、日本製の音楽は、国内市場だけで成り立っていること。拙著で書いた「まれびと志向」や「情報の単一市場」p320が、極端な形で現れているのですね。
その他にも、日本のカラオケ参加人口は約5,000万人で、音楽鑑賞人口4,500万人より多い。CD生産額は最高6,000億円に対し、カラオケ料金は7,800億円。カラオケボックス利用者の6割が30歳以下に対し、酒場でのカラオケは7割が30歳以上。「カラオケは、自己表現の消費」など。日本社会を考えるいい教材です。
岡本全勝 のすべての投稿
過去の分析と未来の創造と:官僚の限界
東京大学出版会のPR誌「UP」6月号に、原島博教授が「理系の人間から見ると、文系の先生は過去の分析が主で、過去から現在を見て、現在で止まっているように見える。未来のことはあまり語らない。一方、工学は、現在の部分は産業界がやっているで、工学部はいつも5年先、10年先の未来を考えていないと成り立たない」といった趣旨のことを話しておられます。
この文章を読んだときに、私は「これだ」と叫んでしまいました。社会科学系の学者さん(の多く)も、社会を分析をしておられるのに、なぜ現実に対し有用でないか。理由はこれだったんです。
官僚の多くにも、これが当てはまります。法律の解釈や、事象の解説は天下一品ですが、じゃあどうするのか、どう改革するのかになると、とたんに沈黙するのです。できあがった法律の解釈学に甘んじ、改革に対してはいろいろ理屈をこねては抵抗する。これでは、国民の支持は得られませんよね。「政治主導」「小泉改革」の「引き立て役」ですか。
「国庫補助金改革の中味」を官僚が決められず、地方団体に選んでもらう。そしてそれに対し、「地方団体の意見がまとまらないなら、改革は進めない」「お手並み拝見」などと、評論家みたいなことを言っている。これでは、官僚の存在理由はないです。
三位一体改革50
早稲田大学古賀勝次郎教授ゼミ講義
今日は、早稲田大学政経学部へ、古賀勝次郎先生のゼミに出講してきました。30人を超える3,4年生が、熱心に聞いてくれました。院生も。テーマは「日本の行政と社会はどこに向かうのか」で、いつもの私の主張である、これまでの成功が今の混乱を生んでいることを解説しました。今回は、学生に興味を持ってもらうように、霞が関の夏服騒動が日本の社会と政治の方向転換の象徴であること、から説明しました。
最近の学生は、まじめですね。寝る人はいないし、座席も前から詰めて座るし、質問もしっかりしています。私が学生のころは・・・。
20日なら国会も終わっているだろうと、この日を選んだのですが、国会は延長されました。もっとも、今日は私の出番はなく、大学に行くことができました。