岡本全勝 のすべての投稿

この国を変える

1 社会のソフトウエアを設計する
「三位一体改革」が、政府の大きな課題になっています。国庫補助負担金の削減、国から地方への税源移譲、地方交付税の見直し。この3つを同時に行うものです。しかし、その目的は国と地方との財源配分変更にとどまらず、中央集権を地方分権に変えることです。それは、この国のかたちを変えようとするものです。
その他にも、行政改革、公務員制度改革、電子政府やユビキタス社会の実現。総務省が取り組んでいる仕事は、「国家と行政の新たな制度設計」であり、「新しい社会のソフトウエア」の整備です。
2 日本の構造改革とは
明治以来、我が国は、欧米先進国に追いつくことを国家目標としてきました。その際、官僚の仕事は、先進諸国の制度を輸入し、全国に行き渡らせることでした。そして、日本社会と官僚は、それに成功しました。貧しい農業国は世界第2位の経済大国になり、公共サービスも世界一の水準を達成しました。
なのに、日本社会は幸せを感じるどころか、不安や不満が満ちています。それは逆説的ですが、国家目標を達成したからです。もはや国民は、経済成長だけでは幸せを感じません。官僚が主導する「お仕着せのサービス」では、満足を感じません。単一の国家目標はなくなりました。それに代わって、各人が自ら考え、それぞれ目標を選び、努力する。これが社会の満足になり、あり方になったのです。
社会あり方の変化に応じて、政治と行政も変わらなければなりません。その改革に遅れていることが、国民の不満を生んでいます。改革の理念は、社会の理念の変化と同様に、画一から多様へ、依存から自立へです。その具体化が、中央集権から地方分権へであり、官から民への改革です(詳しくは、拙著「新地方自治入門-行政の現在と未来」)。
3 遅れている官僚の意識の転換
豊かな社会の官僚には、貧しい時代の官僚とは違う仕事が求められています。これまでは、外国から先進的な制度を輸入し、拡張することでした。しかしそれを達成すると、官僚の仕事は、社会の新しい問題を発見し、解決策を創造することに変わりました。
その際には、過去の手法ではなく、新しい時代に見合った手法に変えなければなりません。法令による、地方団体や民間企業の統制。細部にわたる行政指導や国庫補助基準による介入。これらはまさに、中央集権と官僚主導の手法だったのです。地方団体や民間企業が自立を求めるとき、これらの手法は障害でしかありません。しかしながら、まだ多くの官僚は、時代遅れの手法にしがみついています。
4 2005年、総務省の仕事の意義
総務省の取り組んでいる仕事は、地方分権であり、行政手続きの透明化であり、行政の減量です。それは、官僚の仕事のやり方を変えること、霞が関を変えることです。それが、日本の政治を変え、社会のあり方を変えることになるのです。総務省が取り組んでいる改革は、日本社会のソフトウエアの書き換えなのです。
これまで成功した手法を変えること。ここに、私たちの難しさがあります。しかしそこには、明治維新以来1世紀ぶり、あるいは戦後改革以来半世紀ぶりという、「新たな社会の制度設計」に取り組んでいる喜びがあります。

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1月に近畿自治体学会フォーラムで行ったパネルディスカッション速記録を事務局が起こしてくれたので、手を入れました。お盆休みも、こうして消えていきます。何か変だなと思ったら、市長・村長・僕の3人とも関西弁でしゃべったはずなのに、原稿は「東京弁」になっています。事務局曰く、「関西弁は聞いてたらようわかるけど、活字にしたらわからへんのですわ」とのこと。
そういえば、先日、職場で「岡本課長は大学院で講義するとき、標準語ですか」と聞かれたました。「私は、あんたの言うている意味がわからへん。いつも標準語をしゃべってるんで、講義の時だけ変えるようなことはしてへんで。東京弁はようしゃべらんけど」と答えました。

幸せ

16日の朝日新聞「キーワードで考える戦後60年」のテーマは、幸福でした。見田宗介東大名誉教授は「幸福の無限空間は可能、経済合理性のかなたに」を書いておられました。
これまでの日本は、消費資本主義、幸福資本主義であった。現在の消費資本主義は、環境や資源制約から、あと半世紀も持続できない。一方、美しい絵画や曲は、資源の大量消費なしに、幸福の無限空間を開くこともできる。
「物質的豊かさは、確かに40年前の幸福の一因だった。今日まだ政府も企業も『市場原理主義』と『リストラ』で経済合理性を追究し続けているが、その追究は『自由』や『安定』『愛』や『崇高さ』といった大切な価値を犠牲にすることがある。これが現に今、不幸をもたらしてもいる」
また、日本のGDP8分の1でしかなメキシコや、100分の1以下であるナイジェリアの人々が「日本人よりずっと強い幸福感を広く共有している事実は、物質的な豊かさとは異なる『人間関係的』な幸福や『幸福感受性』とも言うべき次元の大切さを示唆する」
モノによる幸せの限界や、地域の財産のモノから関係への変化については、拙著「新地方自治入門」(p18、p202など)の主たるテーマでした。

パソコン

大学生の娘と高校生の息子も、パソコンを使うことが多くなりました。私がデスクトップを使っているときは、携帯パソコンを使わせているのですが、インターネットへの接続ができません。それで、2台同時につなげるように、無線ランを導入しました。電気店の店員に相談し、道具をそろえ、悪戦苦闘して。セットアップはCDを使いますが、私の携帯パソコンにはCDドライブはなく(これまで必要なときは、持っている人に頼んでました)、まずその情報を発売元のHPからダウンロードしてとか。
事前に、もう一人のITのお師匠さんである板倉さんに相談したら、「簡単だよ」とおっしゃったのですが。途中でまちがって、インターネットにもつながらなくなったり。後から思えば、何でもないことに困っていたのですが。マニュアルって、わかっている人用にできてますね。ようやく、つなぐことができました。本当に暑い午後でした(笑い)。でも、万歳!速度が速く遠くまでつながる機種を選んだのですが、子供部屋でやってみると、やはり遅いですね。

ニワトリの幸せ

東京大学出版会PR誌「UP」8月号に、佐藤衆介東北大学教授が「動物たちの『幸せ』とはなにか」を書いておられます。「空調が利いた室内で、餌や水が目の前にあり、糞をしても金網床のために下に落ち衛生的である飼い方と、日陰と日向が混在するため暑さ寒さに対応して場所を自ら選択しなければならず、土間にワラが敷かれ、その上から餌がまかれることで探さなければ餌をとれない屋外飼育をニワトリに選択させた。すると、ニワトリは後者を選んだ」
「前者の飼育環境で長期間飼うと、つつき行動が仲間のニワトリに向けられ、時には相手を傷つけたり・・・。眠りは浅く、運動不足で骨軟化症や骨粗しょう症が多発する。刺激の少ない環境のせいか、ちょっとした刺激に過剰に反応し、ストレスホルモンのひとつである血中コルチコステロイド量が急上昇する」
われらサラリーマンも、身につまされます・・。