平成19年10月27日に、第1回目の「経済財政に関する地方会議」を、香川県高松市で開催します。地方の声を諮問会議の審議に反映させるため、民間議員を中心に地方に出向いて、地域の課題について議論を行う場を設けるものです。いろんな方のご協力を得て、準備中です。
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ブラックマンデーの意味
19日の日経新聞は、「ブラックマンデーから20年」を特集していました。1987年10月19日、ニューヨーク株式市場が、これまで最大の2割も暴落しました。1929年の大恐慌の時(10月24日、ブラックサーズデイ)が13%の下落ですから、いかに大きかったかがわかります。しかし、アメリカ経済も世界経済も、この時は大恐慌に陥ることなく、復活します。
だから、ブラックマンデーそのものは、経済史に大きく扱われていないと思います。意味を持つのは、なぜ起きたか、そしてアメリカはそれにどう対処したかです。さらに重要なのは、その後、世界経済はどう変わったかです。
暴落の背景となった経済条件はありますが、犯人の一人は、コンピュータのプログラム取引=株価が下がると自動的に売りを出す仕組みでした。
1980年代に日本は、1人当たりGDPでアメリカを抜きます。財政と経常収支の大幅な赤字に悩んでいたアメリカは、市場の信認を取り戻すため、財政再建に取り組みます。それに成功したグリーンスパンFRB議長は、高い評価を得ました。
一方、日本はジャパン・アズ・ナンバーワンとおごり、バブル経済に入ります。2万円台だった平均株価は、4万円近くまで上がりました。しかし、バブルが崩壊し、株価は8千円を割り込むところまで落ちました。もっとも、1991年にバブルが崩壊したのに、最安値をつけたのは2003年です。これが、失われた10年といわれるゆえんです。現在でも1万7千円前後です。そして、実物経済を含めて、勝者と敗者が逆転しました。
また、金融のグローバル化が進み、金融工学が進み、市場が政府を振り回すようになりと、いろんなことが進みました。経済学、経済財政策にとっても、進歩の20年だったのではないでしょうか。実態が大きく変化することで、学問と行政が後を追ったのです。
20年というのは、結構長い年月です。しかし、同時代を経験した私には、この間のことは、つい最近の出来事と感じられます。でも、学生にとっては、生まれた頃の話ですね。新聞を読んで勉強してください。
変わる公務員の働き方
19日から朝日新聞は「働く」で、公務員の働き方を、職員一人ひとりを追いかける手法での連載を始めました。初回は、「リストラの嵐、役場へ。増える仕事、減らされる給与」です。親方日の丸だとか、首にならないといった、これまでの公務員像が変わっていることを、明らかにして欲しいですね。
負担と受益の将来推計
17日に諮問会議に出された「給付と負担の選択肢」について、いくつか問い合わせや意見がありました。その意義や「増税誘導ではないか」といったものです(もっとも、私はこの件について、直接の担当ではありません)。
常々言っていますが、経済財政諮問会議で、歳入と歳出が一体的に議論できるようになりました。これまでは、国税(政府税調、党税調)と歳出予算(各部会)は、別々に議論されたのです。足らない分は、国債に頼りました。さらに、歳入であっても、国税(財務省)と社会保障負担(厚労省)は、別に議論されました。それらが、一体的に議論できるようになったのです。
また、これまでは、当年度の財政収支と翌年の収支見通しは、明示されましたが、将来推計は十分にはなされませんでした。例えば、制度が変更ないとしてといった条件での、粗い推計でした。今回の試算は、経済成長率を場合分けし、歳出削減額や社会保障の伸びを場合分けして、試算してあります。そして、借金残高が発散しないようにするためには、どの程度の増税が必要かを示したのです。
ある記者曰く、「このような試算を出すのが、遅すぎるくらいですね」。
そうですね、高度経済成長期、安定成長期に、増税をしなくて済んだ成功体験の「負の遺産」でしょう。高齢化率が世界一、社会保障も成熟し、公共事業は西欧先進諸国より大きく、それでいて消費税はかの国が20%近いときに、日本だけが5%なんて、魔法使いでない限りできませんよ。それを、子々孫々に借金として残しているのです。「新地方自治入門」p113以下とp299をご覧ください。
私は、この世代間の不公平は、とんでもない罪だと考えています。将来、子や孫たちは、私たち世代をどう評価するでしょうか。私たちの1世代前は、経済大国を残してくれました。2世代前は、戦争で世界各国特にアジアの国々に、日本の悪評という負の遺産を残しました。
負担と受益の将来推計
試算Ⅰ(p2)は、2011年度に向けた試算です。①14.3兆円の歳出削減を行ったケース、 ②11.4兆円の歳出削減を行ったケース、③は①に比べ、2008年度から2011年度にかけて毎年度1兆円の歳出を積み増すとしたケースの、3つです。
新成長経済移行シナリオ(名目成長率3.0%、実質成長率2.4%)の場合、③では増税必要額は3.2兆円です。成長制約シナリオ(名目成長率2.2%、実質成長率1.6%)の場合は、増税必要額 6.6兆円です。
試算Ⅱ(p6)は、中長期の社会保障の選択肢です。2011年から2025年までを、試算してあります。
給付維持・負担上昇ケース(一人当たり給付を維持する場合、国民の負担はどの程度増えるのか)と、給付削減・負担維持ケース(一人当たり負担を維持する場合、給付をどの程度削減する必要があるのか)です。
成長ケース(名目3.2%、実質1.7%成長)と、制約ケース(名目2.1%、実質0.9%成長)の2通りで試算してあります。
給付維持の場合は、税と保険料をあわせた国民の負担は11~12兆円程度増加。債務残高の名目GDPに対する比率を上昇させないために、合計で14~29兆円程度の増税が必要です。
給付削減の場合は、給付を3割程度削減することが必要。債務残高の名目GDPに対する比率を上昇させないために、合計で8~24兆円程度の増税が必要です。
18日以降の新聞で詳しく解説されるでしょうから、お読みください。